律父「ああ。律には悪いが桜ヶ丘は今年いっぱいで転校してもらう。」
律「ちょっと待ってよ!話が急すぎるよ…今年いっぱいって…あと1ヶ月しかないじゃん!」
日めくりカレンダーは11月28日を示していた。
私は引越しでたくさんのものを失うことになるのを、重々承知していた。
律「待てよ!澪は?軽音部は?私のことはお構いなしかよ!」
私は、いくら嘆いても変わらないことくらい分かっていた。
だけど、どうしても現実を認めたくなかったのかもしれない。
私は家を飛び出した。行き先は、もちろん幼馴染の家だ。
ピンポーン
ガチャ
澪「どうした律?」
律「澪…実は…」
私もなんでここに来たのか分からない。
でも、内心一番頼りに出来るんだろうな。澪は。
私は、澪に言うべきなのだろうか…
律「いや、なんでもない。じゃあな!」
はあ。やってしまった。
不自然すぎるだろ…いきなりインターホン鳴らして「なんでもない」だもんな。
でも、最後の最後まで今の私達の関係を崩したくなかったんだろうな。
律「はあ…」
私は公園のベンチに座ってため息をついていた。
携帯が鳴る。相手は…やっぱり澪か。
ガチャ
澪「おい律!さっきはどうしたんだ?」
律「いやいやーなんでもないよー」
澪「何か隠してるだろ?」
律「そそそんなことしてないよ…」
無駄にこういうときだけ鋭いんだ。澪は。
澪「りーつー隠し事はするなよー」
律「私は天下のりっちゃん様だぞ!澪に隠し事なんて…」
澪「そうか。心配して損したかな。何かあったらすぐ連絡しろよ」
ガチャ
はあ…またもややってしまった…私は何がしたいんだ一体…
翌日。私はいつもどおり澪とくだらない話をしながら学校へ向かった。
こんな日々もあと1ヶ月で終わりだと思うと、自然と涙が零れてきた。
澪「律?どうした?昨日からなんだか変だぞ?」
やっぱり澪には話しておくか。
律「実はな…私、引越しすることになったんだ…」
澪「え?…え?冗談は辞めろよー」ハハハ
律「私だって冗談だと思いたいよ…けど…本当なんだ…」
澪「そうなのか…で?いつ引っ越すんだ?」
律「12月の終わり…」
澪「そっかーなんだーってあと1ヶ月しかないじゃないか!?」
律「うん…なあ澪?」
澪「どっどうした?」
澪はまだ動揺を隠せないみたいだ。私がいなくなった後の澪は心配だなあ…
律「出来れば…ていうか絶対皆には言わないでくれ!!」
澪「う…うん。わかった」
こういうことがあると時が経つのが早く感じられるな。
もう放課後だよ…
ガチャ
律「おいーっす」
唯「りっちゃんおいーっす」
この軽音部の何気無いやり取りもあと1ヶ月か…
ジャーン♪
律「ふう」
梓「律先輩が珍しく走っていなかった!」
律「ああ」
梓「どうしたんですか律先輩?」
律「うるさい」
梓「…え?」
律「梓は一々うるさいんだよ!」
タッタッタッタ…
はあ…何言ってんの私…
ん?メールだ。
「聞きたいことがあるから19時に私の家に来て 澪」
説教かな…
ポチポチ
「わかったよ 律」
っと 送信。
はあ…
…
説教だと分かっていても来てしまった…
ピンポーン
澪「…入って。」
律「うん」
うわー澪さん暗いですね…
澪「…なあ律。お前はどうしたいんだ?」
律「どうしたいって?」
澪「ここに…残りたくないか?」
律「そりゃ残れるなら残りたいよ…」
澪「じゃあ…うちに棲まないか?」
律「…え?」
澪「ママ…じゃなくてお母さんも良いって言ってるしさ!」
律「いいのか?」
澪「もちろん!」
律「みおー!!!!」ダキッ
澪「ふふww」
澪さんは頼りになります。これから一生神と呼びます。
澪「でも一緒に棲むなら…きちんとルールを決めないとな!」
律「ルール?」
澪「例えば…寝顔に落書きしないとか!」
澪さん本当に高校3年生でしょうか?
律「あ…ああ。澪に任せるよ。」
澪「ふふwwでもその前に律はやらなきゃいけないことがあるよな?」
律「やらなきゃいけないこと?」
澪「携帯出して。」
律「え?う…うん」
澪「梓とっても傷ついてたぞ。」
律「あ!わかったよ!」
ポチポチ
プルルルル・・・
ガチャ
梓「なんのご用ですか田井中先輩」
律「梓・・・さっきは本当にゴメン!」
梓「なんであんなこと言ったんですか?」
律「実は・・・」
梓「・・・そういうことだったんですか。いいです!許してあげます!澪先輩と仲良く生活してくださいね!」
ガチャ
律「ふう。これで大丈夫だ。」
律「これから・・・よろしくな澪!」
終わり
最終更新:2010年10月12日 01:19