澪「やぁ…純。どうしたんだ?」
純「いや、梓に渡すものがあって来たんですけど…」
澪「梓ならまだ来てないよ」
純「澪先輩だけですか?」
澪「うん、律たちは掃除で遅れるって」
純「へぇ~…」
純「……」
純(あっ、私…澪先輩と二人っきりだ)
澪「……」
純「……」
純(やば…めっちゃ緊張してきた)
純「えっとぉ…」
澪「よかったら私が渡しておこうか?」
純「へ?」
澪「梓に渡すものがあるんだろ?私があとで代わり渡しておくよ」
純「あいやっ…その…っ」
純(ま、待て待て私!これは絶好のチャンスよ!!)
純(澪先輩と二人っきりになれるんだもん…この機会を逃すわけにはいかない!)
澪「純…?」
純「あの~…いいですよ!私が直接渡しますんで」
澪「でも…」
純「そ、それでですね…梓が来るまでここで少し待っててもいいですか?」
澪「うん?別にいいけど」
純(よっし!!)
純「じゃあ…お邪魔しまーす」
澪「適当なとこに座っていいよ」
純「あ、はい」
純(じゃあベンチ…澪先輩の隣に)
純「失礼します」
澪「ん…どうぞ」
純(やったー!澪先輩の隣に座れたー!!)
純「……」
澪「……」
純(ダメだ…心臓がはち切れそう)
澪「……」
純「……」
純(澪先輩…ベースの弦張り替えてる…)
澪「……」
純(かっ…こいいな~!!)
澪「……」
純「……」
澪「……」
純「……」
澪「あの…」
純「な、なんですか!?」
澪「ヒマじゃない?」
純「いえいえ!そんな!!全然!!!」
純「むしろ最高です!!」
澪「そ、そう…?」
澪(最高?)
純「はいっ!」
澪「それならいいけど…」
純「あっ、澪先輩のベースかっこいいですね」
澪「これ?」
純「はい、澪先輩にぴったりです!」
澪「な、なんか照れるな…」
澪「エリザベス…」ボソッ
純「え?なんですか?」
澪「あ、いや!」
澪「なんでもない、なんでもないよ」
純「?」
澪「あはは…それより、純もベースなんだよね?」
純「はい。私…澪先輩みたいなベーシストに憧れてるんです」
澪「えっ」
純「だって…か、かっこいいし、ベースもうまいし、歌も…」
澪「っ…」
純「澪先輩は…わ、私の憧れです!!」
純(言っちゃった私!なんか言っちゃったー!!)
澪「……」
純「み、澪先輩…?」
澪(憧れ…私が…)
澪(しかもベーシストとして…)
澪(そ、そんなこと言われたの生まれて初めてだ~~!!)
澪「…///」プシュー
純「澪先輩!?大丈夫ですか!」
澪「あ…うん。平気平気…」
澪(この子…私をベーシストとして見てくれるんだ)
澪(うれしいな)
澪「純…」
純「はい、なんですか?」
澪「よかったら一緒にベースの練習する?」
純「あ…すいません。今日ジャズ研の練習なくてベース持ってきてないんですよ…」
純(なにやってんの私!!)
澪「そっか…」
純「で、でも!今度教えてもらえませんか!?」
純「お願いします!」
澪「!」
澪「も、もちろんいいよ!」
澪(後輩に教えるなんて…初めてだな)
純「……」
澪「……」
純「……」
澪「それにしても…律たちが遅い。なにしてるんだろう?」
純「大掃除ですかね?」
澪「うーん…」
澪「そうだ、純」
純「はい?」
澪「私たちで先にお茶飲んでよっか?」
純「え…いいんですか?」
澪「ああ、待ってる間なにもしないのもあれだし」
澪(せっかくの後輩なんだからお茶ぐらい淹れてあげよう)
純「じゃあ…ご馳走になっちゃいます」
澪「分かった、ちょっと待ってて」
純「澪先輩が作るんですか?」
澪「うん」
澪(いつもムギがやってるところ見てたし…大丈夫だよな)
ガチャガチャ
澪(え~っと確か…紅茶の葉を入れて…)
澪(それでお湯を入れて…)
澪(できた!たぶん)
澪「はい、どうぞ」
純「あ、ありがとうございます」
純「……」ゴクッ
純(…よくわかんないけど、苦い)
澪「ど、どうかな…?」
純「…はい、おいしいです」
澪「!」
澪(やった、成功だ!)
純(やっぱまずいかも…)
澪「ふぅ…」ゴクッ
澪「……」
澪(あれっ…あんまりおいしくないような…)
純「……」
澪(いやでも純はおいしいって言ってくれたし…いいんだよなこれで)
純「軽音部って、いつもこんな感じでお茶飲んでるんですか?」
澪「うん?まぁ…そうかな」
純「へぇ~…練習とかは?」
澪「えっ?えっと~…」
澪「れ、練習もするよもちろん!」
澪「けど私や梓が注意したりしても、みんながなかなか聞かなくてな。困ったもんだ」
純「大変なんですね」
澪(そういえば最近注意してないや、私)
純「澪先輩って、やっぱり真面目なんですね」
澪「ん?」
純「音楽に対してとか、部活に対してとか…そういうとこも憧れます」
澪「う、うん…ありがとう」
澪(ごめんなさい、最近ケーキばっか食べてます)
純「澪先輩は、どうしてベースを始めたんですか?」
澪「え…」
純「あ、ごめんなさい。私…澪先輩のこともっと知りたくて」
純「け、けど!答えたくなかったらいいですよ、別に」
澪「うーん…ベースを始めた理由か…」
澪(目立ちたくなかったから、なんて言ったらカッコ悪いかな)
澪(せっかく私のことをベーシストとして憧れてくれてるんだし…ちょっとぐらいカッコつけてもいいよね)
澪「実は…好きだった人がベースやってたんだ」
純「え!?」
澪「それでその人に近づきたくて、ベース始めたんだけど…」
澪「その人、別に好きな人がいてね…私は手を引いたの」
澪「けどあの頃の情熱は忘れたくないから、今でもベース弾いてるんだ」
純「……」
澪「……」
澪(まずい…捏造しすぎたかも)
純「ロ…ロマンチックですね~!!」
澪「そ、そうかな?あはは」
澪(よかった、信じてくれた)
純(いいな~、やっぱり理想通りの先輩だ)
澪(あぁ…なんか嘘ついたことへの罪悪感が急に…)
純「大丈夫ですか澪先輩、顔色悪いですよ?」
澪「だ、大丈夫だよ純」
澪(ごめんね嘘ついて)
純「ならいいんですけど…」
澪「…そ、それにしても遅いなー。なにやってるんだ?」
澪「ちょっと電話してもいい?」
純「あ、はい。どうぞ」
Prrrr、Prrrr
澪「あっ、もしもし律?なにやってるんだよ遅いぞ」
律『は?そりゃこっちの台詞だ』
律『お前が来るの遅いから唯たちと一緒に先に帰ったんだぞ』
澪「え…部活は?」
律『今日は休みって言ったろ』
澪「……』
律『あれあれ~?澪ちゃん忘れてたんですか~?』
律『まったくぅ、うっかり屋でちゅねー』
澪「う、うるさい!!」
ピッ
純「どうしたんですか…?」
澪「…うん、今日はみんな体調が悪いから休むって」
純「そうだったんですか、梓大丈夫かな…」
澪「あはは、まぁ明日には治ってると思うよ」
純「え?なんで分かるんですか?」
澪「あ、いやっ…その」
澪「なんか…そんな感じだったから」
純「ふーん」
澪「それじゃあ私たちもそろそろ帰ろっか!」
純「そう…ですね」
純「……」
純(待て待て、このまま帰っていいの?)
純(せっかく澪先輩と二人になれるんだから…動かないと!)
純「あ、あの!」
澪「なに?」
純「これからその…お時間ありますか?」
澪「え…っと」
澪「時間なら一応あるけど…」
純「その~…よかったら一緒にどこか行きたいなぁって」
澪「えぇ!?」
純「いやっ、近場でいいんで!できたら…」
澪「……」
純「……」
純(ダメ…なのかな)
澪「……」
澪(こ、後輩から遊びに誘われた…!)
澪(どうしよう…こんなの初めてだ)
澪(梓にだって誘われたことないんだぞ、私)
澪「……」
澪(な、なんか嬉しいなぁ…こんな後輩がいるって)
澪(こういう上下関係…いいかも)
純「あの…」
澪「うん……まぁ私も暇だし」
澪「いいよ、どこか行こっか?」
純「本当ですか!?ありがとうございます!」
純(やったー!!)
澪(ふふ、なんかいいなぁ…この感じ)
澪「じゃあ…どこ行く?」
純「私に任せてください!おいしいドーナツ屋があるんですよ!」
純「そこにしましょう!」
澪「分かった、そうしよう」
澪「今準備するからちょっと待ってて」
純「はい!」
純(これは澪先輩との……デートになるのかな!?)
純(こんな法外な幸せがあるなんて…)
純(生きててよかった!!)
澪「お待たせ、行こう」
純「~~っ」
澪「どうしたんだ?」
純「い、いえ。なんでもありません…」
純(嬉しすぎて言葉がでない…)
澪「ドーナツか、楽しみだな」
純「澪先輩は…甘いもの好きなんですか?」
澪「うん、そこそこ」
純「よかった」
澪(好きだよって言うと子どもっぽいと思われそうだし、ちょっとぐらい見栄を張ろう…かな)
澪(後輩の前では大人っぽく…)
純「着きました!ここです」
澪「へ~…」
純「注文しましょう。チョコのやつとかおいしいですよ」
澪「それじゃあ…純に任せるよ」
純「は、はい!あっ、飲み物はどうします?」
澪「ん…じゃあ」
澪「……」
澪「ブラックコーヒーで」
純「ブラックコーヒーですね、分かりました」
澪(飲めるかな…ブラックコーヒー)
澪「私、そこの席にいるから」
純「はーい」
澪「ふぅ…」
澪「……」
澪(そういえば…こうやって誰かと二人で遊ぶのって久しぶりかも)
澪(前までは律とよく遊んでたけど…高校入ってからは軽音部で行動することが多くなってたし)
澪「……」
澪(本当に久しぶりだなぁ…)
最終更新:2010年10月13日 23:20