平沢家

 ピンポーン

 ピポピポピンポピンポーン

律「……」イライラ

 ガチャ

憂「律さん……どうしたんですか? こんな遅い時間に……」

律「ごめん、憂ちゃん。唯と話をさせてくれ。二人っきりでだ」

憂「良いですけど……ひぇっ」

律「サンキュ、上がらせてもらうよ」バタバタ

憂「あ、ちょっと……」

憂「……もうっ」

 ダダダダダダダッ

 バタンッ

唯「きゃっ!?」

律「よう……唯」

唯「りっちゃん……び、びっくりしたよ」

律「びっくりしたのはこっちだ! なんだよ、あのメール!」

唯「だって……」

律「……なんだよ」

唯「りっちゃんは……うそつきだから」

律(唯まで同じことを言うのかよ)

唯「ううん、私がうそを言わせちゃったんだよね。りっちゃんは優しいから」

律「嘘なんかついてない! どうして誰もかれも私を嘘吐き呼ばわりするんだよ!」

律「なんなんだよ、どうして私の気持ちの問題を嘘って決めつけられるんだ!」

律「なんで嘘なんだ、どうして好きだって言ってるのに信じてくれない!」

律「確かに最初は、唯のことを好きじゃないって言ったよ」

律「アイス屋で唯に告白された時は、唯を見捨てられないって気持ちが一番だったと思う」

律「私は嘘を吐いたんだと思う……」

律「でも、今は本当に唯のことが好きなんだ。好きで好きでたまらない!」

律「その気持ちを唯は知ってるだろ? ベッドの上で一緒に確認しただろ?」


律(何が言いたいんだよ、その顔)

律「何とか言えよ。私の気持ちが嘘だって、理性的に証明してみせろよ」

唯「そんな嘘の暴き方、探偵ドラマじゃないんだから……」

唯「むしろ真逆だよ。本能でしかわかんない」

律「……」

唯「りっちゃんとエッチして、それこそはっきり分かっちゃうんだ」

唯「りっちゃんはやっぱり、私のことが好きなんじゃないんだなって」

律(どうなってるんだ。セックスって……)

律(セックスって愛を伝える最強手段じゃないのかよ)

唯「上手な説明はできないけど、りっちゃんの表情とか息遣いとか言葉とか……」

唯「りっちゃんは私が好きでエッチしてるっていうより」

唯「エッチが好きで私とエッチしてるって感じがする」

律「……」

唯「そう思わない?」

唯「いいんだよ、エッチが好きでも。私だって、りっちゃんとエッチするのは好きだもん」

唯「けど……それは感じるってだけで、気持ちいいっていうのとは違う」

唯「りっちゃんは、心じゃなくて体が触れ合うことを望んでいるから、かな」

唯「それは私も、だけどね」

唯「心を触れ合わそうとすると、ちくちくするから」

律(……図星かも知れない)

律「唯……ごめん」

唯「謝ることないよ! そもそも私がりっちゃんに強要しちゃったようなもんだもん」

唯「私こそごめん!」

律(唯……)

律(……どうしよう)

律(唯との付き合いは、やっぱり続けたい)

律(けど、私のこの気持ちを形作っているのは……性欲にすぎないのか?)

律(同情でも、愛でもなく)

律(そんな心のままで唯と付き合うのも、同情と同じくらい失礼だよな)

律(……でも)

律「だけど、やっぱり」

唯「?」

律「どう言われても、私は唯が好きだよ……」

唯「……むぅ」

律「この気持ちが恋愛感情じゃないなんて、納得いかない」

律「一人のことばっかこんなに考えてるのは初めてだし、唯のこと考えると何も手につかなくなる」

唯「それは私と一緒だね」

律「唯……続けようよ。今は唯が触れ合いたいような心にはなれないかもしれない」

律「けど、私は唯が好きだと思ってる」

律「唯が欲してるような「好き」って気持ちには足りないかもしれないけど……」

律「私の中途半端なこの気持ちが、唯を余計に傷つけるのかもしれないけど……」

唯「うん……」

律「私は、唯と付き合ってたい。それでいつか、唯が気持ちよくなれるような心を持ちたいよ」

唯「……」

律「それまで時間はかかると思う」

律「だけど、唯が好きだから。私だって気持ちを返したいんだ」

唯「……りっちゃん」

律「うん?」

唯「間違えた……律」

律「唯……」

唯「ひとくち、ちょうだい」

律「……いいのか?」

唯「ヤボだよ、律」

律「まあ、それもそうか」

律(一件落着、か?)

 チュッ



 ある日の音楽準備室

 ガチャ

唯「すぴー」

律(唯が寝てる……)パタン

唯「くかー」

律(……)スッ

唯「……りう」ムニャムニャ

律(幸せそうな寝顔だな、やっぱ)

唯「ちゅー……」

律(……かわいいなぁ)

唯「ちゅーうー……」

律(かわいすぎるなぁ)

唯「……」

律(……)

唯「う、ひぅっ……」プルプル

律(泣くなよ!?)

律(そ、そんなにキスしたかったのか……?)ナデナデ

唯「うぅ……」

律(つーか夢の中じゃキスしてもらえなかったのね)

律(とはいえ不意打ちでキスくらわすと唯は暴走するからなぁ)

律(結果として私の意識もなくなるわけだよ)

律(……んー、まぁ二本指でいいか)ピトッ

唯「ふっ……んー♪」チュゥ

律(バカわいい)

唯「んっ」ニュル

律(早速舌が入ったか)

律(人のことは言えないけど、唯も相当好きだよなぁ)

唯「はふ、ふぅっ」ピチャピチャ

律(この指は後でおいしく頂くとしよう)

唯「は、じゅるぅ……んふ」

律(なんか動物園のふれあいコーナーみたいな感じだ)

律(手のひらに餌のっけて山羊とかに食わせるあれ)

律(今度唯にマーブルチョコとかでやってみるか)

律(……あ、そうだ。チョコボール持ってたんだ)ゴソ

唯「んうっ」グイッ

律(ちょっと待ってなちゃいねー)クエックエッ

律(はい、ご飯でちゅよー)


唯「ん、はむ……」モガモガ

律(おぉ、食った……)

律(思った以上に……なんかもう、ピッタリだな)

唯「むぐ……?」ピクッ

律(あ、さすがに起きるか?)

唯「……」スンスン

唯「!」ガシッ

律(ぬわっ)

唯「はふ、ふっ」ベロベロ

律(いやああああああ)

律(チョコレートでベトベトするうぅ)


唯「んふー♪」スヤスヤ

律(……私の右手がまっ茶色に)ベッチョリ

律(ん)ペロッ

律(あまっ。……当たり前か)

律(……)ペロペロ

唯「はぁ……ぐぅ」

律(……すげぇイケない事してる気分にさせられるな)ペロペロ

律(んっ……)ズヂュ…

律(……なんかもう、めんどくさいな。キスしちゃおうか?)

唯「……えへへ」タラー

律(……)

律(やっぱ、もう少し寝顔を見ていたいな)


 おしまい



最終更新:2010年10月15日 01:42