憂『じゃあさ、たとえ話なんだけど

  現状を維持するままでは私が寂しい思いをすることはわかってるんだけど、

  どうすればいい方向に向かうことが出来るのかわからないとき、

  梓ちゃんならどうする?

  とりあえず何でもいいから変えてみようと思うんじゃない?』

梓(黙ってたら、話を先に進められた!!ちくしょうっ!!!)

憂『…』

梓 ゾクッ

梓(あ、やばい)

梓(このまま黙ってたらまずい!何がまずいのか具体的に説明できないけど

  下手に「そうかもしれない」だなんて肯定すれば刺されるっ!!

  どうして刺されると思うのかは説明できないけどっ)

梓(でも…どう答えればこの状況を切り抜けられるだろうか…)

梓(落ち着け梓…

  ここは数々の修羅場を切り抜けてきた 偉大なる先人達の三択に頼ろう…)


3択― 1つだけ選びなさい

1.「まあ、そういうこともあるかもしれん」

2.宇宙人がきて助けてくれる

3.刺される 現実は非情である


梓(全然だめじゃない!!!ちくしょうっっっ!!!!!!!!!)


憂『黙ってちゃ解らないよ、梓ちゃん』

梓「えっ! ま、まあそういうこともあるかもしれないねっ!」

梓(私のばかっ!!)

憂『…だよね?』 ニコッ

梓「ひっ」

チャキッ

梓「えっ」

梓「ナイフ…?」

梓「う、嘘 冗談だよね!? 憂?

  冗談って言って!!」

憂『うん それ無理』


憂『 梓ちゃんを殺して お姉ちゃんの出方を見る 』

梓「い、 いやっ!」

サクッ

憂『…』

梓「…」

憂『…』 クスッ

梓「あれ」

憂『なんてね、冗談だよ 梓ちゃん』 ニコッ

梓「えっ わ、私刺されたんじゃ?」

憂『これ、玩具だよ~ 刃先…って言ってもプラスチックだけど

  ここを押すと引っ込むんだ、面白いよね』 カチャカチャ

梓「あっ… で、ですよねー は、はは…」

憂『梓ちゃん、あんなに焦っちゃって』 クスクス

梓(だって憂の目が本気だったし…)

梓「は、恥かしいなぁ ははは」

憂『ふふ』

梓「あはは…」

憂『ねえ、梓ちゃん』



憂『 何が そんなに 可笑しいの? 』

梓「ごめんなさい」


憂『まあいっか、梓ちゃん あんまり頭良くないもんね

  急に笑い出したりしても仕方ないか』

梓「さらっと酷い事言われたっ!」    


憂『とりあえず用件だけ伝えるね』

梓(始めから用件だけ伝えてくれればいいのに…

  とは思うものの憂が怖すぎて口に出せない…)

梓「それで、用件って何?」

憂『簡単なことだよ 頭の悪い梓ちゃんにもわかるくらいに』

梓「そ、そっかー それは良かった…」

梓(ムカつくけど憂が怖すぎて態度に出せない…)

憂『梓ちゃんにはね…


  もう二度とお姉ちゃんに近づかないで欲しいんだ』 ニコッ


梓「なんだそんなことかー」 ニコリッ


梓「ってなるわけないでしょ!?!」 ガタッ


憂『…』

梓「さっきから黙って聞いてたらおかしい事ばかり!

  流石に私も怒るよっ!それに唯先輩に近づかないでってどういう

憂『うるさい』

梓 ビクッ

憂『うるさいよ 梓ちゃん、 誰も梓ちゃんの意見なんて聞いてないよ

  勘違いしてるかもしれないけど コレはお願いじゃなくて命令なんだよ

  私のお姉ちゃんに近づくなって命令  ちゃんとわかってた?

  …ってわかってた訳ないよね だって梓ちゃんは頭が悪いんだし

  頭の悪い梓ちゃんにもわかるようにちゃんと説明してあげるべきだったね ごめんね

  簡単に言うとね 梓ちゃんがお姉ちゃんに近づかれると 迷惑なんだよ

  梓ちゃんがお姉ちゃんの近くにいると 迷惑、 あ、迷惑の意味はわかるよね?

  わかりにくかったら 邪魔 とか うっとおしい って言い換えてもいいんだけど  

  とにかくそう言う意味だから 理解してね、 それで梓ちゃんがどうして迷惑なのか

  って話だけど、 これは単純に 梓ちゃんの事が気持ち悪いからなんだよね』

梓「う うい…?」


憂『うん、気持ち悪い 梓ちゃんは気持ち悪いよ 梓ちゃんの何処が気持ち悪いかって言うとね

  ブサイクな顔が気持ち悪い、ブサイクなのに本人は可愛いつもりなのも気持ち悪い

  小柄で高校生とはとても思えない体が気持ち悪い、まるで小学生みたいな体つきが気持ち悪い

  髪型が気持ち悪い、日本人形みたいに長い黒髪が見ていると呪われそうで気持ち悪い、

  髪の色は黒光りしてて汚らしいし、ツインテールがゴキブリみたいで気持ち悪い

  言葉遣いが気持ち悪い、半端な敬語が気持ち悪いし、時々お姉ちゃんに馴れ馴れしいタメ口を

  きくのが気持ち悪い。 ギターがちょっと出来るからってお姉ちゃんに偉そうな態度をとるのも気持ち悪い

  だいたい梓ちゃんのギターって本当は大した事ないでしょ?

  ちょっと長い期間触ってたから素人より上手いってだけでしょ?

  それなのにお姉ちゃんに対して練習しろだとか何様のつもりなの? お姉ちゃん梓ちゃんのその態度

  すっごく迷惑がってたよ? ああ それにいつも偉そうなくせに時々人に媚びるところも気持ち悪いよね

  ちょっとお姉ちゃんに抱きつかれるからってあまり調子に乗らないでほしいな

  あ、ネコミミを嫌がってたくせに、わざと着けてお姉ちゃんの気を引こうとするのも気持ち悪いよね』


梓「…やめて」

憂『…他にもね』

梓「もうやめてよっ!!」

憂『やめてって?』 ケロッ

梓「わかったよ…わかったからもうやめて……」 ポロ ポロ

憂『わかったって?』 キョトン

梓「…ぐすっ」

憂『泣いてたってわからないよ?』 

梓「……憂の言ってた事聞くから…」 ポロ ポロ

憂『私の言ってた事?それってどれの事かな?ちゃんと言ってくれないとわからないよ?』

梓「ゆ…ぐすっ……唯先輩には……二度と…近づかないから……」

憂『…』


憂『そっか、わかってくれるんだね』 ニッコリ

梓「…グスッ」 コクリ

憂『ごめんね、梓ちゃん 意地悪な事ばかり言って…

  本当は梓ちゃんの事全然気持ち悪いなんて思ってないからね』


憂『 で も 約 束 は 守 っ て ね 』 ニコッ


憂『じゃあね、梓ちゃん また明日』 スタスタ

梓「…」



憂『あ、そうそう… もし約束を破ったら…』

チャキッ

梓「……包丁?」


憂『…えい』

机 スパーンッ!!


梓「え」

憂『次にこうなるのは梓ちゃんの番かも』 ニコッ


憂『じゃあね』

ガチャ バタンッ!


梓「…は、はは

  包丁で机をぶった切るとか人間業じゃない……よね」



ぶしつ!


ガチャ

梓「…」


律「おっ、梓遅かったな…って

  …どうしたんだ?」

紬「梓ちゃん…泣いてるの?」

澪「何があったんだ?」

梓「…うっ… ぐすっ 先輩……」


……

梓「って事があったんです……」

律澪紬「…」

律「……え、えげつねぇ」

澪「い、いくらなんでもそれは…」
紬「…じょ、冗談…よね?」

梓「私も…信じたくないです」


澪「疲れてるとか寂しいとか怒ってるとかそんなレベルの話じゃないよな…」

律「ああ、なんて言うか…その 病んでる? って言うのか……」

紬「一体憂ちゃんに何があったのかしら…」

梓「…」


律「包丁で机を叩き割るなんて人間業じゃあ無いよな…」

律澪紬「…」

律「なあ…」

澪「ああ…」

紬「みんなきっと同じ事考えたわよね…」


律「もしかすると今回も…」

澪「ああ…私達の周りで事件が起こるとき…」

紬「決まって関係してる事と言えば…」

梓「!! そ、それって」

律「そう…」


律澪紬梓「怪人!」



紬「…憂ちゃんが怪人になっちゃったって事かしら?」

澪「そうとは限らないんじゃないか?」

律「ああ、今回も、ゴボウ男の時みたいに人を操る力を持った怪人がいて

  そいつが憂ちゃんを操ってるのかも」

梓「でも……操られてる人が出せるものでしょうか……あの病気的な狂気を…」

澪「…あるいは…偽ケイオンジャーが現れた時みたいに、憂ちゃんの偽者が現れたのかも」

梓「……偽者……には見えませんでした… あの憂はたぶん本人です……」


律「て言うか、そもそも後から怪人化する事なんてあるのかよ、さわちゃん!」

さわ子「…うーん…そうねぇ」


梓「あ、さわ子先生いたんですか」

さわ子「いたわよ、最初から」

梓「すみません、ずっと静かだったので気付きませんでした」


さわ子「…そうね…私からは何とも言えないわ

    前例の無い事ではあるけど、全く無いとは言い切れない

    ただの人間がその身に怪人としての力だけを呼び出して、宿す事もあるのかもしれない…」

律「うーん、さわちゃんでもわかんないかー…」

澪「…」


さわ子「ま、どちらにしても怪人絡みと言うのは確かみたいだから

    あなた達の出番じゃない?」

律「それもそうだな」

さわ子「…」

律「…」

さわ子「…?」

律(あ、あれ?)

律(…)

律「よ、よし!みんな!怪人の手から憂ちゃんを助けに行くぜっ!」

澪紬梓「お、おぉーっ!」

さわ子「頑張るのよ~」 ヒラヒラ


……


ガチャ バタン

澪「…さわ子先生どうしたんだろう」

律「だよなー、いつもなら真っ先に…」

律声真似「ケイオンジャー、出動よ!!」

律「なんて言うのにさー」

梓「相変わらず無駄に上手い声真似ですね」

澪「なんだか冷たいって言うか……あまり心配してないのかな…?」

律「教え子の妹をか?

  そんな事無いって、今日はたまたまだろ」

律「ムギもそう思うよな?」

紬「えっ…うん」

律「? ムギ、どうしたんだ?」

紬「ちょっとさわ子先生に聞きたい事があったんだけど…聞きづらくって…」

梓「聞きたい事ですか?」


紬「うん、今日ドアちゃんがいなかったでしょ…それで」

律「そう言えばドアの奴、何処いったんだろうな~」

澪「部室にいると思ってたけど…

  今日来た時にはいなかったな、部室のドアも新しいドアになってたし」

律「喋らないやつにな」

梓「最後に一緒に居たのはさわ子先生ですよね」

紬「うん、だから何か知らないのかなって思ったの」


紬「せっかくドアちゃんの分もお菓子も持ってきてたんだけど…」

梓「ああ、1つ余ってたのはそう言う事だったんですね

  てっきり私、唯先輩の分かと…」

澪「唯はしっかり食べてたよ」

律「ああ、お菓子だけはしっかり食べて帰ったな…」


律「って憂ちゃんの件が怪人の仕業だとすれば、唯の奴も危ないんじゃないかっ!?」

澪梓紬「!!」

澪「確かに今の憂ちゃんの様子だと唯も危ないかも…」

律「と、とにかく私 唯に電話してみるな」 ピ ポ パ

携帯 …

律「…あっれ…電源入れてないのか?」

澪「…メールしてみたらどうだ」

律「そうだな」

ポチポチ

律「送信っと」

梓「唯先輩、大丈夫でしょうか…」

紬「メールに気付いてくれればいいのだけど…」

ブー ブー

律「返信はやっ!」

澪「唯は何て?」

律「えっと…」


律「あ、あれ? あの唯に送ったはずなのに

  MAILER-DAEMON って方から返信が来たのですが…?」

澪梓紬「…」

澪「あ、アドレスが変えられてるっ!?」

紬「憂ちゃんの仕業かしら…」

梓「だとしたら怖すぎるんですが…」


ブー ブー

澪「ん?またメールか?」

梓「あ、私ですね」

梓「えっと…

  ……憂からです………」

律「このタイミングでか!?何か怖いな…」

紬「それで…何て?」


[From]憂
[Sub]
===========
梓ちゃん先輩達に話しち
ゃったんだね

ううん、いいんだよ別に
私とお姉ちゃんの邪魔さえ
しなければ



けど余計な事はしないでね


PS.月の無い夜に1人で
出歩く時は、背後にお気を
つけて

             END


梓澪律紬「…」


梓澪律紬「憂(ちゃん)、こわっ!!!!」


22
最終更新:2010年10月15日 20:07