律「ムギ……」
りっちゃんが心配そうに声を上げた
唯「大丈夫、眠ってるだけ」
唯「これで……最後だよ……」
そうこれで全員捕まえた……
目的は終わり……
これからどうしよう
私の本心は……?
紬「…………」
私は眠っているムギちゃんの手足を縛り、口にガムテープを貼りつけた
私はガムテープをもう一切れちぎった
紬「すぅ……すー……」
それをムギちゃんの鼻に持っていく
唯「何を……してるんだろ私……」
そのテープをグシャグシャに丸めると、私はムギちゃんを引きずって2階に上がった
ムギちゃんを監禁するのはここにしよう
2階の使ってない物置
唯「少しの間……我慢してね」
やがて日は落ちて夜になった
私は行動を開始する
ガチャ
ドアを開けて、電気のスイッチを押す
紬「んっ……!?」
唯「あ、ムギちゃん起きた?」
ムギちゃんは眩しそうに私の姿を見上げた
唯「ムギちゃんだけ一人部屋なんだよ~、寂しい?」
紬「…………」
ムギちゃんは何も答えなかった
あ、口を塞いでるから答えたくても答えられないのか
唯「大声だしたらSPの人が来るとかないよね?」
紬「んっ! んむっ!!」コクコク
ムギちゃんは必死に頷く
どうやら本当みたいだ
まあ、SPが来ようが関係はないんだけどね
唯「ごめんねムギちゃん、苦しかったよね」ビッ
紬「ぷはっ……」
唯「今、どんな気分?」
紬「…………」
唯「あれ? いつものムギちゃんらしくないよ~」
紬「うっ……」
唯「え!?」
私は驚いた
ムギちゃんが泣いちゃったから
紬「ひどいよ唯ちゃん……」
唯「あ、あ……」
紬「私……監禁なんかされたくない……」
唯「ムギちゃん泣かないでよ……」
紬「りっちゃんだけでも……助けてあげて」
唯「ごめん……」
私は立ちあがると、部屋を出た
紬「唯ちゃん……?」
私は一階に下りるとまず台所に向かった
唯「ふふ……」
棚にあった果物ナイフを手に取ると、リビングに向かう
梓「あ…唯先輩……?」
まだ眠そうな瞳であずにゃんがこっちを見た
唯「おはようあずにゃん……」
私はあずにゃんに近づく
梓「それ……ナイフ!?」
あずにゃんは私の持っているナイフに気づいたようで顔が青ざめた
唯「そうナイフだよ、簡単に刺さる」ブスッ
梓「ひっ……」
私はあずにゃんがすがっているソファにナイフを突き刺してみせた
唯「ね?」
梓「それで……私を刺すんですか……?」
唯「さあ、どーでしょう」
律「唯……そんなことしてみろ……ぶっ殺すからな!」
そこでりっちゃんが声を張り上げた
少しは元気になったみたいだね
良かったよ
唯「へえ……りっちゃんはまだ私に逆らう気なんだ?」
律「うるせえ……梓に手を出すな!」
唯「ふん……」
私は鼻で笑うと、あずにゃんに近づいた
梓「ウソ……ウソですよね!?」
唯「どーでしょう」
梓「あんなに私のこと可愛がってくれたのに……」
唯「うん、今でも可愛いよあずにゃん」
梓「本気……なの……?」
唯「梓……」
梓
一度でいいからそう呼んでみたかった
でも……
梓「分かりました……」
唯「あずにゃん?」
梓「約束して下さい、私が刺される代わりに みんなを解放するって」
律「梓!」
梓「約束して下さい……」
唯「健気だねえ……」
私は梓を抱きしめた
唯「本当に……終わりだよ!!」
私は大きくナイフを振り上げた
律「駄目だ唯!!」
りっちゃんが止めたけど、もう私は止まれなかった
律「やめろおおおおおお!!」
ドスッ!
梓「……っ!!」
憂の部屋
憂「今の声……律さん!?」
和「ねえ憂」
憂「な、何?」
和「さっき唯が部屋を出る直前、何言われたの?」
憂「もうすぐ終わるって……」
和「やっぱり……」
憂「和ちゃん?」
和「急いだ方がよさそうね」パラッ
憂「和ちゃん!? ロープ……」
和「さっき唯が緩めてくれたの」
憂「そ、そうなの……?」
和「ホラ、憂も」
和は憂の手足を縛っていたロープを解いてやった
和「唯……」
リビング
ポタ……ポタ……
血の臭いがリビングに充満する
梓の体はすでに血に塗れていた
梓「あ……ああ……」
唯「…………」
律「唯ぃ!! てめええええ!!」
梓「唯先輩……やだよ……」
律「は? 梓!?」
律は目を疑った
確かに梓の制服は血まみれだった
律「まさか……!?」
その血の出発点は紛れもなく唯だった
梓「なんで……私を刺すんじゃなかったんですか!?」
律「梓! 唯は大丈夫なのか!?」
律が叫ぶ
梓は涙をいっぱい溜めながら答える
梓「分かり……ません……唯先輩……自分でお腹刺して……」
律「くそぉ! どうすりゃいいんだよ!!」
唯「あ……がっ……」
梓「唯先輩!?」
唯「あ……」
えへへ……
最後にドッキリしてみました
あずにゃんは驚いてくれたかな……?
唯「ごべんねえ゛……」
血が喉の奥からどんどん出てくる
うまく喋れないや……
唯「うああ……痛いよお゛……」
やっぱり痛いや……
ちょっと我慢できないかも……
唯「うえええええええん!! 痛いよおおお!!」
唯「痛い痛い痛い痛い痛いよおおおおお!!」バタバタ
唯「りっちゃん助けてよおおおお!!」
私は泣きながら訴えた
律「唯落ち着け! 暴れたら傷口が……」
唯「死にたくないよお……誰か……」
だんだん意識が遠のく
このまま気絶したら、もう戻ってこれない気がする
唯「うわあああん!! 痛いよおお!! 死にたくないーっ!!」
覚悟あったんだけどなー
死ぬのって……やっぱ恐いや……
律「唯……いやだああああ!!」
梓「唯先輩!!」
唯「…………」
ごめんね……みんな……
……
唯「…………え?」
ここは……どこ?
白い天井……
ベッド……
唯「あ……生きてるの?」
和「当然でしょ」
唯「和ちゃん……」
和「まったく……自分で自分を刺すなんて本当に気が狂ってるわね唯は」
唯「そっか……私助かったんだ」
唯「そうだ、みんなは?」
和「律みたいに弱ってた子はこの病院よ」
唯「あーあ……逃がしちゃったか……」
和「その割には嬉しそうね?」
唯「そう?」
私の笑顔の意味はたぶんもう分かってるよね
そうだった、りっちゃんのとこに行かないと
唯「りっちゃん……」
律「あ、唯……怪我大丈夫なのか?」
唯「うん、思ったより深くなかったから」
律「ふーん……それで、どうした?」
唯「覚えてるくせに」
律「ホントにやるのか?」
唯「当然だよ、けじめつけるもん」
律「そっか……じゃあ、行くぞ」
唯「来い!」
ドゴッ!!
私はりっちゃんに思い切り顔面を殴られた
唯「……っ!!」
律「約束だぞ? もうこんなことするなよ?」
唯「了解であります! りっちゃん隊員!」
私は笑顔で答える
つーか鼻血出てきた……ふふ、りっちゃん容赦ないなあ
そして一ヶ月後……
律「唯―?」
机に突っ伏してる私にりっちゃんが声をかける
唯「あ、りっちゃん……」
律「部室行くぞっ!」
唯「あーん、待ってよりっちゃん!」
澪「やれやれ……相変わらずだな唯は」
紬「そこが可愛らしいけどね」
唯「あ、あずにゃ~ん!」
部室に行く途中、あずにゃんたちと遭遇
純「唯先輩、今日も変わりませんね」
憂「お姉ちゃん、そんなに走ると転んじゃうよ?」
梓「そうですよ! まだ抜糸したばかりなのに……」
唯「おっと、それ関連の話はなしだぜ? 子猫ちゃん」
梓「あ、そうですね……」
唯「じゃあ部室で会おう!」ダダッ
そうだ、これが
これが私の世界だ
夜、平沢家
唯「憂~、大好き!」
私は憂に抱きついた
憂「わっ、お姉ちゃん!?」
唯「憂は私のモノ~」
憂「もう……」
唯「今日は一緒に寝よ?」
憂「ええ~……また睡眠薬嗅がされでもしたら、お姉ちゃんのこと嫌いになっちゃうなあ」
唯「しどい……全部処分したのに」
憂「あ、ごめんお姉ちゃん 冗談だって、一緒に寝よう」
唯「えへへ~、憂大好き!」
憂「じゃあお風呂入ってきて?」
唯「ラジャー!」
お姉ちゃんはお風呂場に駆けて行きました
可愛いなあ
憂「お布団の準備しようかな……」
私はお姉ちゃんの部屋に入りました
憂「ん? 何だろこれ」
その時、私はお姉ちゃんの机の引き出しから何かが出ているのを見つけました
憂「写真?」
それを手にとって見てみました
憂「これ……って……!?」
私は愕然としました
そこに映っていたのは、手足を縛られ口をガムテープで塞がれた私の写真だったんです
憂「お姉ちゃん……?」
私は机の引き出しを開けました
すると律さん、澪さん、紬さん、和ちゃん、梓ちゃん、純ちゃん、全員の写真が何枚も出てきました
こんな写真いつの間に……?
憂「え……?」
不意に、背後に人の気配を感じ振り返ると
唯「…………見たね」
後ろにお姉ちゃんが不気味な笑顔を浮かべながら立っていました……
唯「あははは……」
最終更新:2010年10月19日 01:15