澪(紬・・・?)


紬「じゃあワインよろしくね聡」


澪(聡・・・?)


澪「おい聡とムギ、なんでおまえたち呼び捨てなんだ?」

聡「な、なに言ってんだよ澪さん」

紬「澪ちゃんどうしたの?」

澪「いや、どういうこと?」

聡「俺たち付き合ってるじゃん。ていうか澪さんに一番最初に報告したじゃん!」

紬「そうよ澪ちゃん。聡は今でも澪ちゃんに感謝してるのよ。私もだけど!」

聡「あの日澪さんが言ってくれた言葉が俺を変えたんだよ!ありがとう!」

澪「そ、そうか!よかったな二人とも。幸せにな・・・」

聡「ありがとう!じゃあ飲もうか紬」

紬「そうね」


そういうと二人は向こうへ行ってしまいました。
私の知らないうちにいろいろなことが変わってる・・・
私だけが取り残されてる・・・?



さわ子「ねえ澪ちゃん?あなたの行動が未来を変えたの」

澪「まさか・・・私が1人で未来を変えてしまった・・・」

さわ子「変われてないのはあなただけのようね」

澪「う・・・・」


先生の言葉は妙に胸に突き刺さった。
聡はすごいな・・・私にはない勇気を持ってる・・・
でもその勇気をあげたのは自分・・・あげられる勇気なんてないはずなのに・・・

澪「ちょっとみんなと話してきます」

さわ子「そう。じゃあまたあとでね」

澪「はい」

澪(もう過去に戻るのやめようかな・・・何にも変われないや)



憂「あ!澪さんお久しぶりです!」

和「澪!私たち今来たとこなの」


懐かしい顔ぶれです。なんだかホッとしました。

澪「憂ちゃんも和も久しぶり」

澪「そして憂ちゃん、お姉ちゃんの結婚おめでとう」

憂「ありがとうございます!お姉ちゃんが幸せになってうれしいです!」


ついつい心にもないことを口走ってしまった。
やっぱり心から唯の幸せを喜べない。
こんな自分が嫌でしかたない・・・

憂「お姉ちゃん凄くしあわせそうです!」


ゴメンね憂ちゃん、私は唯の幸せを奪おうとしていたの。


和「澪、先生が澪のほうを見てるわ」

澪「あ、じゃあ私戻るね」




さわ子「澪ちゃん戻るの?ラストチャンスだけど」

澪「迷ってます・・・」

さわ子「あ、ひとつ言い忘れてたことがあったわ」

さわ子「写真を撮らなければ、どうなるか?って考えなかった?」

澪「はい。ちょっとだけ」

さわ子「写真を撮るのを妨害すると、そのまま時間がすすんでこっちには戻ってこられなくなるわ」

澪「え!?」

さわ子「つまり澪ちゃんが戻った過去が現実となるの」

澪「それって・・・」

さわ子「そう。澪ちゃんがそれを望めば、澪ちゃんは時間を操れる」

澪「それって凄いじゃないですか!」

さわ子「そうね。りっちゃんに想いを伝える時間が増えるわね」

さわ子「これは澪ちゃんの判断に任せるわ。ただし」

澪「ただし・・・?」

さわ子「いままで過去に戻った人は何人もいたけど、一度もそうなったことはないわ」

澪「なんでですか?」

さわ子「それは澪ちゃんが考えるの」

澪「私が・・・?」

さわ子「そうよ。さて、そろそろ時間よ」

さわ子「戻るの?戻らないの?」

澪「私・・・写真を撮らせません・・・向こうで暮らします」

さわ子「そう。それは澪ちゃん次第よ」

澪「先生・・・向こうでもよろしくお願いします」

さわ子「うん。よろしくね」



私は決心しました。もう一度高校の卒業式から人生をやり直すことを。
唯、ゴメン。私は幸せになりたい!だから私は過去に戻る!
そして今この場にいるみんなありがとう!過去でもよろしく

さわ子「じゃあ行くわよ澪ちゃん!」


澪「はい!ふわふわタイム!!!!!!!!!!!!!!」





澪「うわあああああああああああああああああああああああああ」

澪「ん・・・・」

紬「澪ちゃん?どうしたのボーっとして」



これはたしか・・・卒業式の前の日だ。たしかムギとマックに来たんだよな。


澪「あ、ゴメンゴメン。ポテト一本ちょうだい?」

紬「いいわよ。あ、そういえば今日はりっちゃんと唯ちゃんが付き合ってからちょうど三ヶ月ね」

澪「へ~」








澪「え・・・・?」

澪「ムギ、今なんて?」

紬「え?だからりっちゃんと唯ちゃんが今日で三ヶ月って」

澪「だって・・唯が告白するのは卒業式だよ?」

紬「何言ってるの澪ちゃん?ふふふ・・おかしいわ」




私は頭が真っ白になりました。おかしい・・何かがおかしい・・・
私は先生なら何か知ってるかもしれないと思い、学校へ行くことにしました。


澪「ごめんムギ・・・今から行くとこあるから、じゃ!」

紬「ちょ、澪ちゃん!?」


私はすぐに走り出しました。

あたりはもう真っ暗でした。学校に着くと職員室だけ明かりがついています。
そして職員室に入ると、待っていましたという感じにさわ子先生だけがいました。


澪「はあはあ・・・先生・・・」

さわ子「やっぱり来たわね澪ちゃん」

澪「先生・・・何かがおかしいんです・・・」

さわ子「何が?なにもおかしくないわ?」

澪「え・・だって唯と律がもう付き合ってるんです、本当なら卒業式の日ですよ?」

さわ子「何もおかしくないじゃない。これが現実よ・・・」

澪「え・・・違いますよ」

さわ子「澪ちゃん。あなた自分がしたこと覚えてないの?」

澪「え・・・?」

さわ子「あなた一年の学園祭の日、りっちゃんを抱きしめたじゃない」

澪「はい・・・それが?」

さわ子「あのあと唯ちゃんが入ってきた、そのとき唯ちゃんは気づいてしまったの」

澪「え・・?何にですか・・?」

さわ子「りっちゃんのことが好きってことに」

澪「!!!!!!!!!」

さわ子「つまり澪ちゃんの行動が、唯ちゃんがりっちゃんを好きっていう気持ちを本来より早く気づかせてしまったの」

澪「つまり・・・」

さわ子「そう。きっとその分告白も早まったってところね」

澪「そんな・・・なんで・・・」

澪「私のあのときの行動は間違っていなかったはずです!」

澪「あんなに勇気を出したのに!なんでこんな悲惨なことになるんですか!」

澪「だったらあんなことしなきゃよかった!」

さわ子「もっと自分の行動に責任を持ちなさい」

さわ子「それに勇気を出したって?あなたがいつ勇気を出したのよ」

澪「私だって・・・」

さわ子「好きっていう二文字も言えないのに?」

澪「・・・・」

図星でした。私は勇気なんて出してない・・


さわ子「ねえ澪ちゃん。卒業式って凄い特別な日だと思わない?」

澪「え・・・?」

さわ子「多分りっちゃんを奪えるのは明日しかないわ」

澪「なんでですか?」

さわ子「卒業式だから。ふふふ」


そういって先生は微笑みました。先生はこのときもう気づいていたのでしょうか?
チャンスが明日しかないということに

さわ子「それに澪ちゃん、とても大きな決断をしてると思うけど」

さわ子「その決断よりも、好きって一言言うほうが遥かに簡単だから・・・」



そう。私は過去で生きるという決断をしたんだ。好きって言うことのが簡単?
そのときの私にその意味はわからなかった・・・

そして卒業式の日を迎えた。
私は今日時間を操るんだ・・・
そう思いながら学校に着いてしまった。

澪「この日ももう二回目か・・・」

澪「私は今日からこっちの世界で生きていくのか」


すると唯と律は一緒に登校して来ました。
どうやら私の行動は本当に影響しているみたい。

唯「あ~澪ちゃん!」

律「あ、澪・・・」


なんだか律はさびしそうな顔をしていた。これが先生が言ってた卒業式の魔力なのか?
律を奪えそうな気がした。

私は勇気を振り絞った。

澪「律。私は律のことが・・・」















その瞬間唯の不安そうな顔が目に入って言葉がつまった。

律「え?なんだよ澪、言えよ」


澪「その・・・」





唯を見ると言葉が出てこない。何やってんだ私は・・・
こいつから奪うためにここに来てるっていうのに・・・
そんなに悲しそうな顔をするなよ・・・


澪「いや・・・なんでもない・・・」





言えずに終わった。

卒業式を終え、憂ちゃんや梓に祝福され、校門まで来た。

和「もう高校卒業か。早かったわね」

紬「そうね!でもすごく楽しかったわ!」



このまま終わってしまうのか。鍵を握っているのは私だ。

さわ子「・・・」

憂「あ!みなさんで写真とったらどうですか!?私撮りますよ!」

和「いいわね。みんなで撮りましょ!」

律「そうだな。思い出だ!」

澪(ここで本当に終わってしまうのか・・・)

唯「みなさん!いつもこんな私に付き合ってくれてありがとうございました」

唯「ここにいる誰か1人いなくても今のわたしはありません」

唯「ほんとに・・・ほんとに・・・」

律「泣くな、唯」

紬「唯ちゃん。私たちも同じ気持ちよ」

和「唯・・・」



私はライバルであるはずの唯を抱きしめた。

澪「唯・・・ごめんな・・・ごめんな・・・」


涙が流れてしまった。不覚だった。
私はこんなに純粋で仲間思いの子から幸せを奪おうとした。
結局自分のことしか考えてなかったんだ。


唯「え・・・澪ちゃん何で謝るの?澪ちゃん何も悪いことはしてないよ?」



自分を殴ってやりたかった。




私はこのとき気づいたんです。

誰かが幸せになれば誰かが傷ついてしまう。
私が幸せになれば唯が傷つく。
それなら私が傷つくほうがいいや。
私は・・・私は本当の自分のが好きだ!


さわ子「澪ちゃん。成長したわね」



私は現実に戻ることを決めた。

憂「じゃあ気を取り直して・・・いきますよ~!」


これで過去の私とはお別れだ。
いまさら足掻いたってきっと未来は変わらない。
そう思ったから私は最後にこう言ったんです。


憂「いきま~す!」

澪「なあ、律」

律「ん?なんだ?」

澪「私、律のこと好きだから」


パシャ



澪「うわああああああああああああああああああああああああ」


ふ~わふわ
ふ~わふわ
ふわふわ
ふわふわ
ふわ~ふわ

澪「ん・・・」

さわ子「おかえり澪ちゃん。やっぱり帰ってきたわね」

澪「先生・・・」

さわ子「よくがんばったわ」

澪「私・・・先生が言っていたことがわかりました・・・」

さわ子「成長したのよ澪ちゃんは」

澪「私、過去に戻ったことは後悔してません」






ふと律のほうを見た。

そこに広がった光景は、前となんら変わりはなかった。
律と唯の幸せそうな笑顔。
聡とムギは付き合っているままのようだ。

さわ子「ねえ澪ちゃん。これでよかったの?」

澪「・・・」



私は少し沈黙をおいて答えました。



澪「満足です!後悔はありません!」

どうやら先生の話によると、私が律に告白した後、律はただニッコリと笑っただけだったそうだ。
どうりでこの写真の律がいい笑顔なわけだ!
律は奪えなかったけど私に後悔はない。
この想いを伝えられたのだから!
今は心から二人を祝福できる。二人ともお幸せに!



澪「先生。私1人取り残されてるような気がしますけど、後悔はありません」

さわ子「あら澪ちゃん、あなたは取り残されてなんかないわ。変わったの」

澪「え・・・?」



さわ子「だって澪ちゃん、今すごくいい顔してるから!」







fin




最終更新:2009年10月17日 19:16