――――
3時間後 純の部屋
ボォーンボォーンベボボボォーン♪
純「ん」
純「メール……憂か」パカッ
純「なになに」
憂『ワクワクしちゃう計画とかグダグダすぎる展開とか』
憂『ぜんぶホッチキスでとじてやったぜ!!』
純「……いみふ」
純「あ、まだ長いな……」カチカチ
憂『というわけで、お姉ちゃんの彼女になりました
平沢憂です♪』
純「ええっ!」
純「どういうことなの……」カチカチ
憂『純ちゃんには説明してなかったよね』
憂『私と紬さんが練った今回の計画――』
憂『「めざせポケモンマスター作戦」のこと』
憂『おかげで結構な迷惑をかけちゃったと思うから、今ここで謝罪しておきます。ごめんなさい』
純「いえいえ」
憂『この作戦は、私がポケモンになるという形で逆にお姉ちゃんをゲットするという』
純「はいはい……」カチカチ
憂『本来なら、キス、ディープキス、クンニリングス、セックスと段階を』
純「はいはいはいはい」カチカチカチカチ
憂『まぁそれだけお姉ちゃんが魅力的って事だね』
純「やっと終わりかな……?」
憂『あまったマスターボールは純ちゃんにあげるよ』
純「……なんですと?」
憂『途中で計画を大幅に縮めちゃった私が言うのもなんだけど』
憂『この作戦は効果抜群だよ』
純「……」
憂『特に、疑いを知らない人にはね』
純「疑いを知らない人……」ドクン…
純「だったら……私は」
ドクン…ドクン…
憂『どう使うかは、純ちゃんの自由だけどね?』
純「……」
ドクン……
純「……」
カチカチカチ
純『おめでとう。あと、ありがとう』カチカチ
純『有意義に使わせてもらうよ』カチカチッ
純「っと」ポチッ
純「……さあて」ムクリ
純「そうと決まれば、このままじゃいけないね」
純「……梓はたぶん、私を捕まえてはくれない」
純「憂が喋らなくなって、けっこう悲しんでたからね」
純「私にボールを投げてくれるなんてことは有り得ないと思う」
純「と、なると……マスターボールを投げるべきは私自身」
純「……」ポクポクポクポク
純「そうだっ」チーン
翌朝 音楽準備室
梓「お早うございま……」ガチャ
憂「梓ちゃん、大変だよ!」
梓「……憂? 何で……いや、それより今……」ブルブル
憂「梓ちゃん? どうしたの、しっかり!」
梓「ういいいぃぃー!!」ブワァッ
憂「えええええっ!?」
――――
憂「……ってわけで、もう私はポケモンじゃないんだよ」
梓「そ、なんだ……よかったぁ」グシュグシュ
憂「梓ちゃん鼻水……」
憂「って、それよりも! 梓ちゃん、聞いて!」
梓「え……?」
憂「ううん、見てもらった方が……梓ちゃん、水槽を……」
梓「トンちゃんの……?」
プクプク…
梓「……あ、あれっ!? トンちゃん? トンちゃん!?」
梓「う、憂! トンちゃんはどこ!?」
憂「それが……朝来たら、水槽にこんな紙が貼られてて」ピラッ
梓「これは……」
『うるわしき軽音楽部諸君よ』
『貴女がたの後輩であるスッポンモドキは我が掌中に在る』
『この意味が分かるのなら、放課後
中野梓を屋上へ来させよ』
『ただし、必ず一人でだ。そうでなかった場合、一切は残響である』
梓「くっ……トンちゃん!」グシャッ
憂「梓ちゃん、どうしよう……」
梓「……ふー」
梓「憂……私に何かあったら、私のこのムスタングは任せるね」
憂「梓ちゃん……行くの?」
梓「行くしかないよ。私にしかトンちゃんは救えない」
憂「……」
梓「ごめんね、憂。だけど、私には……軽音部のみんなが一番なんだっ……」
憂「う、うん。そっか」
憂「頑張ってね、梓ちゃん」
梓「うん、任せて」
梓「誰とも分からない人に……私たちの軽音部を壊させたりしない!」
梓「……トンちゃん待ってて……必ず助けるから」ボソッ
憂「……」
――――
放課後 屋上
純「……」シュッ
純「……」パシッ
純「はぁ……ったくもう」
ギ…キィ
純「……来たね」フッ
梓「純……? 何で、ここに……」
バタァン
純「愚問すぎ」
純「私がここにいる理由……梓がここに来た理由に他ならないよ」
梓「純……」ギリ
梓「トンちゃんを、どこへやったのっ」
純「ふふ……うーん、教えてほしい?」
梓「……その為にここに来たんだよ。どうなろうと覚悟はできてる!」
梓「純っ! トンちゃんの居場所を教えてっ!」
純「……読解力ないのかなぁ」ポリポリ
梓「は……?」
純「言ったよねぇ。我が掌中にあり、ってさ」スッ
梓「マスターボール……まさか!?」
純「悪いねぇ、梓。軽音部の後輩を取り戻しに来たんだろうけどさ」
純「あんたの後輩、もう私のポケモンなんだ」
ヒョオオ…
梓「トン、ちゃん……」
梓「そんな……嘘……」
純「……返してほしい?」
梓「返してよ! 大事な部員なんだから……」
純「でもさー。タダじゃあだめだよね」
梓「お金ならいくらでも払うよ! だから」
純「ノーンノーンノーン。お金じゃないよ」
純「ポケモンって、交換するものでしょ。相手のポケモンが欲しいならさ……」
梓「……どういう」
純「とても単純な話」
純「トンちゃんと梓を交換しようってこと」
梓「っ……」
梓「私に、純のポケモンになれってこと?」
純「いやぁ、私は別にどっちでもいいよ。私は手に入れたトンちゃんをポケモンとして好きにするだけだし」
梓「そんなのっ……ぜったいぜったいだめっ!!」
梓「はー、はー……」
純「……」
純「じゃあ、決まりだね?」カチッ
ボフン
梓「トンちゃん……」
純「さ、その子は私が軽音部に届けてあげるから」
純「梓……おとなしく掴まろうか。ま、暴れても絶対逃げらんないけど」
梓「……わかった」スゥ
梓「……にゃん」
純「……」シュッ
ポシュウ
純「あずにゃん、ゲットだね」
音楽準備室
律「ありがとなー、佐々木さん」
純「いえいえ。それじゃあ失礼します」
ガチャ
澪「そうだ、大木さん。梓を見てないか?」
純「梓……ですか?」
純「ごめんなさい、分からないです」
澪「そうか……。ありがとう」
純「では、また」パタン
テク テク
梓『にゃーん』
純「なんだね、あずにゃん?」
梓『……うにゃあ』
純「梓、なんて子は知らないよ?」
純「あずにゃんなら知ってるけど」
梓『にゃあっ……!』
梓『……にゃ』
純「分かればよろしい」
純「さーて、部活も休みだし帰りまっかー」
梓『にゃーん』
テク テク
――――
純の部屋
シュッ ボムッ
梓「にゃあ……」クタッ
純「ボールの中ってけっこう疲れるのかな」
純「まぁ、どうでもいっか」
純「じゃ、あずにゃんはここで待ってて」
純「私は着替えてくるから」
梓「にゃーん」
ガチャ バタン
純「……」
純「えーっと」
純「どうしよう……」
純「いつまで経っても梓が突っ込まないから、勢いで捕まえてきちゃったけど……この先なんも考えてないよ」
純「ちょっとコントしたかっただけなのに、梓ってば大マジなんだもん!」
純「あ゙ーアイツもうほんっと手つけられない!」
純「ここは私がトレーナーとして」
純「人の言うことを考えなしに信じてばっかじゃ危ないんだってことを教えてやろう!」
純「……よ、よーし! やーるぞー!」
ガチャ
梓「にゃあー」
純「おーまたっせ」ヒョコッ
梓「にゃ……にゃああっ!?」ワタワタ
パタン ガチャリ
純「おー、どうした梓、そんなに慌てて」
梓「う……にゃ」カアッ
純「なーに赤くなってんのさ。下着姿くらい、学校でしょっちゅう見てるでしょ?」
純「それとも、もう何されるか分かってるのかな。フフ、鍵なんてかけたらそりゃそうか」スタスタ
梓「にゃ、うみゃあ……」プルプル
純「震えちゃって。可愛いね、梓」
純「それとも、歓喜にうち震えてるとか?」
梓「にゃああ、にゃああっ!」
純「どっちでもいいか」
純「ねぇ、梓ぁ……私、ずっと梓が欲しかったんだ」サワッ
梓「にゃ、ふっ」
純「こうやって梓を私のポケモンにして……さっ」ドン
梓「みゃあっ!」ドサッ
純「私の好きにできるなんて……すごくうれしい」
ギシィッ…
純「……」
梓「うみぃ……」カアッ
純「梓って、近くで見るとこんな綺麗な顔してるんだね」
純「髪も気持ちいい……」サラッ
梓「にゃうう……」
純「じゃ、梓。キスするよ」
梓「……」コクッ
梓「……ん」
純「……」
純「ふ、ふふっ」
純「梓のキス顔、かわいいっす」チュム
純「……にぇー?」
チュッ
梓「にうう……」
純「え。へ? 何? あれ?」
梓「じゅ、じゅんっ!」ガバッ
純「なるほどぉーっ!!」
純「ふん、くっ……」グイィ
梓「にゃああっ……」グググ
純「ちょ、ポケモン……力強すぎっ」グ…
梓「にゃんん♪」チュム
純「んむううぅっ」
純「ってえい!」ドンッ
梓「ひゃんっ」
純「……」ハァ…ハァ…
純「……」ゴシッ
純「何してんの? 梓」
梓「にゃ」
純「もういいよ、それ」
梓「……そ」
梓「なにしてんの、って」
梓「純が言いだしたんだよ」
梓「キスするって言ったから、キスした……」
純「それ、だけ?」
梓「ううん。それはただのきっかけだよ」
梓「純のことが好きだからキスしたんだ」
純「……」
純「マジっすか……」
梓「うん、本当」
梓「ポケモン……純がトレーナーなら、なりたいって思った」
梓「なれて嬉しいって思ってる」
純「……素直に気持ちぶつけすぎっしょ」
梓「だって……」
梓「ここだけは、絶対嘘つきたくないって思ってたから」
純「……」
純「その、何だろう」
純「……ゴメンッ!」
梓「いいって、トンちゃんは約束通り帰してくれたし」
梓「それより、何より、私は……」
梓「純が好きって言ってくれたことが、嬉しいよ……」
最終更新:2010年10月22日 21:22