澪「ちょ、おい唯!」

部長「・・・」

唯「みなさんは何のために部活やってるんですか?私は楽しいからです。
  楽しいからやってるんです。」

澪「おい唯失礼だろ!」

部長「平気よ。続けて?」

唯「部長さんが企画の話してるとき、すごく疲れた顔してました。
  企画だって楽しむために最初は始まったんですよね?
  楽しそうだから文芸部さんも参加したんですよね?」

部長「・・・ええ」

唯「でも今楽しくなかったら意味ないじゃないですか。せっかく毎週集まってるのに、
  せっかく6こもクラブが集まってるのに・・・」

澪「唯・・・」

唯「つまらないのに部活やるなら、家でゴロゴロしてたほうがずっといいです・・・」グスッ

部長「・・・」

唯「映画部さんもアニメ研さんも・・・
  他のがみんながつまらないのに企画を続けたいなんて思ってないですよ・・・」

部長「そうね・・・どっちも意地の張り合いになってると思うわ」

唯「そんなの・・・せっかくの部活なのに・・・うぅ」

部長「唯ちゃんだっけ?ありがとう。私も馬鹿だったわ。楽しむために部活やってるんだもん
   ね。いつのまにか手段と目的が混ざっちゃってたわ」

唯「うう・・・ひっく」

部長「もう、なんであなたが泣いてるの?・・・
   私、今度の企画会議でちゃんと話してみるわ。
   それで企画がなくなるかやり直すかはわからないけど、
   みんなが満足がいくまでちゃんと話す。部活を楽しむために・・・ね」


唯「あ、ありがどぅ・・・」グスッ

部長「お礼を言うのは私の方よ。唯ちゃん。秋山さんもね」

澪「あ、はい・・・ってあれ、律は?」

部長「あのおデコの子?あの子ならさっき出て行ったけど。
   なんか電話がきたみたいだったわね」

澪「そうだったんですか、ありがとうございます。そろそろ私たちも失礼します
  今日はありがとうございました」

部長「こちらこそ。またね」

澪「ほら、唯行くぞ」



音楽室

ガチャ

澪「ただいま」

唯「うう・・・グスッ」

紬「おかえりなさい」

律「おか・・・って唯どうしたんだ?澪に泣かされたのか!?」

澪「違う!ていうか律どうして急にいなくなったんだ?」

律「ムギから電話来たんだよ。部室に誰もいないけどいまどこーって?
  で、唯はどうしたんだ?」

澪「実はかくかくしかじかで・・・」


律「そんなことがあったのか・・・唯、見なおしたぞ!」

唯「えへへ・・・」

澪「ムギにはあのこと説明したよね?」

紬「ええ、聞いたわ。大変なことになったわね。私も急ぐから」

澪「ムギはここ最近ずっと本読んでるけど、なにをするつもりなんだ?」

紬「投票の理論についていろいろ調べてたの。今日仕上げて、明日には話せると思うわ。
  私なりの結論を」

律「そっか。期待してるぞ。明日は土曜だから朝から集合だな!
  梓はジャズ研の子と接触するから4人だ」

唯「うん。また明日ね」


投票まで あと5日



翌朝 土曜

梓「いよいよこの日が来たか・・・」

純「おーい!」

梓「あ、おはよう」

純「おはよう♪」

梓「いい天気だねー。じゃあいこっか」

純「あ、ちょっと待って。もうすぐ来るはずだから」

梓「え?」

憂「あ、いたいた!純ちゃーん!梓ちゃーん!」

梓「え?」

憂「ごめん、遅れちゃって」

純「私たちも今来たばっかりだよ」

梓「なんで憂が・・・?」

純「私が誘ったんだよ。憂土曜暇だって言うからさ、大人数の方が楽しいでしょ?」

梓「う、うん・・・そうだね」

憂「ごめんね?梓ちゃんにも連絡した方がよかったのかな?」

梓「ううん。いいよ。憂が来てうれしいよ」



同時刻・音楽室
律「今までの状況をリストに書き加えといたぞ」


アニメ研究部      映画部と対立中?
映画研究部       アニメ研と対立中?
英語研究部       保留中
園芸部         保留中
演劇部         ○
オカルト研究部
科学部
合唱部         投票権なし
華道部         ○
軽音楽部        投票権なし
コンピューター研究部  合同企画で疲弊中
茶道部         ○
写真部
将棋部
珠算部         保留中
書道部         保留中
新聞部
吹奏楽部        投票権なし 立候補辞退
ジャズ研究部      投票権なし 梓:接触中
天文部
美術部         合同企画で疲弊中
文芸部         ○ 合同企画改善を目指す
放送部
漫画研究部       合同企画で疲弊中
料理部

軽音部への投票確定クラブ 4/21




澪「過半数まで7、か」

律「あと5日で7つか・・・けっこうきついな」

唯「ねえ澪ちゃん。文芸部さんたちどうなったか知ってる?」

澪「今日例の企画会議があるらしいぞ」

唯「そうなんだ~。部長さん頑張れ!」

律「その人企画会議の人たちへの根回しは結局いいのか?」

澪「あの人たちには今そういう余計な刺激は与えないで会議に集中してほしいんだ。
  投票なんかたのんでも今は邪魔になるだけだ」

唯「そうだね~」


律「そっか・・・ところでムギ!結論とやらは出たのか?」

紬「ええ・・・」

唯「なになに?」

紬「ここ数日、私は本を何冊も読んできました。大衆心理や、社会学の本など・・・
  そして一つの結論にたどり着きました」

紬「政治の世界でもっとも重要なのは人脈や根回しでも、インテリジェンスでもない。
  それらよりも重要な要素があるわ」

澪「それは一体・・・」



紬「マスコミよ」

律「マスコミって、テレビや新聞の?」

紬「そう。そのマスコミよ。みんなテレビはよく見るでしょ?」

唯「うん」

紬「日本人で、一日に一秒もテレビを見ない人なんてほとんどいないと思うわ。
  報道だけじゃないけど、メディアは多くの人に影響を与えてきた」

紬「いろいろな流行もそうだけど、今回の私たちに近い事例で言うと政治に関する報道ね。
  マスコミが政治をどう報じるかで選挙の結果は大きく変わるわ。
  普通の人は、政治家のことなんてわざわざ調べないでしょ?たいていはテレビの印象で
  政治家や政党について判断すると思うの」

澪「それはわかるんだけど、文化クラブの投票とマスコミは関係ないんじゃ・・・」


紬「みんながマスコミに影響されるのは、日常でちょくちょく見聞きするからなの
  朝起きたらなんとなくテレビつけてニュース見たり・・・
  夕飯を食べながらテレビ見たり・・・」

紬「うちの高校でも、毎日必ず見るものと聞くものがあるんじゃない?
  意識的じゃなくてもね」

澪「・・・ハッ!」

唯「え、なに?」

紬「昼休みの校内放送・・・それに廊下や踊り場にいつも貼ってある校内新聞」

律「なるほど・・・そういうことか」

澪「確かに、校内放送は全生徒が聞いてるし校内新聞もいつも歩きながら
  見出しくらいは見てるな」

紬「そう。その二つを有効利用すれば、
  根回しをしなくてもみんな勝手に軽音部に投票したくなるわ」

唯「おおー・・・」

律「ということは、次に行くべきなのは」

澪「新聞部と放送部か」

紬「ええ♪」



喫茶店

梓「でさあ・・・」

純「へえ・・・」

憂「そうなんだ・・・」

梓「・・・」

純「・・・」

憂「・・・私ちょっとトイレ」スッ

純「あ、私も」スッ



トイレ

純「憂、やっぱ今日来るのはまずかったんじゃないの?
  変な雰囲気になって会話が全然進まないよ」

憂「そんなことどうでもいいよ・・・どうせ軽音部は勝てないんだから。
  私がジャズ研に提供してる内部資料見てればわかるでしょ?」

純「だったら・・・なんでわざわざこんなことするの?」

憂「梓ちゃんを疑心暗鬼にするためだよ・・・」

憂「私が純ちゃんとグルなんじゃないかってね」

純「実際そうなのに・・・わざわざばらすの・・・?」

憂「梓ちゃんはいい子だから疑いはしても絶対に認めようとしないよ・・・」

憂「でも梓ちゃんは、私と学校で二人っきりになったとき、
  私に何回か話しちゃってるんだ・・・軽音部の根回しにこととかね・・・」

憂「これで軽音部が負けたらずっと悩み続けるんだろうなあ・・・
  私のせいなんじゃないかって・・・」

純「・・・」

憂「私からお姉ちゃんとの時間を奪った軽音部は活動場所をなくして・・・
  お姉ちゃんのお気に入りの梓ちゃんはさらに心に傷を負うんだ・・・」

憂「お姉ちゃんったらね・・・梓ちゃんが入部してからいつも梓ちゃんの話するんだよ。
  かわいーかわいーって・・・」

純「憂・・・おかしいよ・・・何もそこまで」

憂「いいよ別に。純ちゃんに私の気持ちがわからなくても。
  ただ軽音部を負けさせるためにジャズ研に協力してあげてるんだから。
  だから今日ぐらいのことはいいでしょ?」

純「でも・・・」

憂「軽音部なんかより合唱部の心配でもしたら?
  軽音部には確実に勝ててもそっちは保証しないよ?」

純「大丈夫だよ・・・」

憂「そう・・・そろそろ戻ろうか?梓ちゃんはもう十分疑ってくれたよ」

純「う、うん・・・」


憂「おまたせ梓ちゃん♪」

純「おまたせ・・・」

憂「もう出ようかー」

梓「う、憂?」

憂「なに?」

梓「ううん・・・なんでもない」

憂「ふーん?そう」

純「・・・」


放送部部室前

律「失礼しましたー」

澪「いい人たちだったな」

唯「うん。お昼の放送で投票の特集やってくれるって約束してくれたし。」

紬「・・・だめね」

律「え?なんで?」

紬「あの人たちはいい人すぎる・・・
  報道で一切ひいきはしないっていう正義感にあふれていたわ。
  私たちが放送を提案したとしても、ひいきしてくれることはなさそう・・・」

澪「なんか…複雑だな」

律「まーしょうがないか!新聞部いこーぜー!」



新聞部部室前

律「失礼しました・・・」

澪「いい人たち・・・だったな」

唯「うん・・・」

紬「・・・・」

律「・・・・」

澪「・・・・」

紬「ごめんなさい・・・」

唯「ムギちゃんが謝る必要ないよ!」

律「そうだぞ!気にするな!」


澪「まさか月一回の新聞が昨日発行したばっかりとは・・・こればっかりは仕方ないよ」

紬「あれだけ偉そうに語っといてこの体たらく・・・恥ずかしいわ」

律「だからムギのせいじゃないって!ほら、
  来月にネタにするかもって写真撮ってくれたじゃん」

唯「うんうん。あの写真のムギちゃんすごくかわいかったよ!」

紬「みんなありがとう・・・でも少し休ませて・・・実は昨日もあんまり寝てないの」

澪「そ、そうなんだ・・・軽音部の為にこんなに頑張ってくれてありがとう」

律「ムギはよくやったよ・・・よくやった」


……

憂「じゃあね、純ちゃん。私と梓ちゃんはこっちだから」

純「うん、じゃあね」

梓「じゃ・・・」

スタスタ

純「はあ、憂があんなに怖い人だったなんて・・・」

純「梓をあんなに追い詰めてまで音楽室使いたくないよ・・・」

純「はあ・・・」


投票まで あと4日


5
最終更新:2010年01月25日 22:36