いちご「あずにゃん」

梓「!!」ビクッ

いちご「ごめん、驚いた?」

梓「い、いちご先輩!急に後ろから話かけられたのと、その呼び方にダブルで驚きました!」

いちご「周り誰も居ないし恥ずかしくない」

梓「そ、そうですけど・・・私が恥ずかしいです///」

いちご「今日律達は劇の練習してる」

梓「そうですか・・・いちご先輩はこれから部活ですか?」

いちご「うん」

梓「頑張ってくださいね!」

いちご「ありがと」

梓「それでは、また!」

ちょっと会話が出来る様になっただけでも大きな進歩。

あれ・・・放課後販売のパン売場に・・・

いちご「待って」

梓「は、はい」

いちご「そこのパン」

梓「あ、部活の方用の放課後販売ですね」

いちご「待ってて」

梓「?」

放課後販売にゴールデンチョコパンが売ってる。

一日3本限定じゃなかったっけ。

放課後お茶してるって言うし、プレゼントしてあげよう。

いちご「お待たせ、これあげる」

梓「えっ!ゴールデンチョコパンじゃないですか!」

いちご「この前食べたいって聞こえたから」

梓「え・・・聞こえてましたか・・・」

梓「嬉しいですけど、一人じゃ食べ切れませんし・・・」

いちご「わかった、半分こ」

梓「本当にいいんですか?」

いちご「うん」

梓「ありがとうございます!嬉しいです!」

いちご「変わりに・・・」

梓「えっ?」

いちご「何でもない」

梓「あ、はい・・・」

いちご「部活頑張って、じゃ」

梓「はい!またです!」

補給させてなんて言えるわけない。恥ずかしい。

残ったゴールデンチョコパン。半分こだけどちょっと量がある。

一口サイズに切って、久しぶりの後輩達にあげた。

もちろん私も食べたけど。うん、おいし。

いちご「みんなしっかり練習してたね、うまくなってた」

後輩「「「ありがとうございます!」」」

いちご「明日からまたちょっと来れなくなるけど頑張って」

後輩「「「はい!」」」

いちご「じゃ、解散」

後輩「「「お疲れ様でした!」」」

バトン部は全然心配いらなかった。劇が一番心配。

もう外は暗くなってる。うちのクラスももう電気消えてる。

みんな帰ったかな。

梓「あ、いちご先輩!また会いましたね、お疲れ様です!」

いちご「お疲れ様、帰り?」

梓「はい!あ、チョコパンおいしかったです!ありがとうございました!」

いちご「そう、よかった」

梓「帰り道どっちですか?よかったら一緒に帰りませんか?」

いちご「うん」

梓「私こっちなんですけど、いちご先輩は?」

いちご「・・・私もこっち」

何で今嘘付いたんだろ。バカみたい。

話す機会なんて今すぐじゃなくてもいくらでも作れるのに。

梓「クラスは楽しいですか?」

いちご「うん」

梓「賑やかそうですもんね、唯先輩とか律先輩とか」

いちご「うん」


この機会だ、ついでに聞いてみよう。

いちご「あずにゃん」

梓「は、はい!ってやっぱりその呼び方なんですか!」

いちご「唯が言ってるあずにゃん分って元気が出るの?」

梓「え・・・し、知りません!唯先輩が勝手に言ってるだけで!」

いちご「どうやったら補給出来るの?」

梓「え・・・と・・・抱きついたら補給できるんじゃ・・・///」

いちご「ふん」

梓「すみません・・・そんな恥ずかしいところお見せしてたなんて・・・///」

いちご「補給」ギュッ

梓「にゃっ!?!?」

いちご「にゃって言った」

梓「い、いちご先輩!?!?」

いちご「猫みたい」

梓(・・・う、いい香りが///)

いちご「補給完了・・・かな」パッ

梓「そ、それはよかったです」

いちご「ありがと」

梓「い、いえ・・・じゃあ私こっちなんで!また!」ダッ

いちご「また」

走って行っちゃった、急に抱きついたりしたから嫌われたかな。

なんであんな事しちゃったんだろ。

とりあえず家に帰ろう。

道わからないから一旦学校戻ろ。



翌日。

曇った空。今にも雨が降り出してきそう。

今日中に木Gまで作らなくちゃ。

梓「い、いちご先輩///」

いちご「おはよ」

梓「お、おはようございます!ではまた!///」ダッ

私の心と同じ天候かな。

唯「文化祭まであと一週間だね~」

和「そうね、もう律も澪もなかなか順調だから後は道具係の方ね」

紬「さすがりっちゃん、澪ちゃん、息が合うわね~もうちょっとセリフ増やそうかしら」

律「ちょっと待て!嫌な予感しかしないからやめろ」

澪「ははは・・・」

いちご(後一週間か・・・)

やっぱり昨日補給とか行って抱きついたのはダメだったかな。

仲良くもないんだし。

さらにもし唯と付き合ってる・・・とかだったら唯にも悪いし。

そんな勝手な妄想で作り上げた罪悪感持ってる、

先生「若王子さん、この地名は?」

いちご「・・・わかりません」

先生「えーっと、じゃあ高橋さん」

そんな授業上手く行くわけなかった。



お昼休み。

今日は授業終わってすぐ来たから人は少ない。

いつもの時間だったらあずにゃん達に会ってしまう。

あ、ゴールデンチョコパン売ってる。今日はこれにしよ。

どこで食べようかな。

文化祭だから屋上の鍵開いてるかな。よし。


屋上。

あぁ天気悪いな。帰りには雨降りそう。

傘持ってきてて良かった。

ゴールデンチョコパンおいし。

でも一人じゃ多かったかな。

帰りにまた食べよ。

フェンスで遠く見つめてる子がいる。

ってあれは。

あずにゃん。


いちご「あずにゃん」

梓「!!」ビクッ

いちご「ごめん」

梓「い、いえ!いちご先輩も屋上で食べてたんですね!」

いちご「うん」

梓「そ、それじゃあ私教室戻りますっ!」ダッ

いちご「うん」

謝ろうと思ってたのに、行っちゃった。



放課後。

いちご「木Gできた」

姫子「完成度高いな・・・」

唯「おおおお!私の役の木Gだ!ありがとーいちごちゃん!」

いちご「うん」

エリ「ふー今日は捗ったわね!」

いちご「うん」

和「もう下校時間だけどね・・・じゃあみんな片付けて帰りましょう」

「「「はーい」」」

いちご「私教室の鍵届けてくるから」

和「そう?悪いわね、ありがとう」

いちご「お疲れ様」

和「お疲れ様」

ふぅ、今日は張り切っちゃったな。

軽音部からギターの音だけ聞こえてたからかな。

それとも何かを吹っ切りたいから?

嫌な私。あずにゃんに謝らないと。

ザーザー

すごい雨。傘持ってきてて良かった。

梓「い、いちご先輩!」

いちご「お疲れ様、傘は?」

梓「持ってきてなくて・・・」

いちご「もうみんな帰ったの?」

梓「そうみたいです・・・お母さんに持ってきてもらおうかなと思って」

いちご「使って」

梓「えっ!」

いちご「家近いから」

梓「そうでしたっけ!?」

いちご「それと」

梓「は、はい」

いちご「この前は抱きついてごめんなさい、じゃ」ダッ

梓「い、いちご先輩!!」

ザーザー

逃げちゃった。くしゅん。



翌日。

窓の外は暗い雨空。見上げるといつもの天井。

こんな時に風邪引いちゃった。バカみたい。

アナ『皆様おはようございます!』

アナ『今日も元気に行ってらっしゃい!』

いつも見れない時間までテレビ見れるのってなんか不思議。

ちゃんと謝ったうちに入るのかな。

答え聞く前に逃げちゃうとか意味ないよね。

今日はこんな事しか考えられない、

そんな気がする。

ぼーっとして何も手がつけれない。

ちょっと寝よう。


夕方。

お腹減ったな。そういや朝から何も食べてないな。

ピンポーン

家のチャイム鳴ってる。確かお母さんいたよね。

トントントン

足音が近づいてくる。なんだろ。

コンコン

梓「失礼します」

あずにゃん?

いちご「どうして」

梓「いちご先輩、大丈夫ですか?唯先輩に住所聞いてお見舞いに来ました」

いちご「そっか、ありがと」

梓「傘ありがとうございました、ほんとに助かりました・・・」

いちご「ううん」

梓「すみません、風邪まで引かせてしまって・・・本当にごめんなさい」

いちご「気にしないで」

梓「あの・・・その・・・それと」

いちご「なに」

梓「昨日謝られた事なんですが・・・」

うん、四面楚歌。もう逃げられない。答え聞くしかない。

梓「謝ることじゃないです!」

その答えは予想外だった。

梓「あの、なんていうか、唯先輩もいつもしてくるし、その」

いちご「唯は彼女?」

梓「そんなわけないです!ただの先輩です!」

いちご「そう、でも、ごめん」

ちょっとホッとした。

梓「その、いちご先輩に抱きつかれるなら私嬉しいです・・・///」

そしてドキッとした。

梓「なんていうかその、優しいですし、抱きつかれた時も柔らかくて・・・」

いちご「ありがと」

梓「それに、もっともっといちご先輩の事知りたくなりました!」

いちご「ほんと?」

梓「はい!」

いちご「じゃああずにゃん分補給していい?」

梓「あ、いちご先輩、起きちゃだめです!」

いちご「でも」

梓「これで・・・補給できますか?」ダキッ

いちご「うん・・・ありがと」ギュッ

ポツ・・・ポツ・・・

朝とは違い、今は雨音が弱まって聞こえる。

梓「そう言えばいちご先輩」

いちご「ん」

梓「初めて一緒に帰った日、嘘付きましたよね、帰り道全然違うじゃないですか!」

いちご「ごめん」

梓「帰り道に寄れるかと思ったら住所聞いてびっくりしました!」

いちご「うん」

梓「なんでですか?」

いちご「一緒に帰りたかった」

梓「ほんとですか?」

いちご「ほんと」

梓「いちご先輩?」

いちご「ん」

梓「私もこれからいちご先輩分補給してもいいですか?」

いちご「うん」

梓「ありがとうございます!」

いちご「でも今日は風邪写るからもうダメ」

梓「あ、そうですね・・・すみません」

いちご「風邪治ったら日が空いた分補給させて」

梓「もちろんです!」

ポツ・・・ポツ・・・

梓「お土産と言ってはなんですが」

いちご「ん」

梓「今日はゴールデンチョコパン持って来ました!」

いちご「!」

梓「お昼休み少しフライングしまして///」

いちご「あずにゃん、ありがと」

梓「ご飯食べてないみたいですし、どうぞ」

いちご「ありがと」

梓「食べさせてあげますよ、あ~んして下さい」

いちご「あーん」


翌日。

快晴。昨日までの雨が嘘だったかのような透き通った青。

風邪も一日で吹き飛んだ。さすがあずにゃん分。

梓「いちご先輩、おはようございます!」

いちご「おはよ、あずにゃん」

梓「あとで・・・補給させてくださいね!」

いちご「うん」

今日はなんだか気持ちも晴れた。



おわり



最終更新:2010年10月28日 02:45