自室。
むー、とした顔で考え事。
この間の秋山さんのファンクラブでもらった孫の手を使い頬杖を付く。
あぁ見えて秋山さんも恥ずかしがりやさんみたいだから二人で話した事はない。
もちろん私もりっちゃん、エリちゃんみたいに明るく話しかけたり出来ないし。
むー。
どうにか話すきっかけないかなぁ。
朝。
はっ、いつの間にか寝ちゃってたみたい。
孫の手で支えてた右のほっぺたが赤くなってる。
どうしよ・・・ちょっと恥ずかしいな。
母「曜子ちゃん、右のほっぺたどうしたの?」
曜子「孫の手で頬杖付きながら寝てたらこうなっちゃった」
母「そう、まああまり目立たないわね」
曜子「うん、じゃあ行ってくるね」
母「行ってらっしゃい」
…
和「佐々木さんおはよう」
曜子「真鍋さん、おはよう」
和「右の頬どうしたの?赤いけど」
曜子「あ・・・これは、秋山さんのファンクラブでもらった孫の手で頬杖ついてたら・・・///」
和「そういう事は人に言わずに隠しなさい・・・」
曜子「ご、ごめんね」
和「それにしてもまさか佐々木さんまで澪ファンクラブに入っていたとは思わなかったわ」
曜子「軽音部かっこいいし、曽我部先輩が張り切って募集してたから」
曜子「曽我部先輩が卒業してからは真鍋さんが会長なんだよね?」
和「不本意ながらね」
曜子「真鍋さんは秋山さんともよくお話してるしうらやましい」
和「そう?佐々木さんも気軽に喋ればいいのに」
曜子「うぅ・・・恥ずかしくて」
和「澪も恥ずかしがりやだから厳しいわね・・・」
曜子「うん・・・」
教室。
唯「和ちゃん、曜子ちゃんおはよー!」
和「おはよう」
曜子「平沢さんおはよう」
律「おーっす!珍しい組み合わせだなー」
和「そう?佐々木さんとは1年の頃から同じクラスだからね」
唯「そうだよー!私も1年の時同じクラスだったもん!」フンス
律「唯には聞いてねえよ・・・」
曜子「ふふ」
唯「あ、曜子ちゃん笑ったー!」
曜子「ご、ごめんね」
律「ははっ謝らなくてもいいのに」
唯「りっちゃんまでー!」
和「そういえば澪は?」
律「あぁ、今日日直だから職員室行ってるな」
曜子「あっ」
和「佐々木さんどうしたの?」
曜子「私も日直だった・・・職員室行ってくるね」
律「澪も行ったばっかだから追いつけるよ」
唯「いってらっしゃ~い」
日直なのは覚えてたけど、まさか秋山さんと同じ・・・!
どうしよう、ドキドキしてきた。
澪「失礼しました」
あ、秋山さんが日誌持って出てきた。
澪「あ、佐々木さんおはよう、日誌貰ってきたよ」
曜子「あ、ごめんね、ありがとう」
澪「あ、いや、今日は早く学校着いたから・・・気にしないで」
曜子「うん、ありがとう」
普通にお話できちゃった。
職員室から教室までの廊下。
こんなに短かったかな・・・。
特に何も話さなかったけど、一瞬で教室に着いちゃった。
澪「佐々木さん」
曜子「はいっ」
澪「今日の日直の仕事で、放課後片付けがあるからって先生が言ってたけど、用事とか大丈夫?」
えっ・・・放課後も仕事あるんだ・・・!どうしよう・・・二人きり?今日は秋山さんとずっといれるの・・・?
澪「あ・・・用事あった・・・?」
曜子「あ、うん!大丈夫!」
澪「そっか、じゃあ今日一日よろしくな」
曜子「うん、よろしくね」
今日はいい日かも!うれしいなぁ。
つかさ「曜子ちゃん、なんか今日笑顔だね」
隣の席の小磯つかさちゃん、お隣同士仲良くしてる子。
曜子「え、あ、うん、そうかな」
今日日直なのが顔に出てたかな・・・。
つかさ「何かいいことあった?」
曜子「ううん、別にないよ」
さわ子「みんなおはようー」
さわ子先生が来た。
あ、そういえば号令は・・・。そんな事を考えていると秋山さんと目が合った。
澪(・・・)クイッ
秋山さんが自分を指差してる、秋山さんが号令するって事かな。
曜子(・・・)コクッ
澪「起立!礼!着席」
うん、伝わってた!
一時間目終了。
黒板消しも日直の仕事。
曜子「うんしょ、うんしょ」ゴシゴシ
澪「あの先生筆圧すごいからチョークの粉が残るね・・・」ゴシゴシ
曜子「うん、力入れないと取れないね」
澪「そうだなー」
国語の先生、黒板の上の方までびっしり書いてる。ちょっと届かないかな・・・
澪「上の方消すよ」
曜子「あ、ありがとう」
心の中読まれたー!?
二時間目終了。
英語の先生はほとんど喋るから黒板はあまり汚れない。
澪「そういえばまだ二時間目なのに黒板消しが真っ白だな・・・」
曜子「そうだね、昨日の日直さん掃除忘れてたのかな」
澪「昨日の日直・・・?律だ・・・!」
律「なんか視線が痛い」
曜子「あ、私外ではたいてくるね」
りっちゃんは今からお仕置き受けそうだから・・・私一人で、
澪「あ、佐々木さん、私も行くよ」
あ、来てくれた。
パンッ パンッ
曜子「けほっ」
澪「大丈夫?」
曜子「うん、大丈夫」
澪「すごく汚いな・・・」
曜子「秋山さん、髪の毛真っ白だよ」
澪「えっ!?///」
曜子「じっとしててね」
手でそっと髪をはたいてあげる。さらっとしていい髪。
澪「ありがとう、手が白くなっちゃったね」
パンッ パンッ
手をはたいてくれた。少し大きくて指が長くてきれいな手。
曜子「ありがとう///」
三時間目、体育。
今日の授業は体育館でバドミントン。
澪「佐々木さんいくよー!」
曜子「うん!」
日直の仕事は、みんなの前で体操。これは恥ずかしかったけど。
あとは日直同士でペアを組んで皆にお手本。これもちょっと苦手。
一度も落ちずにボレーは続く。
澪「佐々木さん上手だね」
曜子「秋山さんも上手ー!」
言葉のボレーも続くようになってきた!うれしい!
四時間目終了。
数学の先生、黒板に公式ばっかり書くから消す量が多い・・・。
みんなご飯食べ始めてる。
もう黒板消しも真っ白。
澪「先にご飯食べようか」
曜子「うん、そうだね」
澪「あ、律達もう食べ終わってるのか・・・」
振り返ると早い人はもうご飯食べ終わりそうな時間が経っていた。
澪「よかったら一緒に食べない?」
曜子「えっ!」
澪「あ、もしよかったら・・・だけど」
曜子「ううん、是非!」
張り切って答えちゃった・・・。
お昼休み。
澪「へぇー、中学の時はそんな事があったんだー」
曜子「うん、その頃は大変でー」
お互いの知らない事を話す。うん、ちょっとずつ距離は縮まってきたかな!
律「みーおー部室いくぞー」
澪「あ、うんわかった。佐々木さんまたな」
曜子「うん、いってらっしゃい」
律「佐々木さん今日楽しそうだなー」
澪「え?なんでだ?」
律「澪のファンクラブの会員じゃん、澪と一緒に居れて楽しいんじゃね」
澪「!!そう言えば・・・そうだった・・・」
律「おいおい・・・」
5時間目終了。
社会の先生はカラーチョークとか使うから黒板消しはすぐ汚れちゃう。
曜子「秋山さん、私黒板消しはたいてくるね」
澪「あ、いや、私がやってくるよ!」ダッ
曜子「あ、ありがとう」
あれ、なんか悪いことしちゃったかな・・・?
6時間目。
この授業は今日は自習みたい。
今のうちに日誌でも書いておこうかな。
秋山さんに日誌の相談しよう。
曜子「秋山さん」
澪「ん、ど、どうかした?」
曜子「日誌の事なんだけど・・・」
澪「あ、あれはやっておくから!佐々木さんは自習でもしときなよ!」
曜子「あ、うん、ありがとう・・・」
あれ、どうしちゃったんだろ・・・。
HR。
澪「起立!礼!」
さわ子「それじゃあみんな気をつけて帰ってね」
「「「はーい」」」
お昼からなんか話しにくい・・・。
でも放課後も日直の仕事あるんだよね・・・。うん、話しかけないと。
曜子「秋山・・・さん」
澪「あ、佐々木さん!どうかした?」
曜子「あ、放課後日直の仕事って・・・」
澪「あー!そ、そうだったな、先生に聞いてくるから待ってて!」
放課後。
澪「教室のカーテンをつけかえるのが仕事みたいだから・・・」
曜子「わかった・・・」
黙々。カーテンをお互い反対側から外して付ける。
会話ないや・・・困ったな。
憧れの秋山さんと一緒に居れたのに、何か溝は埋まらなかったのかな。
うっ・・・。
カーテンに隠れて少し泣いた。
澪「さ、佐々木さん?どうかした?」
曜子「あ、ごめんね・・・」
澪「あ、いや、大丈夫?」
曜子「うん、大丈夫だから・・・」
澪「ごめん、何かあったのか?」
曜子「ううん、ほんと大丈夫だから・・・」
澪「・・・」ナデナデ
優しく撫でてくれた。
曜子「秋山さん・・・」
澪「カーテン後やっとくからさ、椅子に座って待っててよ」
曜子「で、でも」
澪「気にしないで、な」
曜子「うん・・・ありがとう」
何やらせてんだろ・・・ファンなら一緒にやらないと・・・!
澪「佐々木さん?」
曜子「私これでも秋山さんのファンクラブ会員だから、一緒にやりたいの」
澪「そっか」
曜子「うん」
澪「私はいいとこ見せたくて一人でしようって思ってたけど、勘違いだったみたいだな」
えっ。どういうこと。
澪「佐々木さんみたいな子にファンですって言われると恥ずかしいけど嬉しくて」
う・・・。
澪「お昼に部室で思い出してさ、全部一人でやろうって思っちゃった」
そういうことなのか・・・。だから一緒に出来なかったんだ・・・。
澪「ごめんな、日誌も実はまだだからさ、一緒にやろ?」
曜子「・・・うん!」
その後、一緒にカーテンを付け替えて、日誌書いて、提出して。
澪「今日部活ないんだ、よかったら一緒に帰らない?」
曜子「もちろん!一緒に帰りましょ」
一緒に下校した。
あー今日は楽しかったな♪
澪「でもなんで泣いてたんだ?」
曜子「秋山さんに泣かされちゃった・・・」
澪「えっ!?ご、ごめん」
曜子「ファンを泣かせるなんて・・・」
澪「えっ!?ほんとに!?」
曜子「だって秋山さん午後から冷たくなったし・・・」
澪「え・・・そうだったのか・・・ごめん」
曜子「ううん、気にしないで、私の思い過ごしだったから」
澪「で、でも」
曜子「じゃあ一つお願いがあります!」
澪「は、はい!」
曜子「澪ちゃんって呼んでいい・・・?」
澪「う、うん、いいよ」
曜子「澪ちゃん!」
澪「よ、曜子ちゃん・・・」
曜子「えへへ、ありがと」
ファンクラブの掟、第11条。
抜け駆けの禁止、破っちゃった・・・かな。
おわり
最終更新:2010年10月28日 03:53