皆さんはしりとりという遊びをご存じだろうか
主催者が何らかの単語を言い、その単語の尻(最後の文字)を取り出して、
それが先頭に着く単語を言い、次の参加者がその単語の尻を取り出し…を繰り返す言葉遊びのことである
このゲームの敗北条件はいたって簡単、「ん」を尻に持つ単語を言ってしまうこと
彼女によると
律「私はしりとりに一度も負けたことがないんだぜ!」
ということだが、実際には彼女は17回負けたことがある
もちろん、彼女自身そんなことを覚えているわけでもなく、先ほどの発言をしたのである
事の発端はある放課後だった
唯「なんかゲームしようよ」
澪「いや、練習をすべきだろ」
律「しりとりやろうぜ!私はしりとりに一度も負けたことがないんだぜ!」
紬「私、しりとりするのが夢だったの♪」
梓「どんな夢ですか…」
まさかその時は、こんなことになるなんて思ってもいなかった
澪「じゃあ順番は唯、梓、私、ムギ、律の順でいいんだな」
律「オオトリかぁ、語彙が少なくなってくるから腕の見せ所だな!」
律「じゃあ行くぞ!しりとりの『り』!」
唯「りんご!」
律(りんご…まぁしりとりの『り』、と言われれば70%の人間は考え付いてしまう安直な言葉だ)
梓「ご…ご…」
律(悩んでいるようだが、80%の人間はあの単語を続けてしまうはずだ)
梓「ゴマフアザラシ!」
律(ゴリ…アザラシだと!?)
律(確かに、ここでありきたりな解答をするのはつまらないかもしれない、
しかし『し』で終わらせるメリットはない、
とりわけラ行で終わる単語を逃してしまったのはもったいない)
律(ただ…ゴマフアザラシをゴマアザラシ等と間違えなかったことは評価したいところだ)
澪「し…し…」
澪「シリコン!」
律「!?」
唯「澪ちゃんの負け―」
澪「はっ!ンで終わってた!」シュン
律(『し』からまさかの繋ぎをして、まさかの撃沈…)
せめて後ろに『バレー』でも付けておけばよかったのに…)
律(しかし澪はもしかしたら『ラッパ』しか用意してなくてこうなったのかもしれない…
とすると梓の作戦は成功、と言えるのかも知れないな)
澪「今のは悔しい!もう一回だ!」
梓「ノリノリですね、澪先輩」
律(そうだ、ここで終わってしまったら私のしりとり力も見せることができないし
何より一番楽しみにしていたムギがまだ順番が回ってきてないからな)
唯「んじゃ行くよ~、料理!」
律(また唯からなのか、まぁそれはいい…)
律(だが唯よ!『り』返しは最後まで取っておけ!『り』が底を尽きた時こそそれが役に立つのだ!)
梓「リンゴ狩り」
律(まさかの序盤で『り』の乱発…!まさかこいつら初めに『り』を失くして後で辛くする気だな!)
澪「り…り…」
律(次は何で『り』に繋げてくる…?)
澪「り…リボン!」
唯「澪ちゃんの負け―」
澪「はっ!またンで終わってたー…」シュン
律(わざとか…わざとなのか…!?かつてこれほどまでにしりとりが苦手な人間がいただろうか!)
唯「じゃあ私からね」
律(何故平然と続けられるのだろうか、ムギに至ってはさっきから一言も喋らせて貰えていないのに…)
唯「りんごパイ!」
律(唯は食べ物縛りでもしているのだろうか…)
梓「イエグモ」
律(梓の言葉の選定基準も少しずれている気がする…)
澪「も…も…」
律(次こそ…次こそ『ん』を言うなよ…)
澪「モンブラン!」
律(やっちまった…やっちまったよこの子…)
唯「澪ちゃんの負け―」
唯「リゾット!」
律(このしりとり…澪が通るまで続けるのだろうか…)
梓「『と』って『ど』もいいんですよね?」
律「ああ、大丈夫だ」
梓「トド」
律(お前が『ど』で始めるんじゃないのかよ…)
澪「ど…ど…」
律(『と』が『ど』でいいんだから逆もありだよ!)
澪「…」
律(語彙少ないなお前!)
梓「『と』でもいいんですよ、澪先輩」ニヤ
律(ナイス中野!私にルール聞いておいてしたり顔なのがムカつくけど!)
澪「ど…ドリル!」
律(まーた…え!?『ん』じゃない!?やったぁ!ナイスドリル!)
紬「る…る…」
律(しかも難易度の高い『る』を振るとは…これがビギナーズラックというものか)
紬「留守番!」
律(もっと他にあるだろおおおおおおお!)
唯「ムギちゃんの負け―」
紬「あら、負けちゃった♪」
律(負けちゃった♪じゃないよ!こっちはまだしりとりの『り』しか言ってないんだから!)
唯「緑茶!」
律(こいつの食べ物に対する執着は異常だな)
梓「小さい『や』って『や』でいいんですか?」
律「ああ、私はそれでやってるけど、みんなはそれでいいか」
唯澪紬「OK!」
梓「じゃあヤツメウナギ」
律(じゃあ、じゃねーよ!『や』なんてもっといっぱいあるだろ!)
澪「ギ…ギ…ギ…ギ…」
律(『と』がいいんだから『き』でもいいんだよ!お前壊れた機械みたいになっちゃってるよ!)
澪「欺瞞!」
唯「澪ちゃんの負け―」
律(何故だ!何故そんな不快で『ん』が付く単語を元気に言っちゃったんだ!)
澪「私…才能ないのかな…」ウルッ
梓「そんなことありません!ねぇ律先輩!」
律「あ、ああ…」
律(ここで私に振る必要あったか!?中野よ!)
唯「り…り…」
律(もう始まってるし…)
唯「リング…」
律(食べ物じゃない!)
唯「ドーナッツ!」
律(食べ物だった!)
梓「つ…つ…」
梓「ツベルクリン…あ」
唯「あずにゃんの負け―」
律(策士め…策に溺れたな!)
梓「くっ…じゃあ今度は私からでいいですか?」
律(ふむ…確かに初めならさっきみたいな失敗することはないしな)
唯「んじゃあしりとりの『り』!」
梓「硫酸水素ナトリウム」
律(まさか…梓の奴硫酸
シリーズを全て覚えているな!?)
澪「む…む…」
律(頑張れ!私のために!)
澪「無理強い!」
律(感じ悪いけどなんとかなったな!)
紬「い…」
律(ムギが成功すれば…とうとう私の番だ!)
紬「淫乱…///」
律(ちくしょう!ちくしょおおおおおおおお!)
唯「ムギちゃんの負け―」
律(ムギの奴…性欲に負けやがった!言いたかっただけだろ!)
梓「じゃあまた私からですね」
梓「硫酸アンモニウム」
律(こいつ…本当にこれでやる気か)
澪「また『む』だ…どうしよう律ぅ…」
律(何故私に助けを求める…!そのぐらい自分で考えろ!)
澪「む…あっ、昔話!」
律(うむ、ちょっとはマシになったな)
紬「し…」
律(最後の壁はムギだな…)
紬「疾患!」
律(お前らの『ん』終わりへの拘りはなんなんだよ!これそういうゲームじゃねーから!)
唯「ムギちゃんの負け―」
梓「硫酸バリウム」
律(梓よ!澪にはそれは負担が大きすぎる!やめてやれ!)
澪「ムース!」
律(…!学習して『む』を先に考えておいていたのか!幼馴染がアレな子じゃなくて良かった!)
紬「す…」
律(今度こそ…こい!)
紬「すいとん!」
律(お前らの『ん』終わりの語彙力はなんなんだよ!もっとあるだろ!?)
唯「やっぱ初めの言葉変えて私からやろう」
梓「何にします?」
澪「軽音部…とかどうかな?」
紬「いいわね、私達らしくて♪」
律(こっちはそんなことより早く私の番になって欲しいんだけどな)
唯「んじゃ、ぶ…ぶどう!」
律(食べ物の名前言いたかっただけじゃねーの?)
梓「うわばみ」
律(何なんだよそれ…聞いたことはあるような気がするんだけど…)
澪「み…みかん?」
唯「澪ちゃんの負け―」
律(何故聞いた!ダメに決まってんだろ!)
澪「久々に負けた…」シュン
律(そのぐらいでシュンとすんなよ!なんでもっと楽しくしりとりできないんだよ!)
唯「じゃあ…豚肉!」
梓「クロレラ」
澪「乱暴!」
律(なんか物騒なのじゃないとダメなのか、こいつは)
紬「う…う…」
律(苦しんでるみたいだよなー…ってそうじゃない、ムギよ、絶対通せよ!)
紬「運搬!」
唯「ムギちゃんの負け―」
律(もうやだこの茶番…)
唯「あんまり関係なかったね、じゃあ最初に戻そう」
梓「了解です」
律(戻ったから何だってんだろう)
唯「んじゃいくよ、リコピン!」
梓「唯先輩の負けです」
唯「あー、やっちゃったー」
律「お前らわざとだろ!」
唯「な、何…りっちゃん…」
律「あ、すまんつい…」
澪「私が…私がダメなんだろ…正直に言っていいんだよ…」ウルウル
律(そのとおりだけど言えるわけねーよこの状況!)
律「いやぁ…あんまりにも私の番が来ないからさ~…」
唯「確かに、りっちゃんは一回も負けてないもんね~、すごいよね~」
紬「ホントすごいわ~♪」
律(もうどう突っ込めばいいやら…)
律「もう、次が最後だ!絶対にお前ら『ん』で終わらせんなよ!」
律「しりとりの『り』!」
唯「りんごジュース!」
律(最後まで食べ物で通しやがった!やはりこいつはなかなかやりおるな!)
梓「スプートニク!」
律(もうちょっと一般的なのでお願いします)
澪「く…く…」
律(…ここまでか)
澪「苦肉の策!」
律(おお!『く』返しとはなかなかやるな!)
律(さて…あとは…)
紬「く…」
律(行け!ムギ!)
紬「クラムチャウダー!」
律(きたああああああああああああ!)
梓「伸ばし棒ってその直前のですよね」
律「あ、ああそれでいいぞ!」
律(やっと私の番だ!やった!)
唯「りっちゃん、早くしてよ~」
律「あ、ああ、私の番だったんだ…えーとえーと…」
律「…タイマン」
唯「りっちゃん負け―」
これが田井中律、人生18回目の敗北であった
おわり
唯「律!」
律「なんだよ唯」
梓「紬!」
律(まだしりとりしてたのか…返事しちまったよ恥ずかしい…)
澪「ぎ…ぎ…」
律(私達の名前だとこれ以上は続かないよな)
澪「ギー太!」
唯「あー、それ私に残しておいてよね」
澪「す、すまん」
紬「た…た…」
紬「田井中!」
律(私2回呼ばれた!別にそんな縛りいらないだろ)
律「か…カミソリ」
律(ふふふ…『り』だぞ、強いぞ)
唯澪紬梓「…」
律(なんだこの空気…やっぱり軽音部繋がりじゃないとダメなのか…?そうならそうと言ってくれよ!)
律(と言っても軽音部関連で『か』って…)
律「じゃなくて…カレーのちライス!」
律(これでどうだ…)
唯「す…スティック!」
律(どうやら正しいみたいだ)
律(スティックって…ドラムスティックのことか?)
梓「く…クッキー…」
律(つらい…が、大丈夫なのか?)
澪「き…ギター!」
律(澪もなかなか慣れてきたな)
紬「たくあ…」
律(ああ!それはダメ!)
律(ん?私のほうを見た?)
紬「じゃなくて、楽しみ♪」
律(私は試されているのか…?)
律(楽しみ…確かに軽音部らしいかもしれないけどしりとりとしては許されるのか?)
唯「次はりっちゃんだよー」
律「…お、おう、えーっと…澪!」
澪「…!」
唯「次は私だね、お…音楽!」
律(いいねぇ、そういうの)
梓「く…クリエイティブ!」
律(私達の部活ってクリエイティブか?まぁ曲作ってるしいいか)
澪「ぶ…文化部!」ニヤリ
律(上手い、『ふ』返し!ムギを殺しにかかった、そんな笑みだ!)
紬「…ブラボー!」
律(しかしすぐに返された!…ブラボーって良いんだろうかとは思うけど…)
律「ぼ…ほ…放課後!」
律(ティータイムを付けても良かったがここはあえて切らせてもらったぜ!)
唯「ご…ご…」
律(何が来る…)
唯「ごはん!」
梓「唯先輩の負けです」
律「そこはせめて『ごはんはおかず』じゃないのかよ!」
唯「あー、忘れてたー」
律澪紬梓「こらー!」
おわり
最終更新:2010年10月29日 01:24