――教室――

風子「うふふふー」

エリ「あははー」

ドア「がら」

クラスメイト「!?」

唯「……お、おはよ……」

クラスメイト「……」

唯「え? あ、あれ……?」

いちご「……」じー

アカネ「……」じろり

唯「……なに、かな?」

いちご・アカネ「私、唯のことが――」

唯「!?」

信代・アカネ「好き!」

唯「ふぇ!?」

信代「は?」

アカネ「え? なんでアンタが?」

いちご「……」

信代「いや、そりゃあアタシも唯が好きだからよ!」

アカネ「……ふーん」

信代「なんだい? その態度は――!」ゴゴゴゴゴ

澪「……あれ、なんだか変な雰囲気だぞ。りつー」

律「どしたー?」

澪「日本期待の中島信代さんを見てくれ」

律「――」

律「――ふむ」すたこらさっさ

澪「こら! 律!」

唯(澪ちゃんとりっちゃんが逃げた!)

紬「――」ぽわー

唯(ムギちゃんはぽわぽわしてるし、なにこの状況!)

唯「え、えーと……」

信代「なんだい!?」

アカネ「ん!?」

唯「な、なんだかよくわかんないけど……喧嘩はやめよ? ね?」

信代「……」

アカネ「……」

唯「ほら、私も今の状況を把握し切れてない部分が多々ありまして……」

信代「……唯」ズイィィィ

唯「ひっ!」

信代「アタシは、アンタが好きなのよ。クラスメートとしてじゃなく、恋人にしたいって気持ち」

アカネ「私だって同じだもん!」

唯「いや、だからその――」

和「唯! 来なさい!」

唯「ちょ! 和ちゃん!? 引っ張らないでー!」

ドア「がちゃん!」

信代「……」

アカネ「……」

いちご「……」

クラスメイト「……」

紬「ぽえー」

アカネ「この空気、どうするの?」

いちご「自分たちでなんとかすれば?」

エリ「よし! エリちゃんがとっておきの仏像モノマネしちゃうぞ!」

春子「お、おー! やれやれー!」

信代「ブワッハッハッハッハッハ!!!!」

アカネ「あははー……」

クラスメイト「……ハァ」


――廊下――

和「ここまでくれば平気ね」

唯「どうしたの? 和ちゃん」

和「……」

唯「和ちゃん?」

和「……唯は」

和「唯は、好きな人とかいる?」

唯「!?」

和「……いる?」

唯「そんなことを訊くためにわざわざ?」

和「そんなことでもないわよ。……私にとっては、すごく大事なことなの」

和「だって――」

唯(あ、厭な予感)

和「私は、唯のコトを愛してるんだから」

唯「やっぱり――!」

和「答えて」

唯「えー」

和「私のコト、好き? 嫌い?」

唯「そ、そんなこと言われても! 和ちゃんは大切な友だ――」

和「それが厭だから、このままじゃあ耐えられないから告白したのよ! 察してよ……」

唯「和ちゃん……ごめんね?」

和「それはどっちの?」

唯「キルア?」

和「?」

唯「と。……もちろん、どっちもだよ」

和「……そう。でも、フラれたのならやけくそよ――!」

唯「!?」

トイレのドア「バタン!」

唯「なにするの!?」

和「なにするって……。ナニするのよ」

唯「そういう意味じゃなくって――ん!」

和「黙りなさい。あんまり騒ぐと――頸でもなんでも絞めて黙らせるわよ」

唯「和ちゃん……」

和「おとなしくしてれば、すぐに終わるから」

唯(……え? なにこれ)

唯(レイプ? レイプなのこれ? 携帯小説や退屈な青年コミックじゃあるまいし、告白
してスグにレイプ? え? え? は?)

唯(あ、上着脱がされた。っていうか、私のキャラが変わってくるくらい頭がぐるぐるする。
どうすればいいの? どうしてこうなった)

和「……ふふ」

唯(和ちゃんのことだから、私が何言っても『そうなんだ、じゃあ唯の身体触るね』とか
言ってスルーしそうだし、でも貞操は守りたいし)

憂「うおっしゃー!!!!」

ドア「バコン!」

唯「!?」

和「憂!」

唯「憂! 助かったよ……って」

憂「――」ゴゴゴゴゴゴ

唯「助からないかもしれない!」

憂「のど……かちゃん」

和「なにかしら? 私に姉妹両方を愛せというのは酷じゃないかしら?」

憂「あ?」

唯「これはだめっぽい! 貞操は守れるけど命が駄目っぽい!」

和「……悪いけど、唯は私のモノだからね」

憂「お姉ちゃんをモノ扱いしないで!!」

和「憂も、唯をモノ扱いしてるようにしか見えないけど?」

憂「……キレちまったよ。久しぶりに。屋上へ行こうぜ」

唯「憂も和ちゃんもやめてよ! 仲直りしてよ!」

和「そうなんだ。じゃあ私、屋上行くね」

唯「命は助かるみたいだけどこの二人がやばい!」ガーン

憂「……」くいっ

和「ええ。ついて行こうじゃないの」

唯「和ちゃん! 憂!」

憂「お姉ちゃん、今日のご飯はお鍋だからね。美味しいお肉買って帰るから待っててね」

和「唯、この澪ファンクラブの会員証。預かってて頂戴」

唯「ちょっと! 二人とも! それは帰ってこられない発言だから! 撤回して! 早く!」

和「フフ……」

憂「クク……」

唯「いっちゃった……」

梓「まったくです。和先輩も憂も勝手すぎます」ぷんすか

唯「あずにゃーん!」だきっ

梓「は、離してください!」

唯「むちゅー」

梓「!?」パン!

唯(痛い……。でも、あずにゃんはまともみたいで安心したー)ほっ

梓「唯先輩が変なことするからですよ!」

唯「ごめんねー。放課後、ちゃんと練習するから許して!」

梓「それなら、いいですけど」

唯「あずにゃんはこんな朝からトイレに来てどうしたの?」

梓「そりゃあ、私だって人間ですから生理現象ですよ。今日は朝からオレンジジュースを
飲み過ぎてしまいまして」

唯「おドジさんだねえ」

梓「まさかそれを唯先輩に言われることになるなんて思いませんでしたよ」

唯「えー。ひどいなー。きずついちゃうなー」

梓「……」

唯(よかったー。あずにゃんも変だったらどうしようかと思ったよー)

梓「あの、唯先輩。ちょっと待っててくれませんか? おトイレ済ませちゃうんで」

唯「はーい」

梓「それと――」

梓「キスくらいだったら、きちんと言えばしてあげますから。不意打ちはやめてくださいね」

唯(やっぱりマトモじゃなかった!!)


――ほどなくして――

梓「お待たせしました」

唯「う、うん」

梓「それじゃあ、はい」

唯「え? なにしてるの?」

梓「なにって? キスしたいんでしょ? 私と」

唯「はい?」

梓「こっちがはい? ですよ。あんな態度とっておいて、もしかしてしたくないなんて言う
つもりじゃないでしょうね」

唯「当たり前だよ! 冗談に決まってるでしょ!」

梓「――」

唯「あれ?」

梓「……唯先輩は、私のコトが好きなんじゃ……」

唯「後輩としてね」

梓「嘘だッッッ!!!!」

唯「ひぃ!」びくっ

梓「唯先輩、今まで私にどんな態度取ってました?」

唯「えと……」

梓「会ったら抱きついて、時にはキスを求められ、練習中にはアイコンタクト、ケーキを
食べてたらクリームをこれ見よがしに頬につける」


梓「他にも、貸したマンガに謎の毛が挟まっていたり、CDの歌詞カードに体液(よだれ)
が付着していたりと、明らかに告白でしょ」

唯「いや、その理屈はおかしい」

梓「私は思いましたよ。ああ、唯先輩は明日にでも告白してくるんだろうなって!」

唯「そんなことはないよ」

梓「なんでなんですか!? 舐めてるんですか!? 舐めてくださいよ! さあ!! さ
あ!! さああああ!!!!!」

唯「あ、あずにゃん。他の人も見てるから、ね? やめよ?」

梓「他の人! なにを見てる! 見せもんじゃあないぞ!」

生徒「がやがや……」

梓「こちとら唯先輩と愛を育んでんだ! 邪魔するな!」

唯「……この子はもう駄目だ」

生徒A「なにあれー」

生徒B「せんせいよんでこよーよ」

生徒C「だよね。なんかキ○ガイっぽいよ」

梓「ふああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!」

生徒たち「!?」

梓「お前ら! この私を! 軽音部の! 否!! 世界の美少女あずにゃんにゃんを
キチ○イ呼ばわりとはなにごとだ! そこに直れィ!!」

生徒D「私、先生呼んでくる!」だっ

梓「待てえええええええええええええええええええええええええええい!!!!!!」ダッ

唯「……」

チャイム「きーんこーんかーんこーん」

唯「……教室戻ろう。気が進まないけど」とぼとぼ


――教室――

さわ子「今日の連絡事項は特にありません」

ドア「がら」

さわ子「あら平沢さん。どうしたの?」

唯「いや、ちょっと……」

律「なにかあったのか? 和も帰ってきてないし」

唯「うーん……。なんでもないよ。本当に」

さわ子「それならいいけど。あとで職員室に来なさいね」

唯「なんで?」

さわ子「いいから」

姫子「――朝から大変だったね。唯」

唯「ホントだよ! 和ちゃんも憂もあずにゃんも変になっちゃったんだよ!」

信代「……」

アカネ「……」

唯(ここも変な人がいるんだった……)


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最終更新:2010年10月30日 22:39