姫子「キスしてもいいでしょ? 誘ってるんでしょ?」
唯「意味がわからない」
姫子「その顔は誘ってるでしょ」
唯「大声出すよ」
姫子「大声出すじゃん。廊下立たされるじゃん。和に襲われるじゃん」
唯「あ」
姫子「貞操失うのと、キスされるの。どっちが重要かはわかるよね?」
唯「策士だね」
姫子「ありがと。こんなナリでも、一応学年トップの成績よ? 私」
唯「本当?」
姫子「和、澪、私の三強時代よ」
唯「ダウト」
姫子「本当よ。ダウト失敗。唯にキスの罰ゲーム」
唯「罰って言ってるのにするの?」
姫子「手段は問わないよ。だって、好きなものは好きだからしょうがないんだもの」
姫子「唯はさ。私のこと好きでもなんでもないでしょ?」
唯「好きだよ。友達だもん」
姫子「そうじゃないの。恋愛の対象じゃないってこと」
唯「……だって」
姫子「私が女で、唯も女だから。そういう先入観で以て、唯は線引きしてる。それがない
と、マトモな扱いは受けられないから」
唯「――」
姫子「別に、私だって同性愛に理解があるわけじゃない。道行く女の人にこういう感情は
抱かない。――私の場合、好きになった人がたまたま女性だっただけ」
唯「それでも――」
姫子「人は考える葦である。って言葉があるけど、今は考える必要はないよ」
唯「……姫、ちゃん」
姫子「だから――目、瞑って」
唯「……うん」
姫子「教科書立てて、先生から見えないようにするね」
唯(姫ちゃん、そんなこと考えてたんだ。だったら、一回くらいなら)
姫子「いくよ」
唯「……姫ちゃん、キスしたことある?」
姫子「――」
唯「……姫ちゃん」
姫子「するから。いい?」
唯「――ろ」
姫子「?」
唯「たわけ! 躱せと言っている!!!!」
和「ていや!!」
姫子「コンクリ!?」
和「……ふぅ」
先生「は?」
和「モブキャラが! 調子に乗るんじゃあないわよ!」ぺっ
姫子「……」ぴくぴく
――昼休み・2-1――
憂「うー、腰痛い……」
純「どうしたの?」
憂「ちょっと、お姉ちゃんに寄りつく虫を退治してたらこれがなかなか強敵でさ。少し
無茶しちゃったみたい」
純「あー」
梓「憂って、ホントに唯先輩が好きだよね」
憂「うん! お姉ちゃん可愛いもん!」
梓「それはわかるけど……」
憂「だよねー」
純「梓、変わった?」
梓「そんなことないよ! ……唯先輩に寄りつく虫って?」
憂「あのメガネだよ」
純「メガネってアンタ」
梓「ああ。和先輩か。朝のアレってそういうことだったんだ」
純「和先輩って昔から強かったよね」
憂「うん。中学生のころは私の方が強かったんだけど、今はどっこいどっこいかな」
純「マジ!? じゃあ私なんて指先一つでダウンじゃん!」
梓「何の話さ。それ」
純「憂が商店街を通ると、不良が蜘蛛の子散ったようにいなくなるっていうからね。まったく
恐ろしいよ」
憂「そんなことないよー」
梓「ねえ純。憂って、昔からこうなの?」
純「そうだよ。中学の時、唯先輩に告白した男がいるんだけど、憂ったら、その人を――」
憂「純ちゃん」
純「……はい」
憂「喋り過ぎ。めっ、だよ」
純「……は、はい」びくびく
梓「態度が急に変わった!」
憂「梓ちゃんも、あんまり人の過去を詮索しちゃだめなんだからね!」
梓(一体どんな過去が……。もしかして、あとになって語られる系のアレなのかな)
クラスメイトA「さっきの百合空手、すごくなかった?」
クラスメイトB「あれって軽音部の人でしょ。すごいよね、軽音部って」
梓「?」
クラスメイトA「まさかあそこで黒髪の人が七星愕掌を使うなんてね。あれって、使い手自体
がいないみたいだよ」
クラスメイトB「カチューシャの人だって、それを本来なら攻撃技の駿天葬で返すなんて
あり得ないよね。百合空手も奥が深いよ」
梓「ちょっと! その話聞かせて!」
クラスメイトA「今の話なら、私に聞くよりも本人に聞いた方がいいんじゃないかな。今日
も練習でしょう?」
梓「あ」
クラスメイトB「生の声聞けたら、私にも教えてね」
梓「……」
憂「澪さんと律さんが百合空手したんだ。どんな試合になったんだろう」
梓「百合空手って?」
純「なつかしー。まだ百合空手ってやってるんだ。昔はよく憂にボコボコにされたなー」
憂「純ちゃんがディフェンシングスタイルだったから、攻撃しないといけなかったんだもん」
純「まあそのことはいいじゃん。そんなことより、唯先輩のところ行こうよ」
梓「気になるんだけど」
憂「行こうよ! お姉ちゃんに会いたい!」
梓「さっき会ってきたんでしょ?」
純「それじゃあ行こう!」
憂「うんっ!」
梓「……まったくもう」
憂「梓ちゃんは会いたくないの?」
梓「会いたいよ! 唯先輩、抱きついてくれるだろうなぁ」
純「梓ばっかりずるい! 私も抱きつかれたい!」
梓「自分からいってみれば?」
憂「……」
純「い、いやぁ。それはまずいんじゃないかな。色々と、というか主に生命が」
憂「せやな。純ちゃんがお姉ちゃんに抱きついたら鼻からブチャラティ突っ込むところだった」
純「せめて食べ物でお願いします!」
――そのころ・3-2――
唯「――はっ!」きゅぴーん
和「どうしたの? 唯。可愛い顔しちゃって」
唯「今、なにか背筋がひやってなった!」
和「へえ。それって多分、ムギが氷入れてるからよ」
紬「うふふー」
唯「ひょわ! なにやってんのムギちゃん!」
紬「私、恋人の背中に氷入れるの夢だったのー」
唯「恋人じゃないし!」
信代「ん?」
アカネ「――」
唯「見ないで! やっかいなことになるから見ないで!」
姫子「それは無理。唯、可愛いもの」
唯「姫ちゃん生きてる! コンクリートの破片で頭打って血がどくどく出てたのに! 不思
議!」
姫子「それはこれがギャグSSだからよ」
澪「律、このハンバーグ食べるか?」
律「だったら、この唐揚げやるよ」
澪「ありがとう」
唯「澪ちゃんとりっちゃんは仲良しになったんだね。矛先が私から外れたみたいで嬉しい
よ」
澪「はい。唯、唐揚げあげる。私特製だからおいしいぞー」
律「ほい。唯、ハンバーグやる。私が作ったんだからなー」
唯「!?」
澪「真似するなよ律!」
律「私のほうが1F(60分の1秒)早かったもんね!」
和「ちょっと。静かにしなさいよ」
紬「そうよそうよ。唯ちゃんが怯えてるじゃない」
唯「もう怯えてる段階はとうに過ぎて、みんなと距離を置きたいという願望が芽生え始め
てるよ」
憂「おねーちゃーん!!」
唯「そして、さらに面倒な子がまた……三人もいる」
憂「おねえちゃーん! おねえちゃーん! おねえちゃーん!!!!」
梓「アハハ……」
純「ちょっと憂、騒がしいよ。みんな見てるよ」
姫子「あれって」
しずか「確か唯の妹だっけ?」
唯「……」
エリ「本人、知らないフリしてるけど」
憂「おねえちゃーん!!!!」
エリ「ふむ」とことこ
純「だれか来るよ」
エリ「どうしたんだい後輩くん。お姉ちゃんとはもしかして唯のこと?」
憂「あ?」
エリ「え?」
憂「どけ。お姉ちゃんが見えないだろ」
エリ「え?」ふら……バタリ
アカネ「エリ!?」
クラス「ざわざわ……」
律「……」
春子「あの子、今何かやったのか?」
信代「わからない! 見えなかった!」
和「これはもしかして――」
澪「憂ちゃん、習得してたのか!」
唯「え!? なに!? いきなりなにこれ!」
紬「――」ゴゴゴゴゴゴ
純「知られちゃった、か」
梓「覇気のこと、ね」
憂「私より可愛いお姉ちゃんに会いに行く!」どんっ!!!
唯「来週のワンピースにありそうな展開!!」
姫子「エリー、遊んでないでご飯食べちゃいなさい」
エリ「はーい」
憂「付き合ってくれてありがとうございます」
エリ「いえいえー」
唯「なんだったの。この三文芝居」
和「アンタが言う?」
律「まったくー、可愛いなあ唯はー」
澪「なんか、昨日と教室の雰囲気が違うな」
紬「きっと、皆が唯ちゃんを好きだってコトがわかったから変に牽制しなくてよくなったから
じゃない? 昨日まではなんとなくギスギスしてたもの」
和「そうかもしれないわね。唯はみんなに笑顔を振りまく天使ね」
唯「えへへー。好かれるのは厭じゃないよ。みんな仲良くが一番だね」
唯「よし! これで話が終わるね! 読者のみんなは乙の準備を――」
憂「でも、お姉ちゃんは私のモノですけどね」
梓「違うもん! 私のだもん!」
唯「まだ続くみたい! 面倒な妹と後輩を持った私不幸者!」
澪「うるさい! 唯は私の歌詞を一生歌ってくれるんだ!」
律「唯と一番相性いいのは私だ!」
梓「唯先輩は私にだけ抱きついてくれるんです!」
和「だったら私だってそうよ! 付き合った年数が違うわ!」
憂「私なんて17年も一緒だもん。ずっとずっと一緒だもん!」
姫子「隣の席を引き当てた私の小指は唯と繋がってんだから!」
紬「唯ちゃんにスキンシップ、もっとしてもらいたい!」
澪「澪ちゃんは優しいしって言ってくれるんだぞ!」
律「りっちゃんは面白いしって言ってくれてるぞ!」
梓「あずにゃんは可愛いしって言ってくれるんですよ! これはもう告白です!」
紬「……」
唯「怖いよぉ……」
澪律紬梓和姫子「唯が好きなのは私!!!!!」
唯「ふぇえええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
おしまい!
最終更新:2010年10月30日 22:41