梓「ん……あれ」
唯「……んー、おはよ」
梓「うぅん……おきてたの…?」
唯「私もいま目さめたとこだよぉ……おはよ」
梓「……うん。おはよ」
唯「あずにゃん、水とってぇ」
梓「……これ、のみたいの?」
唯「うん……め、かゆいよぉ…」ごしごし
梓「うーん……じゃあ、のませたげるよ」
唯「ありがとお……えへ」
きゅっ
ごくっ
梓「……ん」ちゅ
唯「んー……んむっ」ごくっ
梓「ん、むぅ……ぷはっ」
唯「えへへ、おはようキスだねぇ」
梓「もー…舌いれるなんて、はんそくだもん」
唯「あずさだっていれてきたくせにぃ」
梓「なっ……」かあっ
唯「あずにゃんてれてるねぇ」ぷに
梓「………」ぷいっ
唯「…おこんないでよぉ」
梓「おこってなんかないもん」
梓「……わたし、もうちょっとねるから」
唯「むー……」
梓「出る時間になったらおこしてね」
唯「うぅん……。」
梓「………」ちら
梓「…ねるんだもんっ」ぷいっ
唯「……ぎゅ」
梓「…!」
唯「おこったの?」
梓「……べつに」
唯「おこってるでしょ」ぴとっ
梓「おこってなんかないもん。あっちいっちゃえ」
ぎゅっ
唯「いかないよ。私、あずさのことだいすきだもん」すりすり
梓「……からだひえるよ?」
唯「あずさがあったかいからへーき」
梓「………」ぎゅー
唯「……えへ」
唯「ねぇ……どしたの?」なでなで
梓「だって………だって、ゆいが、かってにキスするんだもん」
唯「キスするの、やなのかな…」しゅん
梓「……やじゃ、ないよ?」
唯「じゃあどして?」
梓「やじゃないけど、やなのっ」
唯「んー、ごめんねあずにゃん」
梓「……あずにゃん、なんだ」
唯「やなの?」
梓「………べつに、いやではないですよ。ゆいせんぱい」
唯「やなんじゃん…」
梓「……やじゃないもん」
唯「……シャワーあびよっか?」
梓「……うん」
ぎゅっ
唯「あずさぁ、抱きしめられたらわたし動けないよ…」くすっ
梓「シャワーとか……あとででいいし」
唯「こどもみたいだね、きょうのあずさ」
梓「……やっぱシャワーあびるっ」
おふろ!
唯「ふぅ……あったかあったかだねぇ」にこっ
梓「………」
唯「あずにゃん、こっちきてよぉ」
梓「汗かいちゃったから、さきシャワーあびたいの」
唯「そだねぇ、きのうの夜はいっぱい汗かいたもんね」
梓「…!」びくっ
唯「あずにゃんとってもかわいかったもんね」にやにや
梓「なっ……ゆ、ゆいだってぇ!」
唯「えへへ、きもちよかったねっ」
梓「恥じらいとか、もとうよ……」
唯「いーじゃん。ふたりっきりなんだし」
梓「……だからはずかしいのっ」
唯「あずさ。こっちおいで」
梓「……へんなこと、しないからね」
唯「しないよぉ。ほらほら、こっちにきなさい」
梓「……やくそく、だからね?」
唯「うん。うそついたら、はりせんぼんのむよ」
梓「それはわたしがやだからだめっ」
唯「…えへへー」
唯「ふぅ……やっぱりうちのとちがってお風呂広いねぇ」
梓「そうだね……なんだかプールみたい」
唯「えいっ」ぽちっ
……ぶくぶくぶくぶくっ
梓「ひゃ?! おどかさないでよぉ!」びくっ
唯「んー、こういうとこ来るとついついいじってみたくなっちゃうんだよねぇ」
梓「……ゆいだって、やっぱこどもじゃん」
唯「じゃあわたしたち、こどもカップルだね!」
梓「なんでうれしそうなのっ」
唯「あずさといっしょだからだよ?」きょとん
梓「………かってにすればっ」ぎゅっ
唯「よしよし」なでなで
唯「……なんかおっぱいあたってると、どきどきしちゃうね」
梓「そういうことしないって言ったじゃん……」
唯「しないってばぁ。ほら、こっち戻ってきてよ」
梓「……じゃあ、せなか抱きしめてくれたら、ゆるす」
唯「うん。おいで?」にこっ
ぎゅっ
梓「……♪」
唯「…おちつく?」
梓「うん。……だいすき」
唯「……さっき、なんでおこったの?」
梓「だって…やだったんだもん」
唯「……ちゅーするのとか、えっちするの、いやなの?」
梓「そういうわけじゃないよ」
梓「……わかんないけど」
唯「私のこと、きらいになった……?」
梓「そんなわけないじゃん。……きかないでよ、そんなこと」
唯「……ごめんね、うざかったよね」
梓「ちがうの、うざいのは私のほうだもん」
唯「……うざくなんかないよ」
梓「うざいよ。だって、ムジュンしてるもん」
唯「むじゅん?」
梓「もっとキスしたいし、抱きしめたいし……えっちも、したい」
唯「……うん」
梓「ずっとつながってたい。離れたくないよ」
唯「……私も、だよ」
梓「だけど……ずっといっしょにいられないじゃん」
唯「そう、だよね。大学とか、受験とかあるもんね」
梓「キスして、えっちして、抱きしめあって、満たされるんだけどね」
梓「……はなれたとき、すごくつらくなるの」
唯「…………私も、だよ」
ぎゅうっ
梓「会うのが、こわくなるよ。すぐ電話したくなっちゃう」
唯「してもいいよ」
梓「電話、切れなくなっちゃう。束縛とかもすごいしたくなっちゃう」
唯「してほしいよ」
梓「やだよ。……私が、やだもん」
唯「してよ」
梓「………」うるっ
唯「して、ほしいよ…」なでなで
梓「……ごめんなさい」
梓「わたし、すごいわがまま言ってるよね…」
唯「……泣かないでよ」
梓「泣いてなんか、ないもん…」
唯「……よしよし。いいこいいこ」
梓「……ぐすっ…ひっく…」
唯「私も、バイトとか大変なんだけどね」
梓「うん……しってる」
唯「こないだも失敗しちゃって、怒られちゃったよ……あは」
梓「うん。おとといきいたよ」
唯「だけどね……あずさと会うのが楽しみで、毎日がんばってるんだ」
梓「………うん」
唯「だから……私もわがまま言って、いいかなあ?」
梓「……なに?」
唯「一緒にいるときは……いっぱいいっぱいふれあえた方が、うれしいかな」
梓「……気、使ってるんだよ」
唯「ちがうもん」
梓「私のために、なんて言わなくていいよ」
唯「だから違うってば。私がぎゅってしてちゅーしたいの」
梓「………」ぎゅ
唯「なので、私の恋人の中野あずにゃんさんはだまってしたがうことっ」
梓「……そんなに言うなら。しても、いいよ」
唯「えへへ、ありがと」にこっ
梓「…ねぇ」
唯「んー?」
ちゅ
梓「……ひぁ……あっ」
ぐいっ
唯「きゃ?! ……もう、いきなり押さないでよ」
梓「首は、やめてよ…。だって……かんじちゃうもん」
唯「やなの?」
梓「やじゃないけど……ちょっと、おはなししたかったの」
唯「そっかぁ。それはわるかったよ…えへ」
梓「……大学、いそがしい?」
唯「いそがしいっちゃいそがしいかなっ」
梓「律先輩はレポートさえ出したらひまだって言ってたよ」
唯「りっちゃんは実家通いだからわかんないんだよ…ちぇっ」
梓「……ねぇ」
唯「んー?」
梓「私たち、これからも……つきあって、いけるよね」
唯「うん」
梓「そんな軽くいわないでよ」
唯「軽くなんて言ってないよっ。ぶーぶー」
梓「だって……即答じゃん」
唯「……私、塾講もやろうかなって思ってるんだ」
梓「お金、そんなに使わないはずじゃん。ワウペダルそんなにほしいの?」
唯「……あれはうそだよぉ」
梓「……ゆいなんか、はりせんぼんのんじゃえっ」
唯「ごめん……」
唯「でもね、いまのうちにいっぱい稼いどきたいんだ」
梓「……会えない方がやだよ」
唯「だって、はやくしないと、間に合わなくなっちゃうもん…」
梓「……どういう、こと?」
唯「だって、あと五ヶ月もしたらあずさも卒業じゃん」
梓「うん……それがどうしたの?」
唯「そしたら二人で部屋借りて住もうよ」
梓「……さいてーだよ」
唯「え、だめかな?」
梓「……不安だったんだよ? いきなりバイトふやしたりするから」
唯「んー、サプライズプレゼントにしようかなって」
梓「いそがしくなって、電話もあんまできなくなって、勉強も手に付かなくて…」
唯「うーん、心配させちゃったかな…」
梓「逆効果だよ……はぁ」
唯「ごめんね。あずさ」
梓「でも、すごくうれしかった」
唯「……うん」
梓「ゆいがそこまで考えてるなんて、ちょっとおもわなかったよ」くすっ
唯「あずにゃん、さいてーだね……あは」
梓「ねぇ」
唯「なぁに?」
梓「なまえよんでよ」
唯「いいよ。……あずさ」
梓「…ゆいさんは、あずささんのこと、すきですか?」
唯「……月がきれいですね。なんちゃって」
梓「もう……いまは朝だよ?」くすっ
唯「澪ちゃんから聞いて、一度つかってみたかったんだもん…えへ」
梓「……いまはちゃんとした言葉で聞きたいのっ」
ぎゅっ
唯「あずさ、あいしてる」
梓「ありがと……わたしも、ゆいのこと、あいしてるよ」
唯「……えへへ」
梓「ねぇ…」
唯「なーに?」
梓「……なんだか、のぼせちゃったかも」
唯「ずっとお風呂の中だったもんね……」
梓「部屋、いこうよ」ぎゅ
唯「そだねぇ。チェックアウト2時だし、まだたくさん居られるもんね!」
梓「ねぇ……」
唯「えへ、こんどはなぁに?」
梓「……ありがと。わたし、ゆいと付き合えてよかった」
唯「かしこまらないでよ、てれちゃうよぉ…」
梓「…だからこれからも、」
唯「うん」
――ずっとずっと、ずーっと私の恋人でいてください。
そうお願いしてみたら、唯は真剣に聞いてた顔をふわっとほころばせました。
なんだか精一杯だった気持ちもあのやわらかい笑顔に包み込まれるようで……私まで口元がゆるんでしまいます。
先輩だった頃から、先輩じゃなくなってからも、ずっとずっと変わらない人です。
唯は私の両肩にそっと手を添えると、その大きな瞳でのぞき込むように見つめて、こう言いました。
――そうだね。大人になっても、ずっと一緒だよ。
先のことや変わっていくことが不安だったけれど、そのとき本当になんだか大丈夫そうな気がしたのです。
私は胸の奥に灯った光のおかげで少しずつうるんでいく目を、そっと閉じました。
しばらくして唇に伝った熱い感触は……たぶん一生、忘れないと思います。
おわり。
最終更新:2010年10月30日 23:19