舞台裏!

 2月14日 澪

今日は梓と唯にとって、かけがえのない一日になるだろう。

主役の二人のために、軽音部は休みにしようと律から提案があった。

普段は馬鹿なことばかり考えているくせに、こういう時はしっかりと部員を思いやれる。

そういうところが、律の良いところだ。

そんな律に、私はチョコを渡そうと考えている。

うん。

もちろん、理由は梓と同じだ。

一日中、緊張しっぱなしの自分がいる。

そのせいか、廊下で後輩が何人か声をかけてくれたけど反応すらできなかった。

きっと、青ざめた顔でカチコチと歩いていただろう。

ふと唯に目をやると、震えるように机に突っ伏していた。

放課後に、ビックイベントが控えているからだろう。

私も同じ気持ちだ。

苦笑いしながら前を向くと同時に、5限目の終了を告げるチャイムが響いた。




舞台裏!

 2月14日 律

おかしい。絶対におかしい。

私はずっと疑問に思っていた。

だって、澪が一個もチョコを貰っていないのだ。

「どうなってんだ?」

小声で独り言をいいながら、澪の方に視線を向ける。

そこには、青白い顔で震えている澪がいた。

「具合でも悪いのか?」

とにかく、授業が終わったら澪のところに行ってみようと思った。

気になってソワソワしている内に、5限目が終了した。

それと同時に私は立ち上がり、澪の席へ向かった。

澪は下を向いて、何かを唱えていた。

「ダイジョウブダイジョウブダイジョウブ……」

何が大丈夫なのかはわからなかったが、とりあえず正気に戻そうと顔の前で手を振ってみる。

「おーい、澪ー。戻ってこーい」

その声が届いたのか、澪はビクッと身体を震わせた。

「り、律!?」

そんなにビックリしなくてもいいだろ!




休憩時間! 澪

 自分を落ち着かせようと必死になっていると、律が私の席までやってきた。

話を聞くと、私の調子が悪そうだったので心配してきてくれたらしい。

机の上に置いてある鞄からお茶を取り出し、一口飲む。

なんだか喉がかわいて仕方がないのだ。

今日は、律がいつもと違ってみえた。

目の前にくるだけで、ドキドキしてしまう自分がいる。

いつもより、その存在を意識してしまうからだろうか。

「澪しゃん顔真っ赤だぞー」

ケラケラと笑う律が、私の額に手を置いた。

「澪、誰かにチョコあげるの?」

ノートを手に抱えた和が、唐突に話し掛けてきた。

きっと、開けっ放しになっている鞄から顔を覗かせているチョコが、目に入ったんだ。

途端に額を人差し指でポリポリかきはじめる律。
なんだか動揺しているように見えるのは私の気のせいだろうか。

「あ、ああ!」

精一杯に答えたつもりだが、こんなことしか言えなかった。

「渡せるといいわね。ところで、律は誰かに渡すの?」

ビクッ、と同時に震える私と律。

待て、なんで律まで震えるんだ?

まさか……

「り、律も誰かに渡すのか!?」

前のめりになって叫んでしまった。




休憩時間! 律

 和に聞かれたくないことを聞かれてしまった。

しかも澪の目の前で。今まで隠していたのに。

「あー。いや、まあ……」

曖昧に答えることしかできない。

「どうなんだ!?」

さっきまでの青白い顔はどこにいったんだ。
赤みを帯びた興奮気味の顔で私を問い詰めてくる澪。

観念した。もう逃げられないだろう。

「う、うん……。渡すよ」

「誰にだ!?」

目の前の顔に、私は圧倒される。
渡す人に誰に渡すと聞かれて、答えられるわけがない。

高く鳴り響くチャイムによって、私は助け出された。



書き始めたけど書けなくなったすまん






最終更新:2010年11月01日 19:59