水飲み場前 空き地
澪「場所はここ。とにかく、火の始末には気を付けてくれよ」
唯「了解です、隊長」 びしっ
紬「隊長っ♪」 びしっ
澪「誰が隊長だ。まずは地面に穴を掘って、そこにサツマイモを入れるんだ」
唯「結構手順があるんだね」
紬「琴吹、穴を掘らせて頂きます」
澪「琴吹隊員、無理はするなよ」
律「乗ってきたな、おい」
紬「このくらいで良いかしら」
澪「大丈夫だろ。次はサツマイモを新聞紙で包んで、水を掛ける」
梓「そのまま入れないんですか」
澪「それだと、生焼けになるらしい」
唯「・・・ほら、皆既日食だって。この間だと思ってたのに、もうずっと前の事なんだね」
律「古い新聞読むのって楽しいよな」
澪「良いから、仕事しろよ」
唯「まあまあ。ほら、ビートルズ来日だって」
紬「ドリフが前座をしたっていう?」
澪「へぇ」
律「結局自分も読むのかよ。でもって、いつの新聞なんだよ」
澪「穴にサツマイモを埋めて、落ち葉を掛けて。……後は火を付けるだけだ」
紬「私っ、私やりますっ」 びしっ
澪「危ないから、気を付けろよ」
紬「了解です、隊長」 びしっ
梓「ムギ隊員・・・。ムギ先輩、髪が掛かると危ないですから、後ろで束ねますね」
紬「ありがとう、梓ちゃん♪」
澪「梓も長いだろ。私が後ろで束ねてやるよ」
梓「あ、ありがとうございます」
唯「澪ちゃんも長いじゃない。私が後ろで束ねるよ」
澪「ああ、ありがとう」
律「何なんだ、この光景は」
唯「りっちゃん、りっちゃん」
律「しゃーないな。唯の髪はって、掴み所がないじゃん」
唯「たはは」
澪「なんだよ、それ」
梓「もう、二人とも何やってるんですか」
律「いやいや、お前らに言われても」
紬「うふふ♪・・・では、火を点けまーす」 カチカチッ
ぼーっ。
唯「おお、すぐ点いたね」
澪 「新聞も混ぜたからな。後は見てれば良いだけだ」
紬 「暖かいわねー」
律 「たき火って、妙に和むよな」
梓「はいです」
ぼー。
唯「ずっとこうしてたいね」
澪「そうは言ってもな」
唯「たはは、そか」
澪「今は綺麗で暖かくても、燃やせば消える。そういう事だ」
紬「そう思って見てると、ちょっと切ないわね」
唯「でも私達は、ずっと一緒だよ」
紬 「唯ちゃん」
律「この野郎。きれいにまとめやがって」 がしっ
唯「りっちゃん、痛ーい♪」
梓「・・・消えてきましたよ」
澪 「この後は熾火。消し炭になった灰の熱でゆっくり焼くんだ」
梓「華やかな時は一瞬ですね」
律「梓もおセンチになってるな」
梓「べ、別にそういう訳じゃ。ただあれだけ枯れ葉があったから、もう少し燃えてるかと思って」
唯「人生とは、とかく儚い物なのだよ。祇園精舎はインドのお寺なんだよ」
紬「うわー、思わずアンコールワットと勘違い♪」
律「1ミリたりとも、意味が分からん」
唯「焼き芋、焼けたかな」 ごそごそ
律「一気に即物的だな、おい」
唯「・・・まだ固いね」
澪「じっくりゆっくり、時間を掛けて焼くんだよ」
唯「まだかな、まだかな♪」
律「子供か、お前は」
紬「でもこうして待ってる時間も、また楽しいわよね」
唯「まなかな、まなかな♪」
梓(何故、双子)
澪「・・・そろそろいいんじゃないか」
唯「隊長。私がやってもよろしいでしょうか」
澪「よし、気を付けて作業に当たれ」
律「ノリノリだな。というか、結構灰が舞うな」
紬「唯ちゃん、まだ熱いから気を付けてね」
唯「可愛いお芋ちゃんのためなら、私は平気だよ」
梓「その可愛いお芋ちゃんを、今から食べる訳ですか」
律「・・・まあ、その辺は突っ込むな」
唯「出てきたよ。あったか、ほかほか。お芋ちゃんが出てきたよ」 ごろごろん
律「おー、何か良い感じ」
唯「中まで焼けてるかな。・・・あちあち」
律「何やってるんだよ。・・・あちあちっ
紬「・・・あちあち」
梓(わざとやってるし。しかも、可愛いし)
澪「後は新聞紙に包んで食べるだけだ」
唯「へへ」 ごそごそ
梓「食べないんですか?」
唯「これは家に持って帰って、憂と一緒に食べるんだー♪」
紬「唯ちゃんは、本当に憂ちゃんの事大切に思ってるのね」
唯「だって妹だもん♪」 にこっ
澪「だってさ」
律「なんだよ、もう。はいはい、私も聡に持って帰るよ」
澪「私も、ママ・・・。お母さんに持って帰ろうかな」
梓(思い切り自爆したな)
律「じゃ、食べるぞ。頂きまーす」 ぱんっ
唯、澪、紬、梓「頂きまーす」 ぱんっ
澪「・・・わ」 ぱかっ
律「旨そうだなー」 ほかほか
紬「では早速」 ぱくり
梓「あふっ」 はむはむ
唯「・・・んまいっ♪」 にこっ
唯「あったか、ほかほか。甘くてしっとりしてて、美味しいね-」
律「案外あなどれんな、サツマイモの奴も」
澪「・・・でも太らないか、これ」
紬「ほ、ほら。甘い物は別腹って言うじゃない」
梓「もう一段階、お腹が出てくるって事なんですかね・・・」
唯「私は食べても食べても太らないけどね」 にこっ
梓(憎い、今はその笑顔が憎い)
さわ子「みんな、やってるわね」
唯「あ、さわちゃん。どうして学校にいるの?」
さわ子「今日は当直なのよ。大人になれば、土曜も日曜も関係無くなるのよ」
紬「まあまあ。ほら、さわ子先生も食べて下さい」
さわ子「良い感じに出来たみたいね。・・・んー、何か懐かしい味がするわ」
律「疎開先で食べた味ってか?だははー」
さわ子「玉砕覚悟とは良い度胸だな、デコッパチ」
…
律「あー、ひどい目に遭った」
澪「自業自得だ。・・・あれ、和?
和「生徒会の用があって、来てたのよ。結局本当にやったのね、たき火」
唯「あったかほくほくで美味しいよ。はい、和ちゃん」
和「ありがとう。・・・ん、本当に美味しいわ」
唯「秋って味だよね-」
和「唯らしい感想ね」 くすっ
唯「そかな、たはは」
律「後片付けは良いかー」
澪「灰には水を掛けて、道具は返して。ゴミも捨てた。後は帰るだけだ」
紬「楽しかったわねー」
梓「それに、美味しかったです」
律「ま、焼き芋大会は大成功って事か。唯、良かったな」
唯「まだ終わってないよ」
律「へ?」
学外、急な坂
律「どこまで行くんだよ」
紬「・・・こっちって、もしかして」
唯「もうすぐだよ」
梓「坂、きついですね」
澪「なるほど、な」
梓「何がですか?」
澪「うふふ♪」
梓(何故、ムギ先輩風)
街外れの林
律「おお、ここはまさにエルドラドッ」
澪「真似るなよ。・・・、落ち葉を集めた林か」
唯「そだよ。やっぱり、ここにはお世話になったからね。ちゃんとお礼を言わないと」
紬「うふふ♪ありがとうございまーす」
律「礼儀正しいな、おい」
梓「大体、そういう意味だったんですか?」
唯「もう、あずにゃんはクールなんだから。でもそこが、いいところ♪」 きゅっ
梓「ちょ、ちょっと。こんな所で抱きついたら」 ふら
唯「え?」 ふらふら-、ぱたんっ
澪「お、おい。大丈夫か」
唯「たはは、倒れちゃった」
紬「下か落ち葉だったから良かったのね」 ほっ
唯「本当、落ち葉様々だね」
律「その落ち葉を燃やしたんだろ、おい」
梓「そうですよ。もう、唯先輩は」
唯「ごめん、ごめん。でもこうしてると、ちょっと気分良いね」 ごろーん
梓「まあ、否定はしませんけど」 ごろにゃーん
紬「・・・あの、私もお邪魔して良いかしら」 うずうず
唯「勿論、大歓迎だよ」
梓「どうぞ、ムギ先輩」
紬「ありがとう。・・・えいっ」 ぱふっ
唯「わっ」
梓「きゃっ」
紬「わー、すごい面白いわね-」
唯「ムギちゃんはチャレンジャーだね」
梓「自分から飛び込むなんて、大胆すぎます」
紬「琴吹、一所懸命頑張りました」 びしっ
律「楽しそうだな、おい」
澪「まあ、そうなのかな」
律「・・・分かる、澪の気持ちは分かるよ」
澪「何が」
律「私も一緒に寝転びたい。でもそんなのはしたないし、キャラじゃないし。ちょっと怖いし。
あーん。私の乙女心は、いつでも可憐でフルフルフルーチェなの♪」
澪「意味分かんないし、最後関係無いし」
律「良いから、ほれ」 ぐいっ
澪「おわっ」 ふらー、ぱたんっ
澪「りーつー。おーまーえーなーっ」
紬「まあまあ。澪ちゃん軽いから、私は平気よ」
澪「あ」
唯「思いっきり、ムギちゃんの上に倒れたね」
律「ぷっ」
澪「ご、ごめん。で、お前が笑うな」 ぐりぐり
律「ひぇーっ」
梓「もう、皆さん何してるんですか」
唯「だって、秋だからね」
梓「全然答えになってませんよ」 くすっ
唯「天気は良いし、空は青いし。落ち葉は柔らかいし。言う事無いね」 きゅっ
梓「はいです」 きゅっ
紬「またこうして、一緒に遊びたいわね」 きゅっ
澪「いつだって遊べるさ。だって私達は」 きゅっ
律「私達は固い絆で結ばれた、心と心の繋がり合う。・・・えーと、なんだっけ」 きゅっ
澪「上手くまとめようとして、自爆したな」 きゅーっ
律「ちぇー」 きゅーっ
唯、澪、紬、梓「あはは」
夜、平沢家リビング
唯「・・・という訳で、今夜のデザートは焼き芋です」
憂「ありがとう、お姉ちゃん♪」
唯「チンしたばかりだから、温かいよ。・・・あちあち」
憂「お姉ちゃん、大丈夫?」
唯「平気、平気。・・・はい、憂の分」 ぱかっ
憂「ありがとう。・・・わー、美味しいね」 はむはむ
唯「本当。こんなに美味しいなら、毎日でも食べたいね」 はむはむ
憂「それは絶対に飽きるよー」
唯「そかそか。たはは」
憂「もう、お姉ちゃんったら♪」
ぴゅー
唯「外は寒そうだね」
憂「もう、すっかり秋だよ。そろそろ、こたつの準備をした方が良いのかな」
唯「良いねー。おこたは人類が生み出した、史上最大の発明品だよ」
憂「お姉ちゃん、こたつ好きだもんね」
唯「寒い時は、温かくしないとね。・・・憂、手は冷たくない?」 きゅっ
憂「大丈夫だよ。お姉ちゃんの手は、温かいね」 きゅっ
唯「えへへ。あったか、あったか♪」
憂「あったか、あったか♪」
唯「今日は、一緒にお風呂へ入ろうか」
憂「うん」
唯「ういー♪」
憂「お姉ちゃん♪」
唯、憂「あったか、あったか♪」
終わり
テーマとしては律澪を匂わせつつの、「秋」。
ちなみに寝転んでいる並び順は
唯 梓 ムギ 澪 律
となってます。
また唯の性格ですが、「普段はふにゃふにゃしてるけど、芯はしっかりしてる子」という位置づけ。
ご指摘があったように「あほの子」扱いされている事が多いため、その辺を払拭する意味も込めて書いています。
最後に。
本作とは全く関係無いですが、ふと思い付いたネタを一つだけ。
平沢家 リビング
唯「うぃーっ」
憂「お姉ちゃん、呼んだ?」
唯「あ。ごめん、ごめん。ちょっと、ハンセンの真似してて」
憂「もう、お姉ちゃんったら」
唯「はっ、はっ、はっ」
憂「わー、ブロディ降臨だね」
唯「やっぱり超獣コンビは最強だよ。憂♪」
憂「お姉ちゃん♪」
終わり
最終更新:2010年11月01日 23:45