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次の日
憂「お姉ちゃん…!今日は部活休んで病院に行こうよ……」

憂はフラフラしながら学校へ行こうとする唯を引き止めた。


唯「だめ…もうすぐライブだし…それにみんなに迷惑かけちゃうから…」

憂「お姉ちゃん!」


唯「わ、私は大丈夫!」ビッ


唯は震える唇で笑いながら、震える左手でピースをした。

憂は悩みながらも唯の希望に答えた。
唯の肩を掴み一緒に学校へ向かった。


学校
唯「みんなおはよ~!」

憂「おはようございます…」

唯はみんなにバレないように力いっぱいに挨拶した。
反対に憂は力なく挨拶をした。


律「おぉー!憂ちゃんも来たんだ!?」


憂「え、えぇ!私もお姉ちゃん達の演奏を早く聞きたくて……」

憂は作り笑いをしながら、なんとか誤魔化した。


律「まだ練習中だから完璧じゃないんだよなー!」

律の笑顔は自然な笑顔だった。

唯は力なくギターを持った。
ふらつかない様に必死に右足でバランスをとった。


澪「じゃあ今日は新曲の2番から行くぞっ」

律「よーしっ!1、2、3、4!」


ジャ………


紬「あれ……?」


ベース、キーボード、ドラムの音は聞こえたがギターの音は聞こえなかった。


律「唯!どうしたん……」

律はそう言いかけて言葉を止めた。


唯が泣いていた。

唯「うっ…うっ…動いてよ……」

澪「……どうしたんだ……唯?」

紬「唯ちゃん……?」


唯の左手は弦を押さえていたが、指先がプルプル震えていた。

憂「お姉ちゃん!」


唯は憂に寄りかかるように倒れた。


澪「おい!唯っ!」


憂は3人の不安そうな顔を見て我慢出来なくなった。

唯「憂……だめっ!」


憂は唯の言葉を無視して唯の病気のことを伝えた。
唯はさらに泣いた。

澪「うそでしょ……?」

紬「………」

律「………」

澪以外は沈黙していた。

憂「本当です……いつかは分からないけど……お姉ちゃんの左半身は……」


唯「ごめんね……ごめんね……ごめんね……」


唯は謝ることしか出来なかった。
3人は聞くことしか出来なかった。

唯「…でもね私!夏休み明けのライブは成功させたいのっ!」


憂「私からもお願いします!……今度のライブが最後になっちゃうかもしれないからっ!…」

3人は無言で考えた。

唯の望み通りこのままライブに向けて練習をすべきか。
唯の体を気遣って休ませてあげるべきか。


まだ高校生の3人にはとても決められなかった。

唯「みんなお願いっ!次が…次のライブが最後になってもいいからっ!…」

唯は涙を堪えきれなかった。
みんなの前では心配かけないと決めていたが堪えきれなかった。


律「……練習しよう」

紬「…うん…私もライブ成功させたい!」

澪「お、…おい!唯の体の方が……」

唯「澪ちゃんお願いっ!」


澪「……唯……」


澪は力の抜けた唯の左手を見て、決断した。

澪「……ライブ……成功させよう!」

4人は前とは違う状態になってしまったが、前より団結力が深まった。


その日から軽音部は練習に打ち込んだ。
いつものティータイムを我慢して練習をしていた。


唯の告白から日にちが経ち、ついに翌日にライブを控える日となった。


唯「みんな…私のワガママに付き合ってくれてありがと…」

律「お礼なんて言わなくていいよっ!」

紬「そうだよ!私たちは軽音部だもんっ!」

澪「…ついに…明日だな…」

澪がそう呟いた。
唯はギターを抱き締めた。

唯「あと1日だけ…あと1日だけでいいから…」


唯は左手を見ながら言った。

その日の帰りは憂と一緒に家に帰った。


唯の家
憂「お姉ちゃんっ!ついに明日ライブだねっ私お友達連れて行くね!」


憂はムリヤリ元気に言った。
唯はその言葉を聞いて自然に元気になった。

唯「あいがと~憂っ私頑張うねっ!」

余り呂律が回らなかったが憂には十分に伝わった。


今夜のご飯は唯の為に飲み込みやすい離乳食にした。

唯は「赤ちゃんみたいだね~」って笑っていた。


いつもと変わらない笑顔のせいでに憂は泣きそうになったが我慢した。


その夜、2人は同じベッドで寝た。

唯も憂もなかなか寝付けなかった。


唯「ねぇ~憂~?」

憂「な~に?お姉ちゃん?」

唯「…あいがとねっ」

憂「え……?」

唯「私のワガママ聞いてくえてあいがとう。おかげでライウまで練習できたよ…」

憂「…私こそありがと。……明日のライブ上手くいくといいねっ!」


唯「うんっ!」



ある暑い真夏の日

セミの鳴き声が響き渡っていた。



ライブ当日
律「…やっとライブの日が来たな…」

澪「………うん」

紬「唯ちゃん調子はどう?」


唯「えへへ…ほらっ」パッ

唯はみんなの前で左手を握ったり開いたりした。
決して機敏に動いていなかったが、みんなは力強さを感じた。

唯「憂~…来てるかな?」チラッ

唯は舞台裏から観客席を覗き、一番前の席に憂が座っているのに気付いた。

唯「……よ~しっ!」

律「じゃあみんな!今日は思いっ切り楽しもうっ!」


3人「おぉーっ!」

律「みんなーっ!今日は来てくれてありがとうっ!」

観客「いえーいっ!」

律「こんな暑い夏だけどもっともっと暑くしてやるから覚悟しろよっー!」

律「1、2、3、4っ!」

律のMCで観客は盛り上がり、そのテンションのまま1曲目の演奏をはじめた。

唯は転ばないように椅子に座ってちゃんと演奏をしている。


軽音部のみんな、憂もその姿を見て安心していた。


唯「(良かったっ!……ちゃんとギターが弾ける……!)」


律「(平気そうだな唯…。)」


ギターの音、ドラムの音、ベースの音、キーボードの音

全てが綺麗に混ざっていた。


律「(よしっ!次の曲で最後だ…)」

律はそう思いながら1曲目を演奏をしていた。

律「唯…?大丈夫そうか?」

澪「ちゃんと1曲は出来たなっ」

紬「練習の成果が出ましたね!」


唯「……………」


律「唯……?」


唯「…ごめんね……みんな…」


澪「唯っ!」
紬「唯ちゃんっ」


唯の左手はダラリとした。

唯「はは……私……もうダメみたい…」

唯「でも……ここまで演奏出来て良かった…」

憂「お姉ちゃん!」

憂も観客席から唯のもとに向かった


唯「ごめんね…。こんな中途半端で終わらしちゃって…」


律「そんなことない!」

澪「そうだよ!……唯はよく頑張ったよ!」

紬「唯ちゃん…ありがとね…」


唯「み……みんな……」

唯は涙を流した。

その日唯たちの演奏は中止になり、次のバンドの演奏へとあっという間に切り替わった。



唯「うっ……うっ……」


軽音部のメンバーをなんて声をかけて良いか分からず無言でいた。


最初に声を出したのは唯だった

唯「ライブ…楽しかったなぁ…」

憂「わ……私も聞いてるだけで楽しかったよ!」

唯「ギー太ごめんね?……もう弾いて上げられないよ…」

律「……唯…」

唯「みんな…私はもう大丈夫だよ…」

唯「あの時みんなが私のワガママに付き合ってくれたから今日を迎えられたんだよ?…」


唯「本当に…本っ当にありがと!」


唯は泣き止んだが、唯の言葉を聞いて他の4人は泣き始めた。


セミの鳴き声よりも大きい声で泣いた。

唯はもう後悔をしていなかった。


軽音部に入ったこと。


みんなと出会ったこと。



最後の最後までみんなと演奏出来たこと。


もうギターを弾けなくなってしまったが、それ以上に素晴らしい多くのものを唯は得た。


数年後

長い成人式が終わり、唯の提案で軽音部は学校へと来ていた。



学校
律「唯…いくぞっ、せーのっ」

紬「よいしょっ」

律と紬は息を合わせて唯を車椅子に乗せた。

唯「へへっ~ありがと~!」

澪「さ、音楽室まで行くよ!」

澪はそう言って車椅子を押して音楽室まで向かった。



音楽室
唯「あ~久しぶりだなぁ!……あの夏の日を思い出すな~」


唯はあまり変わっていない音楽室に安心した。

律「本当に変わってないな~」

唯「むぎちゃん!むぎちゃん!」キラキラッ

紬「ティータイムですね!そう言われると思ってちゃんと持ってきましたわ」


澪「おい…勝手に食べていいのか?」


律「ったく澪はまだ心配性が治らないな~」

澪「う、うるさいっ!」


唯&紬「ははははっ」

唯「ん~チーズケーキおいしいなぁ~」

律「なぁ唯?どうして音楽室来ようと思ったんだ?」


唯「それはね、見たいものが会ったんだ!」

紬「見たいもの?」


そう言って唯は右手でホワイトボードを指差した。

そこには学生時代に書いた、『武道館』の文字があった。

唯「私、今度は客席から見てるからねっ!」


律、澪、紬そして新しく入った梓。



この4人は明日、武道館でライブを行う。



おしまい!



最終更新:2010年01月21日 03:35