梓「今日は疲れてるんです。寝かせてください」

唯「えっまた…?で、でも最近ずっとご無沙汰だし…いいでしょ?ね?」

梓「ちょっと…!やめてください!妻が嫌って言ってるのに無理やりするんですか?レイプですよそれ」

唯「そ、そんなつもりじゃ…」

梓「とにかく今日は疲れてるんです。我慢できないなら自分で処理してください。お休みなさい」

唯「あっ…」


私とあずにゃんが結婚して1年。
ラブラブ婦妻(夫妻)って皆から羨ましがられてたんだけど、それも結婚して最初の1ヶ月程度。
今は二人の関係もすっかり冷め切ってしまっています。結婚するまであんなに仲良しだったのに、何でかなあ…?

梓「…」

唯が部屋から出て行った。
まさか本当に一人で処理するつもりなんだろうか。最低。
っていうかなんでそんなにシたがるんだろうか。全く持って理解できない。

昔は、今のように冷たく断るような事はしなかった。唯を愛していたし、私も望んで行為に及んでいたのだが…


四六時中一緒の部屋で生活すると、今まで見えなかった相手の嫌な部分がどうしても目に入ってくる。
彼女はとにかく自堕落で、適当。もちろん昔からそういう性格だということは承知していたし
そこが可愛いとか、放っておけないなんて思いつつ世話を焼いていた。
結婚して、他人と一緒に生活するというのがこんなに大変な事というのを私は知らなかったのだ。
休みの日にお互いの部屋を行き来していた頃からは想像できないほどの負担で、ストレスはたまる一方だった。

それ意外にも理由はあるが…私の彼女を見る目は変わってしまった。
手のかかる動物を飼っているような気分だ。そんな相手に「そういう気分」になれる訳がない。


………

梓「ちょっといい?」

唯「あ、何?」

梓「多分…2日後かな。その日ならいいから、一人でしないでね」

唯「へ…?あ、うん!わかった!」


あずにゃんは時々自分から何日後ならいいよ、とか言ってくれます。
あずにゃん疲れてる事が多いみたいだし、体調が良さそうな日を選んでるんだろうな。
なんで先の事がわかるのかは不思議だけど、あずにゃんが誘ってくれた日しかできないので、私は嬉しいです。


唯「あずにゃん、好きだよ」


彼女は愛の言葉を囁きながら私の胸に手をかけてきた
気の利いた事を言ったつもりなのかもしれないが、生憎彼女からそんな事を言われても嬉しくも何ともない。
目的があってこの行為をしている私は彼女の動きを遮り本題に入るよう促した。

梓「そっちはいいですから。下の方にいってください」

唯「え、でも」

梓「もう濡れてますから」

唯「あ、そうなんだ…」

彼女が部屋に来る前に、自分で準備をしておいた。
スムーズに事を運ぶためというのもあるが、必要以上に体を触られたくないというのもあったからだ。
何も知らない彼女は何を勘違いしたのか、一人で顔を赤らめていた。


唯「じゃあ、いくよ…?」

梓「どうぞ」

唯「んっ…」


二人の性器が触れ合った後、彼女は腰を動かし始めた。
彼女とのセックスは嫌だが、下半身の感触だけに集中すればそれなりに気持ちはいいし
生理現象として私の体も少なからず反応するのだが、時折漏れる彼女の喘ぎ声で私は現実に引き戻される。
快感に耐えているのかマユをひそめる彼女の顔は堪らなく不細工に見えるし
うぅ、とかあぁ、とか情けない声を聞いていると鳥肌が立ちそうな気すらしてくるのだ。

では、そんな私がなぜ彼女とセックスをするのか。
私が『溜まっている』わけでもないし、彼女を引き止めるため…夫婦生活を保つためにしているわけでもない。

理由は、子供が欲しいから。

もちろん必要以上に彼女とするつもりはないので、私は毎月デキやすい日を選んで、その日だけ彼女とセックスしている。
つまるところ私にとってセックスとは子供を作るための作業なのだ。
彼女にとってセックスがどのような意味を持つのかは知らないが、私にとってはどうでもいい事である。


唯「ね、気持ち良い?」

梓「…」


私が目を閉じ顔を背けたるのを無言の肯定と取ったのか、彼女の動きが速くなった。
いつもそうだ。私の気持ちに気づかずに、一人で勝手に浮かれて、盛り上がる。
まあ激しく動けばそれだけ早くイッてくれるわけで、私としては助かるのだが。


唯「あ、あずにゃん。私、も、だめかも…」

梓「いいですよ。好きな時に…」

唯「……っあ!ああっ!」


彼女が自分の下半身を私の部分に強く押し付け体を震わせる。
身を後ろに反らし、ビクビクと震える姿はなんだか陸に打ち上げられた魚を連想させた。
昔は愛おしくてしかたがなかった彼女の感じる姿や達する姿も、気味悪く感じてしまい、私はただ黙ってその姿を見つめていた。


………

唯はあの後すぐに私のベッドで寝てしまった。
いつもなら一人で寝ろと叩き出すところだが、間抜けな寝顔を見ていたら何だかどうでもよくなったので、放っておく事にした。

自分達が、女同士で子供を作れないことなどわかっている。
なぜ私が子供を欲しがるのか。私は子供さえできれば、全てが好転するような気がしたのだ。

結婚して、子供が産まれて、二人で育てて…。愛する人と、子供と一緒に笑いあう。
世の中の男女なら誰でも手にすることが出来る、ささやかな幸せ、人並みの環境。
子供さえできれば、自分達にも訪れる。祝福される。
将来への不安、周りからの好奇の視線でささくれ立った私の心を癒してくれる。
私と唯が出会って、結ばれた…毎日が輝いていたあの頃に戻ることができる。
私達二人の愛が、子供という確かな形となり、私達に幸せを運んでくれると。

梓(…結局は言い訳だよね。私が弱いだけだ)


隣では唯が安らかな寝息を立てて眠っている。
それにしても、悩みも何も無さそうな、能天気な寝顔をしている。夢のなかで大好きなアイスでも食べているんだろう。
それだけじゃない。普段から、私のご飯がおいしいとか、そんなことばかり考えているに違いない。なんて幸せな人なんだろう。
私がどれだけ悩んでいるのかなんて、絶対きづいていないんだ。
あずにゃんと一緒にいれて嬉しいな、とかそんな事し考えてないに決まってる。気楽な人だ。

彼女の寝顔を見ていたら、なんだか一人で色々考えこんで腹を立てたり、ムシャクシャしている自分が馬鹿らしく思えてきた。
彼女を起こさないようそっと手を握ると、キュッと握り返されてた。まるで赤ちゃんだと、思わず吹きだしそうになる。
とりあえず、明日からはもう少し優しくしてあげようか。そんな事を考えながら、私は目を閉じた。





最終更新:2010年11月06日 23:49