【放課後】

紬「ちょっと今日は趣向を変えてハーブティーにしてみたんだけど、どう?」

梓「あ、おいしい…」

唯「おぉ、大人の味だねぇ」

澪「………」

紬「澪ちゃんどうしたの?元気なさそうだけど」

律「お子ちゃまの澪しゃんにこのハーブティーはお口に合わないか!」

唯「とか言いつつりっちゃんすごいお砂糖入ってるよね」

律「私は甘党だからいいのーっ!!」

澪(元気じゃないのは、律だよ。あんなに不安そうな顔して)

澪(訳もわからず避けられてるんじゃ、どうしよもないじゃないか)

澪「………」ちらっ

梓「唯先輩!私のケーキとらないでください!」

唯「いいじゃん一口だけさ!ね?」

梓「ダメです!」

唯「けちぃっ」

澪(梓…)

唯「ふわぁ~あ、眠くなっちゃったよ」

梓「先輩はいつでも眠そうじゃないですか…」

紬「そろそろ帰りましょうか」

律「そうだな、今日は夜スペシャルの特番だし!」

ばぁん!!

「?!」

エリ「ちょいと失礼。お邪魔するよん」

唯「エリちゃん?!」

エリ「中野さんって子、いる?」

紬「梓ちゃんならいるけど…」

エリ「ちょっとお話があるんだけどさ、来てもらっていい?」

梓(いちご先輩を呼んだ人)

梓「はい」

律「エリが梓に用事?お前ら接点なんかあったのか?」

澪「………」

梓「先輩たちは先に帰っててください」

エリ「ごめんねみんな。ちょっとこの子借りてくよ!」

律「ちゃんと返せよー。うちの大切な部員なんだから」

エリ「わかってるって!」

ばたん

律「んじゃ、私らも帰りますか」

唯「うん」

紬「そうね」

澪「………」


【帰り道】

唯「それにしても、エリちゃんとあずにゃんってお知り合いだったんだね」

紬「本当ね、今まで2人が話したりしてるとことか見たことないもの」

律「もしかして付き合ってたりなんかしてな!」

唯「えぇーっ?!」

紬「まぁ!それはすごくいいわね、今度聞いてみましょう」

澪「………」

澪「ごめんみんな!私忘れ物しちゃったから学校戻るよ」

唯「何忘れたの?」

律「明日じゃダメなのか?」

澪「その、宿題を机の中に入れっぱなしでさ」

紬「あら、それは大変!」

唯「宿題って…なに…?」

律「お前また寝てたのか?英語の宿題出てたじゃん」

唯「何それ…知らない…」

紬「あとで、教えてあげるわ」

澪「そういうことだからさ、先帰っていいよ」

律「わかった」

紬「澪ちゃん、もう暗くなるから気をつけてね」

澪「あぁ、ごめん」たたっ

唯「ムギちゃぁぁ~ん!!!」

紬「はいはい」


澪(たぶんエリが梓のことを呼んだのって、いちごのことじゃないのか?)

澪(梓のやつ、何したんだ?)



【3年2組】

エリ「ごめんね、こんなとこまで呼びだしちゃって」

梓「いえ、平気です」

梓「それで、お話っていったい何ですか?」

エリ「いちごのことだよ」

エリ「いちごから少し話を聞いてさ。どういうことなのかなって思って」

エリ「どうしてあんなこと言ったの?」

梓「それは―――」

がらっ

澪「はぁ、はぁ…」

エリ「澪?!」

澪「エリ、梓!2人して、何の話をしているんだ?」

エリ「澪には関係ないことだよ」

澪「いちごのことだろ…」

エリ「!」

澪「梓」

梓「はい?」

澪「お前、いちごに何したんだ?」

梓「律先輩ともう関わるなって言いました」

澪「何で…」

梓「これが一番の策だと思ったからです」

エリ「策?」

梓「だって、あんなにずっと好きだったのに。こんなの無いじゃないですか」

梓「澪先輩だって、ずっと悩んでたじゃないですか」

梓「それなのにあっさり身を退くなんて、理不尽すぎます」

梓「私は澪先輩に幸せになってほしい」

エリ「でもそれは、律のこと考えた意見じゃないよね?」

梓「律先輩は今はわからないだけ」

梓「でもいつかきっと気づきます。澪先輩と一緒にいることが一番なんだって」

梓「いちご先輩さえいなければ、律先輩はいずれ澪先輩と一緒になっていました」

梓「律先輩にとっても、澪先輩が傍にいるのが一番お似合いなんです」

梓「いちご先輩なんかじゃダメ」

エリ「………」

梓「それに、いちご先輩は律先輩のこと好きってわけではないって言ってたんですよ?」

梓「好きじゃないのなら、尚更です」

エリ「…いちごは」

エリ「口数も少ないし、態度もそっけないけど」

エリ「根は素直で、純粋な子なの」

エリ「表情には出してないけど、律と関わることを楽しんでる」

エリ「次のお出かけも楽しみにしてたんだよ?」

エリ「律だって楽しみにしてたのに」

エリ「なのに、そんなこと言うなんてひどいよ」

エリ「いちごのことも律のこともまったく考えてないじゃん!」

梓「そんなの知らない」

梓「これでいいじゃないですか!ね、澪先輩」

梓「いちご先輩もちゃんとわかってくれましたし」

梓「邪魔者はもういませんよ」

エリ「邪魔者…だって…?」ぎりっ

梓「これで澪先輩が我慢する必要だってなくなったわけですし」

梓「律先輩だって、きっとすぐに澪先輩に振り向いてくれます。だから―――」

ぱぁん――!

梓「えっ…」

どさっ

梓「………」

澪「………」

エリ「澪…?」

梓「……どうして…」

梓「どうして、叩くんですか…」

梓「澪先輩のためにやったのに…澪先輩に幸せになってほしくてやったことなのに…」

澪「梓は…何もわかってない」

澪「私は律のことが好きだよ」

澪「たぶん誰よりも好きだ」

澪「でもそれ以上に律には幸せになってほしい、明るく笑って毎日を過ごしてほしいんだ」

澪「その形が、私と付き合うことってなったならそれが一番だけどさ」

澪「でも、今は違うだろ?」

澪「律が幸せなら私はそれでいいんだよ」

澪「律の幸せが、私の幸せなんだ」

梓「そんなの、ダメです…」ぽろぽろ

梓「ずっと好きなのに報われないなんて、ダメなんです…」

澪「梓、なんでそんなにこだわるんだ?」

梓「私は、ダメでした」

梓「報われなかった。唯先輩に応えてもらえなかった…」

澪「…!」

梓「だから、私みたいな思いはもう誰にもしてほしくないんです」

梓「うぐっ、ひっく…うぅっ」

澪「梓…」

エリ「澪…」

澪「ごめんエリ、少し2人だけにしてほしい」

エリ「…わかった」

澪「ごめん、またあとで話そう」

梓「うぐっ、えぐっ、うわああああん」

エリ「じゃねっ」

澪「梓が私のことをよく考えてくれてたのはよくわかった」

澪「ありがとう」

澪「自分みたいな思いをさせたくない気持ちも伝わった」

澪「でもな、梓のやってることは間違ってる」

澪「幸せってのは、人によって形が違う。誰かが決めることじゃないんだよ」

梓「先輩…」

澪「後で謝りに行こうな、いちごのとこに」

梓「先輩…ごめんなさい…。ごめん…なさい…」

エリ「さてと、そんじゃあ私は私で行きますかな」


【いちごの家】

ぴんぽーん

いちご『…はい』

エリ「エリですけどー」

いちご『……何?』

エリ「いいからちょっと出てきなさいな」

いちご『………』ブツッ

がちゃ

いちご「何の用?」

エリ「はい」すっ

いちご「これって…律が持ってたチケットじゃ」

エリ「そ!」

いちご「私は行かないって言ったじゃん」

エリ「まぁまぁまぁ」

エリ「さっきその中野さんって人と話してきたわけよ」

いちご「!」

いちご「…余計なことを」

エリ「失礼ねー、あんたのために行ったんだから」

いちご「お節介」

エリ「ま、とりあえず聞きなさいて」

エリ「いちごは、本当は行きたいの?澪とか関係なしに」

いちご「………」こく

エリ「そっか。じゃあ行っといでよ」

いちご「だから、それはダメだって」

エリ「あんたはもう気にしなくていいの」

いちご「?」

エリ「その中野さんって子にも色々思うところがあったみたいよ」

エリ「たぶん近々謝りに来るんじゃない?」

エリ「だから、いちごの好きなようにするといいよ」

いちご「でも、澪が律のこと好きなのには変わりないじゃん」

エリ「あんたねぇ~、それじゃ逆に澪怒ると思うよ?」

いちご「どうして?」

エリ「澪は確かに律のこと好きだけど、それ以上に幸せであってほしいって思ってる」

エリ「今の律の幸せは、いちごといることなんじゃない?」

エリ「だから、律を悲しませたら澪が怒るよってこと」

いちご「………」

エリ「次はあんたから誘いなよ」

エリ「はいこれ」

いちご「…何これ?」

エリ「律の連絡先。いちご知らないでしょ?」

いちご「うん」

エリ「ったく、そのぐらい知っときなさいよ」

いちご「でも何で番号だけなの?アドレスは?」

エリ「アドレスまで書いたらメールで済ますつもりでしょ」

エリ「ちゃんと電話で誘いなさい。そんで、アドレスは自分から聞きなさい」

いちご「………ちっ」

エリ「そんじゃね」

いちご「あっ…」

いちご「…ありがとう」


【律の家】

brrrr brrrr

律「ん?誰だこんな時間に」

律(知らない番号…?)

ピッ

律「はい、もしもし。田井中ですけど」

いちご『………』

律「もしもし、どちら様ですかー?」

いちご『…若王子ですけど』

律「へっ?い、いちご?!!」

いちご『声が大きい』

律「いや、ていうか何で私の番号知ってんだ?」

いちご『そんなことはいいの』

律「で、何か用か?」

いちご『あの、その…え、映画のことなんだけど』

律「ん?あぁ、別に気にしなくていいぞ!」

いちご『ちがう』

律「?」

いちご『用事がなくなったから…行く』

律「え?でも行きたくなかったんじゃ…」

いちご『うるさい。行くの』

律「あ、あぁ。それはいいんだけど…」

律(チケットはエリに返しちゃったんだよな…)

いちご『チケットは私が持ってる』

律「へ?何で?」

いちご『いいじゃんそんなの』

律「まぁいいけどさ」

律(エリのやつか?結局世話になりっぱなしだったな…)

いちご『今日はごめん。色々と』

律「いいっていいって。気にすんな」

律「んじゃ、この前と同じ場所に同じ時間でな」

いちご『遅れないでよ』

律「はーいはい」

いちご『それから、次会ったときアドレス教えて』

律「ん、わかった」

いちご『それじゃあ』

律「おう、おやすみ」

いちご『…おやすみ』

ガチャ


【週末】

いちご「………」いらいら

律「いやー、すまん!遅れた」

いちご「遅い」すぱーん

律「あでっ」

いちご「何してたの」

律「いや、道でおばさんが困ってたのを助けてて…」

すぱーん

律「いだっ」

いちご「嘘でしょ」

律「出会いがしらからひどいことするんですね!」

いちご「遅れる方が悪い」

律「へいへい」

いちご「ふん」

律「てか、大丈夫か?今日観る映画、ちょっとホラー入ってるみたいだけど」

いちご「…帰る」

律「ちょーっと待った!」ぐいっ

律「平気だよ平気!」

いちご「………」

律「怖くなったら私に抱きついてもいいんだぜ?」にやにや

いちご「………」

ぎゅっ

律「へ?」

いちご「早く行くよ」

律「おいおい引っ張るなって」

いちご「…馬鹿律」




おしまい



最終更新:2010年11月11日 02:32