再び夏期講習会場!
律「お、唯、おっはよー。何か……あったのか?」
唯「うわあぁ~ん! あずにゃんに怒られちゃったんだよ~!」
澪「怒られたって、昨日何かあったのか?」
紬「やっぱり……」
唯「うっうっ……全部私が悪いんだ。あずにゃんに迷惑掛けてるのに楽しんじゃって」
唯「ちょっと調子に乗り過ぎちゃったんだ。そしたらあずにゃん怒っちゃって」
澪「いつもとは違う感じか?」
唯「うん。怒ってるのかどうなのかもわからないトーンでさ。あれなら怒鳴られた方が全然いいよぉ」
律「ははぁ。そりゃ完全にご立腹だな」
唯「うわあぁ~ん! 澪ちゃん、助けてよ~~!」グイグイ
澪「こ、こら引っ付くな! わかった、わかったから!」
唯「ふぇ、本当?」
澪「ああ、本当だ。でもそんなに難しい話じゃないだろ?」
唯「えっ」
律「ま、そうだな」
唯「えっえっ、どういうこと?」
紬「あのね、唯ちゃんは自分が悪いってわかってるんでしょう?」
唯「う、うん」
紬「それなら簡単ね」
澪「ああ、唯が梓に謝ればいいんだよ」
唯「え、それだけ?」
律「それだけも何も、他にないだろー?」
唯「でもでも、あずにゃんいつもと全然雰囲気違うんだよ。クールなのにホットなんだよ」
律「その言い回しはわからんが……単純に謝っただけで許してくれるかな。梓も頑固だしなぁ」
唯「うえぇえ~!?」
澪「変に煽るな。唯は真剣なんだぞ」ゴチン
律「あだっ! でも実際言葉だけじゃ効果薄くないか?」
澪「え? うーん」
紬「そうね……それじゃあ唯ちゃんがしっかりすればいいんじゃないかしら」
澪「しっかり?」
紬「そう。事の発端はそういうことでしょう。それで唯ちゃんが家事、勉強全部しっかりやって」
律「それから梓に誠心誠意謝れば」
唯「許してくれるかな!? ありがとう、みんな! 早速やってみるよ!」ダッ
澪「うおおおい! まだ講習始まってないぞ! 終わってからにしろ!」
……
梓「……はぁ」
梓「なんかすっごい気まずいなぁ」
梓「よく考えたら私も唯先輩に無理させてたし」
梓「いつもダラダラしてるけど、ここぞでバッチリ決めるのが唯先輩なのにね」
梓「私の勝手な考えを押し付けちゃってさ。そりゃ唯先輩も反抗するよ」
梓「それで私だけキレちゃって……ほんと、子供みたい」
梓「謝ろうかな……でもあれだけ言って、すぐに謝るのも……難しいな」
梓「誰かに相談しようかなぁ」
梓「先輩方は講習で一緒にいるから……憂はまだ旅行中だし、じゅ、純!?」
梓「何か純に頼るのは負けた気がする。でも、仕方ないか」ピッピッ
梓「あ、繋がった。もしもし、純?」
純『なんだ梓か。何か用? こっちは練習が忙しくてさ』
梓「あ、ごめん。いや、用って程ではないんだけどさ」
純『もったいぶるなぁ。何々?』
梓「実は今、平沢家にいるんだけど――」
梓「――と、いうわけなんだよ。どうしたらいいかな?」
純『っっっっはぁぁ~~~』
梓「な、何そのリアクション」
純『くっだらない用で掛けてくんな! 忙しいって言ってるっしょ』
梓「な!? くだらないって、私は真面目に――」
純『そんなもん、謝れば済む話でしょーが。そんなとこで意地張る理由がわからんわ』
梓「わ、私は純ほど単純にできてないのっ」
純『あーはいはい。それじゃあ複雑な乙女心の梓さんは頑張ってちょうだいね。じゃあ切るよ』
梓「え、あ、うん。じゃあ」ピッ
梓「謝ってしまえ、かぁ…………はぁ~」
梓「それが簡単にできないから相談してるのに~」ゴロゴロ
梓「あぁ、もう唯先輩が帰ってくる時間だ……」
梓「今日は何もできなかったなぁ」
梓「晩御飯の用意しなくちゃ……えっと、じ、自分の分だけ……かな」
梓「唯先輩遅いな……あ、帰ってきたかな」
唯「ただいま~」
梓「お、おかえりなさい……です」
唯「あ、あずにゃんもう夕食済ませたんだ」
梓「あ、は、はい」
唯「じゃあ私も何か作って食べよっと」
梓「え? あ、あの唯先輩?」
唯「ごはん、ごはん~♪」
梓「(唯先輩が自発的に動いてる!? これってやっぱり昨日の事があったからだよね)」
唯「お塩、お塩~、お塩はどこかな~♪ っと、あったあった~」
唯「かんせ~い! いっただっきま~す」
梓「(唯先輩は私を頼って連絡してきたのに……こんな慣れない事までさせちゃって)」
唯「うわ、甘っ!? お塩じゃなくてお砂糖だった~!」
梓「(こんな……唯先輩は私が言った事を受けて、こんな事……)」
唯「あずにゃん、私先にお風呂入るね~」
梓「(それなのに私、ただ謝る事なんかもできない……純の言う通りだ、くだらない。最低だ、私)」
唯「明日は講習もないから暇なんだぁ。お掃除とギー太の練習と~。あ、勉強もしなくちゃね……はは」
梓「(ごめんなさい、唯先輩)」
唯「今日はシャーペン忘れてりっちゃんに借りたんだぁ。ほんとそそっかしいよね、私」
唯「こんなんだから、あずにゃんにも怒られちゃうんだよね」
梓「(…………唯先輩……唯先輩、唯先輩)」
唯「あははは……それじゃあ、お休み。あずにゃん」ガチャン
梓「あ……!」
梓「ゆ……」
梓「唯先輩!!」ガチャン!
唯「わっ! びっくりしたー。どうしたの、あずにゃん?」
梓「あ、ああ、あの……」
唯「?」
梓「えーっと……」
梓「ああああのあの! 唯先輩の部屋で寝ても……いいですか?」
唯「! い、いいよ! もちろんだよ」
梓「……」
梓「(あ、あれ!? 一緒の部屋で寝てるのはいいけど……この後どうするんだっけ!?)」
唯「ねぇ、あずにゃん……起きてる?」
梓「え!? あ、はい、起きてますよ。どうしたんですか?」
唯「うん、あのね……私、自分でももっとしっかりしなきゃなーって思ってたんだけど」
唯「ついついあずにゃんに甘えちゃってて。憂と違うのにね」
唯「それで何だろう? ちょっと調子に乗り過ぎちゃってたね。ごめんね」
梓「唯先輩……」
梓「……いえ」
唯「え?」
梓「私も、私も悪いんです!」
梓「唯先輩が私を頼って連絡してきたのに、唯先輩に私の勝手な考えを押し付けちゃって」
唯「そんな! そんなことないよ!」
梓「いえ。更に唯先輩に先に謝らせてしまって……謝るのは私の方です。すみませんでした」
唯「あずにゃん……」
梓「本当にすみませんでした! お詫びに……私を、ぶ、ぶって下さい!」
唯「えぇ!? そこまでしなくてもいいよ!」
梓「いいえ、私だけ酷いこと言っちゃって何も無しじゃ気が済みません。さぁ、ガツーンとお願いします!」
唯「うえぇ……」
梓「さぁ!」
唯「じゃ、じゃあ行くよ?」グッ
梓「は、はい!」キュッ
唯「ぎゅ~」ダキッ
梓「ふぇ!? ちょっ、唯先輩?」
唯「あずにゃんをぶっちゃうなんてできないよ~。私はもう気にしてないんだし、今まで通りの私たちでいようよ」
梓「唯先輩……は、はい!」
唯「えへへ~。あれ、あずにゃん泣いてるの?」
梓「な、泣いてなんかないです! これは、その、そうゴミです。ゴミが入ったんです!」
唯「あははは、その反応はベタじゃの~」
梓「えへへへ……」
梓「はい、何ですか」
唯「今日は一緒に寝ようよ」
梓「え!? えーっと……きょ、今日だけですよ?」
唯「わ~い、やったぁ! はい、枕置いたよ~」
梓「もー、仕方ないですね」
土曜日!
パタパタパタ ガチャン
憂「ただいま、お姉ちゃん! お姉ちゃんが心配で一日早く帰ってきたよ」
憂「ご飯とか大丈夫だった……って、まだ寝てるのかな」ガチャ
憂「あ、やっぱり。あれ? 梓ちゃんも来てたんだ」
憂「それにしても……ふふ。二人とも本当に仲良いなぁ」
純「――へ~、色々あったんだ」
憂「そうみたいだよ」
梓「純のアドバイスは役に立たなかったけどね」
純「なーに言ってんだか。結局謝って仲直りじゃん。私の言った通りでしょ」
梓「う……」
純「ちょっとは感謝してもいいんじゃない?」
梓「ま、まぁ、結果的にはそうなんだけど……あ、ありがとう」
憂純『梓しゃん……』
梓「も、もーっ! 憂まで! この話はこれでおしまい!」
純「えー、いいじゃん」
梓「お・わ・り! あ、もうこんな時間。早く部室行かなきゃ」
唯「あっずにゃ~~ん!」
梓「あ、唯先輩。どうしたんです、二年の教室まできて」
唯「へへ~、今日はまだあずにゃん見てなかったからね~。待ちきれなくってさぁ」ダキッ
梓「にゃっ!」
唯「これで今日のあずにゃん分補給完了~。さ、行こっ!」
梓「もう……」
梓「唯先輩は本当に……仕方が無いですね!」
おしまい!
最終更新:2010年11月15日 21:44