唯「前からおかしいと思っていたよ」
唯「あなたが入れ替わったのはあずにゃんにドッペルゲンガーを見たと話したその日」
唯「所々おかしかったんだよ」
唯「いつもは別れる時に "さようなら" なんてあずにゃんは言わないよ」
唯「それに、あずにゃんはあなたみたいに馬鹿じゃないからね」
唯「あなたは物事を考えないで喋ってる、だからボロが出ちゃったんだよ」
梓「あはは、やっぱり唯先輩はすごいですね」
梓「いつもはボーっとしてるけど、いざという時はやっぱりすごいです」
憂「なんで、その事を知ってるのかな? あなたはドッペルゲンガーだよね?」
梓「記憶の引継ぎ、だよ」
梓「入れ替わりが起きた時に記憶がそのまま引き継がれるんだ」
唯「そんな事より、早くあずにゃんを返して!!」
梓「分かりました、約束ですしね」
梓「もう一人の梓は私の中に居ます、私が消えれば彼女もやがて目を覚まします」
梓「戻ったかどうかは影を見れば分かると思うので、それでは-----」
唯「待って」
梓「はい?」
唯「あなたはどうしてそんなに」
唯「素直に言う事を聞くの……?」
唯「こんなこと私が聞くことじゃないかもしれないけど……」
梓「少し、話をしてもいいですか?」
憂「……どうぞ」
梓「ありがとう」
梓「私たちドッペルゲンガーは、見たら死ぬと言われています」
梓「でも、本物の梓は生きています」
梓「何故かわかりますか?」
唯「また問題……?」
梓「いえ、今回のは違いますよ」
憂「もしかして……」
憂「ドッペルゲンガーを見ても、死なない……?」
梓「正解」
梓「私たちを見ても死ぬわけなんてないです」
梓「現に梓は生きていますからね」
梓「社会が勝手に作り出した、そんな都市伝説的な存在」
梓「見たら死ぬ……なぜ?」
梓「私たちは、本人と少しでも入れ替わり」
梓「その人が受けている暖かさを感じたいだけ」
梓「悪い事だとは分かっています」
梓「結局は消えるしか無い、そんな存在なんです」
梓「話が長くなりましたね」
梓「少しの間でしたけど、梓が受けている暖かさを確かに感じました」
梓「それは私に向けた物では無くても、とても暖かかったです」
梓「それでは、私はこれで消えますね」
梓「さような-----」
唯「ずっとあなただけ話して、お別れなんてずるいよ」
梓「い、いきなり抱き着くなんて」
梓「もう十分暖かさは感じましたよ」
唯「違うよ」
唯「それはあなたに向けた物じゃなかった」
唯「でも今回は、あなたに向けた物」
唯「憂も一緒に、あったかあったかしよ?」
憂「私は……まだ、ちょっと怒ってる」
憂「でもあなたは、人の暖かさを知りたかっただけ」
憂「本当に悪いのは勝手に悪者を決め付けた私達かもしれない」
憂「だから、私も!」
梓「あはは、本物の暖かさはやっぱり違いますね」
唯「あれぇ、あずにゃんゲンガーさん泣いてるの?」
梓「混ぜないでくださいよ、私は梓ほどいい子ではないです」
唯「そんなこと無いと思うけどなぁ」
唯「ま、いいよ! あったかあったか、だよ?」
憂「えへへ」
梓「あったかあったか、ですね」
よくじつ!
唯「ふああ……あれ?」
憂「うぅん……おはようお姉ちゃん……」
唯「昨日あのまま寝ちゃったんだ……!」
憂「え!? ほんとだ……」
憂「あ、梓ちゃんは!?」
梓「ううん……憂ー?」
唯「えっと……あずにゃん?」
梓「にゃ? ……え!?」
梓「なんで唯先輩がいるんですか!!」
唯「なんでって、ひどいよぉ……」
憂「あはは、梓ちゃん覚えてないの?」
梓「あれぇ? 唯先輩と別れて、その後私どうしたんだっけ……」
唯「元に戻ってるよー!」
梓「はい? え、何がですか?」
憂「分からないならそれでもいいかもね」
唯「うん、そだね~」
梓「ちょっとー! 教えてくださいよ!」
梓「なんで私は唯先輩の家に!? っていうかなんで一緒に寝てるんですか!!」
唯「あずにゃん怖いよ~」
憂「あはは、とりあえずご飯の準備してくるね?」
梓「二人していじわるしないでよ!!」
唯「まあまあ、あずにゃんや」
唯「知らないほうがいい事もあるのだよ?」
梓「すごい嫌な言い方ですね、それ」
憂(ドッペルゲンガーさん、いつの間にか消えちゃってたな)
憂(正体を暴くような事して、ちょっと後悔)
ガサガサ
憂(? ポケットに紙……?)
あなたが暴いてくれなかったら、私は一生孤独だったかもしれない
あなたは優しいからきっと後悔してる事でしょう
あなたの暖かさに触れて、私は幸せです
本当に、ありがとう
ごめんなさい
その紙には走り書きで文字が書かれていた
文字は所々滲んでいて、読み辛かったが憂の心にはしっかりと伝わった
はっぴーえんど
最終更新:2010年11月19日 01:03