もう目の前が真っ白で何も見えない

私は私じゃなかった?

隣にいた私の顔はもう見えない

でもそれも私じゃなかった?

もう私自身膝のあたりまで見えなくなっている

私が私を殺したの?




私は一体なんだったのだろう?

私はこのまま消えてしまうのだろうか?


でも

武道館なんて立派なところじゃなくてもいいから

もう一度先輩達とライブがしたかったな


古河原「なーんてな」









古河原「…………」

  梓「…………」

古河原「…………く」

  梓「…………ぶふ!」

古河原 梓「wwwwwwwwwwwwwwwwww!」


え?


 梓「だから、どっきりはかわいそうって言ったじゃないですかwwwwwwwwwww」

古河原「いやあ、ひいひい、こんなに笑ったのはひさしぶりでwwwwwwwwwwww」

  梓「それにしても名演技でしたねwwwwwwwwwwwwwwwww」

古河原「ひぃひぃ、いやいや、君には負けるってwwwwwwwww」

  梓「聞いてないですよwwwwwwwwwドライアイス仕込んだ演出wwwwwwwwwwwwwwww」ジタバタ

古河原「敵を欺くのはまず味方からwww鉄則wwwwwwwwwwwwwwww」



私「……」


事の顛末を話そう

この老人、古河原俊之助は安産の神である

私のお祈りを聞き、余興でこのドッペルゲンガーの中野梓をつくりあげたという

最初はただ単にこのもう一人の私を先輩の前にちらつかせ

混乱する姿を見て一人楽しむことを目的としていたらしい

安産の神改めただの変態である

しかし、誤算が生じた

先輩達に姿をちらつかせたはいいものの
このドッペルゲンガーなんとそのまま捕獲されてしまう

その後、うまい具合にN女子大にやってきた私と入れ替わりに教室を出て
当初の目的を達成しようとするも

唯先輩に抱きつかれたままになり断念

結局その姿を教室に入ってきた私に目撃されてしまう

混乱に乗じて姿を消してくれれば良かったが

先輩達が私に付きっ切りになってしまった

その上、そこにいる全員がドッペルゲンガーは危険と判断

更に監視は強まる

しかし、余興でドッペルゲンガーを造ってしまったものの

このままふと消えるのは味気ないし

造られた側も納得しない

ホラー的展開に持っていくのも他人から見られたらすねているようで避けたい展開だ

ここで二人は計画した

どっきりを行おう

標的は私である


私「で、私はどうすりゃいいんですか」

古河原「いや、別にどうするもww」

梓「こうするもwwwww」

くそ、腹立つ


古河原「でも君も良かったんじゃないかな」

私「何が?」

古河原「だって君の当初の不安は解消したんじゃないかな?」

私「はあ?」

古河原「最初は不安だらけだったんだろう」

   「先輩達と違う大学に通うこととなった、それが不安だった」

   「それでも先輩達と仲良くできるか、それが不安だった」

   「先輩達が自分の思っている以上の実力をつけていた、そこに自分が入れるか不安だった」

   「これからも先輩達と同じ場所に立ち続けられるのか、それが不安だった」


   「だから祈った」

   「お参りの手順を確かめてまで」 

   「だから投じた」

   「一度手に取った十円を五百円に取り替えてまで」


   「では君にアドバイスを送ろう」

   「人生生きても100年前後、もっと肩の力を抜きたまえ」


古河原「何で私が君にもこんな二日間をプレゼントしたか教えよう」

   「私は君達で見てみたかったのだよ」


   「本体に遭遇したドッペルゲンガーの末路を」



  私「それじゃ、さっきしたどっきりの話と」



古河原「どっきり?」

   「ああ、どっきりの話は全部嘘だよ、くくく」

  梓「クスクス」




急に視界が白い靄に包まれる

意味が分からない

私は私?

結局私はドッペルゲンガー?


一体いつから

お参りしたとき?

高校の時?

それとも生まれる前から?


目の前が本当に真っ白だ

もう何も見えない……


うん

白い?

天…井?

先輩、達?


私はベッドの上にいた

諸君勘違いしてもらっては困る
唯先輩のベッドではない
病院のベッドである


律「それにしても一体なんだったんだか」

紬「そうねえ」

唯「これからは何が起きても大丈夫なように」
 「私がずっとこうしてるね」のしっ

梓「唯先輩、重いです」

唯「ひどいっ!」


後々受けた説明によると

唯先輩達と一緒にいた私はちょっと目を離した間に急に消えてしまったという

そして、私が倒れたことに律先輩と澪先輩が気を取られている間に
そこに現れた私も、また消えてしまったという


私はN女子大で倒れた後すぐ病院に運ばれたようだ
倒れた原因が不明のため、いくつか検査を受けることになったが
どの検査も結果は異常なしだった

しかし、明日まで入院とのこと

鏡を見てみた
写ったのはポニーテールの中野梓である

澪「しかし、ライブ数日前でこの状態じゃ、今回のライブは延期だな」

紬「そうね」

律「しかたないな」

唯「そうだね」

梓「いえ」


梓「いえ、今回のライブはやりましょう」
 「というより、やらせてください」

澪「お、おい、梓」

律「お前、今こんな状態だろ、まずは体を」

梓「お願いします、今回のライブはやらせてください」

律「って言ったって、こんな状態じゃ新曲とかだって難しいだろ」

梓「確かに、今からじゃとてもじゃないけどあの新曲は出来ません」

澪「え」

梓「だから、構成を変えましょう」



梓「とりあえず、次は私が入ってから最初のライブになるので」
 「やっぱり、最初はやりなれた曲のほうがいいですよね」

律「…」

 「って言うことで、律先輩、曲の構成お願いしますね」

律「お、おう、まかせとけ」

唯紬「…」クスッ

梓「で、このライブを成功させて」
 「私達の武道館への足がかりにしましょう」

澪「そ、そうだな、はは」

律「中野ー、お前言うことが生意気だぞー、安静中のくせに」

唯「じゃあ、私も頑張るよ」フンス

憂「頑張ってね、おねえちゃん」

紬「私も気合入れて頑張るわ」



次の日、私は退院した
帰って財布の中を確認してみると領収書が入っていた
大学の近くの楽器店のギターのメンテナンスの領収書である
ギターを確かめるとネックの歪みはなかった

私は鏡を見てみた
写るのはポニーテールの中野梓である



後々調べてわかったことだが
古河原神社が祭っている神様は古河原俊明という
古河原俊之助と言う名前は調べる限りでは見当たらない

まさに一体全体摩訶不思議である

こんな考え事ばっかりのときはギターを弾くに限る

ライブでやる曲は大体想像がつく

私はギターケースからギターを取り出し

ネックの歪みがないギターを手にとって慣れた手つきで弾き始めた


最後に

『中野梓』と記された出席カードが一講義に二枚確認されていたため
単位認定に唯一『経済学』が不可となったことと

私が「神様など信じない」ということは

紛れもない真実だ

神に誓ってもよい




以上でこの話はおしまい




だってさ、ふふっ

久しぶりにライブも見たけど

どうやらも元気にやっているようで安心したよ


うーん、それにしても暇だなあ

この日記も読み終わってしまったし

次は何をしようかな


それにしてもこの日記、何でこの日付で終わってるんだろ

何気に梓も飽きっぽいのかな?

ガチャリ
梓「ご飯買ってきたよー」


梓「ってこら!勝手に人の日記見るなーーーーーーー!」


私は梓に聞いた

結局この日記ってどこまでが本当でどこまでが嘘なの?


梓「え」

 「全部嘘だよ」

 「神様に誓って」クスクス




おしまい



最終更新:2010年11月22日 23:01