「ね?だから全然遅刻じゃないの!」

だけどムギちゃんは私の考えている事とは真逆の事を言います

「それで、私がもう一通、2通目に――
 ありがとう、急に変えてごめんね。午後8時に公園で待っているね
 ――って」
「……はい?」

午後?

「うん、午後8時に公園でって、一番最初のメールで――」

私は、もう一度ムギちゃんから送られてきた1通目のメールを呼び出しました



2010/11/06/06:08
From ムギちゃん
Sub 待ち合わせ時間のこと
―――――――――――――
唯ちゃん、急でごめんね……
今日朝7時から公園行って遊ぶ約束だけど
ちょっと急な用事が入っちゃって……

それで、待ち合わせ時間なんだけれど
PM8:00、公園で直接待ち合わせ
に変更してもいいかな……?
唯ちゃん、本当にごめんなさい


――2通目

2010/11/06/06:15
From ムギちゃん
Sub Re2:待ち合わせ時間のこと
―――――――――――――
唯ちゃんありがとう!
それじゃあPM8:00に公園で待っているね
今日は寒いみたいだから
暖かい格好してきたほうがいいよ


「――……………ムギちゃん」
「なぁに?」
「――PMって、午前じゃ……ないの?」

「唯ちゃん……PMは、午後なの」

……

「わ、私……午前かと思っていました!」

今の時間は……携帯のディスプレイの時計を見ると19:51でした

『ごめんなさい!!』

私とムギちゃんの声が綺麗にハモり、夜の公園に響きました――


――

「でも――」

ムギちゃんが私の手をまた握ってくれました
二人で笑った後だったので寒さはもう感じません
少し暖かいくらいです

「――PMとAMを間違えるなんて、唯ちゃん……かわいいっ♪」

そのまま、ムギちゃんは私を包むように抱きしめてきました
ムギちゃんの髪の甘い香り――
――私も、ムギちゃんのことをぎゅうっと抱きしめます

「でも恥ずかしいよ……高校生なのに……
 あ、律っちゃんには絶対言わないでね?きっと馬鹿にしてくるから……」
「ふふっ♪大丈夫、言わない言わない♪」

私が抱きしめ返すと、ムギちゃんも私を抱きしめる手をすこしだけ強めます

「――唯ちゃんとの、二人だけの秘密だね」
「うん……絶対だよ」

私も、ムギちゃんに負けないよう、さらにぎゅうっと強くムギちゃんを抱きしめます
強くなるムギちゃんの香りと、ムギちゃんの温もり――

人気のない公園で良かった、なんて思いながら
私はムギちゃんの温もりを体中で受け止めます
抱きしめた手、体、胸、髪の毛――

やわらかくて、あたたかくて、やさしいムギちゃん
愛しくて愛しくて――

「――ありがとう、唯ちゃん」

耳の横で感じる、ゆっくり、優しいムギちゃんの声

「私のこと、ずっと待っててくれて」
「間違えちゃったからね……でも……」

一回、収まったのに――

「……よかったよ……ムギちゃん怒っていなくて……今日……会うことが、できて……」

――目から、頬、そして……触れていたムギちゃんの髪の毛へと、暖かい雫が流れます
ごめんね、ムギちゃんの髪の毛、少し濡れちゃった……

「今日、私も……いきなり予定が入っちゃってごめんね……」

顔は見えないはずなのに……ムギちゃんは、また、私の頭を撫でてくれました

「……唯ちゃん、寒かったよね……もう、絶対に待たせたりしないからね……」
「ありがとう……ムギちゃん
 ……私も……絶対、絶対に、遅刻はしないようにするよ……」

――公園で遊んだ後、ムギちゃんのリクエストで
ラーメン屋さんに行って、二人でご飯を食べて帰りました

「ラーメンも美味しかったけれど……お弁当、今度お昼に遊ぶ時には作ってくるからね」

と、ムギちゃんがはりきっていたので、次回遊ぶ時に期待です!
結局今日は全部私が食べちゃったけれど……私もおいしいみかん持ってくるね


でも遅刻はもう絶対にしないように気をつけないとね……
寒くなって、だんだん布団が恋しくなる時期だし、私も今から、寝坊しないように訓練しないと!

「ムギちゃん」

――優しいムギちゃんを、絶対に悲しませたくないからね!

「なぁに?唯ちゃん?」

「――だいすき!」


別れ際のムギちゃんは――すこしだけ、にんにくの香りがしました


 おわり!



最終更新:2010年11月25日 05:56