梓「――なるのかな?」
梓「どっちに転んでも律先輩が悪くなっちゃうな」
梓「そんな目でしか見てないのかな?」
梓「でも、澪先輩と律先輩でしょ」
梓「……日頃の行いって重要だなぁ」
梓「おっと。こんなこと律先輩の前じゃ絶対に言えないよ」
梓「さ、次はムギ先輩かな」
梓「これまた想像しにくいなぁ」
梓「ええっと――」
~~
唯「――じゃあさ、そこに行った後にこの店にも行こうよ!」
律「そうだなぁ……ん、おい澪、どうした?」
澪「ああ、ムギ遅いなって」
梓「そうですね、ムギ先輩が遅刻するなんて珍しいですね」
唯「りっちゃんだったら珍しくないのにね~」
律「その言葉はそっくり唯さんにお返ししますわよ~」
唯律『おほほほほーっ』
澪「何やってんだか……」
梓「あれ? 何か聴こえませんか?」
澪「え? 何も聴こえないけど」
梓「外ですよ。何か近付いてきてます」
唯「おおーっ、飛行機かな」
律「いやぁ、ありゃヘリコプターだろ」
梓「あ、あのヘリ、こっちに向かってきてますよ!」
澪「うわわっ!」
バババババババババババババ!!!
梓「す、凄い音です!」
唯「え~? 何も聴こえないよ、あずにゃ~ん!」
梓「何にも聴こえないです!」
ババババババ…バババ…ババ……バ……
律「やっと収まった……のか?」
澪「何なんだ一体……」
唯「うわ~、店の前にヘリが停まってるよ!」
梓「あ、誰か降りてきますよ……って、あれはムギ先輩!?」
紬「みんな、お待たせ~!」
律「お、おいムギ、なんでヘリで来るんだよ」
紬「昨日お父様の仕事の関係で、どうしても付いていかなくちゃならなくなって」
紬「それで待ち合わせ時間に遅れそうだったから、これで急いで来たの!」
澪「は、はぁ」
梓「それはそれは……」
唯「すっご~い、ムギちゃん! 私、こんな近くでヘリコプター見たの初めてだよ!」
紬「良かったら乗ってみる?」
唯「いいの!? わ~い、今日はこれでお店回ろうよ~!」
律「よーし、窓際ゲットー!」
澪「」ポカーン
梓「いやいや……ヘリポート無いと無理ですよ――」
~~
梓「――これは……無理ありすぎだ……」
梓「ムギ先輩が遅れてくるなんてありえないよね」
梓「そうだとしても、ヘリで直接乗り付けるとか……ははは」
バババババババババババババ!!!
梓「えっ! 嘘っ!?」ガタッ
梓「まさか本当にムギ先輩が……!?」
梓「あ、全然関係なかった……向こうに飛んでっちゃった」
梓「あ、店員さん? え、あ、すみません! 静かにしてます……」
梓「ふーっ、赤っ恥かいちゃったよ」
梓「ムギ先輩がそんなに堂々としてくるわけないよね」
梓「あんまりひけらかすような事したくないみたいだし」
梓「まぁ、ムギ先輩が遅れてくるのはありえないってことで」
梓「最後は……一番怪しい唯先輩」
梓「お決まりのパターンだろうけど――」
~~
梓「――はぁ~。やっぱり唯先輩が遅刻ですか」
澪「全く。本当にしょうがないな」
律「ほら~、ヒゲっ!」
紬「きゃあ~」
澪「あっちはあっちで何やってるんだか……」
梓「はぁ……」
唯「ごめ~ん、みんなぁ!」
澪「お、来たみたいだな」
律「なーにしてたんだよ。みんな待ってたんだぞ」
梓「そうですよ」
唯「いや~、早く起きる事には成功したんだけどね~」
律「ならどうして遅れるんだよ」
唯「えっと、家を出たら偶然隣のお婆ちゃんに会ってお菓子もらって~」
唯「その後歩いてたら道を横切った猫さんが遊んでくれって言って~」
唯「いつものアイス屋さんを見たら新製品が出てたから並んで~……」
澪「わ、わかった、唯。もういい」
唯「ふぇ、そうなの? まぁ、色々あって遅くなったから走ってきました」
紬「お疲れ様。はい、お水」
唯「ありがと~、ムギちゃん」
梓「本当に唯先輩はだらしないんですから」
唯「あうぅ~、ごめんよ、あずにゃ~ん」
澪「まぁ、ちゃんと来たんだからいいんじゃないか」
律「そだな。じゃあ行こうぜー!」
唯紬「おー!」
梓「全くもう……」
澪「さ、梓も行こう」
梓「はい!――」
~~
梓「――あれ? 綺麗に収まった」
梓「唯先輩が遅刻するってのが自然すぎて怖い」
梓「何か他のシチュエーション……そうだ!」
梓「不甲斐ない姉に代わって、甲斐甲斐しい妹が――」
~~
梓「――唯先輩が最後ですね」
澪「でも、まだ待ち合わせ時間まで少しあるからな」
紬「あ、噂をすれば来たみたいよ」
唯「お待たせー」
澪「ギリギリセーフだな」
律「もうちょっとで罰ゲームだったのになー」
唯「ひどいよ律さ……りっちゃーん。間に合ってるから大丈夫だよね」
律「……ん? うん」
梓「でも時間ギリギリなんですよ? もうちょっと余裕持って行動して下さい」
唯「わかってるよ梓ちゃ……あずにゃん。次からは気を付けるね」
梓「え……あ、はい?」
澪「何か……」
紬「違和感……」
唯「え? え?」
律「そういえば前にもこんなことあったような」
梓「ですよね。確かあの時は学園祭の……」
唯「お待たせ、憂! さぁ、交代しよう!」
律「ゆ、唯!?」
憂「お、お姉ちゃん、今出てきたら意味無いよ」
唯「あ、そうだった!」
梓「やっぱりそういう事ですか……」
紬「相変わらず見分け付かないわ~」
憂「ど、どうしようお姉ちゃん……」オロオロ
唯「こ、こうなったら!」ババッ
澪「うっ! 唯と憂ちゃんが交差して……!」
律「一体どっちが唯で、どっちが憂ちゃんなのか……!」
律澪紬梓『寝癖でだらしない方』
唯「うわ~ん、バレバレだ~!」
憂「お姉ちゃん……」
梓「はぁ、やれやれ――」
~~
梓「――と、まぁ、こんな風になるんだろうな」
梓「憂は本当に唯先輩の事となったら必死だからね」
梓「私は姉妹いないからよくわからないけど」
梓「そういうものなのかな」
梓「それより結構考え事してたけど」
梓「まだ誰も来ない……」
梓「あ、携帯かければよかったのか」
梓「うわっ、着信いっぱい」
梓「えっ……と」ピッピッピッ
梓「……」プルルルル
梓「あ、出た」
梓「唯先輩? 今どこにいるんですか。こっちは結構待ってるんですよ」
梓「え? そっちは、って……駅前の喫茶店ですよ。決めてたじゃないですか」
梓「え、ちょっ、唯先輩!?」
梓「電話切れちゃった」
梓「どういう事だろう」
梓「仕方ない。もう一回かけようかな」ピッピッピッ
梓「……」プルルルル
梓「出ないなぁ」
唯「あずにゃん」
梓「うーん……」
梓「全然出ない……」
梓「わっ! びっくりした……唯先輩!?」
唯「あずにゃん、こんなとこで待ってたんだ」
梓「ど、どういう事ですか? ここって言ってませんでしたっけ?」
唯「待ち合わせ場所は隣の店だよ」
梓「えっ」
唯「似たような店だから間違えちゃったのかな」
梓「えっ」
唯「私もよく間違えちゃう時あるんだ~」
梓「えっ」
唯「そういう訳でみんな待ってるから、あずにゃん罰ゲームね」
梓「えっ」
梓「――はぁ、はぁ、はぁ」
律「おーい、梓ぁ。遅れてるぞー」
紬「梓ちゃん、頑張って~」
梓「は、はいぃ……頑張ります……」
唯「じゃあ次はあっちのお店行こうよ~」
澪「これ以上増えたら梓じゃ無理じゃないか?」
梓「そ、そんな事ありません……! 持てますよ……っ!」
律「じゃあはい、追加」ドン
梓「あ! う、うわわっ……うわびゅっ!」ベシャッ
唯「あ、潰れた」
澪「やっぱり約束事は守らなきゃいけないな」
おしまい!
最終更新:2010年11月25日 07:35