―――

憂「失礼しまーす…」

私達が、控室のドアを開くと中ではメンバーが談笑していた。

本当に気心の知れた間柄だと言う感じの雰囲気だった。

?R「んー?誰ぇ?いちごかぁ?」

?M「な訳無いだろ」


―――

憂「失礼しまーす…」

私達が、控室のドアを開くと中ではメンバーが談笑していた。

本当に気心の知れた間柄だと言う感じの雰囲気だった。

?R「んー?誰ぇ?いちごかぁ?」

?M「な訳無いだろ」

?R「まぁなぁ…、あれぇ?あれあれぇ?」

?M「何だよ…、変な顔して」

?R「もしかしてぇ、澪しゃん、やきもちでしゅかー?」

?M「違う。断じて違うぞ!」

また、黒髪の人が栗色の人の頭を叩く。

私は、何と声を掛けたら良いか分からなかったが、

カウンターの人と中野さんが私達の姿を認めて声を掛けてくれる。

?T「あらあら」

梓「あ、唯先輩と憂!」

私は取りあえず手に持っていたケーキの箱を差し出す。

?T「何かしらぁ」

梓「差し入れですか?そんな気を使ってくれなくても良いのに」

?R「知り合い?」

?M「そうみたい。ムギと梓の」

?R「じゃあ、入って貰いなよ。あ、椅子用意するね」

栗色の人は自分から動いて椅子を用意してくれる。


―――

?R「さぁさぁ、どうぞー」

私と憂は椅子に座らせて貰い、まるでお客のような扱いを受ける。

?T「さぁ、紅茶をどうぞ」

?R「おぉ!凄ぇ!これ表参道の○○のケーキじゃーん。あそこすぐ売り切れちゃうから、レアなんだよなー」

梓「律先輩、みっともないですよ」

?M「わざわざ、ありがとうございます…、ほら、律もお礼しろよ」

私は早く、誤解を解かなければと思い、声を絞りだす。

唯「あ、あの、これ、違うんです」

メンバーの人達は、疑問の表情になる。

唯「これ、その隣の人が…」

憂「ライブ中に来てすぐ帰っちゃった人が、

私達に終了後に代わりに渡してくれって、言ってたものなんです」

上手く伝えられない私に代わって憂が説明をしてくれる。

?T「誰からかしらね」

?R「あ、そう言えば、何かメッセージカード付いてるわ」

黒髪の人がさっと、栗色の人の手からカードを抜き取る。

?M「えーと?」

?T「うふふ、謎のケーキは、一体誰からの贈り物なのでしょう~?」

黒髪の人はそのメッセージカードを見ると少し渋い顔をする。

?T「えっと…、イニシャルでI.Wって書いてあるわね、

それで、こっちの押し花は…、ニガヨモギかしら?」

?R「いちごじゃん。なんだよ、来てたのか」

梓「ニガヨモギの押し花って珍しいですね」

?M「からかい」

?R「は?」

?M「花言葉だよ」

栗色の人は一瞬、考え込むような表情になったあと、噴き出す。

?R「ぷははっ」

カウンターの人もつられて、楽しそうに笑う。

?T「色んな意味にとれるわよねー、澪ちゃん?」

黒髪の人は、憮然とする。

?M「ムギも律も笑い過ぎだ」

この場の和やかな雰囲気に、私と憂は逆に居心地が悪くなる。

唯「もう、いこっか?」

憂「うん」

私達は立ちあがる。

唯「あ、あの、それじゃ、私達も行きますね」

憂「梓ちゃん、今日のライブ教えてくれてありがとう。凄い楽しかった」

メンバーの人達も中野さんも私達が帰ろうとするのが唐突に感じたようで、

少しびっくりしている。

梓「あ、うん、またやる時に連絡するね」

?T「今日は来てくれてありがと~」

?M「次の時も是非来てくれな」

栗色の人だけは、何か考え込むような表情になっている。

?M「律、あいさつぐらいちゃんとしろよ」

?R「んー?んー、なんかさ、何か思い出しそうなんだよなぁ」

?M「は、何言ってるんだよ」

栗色の人は前髪が少し長いようで、

考え込んでいる間も、何度か髪をかき上げる。

?R「あー、邪魔くさいなー!」

黒髪の人は栗色の人が髪を邪魔くさそうに掻き上げるのに慣れているらしく、

テーブルに転がっていたヘアバンドを栗色の人に手渡す。

?M「ほら、律、これ」

?R「お、澪、サンキュー」

栗色の人は前髪をヘアバンドで上げる。

私はその前髪を上げた姿を見て、色々な事を思い出す。

?R「うっし…、あー!」

唯「あー!」

私と田井中さんが声を上げたのはほぼ同時だった。

他の人も分かる。

こっちは秋山さん。

それで、こっちは琴吹さんだ。


―――

律「そっか、梓の知り合いって平沢さんだったんだな」

唯「あ、あの、高校の時はごめんなさい」

律「今でも怨んでます」

言葉だけ聞けばぎょっとするけど、

田井中さんの様子からは全然そんな感じは伝わって来なかった。

でも、秋山さんは一応フォローを入れるつもりなのか、

田井中さんに突っ込みを入れる。

澪「そう言うのはギャグにならないから」

私の方が恐縮してしまう。

唯「い、いや、大丈夫ですから…」


―――

私のこの夜、色んな話をした。

高校の部活でバンドが出来ない事が確実になった当初は、

実際に私を凄い怨んだ事。

高校外でバンド活動を始めた事。

今まで、そうやって活動して来た事。


このライブハウス兼クラブのオーナーは琴吹さんで、

今日のようにライブをやると、

高校の時の同級生達が集まってくれると言う事。

そう言えば、フロアには何人か見覚えのある顔があって、

それはこの話を聞けば当たり前だし、

全体に漂っていた家庭的な雰囲気と言うのも当然だった。

律「だから、集客出来てても、プロは遠いって感じだけどね」

澪「わ、わたしはまだ目指してるぞ?!」

紬「私も~」

梓「私は元々プロ志向ですから」

律「あれ?」

皆は声を合わせて笑う。

私も憂もそのみんなの中に入っていた。


―――

あの初めての日から、四ヶ月が経っていた。

私は、まだ一日二時間程度だが、単純作業のバイトをしている。

最初の給料は憂にプレゼントを買って帰った。

二月目からは家にお金を入れないと、と思ったけど、

どうしても欲しいものがあったので、

憂に頼み込んで次の月からに伸ばして貰った。

そうして買ったのが一本のアコースティックギターだった。

名機や高級モデルでも何でも無くて、

リサイクルショップに並んでいた安物だ。

そして、時々、梓ちゃんや純ちゃんと一緒に、

街角に立ってストリートミュージシャンみたいな事をしている。

人通りの多い道でやっていても、

客はギターケースの上にちょこんと座っているあずにゃん一匹と言う事が多くて、

猫がいるのに客がこないのだから、

要するに、あずにゃんには招き猫の才能はまったく無いみたいだった。

梓「唯先輩って、上達早いですね、才能ありますよ」

唯「いやぁ、先生が良いからだよ~。梓ちゃんの教え方上手いから」

梓「そ、そんな事ないです。ゆ、唯先輩の才能が凄いんです」

唯「そうかなあ…。でも、そんなおだてられたら調子乗っちゃうよ?」

梓「乗ってくれても良いです」

唯「えへへ、梓ちゃんは良い子だねぇ」

そう言って、手をギュって握ると、梓ちゃんは顔を赤らめる。


―――

放課後ティータイムの皆は、最近私に一つの提案をしてくる。

律「なぁ、唯?」

唯「何?」

律「バンド一緒にやんねー?」

唯「私には無理だよぉ。だって、まだ上手く弾けないし」

律「いや、そんな事ねぇって、たった一月でこれだもん。

唯、才能あるよ、保証するって」

唯「でも…」

澪「そうだよ、唯はやれてるよ。

律なんか十年近くやってるのに、まだ、上手く合わせられない時があるんだからな」

律「澪?!」

紬「私も唯ちゃんの加入は凄く良いと思うな。

この前駅前で聞いたアレンジとか、唯ちゃんがやったんでしょ?

あれ、凄く素敵だったもの」


―――

憂は以前のように翳りのある表情をしないようになった。

前は笑っている時でも、どこか暗い面を感じさせたけど、今は心から笑えているみたいで、

それはきっと、私が憂を鎖に繋ごうとしなくなったからだと思う。

もう、私は憂を繋ぎとめる必要は無いし、

憂も自分からこちらにリードを放る必要は無い。

憂「ねえ、お姉ちゃん」

あずにゃんの散歩に二人して付き合っている時に、突然憂が私の名前を呼ぶ。

唯「何?」

憂「ただ、呼んでみただけ」

唯「変な憂」

私達は顔を見合わせて笑い合う。



私は何で怯えていたんだろうか。

それはきっと私が一人ぼっちで、憂以外の誰もいなかったからなのだろう。

でも、今は一人じゃないので、逆に憂との間に絆を強く意識出来る。


Someday,sometime in the future

I will turn around and see there’s nothing to be found.

But you’ll come running back to me.

Everyday we’ll be together.



だから、私はもう君を繋ぎとめるような事はしないんだ。                  

That good continue(!!!)



最終更新:2010年11月28日 04:00