別荘内のスタジオ

唯「うおぉぉ……」

澪「もはや驚かなくなった自分が怖い…」

律「すっごいなこのスタジオ!鏡もあるし!あ、新しいスネアだ!はやくやろうぜみんな!」

唯「そうだな、とりあえずやるか」

紬「じゃあさっそくだけど澪ちゃんが書いてきてくれた歌詞みせてもらっていいかしら?」

澪「あ、そうだな。ちょっと恥ずかしいけど…はい」

唯「大丈夫自分の作った詞が恥ずかしくないやつなんていねぇよ」ハハハ

律(澪の歌詞…)

唯紬「どれどれ…」

唯紬「……………」

澪「あれ?どうした2人とも」

律(やっぱり初めてはそうなるよな)

唯「なんだろう、こう、驚くぐらい背中が痒い」

紬「み、澪ちゃんらしさがでてると思う…わ」

澪「そうだろ!結構考えたんだ!」

唯(考えてこれって、すごいお花畑だったんだな澪の頭は)

澪「まぁこれは唯に歌ってもらうものだけど…」

唯「へ?ちょっと待て、私が歌うのかよ」

澪「だってギターだろ?だいたいバンドはギターが歌うって決まってるものなんだ」

唯「知るかんなもん!ベースもギターも大して変わらないんだから作詞した澪歌うのが当たり前だろ!!」

澪「こんな恥ずかしく歌詞歌えるわけないじゃないか。」

唯(さらりと言いにくい事を本人が言いやがった!)

紬(自覚はあったのね)

律「ま、まぁ仕方ないとりあえず唯ボーカルでいくか」

唯「なにが仕方ないだ!流すな!絶対やだ!」

澪「仕方ないだろ?律と紬はドラムとキーボード忙しいし、私も歌いながらはちょっとな…」

紬「そうね、仕方ないわね。」

律澪紬(多数決に持って行けば…!)

唯「わ、わかったよ、3対1なら仕方ない。その変わりギターは楽なのにしろよ!」


そうしてボーカルは唯に公平?な多数決で決まり、昼間は遊んで夜は練習の毎日を一週間続け、合宿は終わった。


新学期

部室

唯「おーっす!」

律「おう唯!おっす!合宿以来だな」

澪「2学期はいよいよ文化祭もあるし、部活ますます頑張ろうな!」

紬「その事なんだけど…」

唯「なんだムギ、その事って」

律「なにかあるのか?」

紬「実はさっき生徒会によばれたんだけど、どうやら顧問のいない部活は文化祭でれないみたいなの…」

澪「なんだって!?」

律「あぁーなんか前にいわれた気がする。顧問のいない部活は部活としては認められないって」

唯「……おい律、なんでそんな大事なこと言わなかった」

律「忘れてました…」
澪ゴチン!

唯「全く…」

唯(あれ?だけどチャンスじゃね?あの歌詞を合法的に歌わなくてすむわけだし。)

紬「それでね、そういう事だから山中先生に顧問お願いしたの」

さわ子「顧問の山中さわ子です。よろしくね」

律「えぇぇぇ!」

澪「さすがムギだな!!でも山中先生、いんですか?」

さわ子「合宿までして頑張ったのに出れないじゃ可哀想じゃない?だから快く引き受けさてもらうわ」

律澪「ありがとうございまーす。」

唯(チッいらんことを)

さわ子(フフ、どうやらあの写真は見られてないようね。あの封印されし過去をばれる前に処分しないと)

律「それにしてもだいぶ高校時代の写真と印象ちがうんですね」

さわ子「ぁえ?」

澪「だからあれはメイクだって言っただろ?ね、先生」

さわ子「な、なんの話をしているのかなぁ………」

唯「これの事だよ。ほらこの写真。これ先生だろ?」

さわ子「イヤァァァァァァァア」

紬「軽音部のOGが顧問なんて素敵だわ!」

さわ子(ック!まさかバレていたとは…でも大丈夫よさわ子、まだごまかせる)

さわ子「い、いやぁね、たまたま軽音部の友達とふざけてとっただけの写真よ…」

唯「でもこのカセットの声先生だろ?」

律「あぁ言われてみたら」

紬「よく気づいたわね唯ちゃん」

澪「あの声がさわ子先生…」

さわ子「ふっふっふっ……」

唯律澪紬「?」

さわ子「あーはっはっはっひゃひゃひゃばれてんなら仕方ないわね。そうよ!私はこの軽音部の偉大な先輩よ!デスデビルのボーカルギターよ!」

唯(な、なんか)

紬(壊れた?とゆうより仮面が外れた?)

律(こっちが本物か)

澪(初対面の唯より怖い…)

さわ子「だいたいねぇ、あんたたち部活として認められてないくせに勝手に部室に私物持ち込むなっての!」

紬「すいません…」

さわ子「それに平沢さん!その口の聞き方なによ!もっと敬う気持ち持ちなさい!」

唯「は、はい」

さわ子「部長も聞いた話だと書類は締め切りぎりぎりだし、字汚いし!もっとしっかりなさい!」

律「ご!ごめんなさい!」

さわ子「全くもう!大変な部の顧問引き受けちゃったわ」

澪(あれ?私は?)

さわ子「それで、文化祭ではなにをするつもりなの?コピー?オリジナル?」

律「一応オリジナルを一曲だけ…」

さわ子「一曲だけ?んーまぁいいか。それじゃあ、歌詞を見せて」

澪「こ、これです」

さわ子「どれどれ…」

律(初めて澪の歌詞見る人は…)

唯(背中が…)

さわ子「う、うん…えっとその…か、可愛らしい曲ね!!私の時と全然ジャンルちがうけど。絶妙に背中痒くなるぐらい可愛らしいと思う」

唯(やっぱり背中痒くなったか)

紬(でしょうね)

さわ子「それでこれは誰が歌うの?やっぱり澪ちゃんかしら?」

澪「先生、こんな恥ずかしく歌詞歌いたくありませんよ!歌うのは唯です」

さわ子(恥ずかしいっていってよかったの?)

さわ子「って唯ちゃんが歌うの?この歌詞を?」

唯(いきなりちゃんづけかよ!)

唯「ま、まぁそうなりました、多数決で」

さわ子(ふーん…それはそれでおもしろいのかもね。この歌詞歌えば唯ちゃんの印象変わって軽音部以外の人と仲良くなれるかもしれないし)

さわ子「そう、それじゃさっそく演奏聞かせてくれる?」

紬「はーい」

律「そういや人に聞かせんの初めてだな」

澪「なんか緊張するな…!」

唯「あぁ歌うのかぁ、ついに歌うのか…」

律「いくぞー1、2、3」

唯「キミヲミテルトイツモハートドキドキ…」

ジャアーン

律「ふぅ!なかなかよかったんじゃないか?」

澪「あぁなかなかだ」

唯「私、歌詞間違えなかったぞ!」

紬「先生、どうでした?」

さわ子「ダメね」

澪「そんな!」

律「どこがダメだったんだよさわちゃん!」

唯「わかった歌詞だな!やっぱり歌詞だな!歌詞だ」

紬「なにがダメなんですか?」

さわ子「りっちゃんのさわちゃん発言はスルーするとして…曲自体は悪くないわ。むしろ初めてとは思えない曲が出来てるわ。ムギちゃん、いい作曲よ」

紬「ウフフ、ありがとうございます」

律「それじゃ演奏?」

さわ子「確かにりっちゃんのドラムがたまに走るけどそれを澪ちゃんのベースがカバーしてる。現時点じゃ文句ないわ」

澪「よかった!」

唯「じゃあダメな理由なんなんだよ!やっぱり歌詞か?」

さわ子「理由は唯ちゃんよ」

唯「………私?」

さわ子「えぇ唯ちゃん、あなたよ。あなたの歌声に魂がこもってないのよ!なによあの棒読み!」

唯「魂って…」

律「あぁ言われてみると…」

紬「棒読みって言われてみるとそうかもね」

澪「せっかくいい歌詞書いたのに」

唯(あれ?なにこの私が悪い感じ)

さわ子「いい唯ちゃん、『歌』っていうのは伝えたい気持ちを詞にしてメロディーにのせて聞く人の心に届けるの!それが『歌』。今の唯ちゃんではなにも伝わらないわ!」

唯「そう言われてもさ先生…自分が書いたわけじゃないし、私なら君をみててドキドキするならさっさと伝えるし、別にふわふわする時間なんてないよ。まず神様信じてないし」

澪(バッサリだぁー)

紬(男より男らしいかも)

律(確かにこの中なら1番澪の感性わかんないかもな)

唯「だから魂こめろって言われても…」

さわ子「そういうことじゃないよ!歌詞をよく読み、想像して、伝えたい事を自分なりに感じとることから始めるのよ!」

唯「は、はい!」

さわ子「と、言うわけでこれから唯ちゃんは1週間特別練習をします」

唯「はい!ってえぇ?」

さわ子「まずはこの澪ちゃんが書いた歌詞からなにかを読みとることからよ!付いてきなさい!」

唯「あぁもう!わかりました!」

紬「行っちゃったわね」

律「まぁ先生なんだし、変なようにはしないだろ」

澪「そんなに変な歌詞…かな?」

律「えぇっと…澪らしさは出てたと思うけどな」

紬「ちょっと唯ちゃんには難しかったのよ!きっと」

澪「そ、そうだよな!仕方ないなーゆいはーハハハー」

律紬「ハハハー」


そして1週間


紬「今日はショートケーキよぉ」

律「いただきまーす!」

澪「今日で1週間だな」パクパク

律「あぁーそうだなぁ」パクパク

紬「大丈夫かしらね…あ、お茶おかわり大丈夫?」

律「まぁーさわちゃんも先生だし、大丈夫だろ!多分」

澪「多分って…まぁ心配してもしょうがないんだけどな」

紬「案ずるより生むがよしって言うじゃない。大丈夫よきっと」

バタン!

さわ子「待たせたわね!!」

唯「待たせたな!!」

律「おぉーお帰り」

澪「どうだった?」

紬「今日はショートケーキよぉ」

さわ子「あ、あれ?」

唯「なんか…軽いな…こう、待ってたよ唯ーとかなんかあるだろ」

律「と言ってもなぁ、毎日学校で会うし。」

澪「一旦部室に集まってその後2人がどこかいく1週間だったし」

紬「それで、特訓はどうだったの?」

さわ子「まぁそれは聞いてみてからのお楽しみよ」

唯「それじゃさっそく…」

ジャカジャカジャン!ジャカジャカジャン!

唯「君を見てるといつもハートドキドキ!!」

律「す、すごい!」

澪「いつもの唯じゃないみたいだ!」

紬「唯ちゃん…」ウットリ

唯「ふわふわたぁいむ!!」

ジャジャ、ジャジャ、ジャーン

さわ子「ふふふ、どうよ?」

律「すごいぞ唯!」

澪「あぁ、こんなに心に響くなんてな!」

紬「唯ちゃん…素敵だわ…」

さわ子「元々ね、唯ちゃんの容姿とこの可愛らしい歌詞は見事にマッチしてたのよ」

紬「確かにそうですね!」

さわ子「だから後は唯ちゃんの歌い方次第だったのよ。それがハマれば、この恥ずかしい歌詞も不思議といい曲になるわけよ。」

澪「なんか褒められてけなされた気が…」

律「ま、まぁこれで学園祭は大丈夫そうだな!」

唯「まぁ私にかかればこんなもんだよ!はっはっは」

ガチャ!

律「ん?」

和「おじゃまするわよ」

唯「あれ?和じゃん」

さわ子「それじゃ私はこれで、みんな、頑張ってね」

律(ボロ出す前に逃げたな)

澪「唯の友達か?」

唯「そういえば初めてだっけ?こいつ私のとも…」

和「こんにちは、唯からいつも話聞いてるわ。真鍋和です」

律「私は何回か部長会議であってるな」

紬「私も前呼ばれた時に少し話したわね。」

唯「それで今日はどうしたんだ?」

和「学園祭のステージ使用申請書、でてないのを伝えにきたのよ」

澪「律…」

唯「またおまえは…」

律「ご、ごめんなさい!」

紬「あらあら。あ、和ちゃんケーキ食べていかない?余ってるから」

和「そう?それじゃ、すこしご馳走になろうかしら」

唯「そういや私も食べてないぞ!ムギ、お茶」

和(唯、楽しそうにやってるのね…なんか安心しちゃったわ。)

和「さてと、ご馳走さま。そろそろ生徒会に戻らないと。律、ちゃんと申請書出してね」

紬「またいつでも来てね」

和「でもお邪魔じゃない?」

唯「いいんだよ、友達なんだし!むしろ毎日来てよ!」

律「そうそう…って、え?」

澪「唯なんかキャラ違うぞ?」ハハ

紬「それも特訓?」ウフフ

律「ハハハ…あれ?どうした唯、顔色悪いぞ」

唯「え?そんなことねぇ、ないよ。どこもわるく…」

和「唯!!!」

紬「和ちゃん?」

和「唯!しっかりして、唯!」

唯「しっかりしてるよ…うるせぇ…頭痛い…」



澪「え?え?行っちゃった……」

律「な、なにがどうなってんだ……?」

紬「……?」


唯の自宅

憂「お姉ちゃん…」

和「やっぱり、治ってはなかったみたいね…」

唯「はぁはぁ…」

憂「まぁ、とにかく後は大丈夫ですので…和さんは帰って…ください」

和「…憂!いい加減にして!あなた1人でどうこうなる問題じゃないのよ!」

憂「今さら…今さら友達面ですか?お姉ちゃんがこうなった原因、忘れたんですか?」

和「あれは、あれは誤解だって…」

憂「とにかく今日は帰ってください。ここまで送ってもらってありがとうございました」

和「ちょ、ちょっと憂…」

バタンッ!

憂「お姉ちゃんには…やっぱり、私がいないとなんだよね」

憂「大丈夫、私がいるから。私が近くにいるから」

憂「私が、私が、」


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最終更新:2010年12月04日 00:20