憂「私のせいなんです、私がお姉ちゃんよりも少しできたから、お母さんやお父さんは私を誉めていっつもお姉ちゃんは怒られてた。だから…」
和「それとね、唯…4年生の時クラスの男子から軽いいじめにあってたの」
紬「いじめ?」
和「いつも私が一緒にいたから、和がいないとなんもできないんだろって。」
律「なんだよそれ!」
和「それでも唯は笑ってたわ」
唯「よくわかんなかったから笑うことしか出来なかったんだよね」
澪「唯…」
憂「でも、ある日お姉ちゃんは言ったんです『和ちゃんに迷惑かけられない!和ちゃんと一緒にいたいから、私強くなる!』って」
憂「その日以来お姉ちゃんは変わったんです。だから私は、和さんの存在がお姉ちゃんの負担になってるんだと思って、なら私がお姉ちゃんを守らないとって決めたんです」
唯「それは違うよ憂。負担になんかなってないよ。私ね、見ちゃったんだ。和ちゃんがクラスの男子にいじめられてるとこ。」
和「私が?」
唯「うん、『なんでおまえ唯とばかり一緒にいんだよ!』って言われてるとこ」
和「そ、それは…」
唯「だからね、私はともかく、和ちゃんがいじめられるのは嫌だから、私変わろうって思ったんだ。」
和「そんなことないわ…だって唯と一緒にいたのは私の意志よ?私がそうしたいから、唯と一緒にいたのよ。誰かになにか言われたって迷惑になるわけないじゃない」
唯「和ちゃん…」
紬(仮面つけたのは唯ちゃんの優しさ故だったのね…)
和「変わってからはイジメもなくなったわ。だって、唯に近づく人がいなくなっちゃったんだもの。」
唯「でも和ちゃんは近くにいてくれたんだよね」
憂「両親は最初少し困っていたけど、前よりも成長した部分もあったからその内馴れていったんです。……私も」
唯「でも、無理してた部分があったんだよね。そこに和ちゃんは気づいてたの」
和「だから中学生になった時、唯の部屋で話をしたの。環境も変わったし、無理しなくてもいい、唯は唯だからって」
唯「そしたらね、なんかわかんなくなっちゃって…私は私だけど私じゃないみたいな。」
憂「そうしたらお姉ちゃん倒れちゃって…やっぱり和さんは負担にしかならないんだってあらためて思ったんです。」
和「正直私もショックだった。友達として唯の近くにいれないとも思った…」
澪「だから一線ひくようになったのか…」
律「なんか悲しいな…」
唯「そこからは和ちゃんとあんまり関わらなくなって、私はあの私でずっと過ごしたの」
憂「多少やりすぎだと思ってたんですけど、お姉ちゃんがお姉ちゃんでいてくれるならいい。そう思ってお姉ちゃんの周りをたまに付きまとうようになったんです。」
律「やっぱりテストの時みられてたのか」
憂「やりすぎだとは思ってたんですけど…本当にごめんなさい」
澪「いいっていいって!まぁ律てたら心配になるかも知れないけどな」
律「なんだとー!澪だってなぁー!!」
紬「フフ、どっちも素敵な可愛い女の子よ」
律「そ、そう言われると…」
澪「なんか照れるな」
憂「お姉ちゃんの周り見てると…変わっているお姉ちゃんに気づいたんです」
和「私もよ憂」
憂「どんどん戻ってるというか…昔みたいに、優しいお姉ちゃんに」
和「誰にでも優しく、素直な唯にね」
唯「そうなっていったのも、軽音部みんなのおかげなんだよ?」
律「え?」
澪「私たちの?」
紬「どういうこと?」
唯「うん、軽音部はいった時は最初みんな怖がってたでしょ?」
澪「正直言うと少し…いやほんの少しだぞ!」
唯「いいよ無理しなくて。そりゃそうだもん。最初は怖いよ。だから…今みたいに…こんな風になるなんて思わなかったんだ」
紬「唯ちゃん…」
律「唯…」
唯「怖がられて…打ち解けられなかったら辞めようって…ギターも持ってただけでひけないし…無理して勉強しても1人じゃできないし…そんな私を…みんなは友達として見てくれた。無理してる私を認めてくれた。」
和「私も驚いたわ。部室いった時に笑顔の唯が、昔のような笑顔で笑ってる唯がいたんだもの」
律「当たり前だろ!!ま、まぁ確かに最初はビビってたけど、優しい部分もあったし」
澪「周りの意見もしっかり聞けるし、普通の怖い人とは少し違ってたし」
紬「私が出すお茶にあんな笑顔で美味しい!って言ってくれるのに、悪い人のわけないわ」
唯「み、みんな…」
和「唯、いい部に入ったのね」
唯「和ちゃん…」
憂「よかった、本当によかったね!お姉ちゃん!」
唯「う、憂ー」
紬「これで解決…かしらね…」
唯「で、でも…!」
律「ん?まだなにかあるのか?」
唯「その…今の私を…認めてくれるの…?」
澪「なにがだ?」
唯「だから、昨日とは違うんだよ?そんな私を認めてくれるのかなって」
律「はぁ?なに言い出すかと思えば…」
澪「認めるもなにも、唯は唯だろ?」
紬「優しさのあまり仮面を被っちゃう優しい唯ちゃんよ。」
唯「え?むぎちゃん、私仮面なんて被ってないよ?」
律「例えだよ例え!」
澪「やっぱり唯は唯だな!」
憂「和さん…今までごめんなさい。」
和「いいえ、唯から逃げていた部分があるのは確かだわ。それにほら…」
憂「え?」
和「唯が今あんな笑顔でいれるならなんでもよくなっちゃうわ。」
憂「そう…ですね!!」
そして学園祭当日
学園祭当日、部室
澪「あぁー緊張する……」
律「仕方ないな澪は」
紬「お茶はいりましたよー」
唯「わーい!今日のケーキなに?」
律「そういえば最近さわちゃんみないな」パクパク
唯「なんか凄い衣装作ってるんじゃない?」
澪「制服でいいのに…あぁーますます緊張が…」
紬「大丈夫?澪ちゃん?」
バタン!!
さわ子「待たせたわね!!」
唯「あ、さわちゃん」
律「当日なのにどこ行ってたんだよ!顧問のくせに!」
紬「先生、お茶はいってますよ」
さわ子「相変わらずの歓迎ね…いいわ、とにかくこれを見なさい!」ババーン
唯「うわ!眩しい!」
律「衣装出来たのか?」
さわ子「そうよ、寝ずに3日3晩かけて作り終えたわ。なかなかの自信作よ。大変だったわ、何回か失敗して……って話しを聞きなさい!」
唯「すごく可愛い!すごいね!さわちゃん」キラキラ
律「すごいよさわちゃん!やっぱり顧問だけあるな!」キラキラ
紬「素敵です先生!!」キラキラ
澪「これなら…恥ずかしさも減るかも」キラキラ
唯律澪紬「ありがとうございます!先生」
さわ子(これよ…!これが聞きたくて衣装作りしたのよ…!もっと言って!!!)
ガチャ
和「お邪魔するわよ」
唯「あ、和ちゃん!みてみてこれ可愛いでしょ?」
和「えぇ、凄くかわいいわね。」
澪「どうしたんだ和?」
和「みんな、そろそろ移動して。後30分後よ」
律「もうそんな時間か!」
澪「一気に緊張が…」
紬「大丈夫よ!いきましょう!」
唯「じゃあ後でね和ちゃん!さわちゃん!」
和「全く…慌ただしいですね」クスッ
さわ子「軽音部らしさよ」フフ
ステージ
律「準備大丈夫かぁ?唯?」
唯「大丈夫だよ!むぎちゃんは?」
紬「どんとこいです!澪ちゃん大丈夫?」
澪「多少震えるけど…大丈夫だ!」
和「次は、軽音楽部による演奏です」
パチパチパチパチ
唯「こんにちわ!軽音部です!」
パチパチパチ
唯「その、いきなりなんですけど私は高校に入るまで私自身を見失ってました」
律(え?ゆ、唯)
ザワザワザワ
唯「無理して…無理して、そしたらどんどん自分がわからなくなって、でもこの軽音部のみんなはそんな私を受け止めてくれました!!」
シーン
唯「無理しなくていいんだ…私は私なんだって思えたら、なんか前よりも毎日が楽しいです!」
唯「だから、素のままの私自身を精一杯、澪ちゃんが書いてくれた歌詞にのせて歌おうと思います!聞いてください!『ふわふわ時間』」
律「1、2!!」
ジャカジャカジャンジャカジャカジャン…
ワァァァァァ
後日
律「みんなお疲れー!!」
唯「おつかれー!!」
澪「疲れたけど…楽しかったよな!」
紬「うん!演奏は完璧だったし、唯ちゃんのMCも素敵だったわ」
律「いきなり始めた時はびっくりしたけどな」
唯「えへへーごめんね。ただどうしても言いたかったんだ。私の今の気持ちを」
澪「まぁ、あれで緊張とけたんだけどな」
紬「私もよ澪ちゃん」
律「なんだ2人もだったのか。私もだ。ありがとうな、唯」
唯「そんなにほめないでよぉ…照れちゃうじゃん」
律「ハハハ…そういえばさ唯、前から聞きたかったんだけど、高校入った時の唯ってどうしたんだ?」
澪「お、おい律!」
律「だって気にならないか?」
唯「………」
紬「ゆ、唯ちゃん?」
唯「………」
律「あ、ごめん唯!変なこと聞いて!ごめんな!」
澪「唯…」
唯「本当に仕方ない奴だな律は」
律「へ?」
唯「……こんな感じだっけ?」
澪「なんだ!びっくりさせるなよ」
唯「えへへーごめんね。なんか前の私がどんな私だったかよくわからないんだよね」
紬「唯ちゃんは唯ちゃんよ。」
律「そうだぞー唯」
澪「おまえがやらせたんだろ!」ゴチン
律「アイター!」
アハハハハハハ
唯(今こうして笑ってる私、素直に笑えなかった私。無理してない私、無理してた私。でも、それが全部私なんだよね。)
唯(ねぇ?あの頃の私?そんなに無理しなくていいんだよ。すぐに素敵な友達に私は会えるんだから)
唯「りっちゃん!」
律「ん?」
唯「みおちゃん!」
澪「どうした?」
唯「むぎちゃん!」
紬「はーい!」
唯「みんな…大好きだよ!!」
―――完―――
最終更新:2010年12月04日 00:22