――学校

律(よし、澪はまだきてないな)

律「唯、ムギ」

律「ちょっといいか?」

紬「なにかしら?」

律「あのな、澪のことなんだが……」

唯「え、澪ちゃん?」

律「ああ」

律「昨日の澪の様子、なんか変だったと思わないか?」

紬「昨日の澪ちゃんの様子が変?」

唯「そうかなあ?」

律「うん」

紬「う~ん……」

紬「でも言われてみるとたしかにちょっと変だったかも……」

律「だろ?」

律「なんか元気がなかったり、学校にいる間食事をほとんどしなかったんだ」

唯「ダイエットしてるんじゃなかったっけ?」

律「ダイエットはしてるのかもしれないけど……なにか別な……」

律「私達に何かを隠してるような……」

紬「澪ちゃんが私達に隠し事……」

唯「なんだろう?」

律「そこでだ!」

律「今日1日みんなで澪を観察してみようと思う」

唯「観察?」

律「そうだ」

律「でもあからさまにやったらだめだ」

律「自然に観察するんだ」

紬「ちょっと面白そうだわ~」ワクワク

律「授業中は私の席からは澪は見えないから、唯とムギが見ててくれ」

唯「まかせて!」

律「よーし、それじゃあ……」

澪「はあ……」ガチャ

律唯紬「!?」

律「そういうことだ、わかったな?」ヒソヒソ

紬「わかったわ」ヒソヒソ

唯「大丈夫だよ」ヒソヒソ

紬「
澪ちゃんおはよう♪」

唯「おはよう!」

澪「おはよう……」

律(う~ん……やっぱりなんか違うな……)

澪(痛いし眠い……)ズキズキ


――授業中

澪「……」

澪(まずい……!)

澪(眠気と痛みで全く授業に集中できない……!)

澪(なんかか頭がクラクラしてきた……)

澪(座ってるのにふらふらする……)

澪(ああ……早く授業終わんないかな……)

――――

唯(まーるかいてちょん♪まーるかいてちょん♪)カキカキ

唯(お豆に芽がでて植木鉢~♪植木鉢~♪)カキカキ

唯(あれ?)

唯(なにか大切な事を忘れてるような……)

唯(……)

唯(まあいっか!)

唯(6月6日にUFOが~♪)カキカキ

――――

紬(むむむ……)

紬(う~ん……)

紬(澪ちゃん……なんかふらふらしてるような……)

紬(ノートもあんまりとってないみたいだし……)

紬(確かにいつもの澪ちゃんじゃないわね……)

紬(……)チラッ

律「ぐごー」

紬(……)チラッ

唯「♪」カキカキ

紬(唯ちゃんとりっちゃんはいつも通りね)

紬(う~ん……)

紬(どうしたのかしら……澪ちゃん……)


――休み時間

律「どうだった!?」

唯「え?なにが?」

律「なにがって、授業中の澪の様子だよ」

律「私の席からは見えないから代わりに見ててくれって頼んだだろ」

唯「あっ、忘れてた!」

律「忘れんなよ……」

唯「でもね、ドラえもん描いたんだよ!」

律「あー、はいはい」

紬「私が見てたわ」

律「どうだった?」

  紬は授業中の澪の様子を話した。

律「そうか……」

紬「ええ」

律「どうしちまったんだ……澪……」

――――

澪(全く授業聴けなかった……)

澪(日常生活にも支障がでてきた……)

澪(本当にこのまま放置してていいんだろうか……)

澪(このまま虫歯が進行して最終的には……歯がなくなったり……)

澪(そしたら……)ホワワーン

  唯『歯がない澪ちゃんなんて澪ちゃんじゃないよ。バイバイ』

  律『もうお別れだ。元気でな』

  紬『あの頃の澪ちゃんはもういないのね……』グスッ

  梓『ファンクラブが消滅したそうですよ。堕ちたものですね。さようなら』

  澪『ほ、ほいへははいへー!』

澪「うわああああああ!」

澪「うう……どうしたらいいんだよう……」

澪「やっぱり歯医者に行くしかないのかな……」

澪「いや、でも……」

――――

律「おい……なんか叫んでるぞ……」

紬「今度はなんか呟いてるわ」

唯「ねえ、ドラえもん描いたんだよ」

律「だまっとけ」

唯「ぶー」

紬「髪の毛を掻きむしってるわ」

律「なんなんだ……さっぱり分からねえ……」


――放課後

澪「ねえ、律」

律「ん、ああ」

律「どうした?」

澪「あのさ……今日はちょっと用事があるから部活を休むよ」

律「!」

律「そ、そっかー」

律「用事があるなら仕方ないなー」

澪「?」

澪「うん、じゃあそういうことだから」

律「了解了解」

澪「じゃあ、また明日」

律「おう」

澪「……」スタスタ

律「……」

律「唯!ムギ!」バッ

唯「どうしたの?」

律「澪を尾行するぞ!」

唯「尾行!?」

紬「おもしろそう!」キラキラ

律「澪が部活を休んで一人で帰るなんてあるはずがない!」

律「いくぞ!」

唯「おー!」

紬「おー!」

――――

梓「よし……」

梓「今日は何が何でも練習をしよう」

梓「ガツンと言ってやるです!」

梓「こんにちは!」ガチャッ

  シ~ン

梓「……」

梓「まだ誰も来てないか……」


――外

澪「はあ……」

澪「やっぱり歯医者に行こう……」

澪「このままじゃあ普通に生活できないからな……」

澪「……」

澪「でもやっぱり怖い……」

澪「……」

澪「いや、だめだ!」

澪「ここは勇気を出して行かないと!」

澪「よし……」

澪「大丈夫……大丈夫……」

――――

紬「何かを呟きながら歩いてるわ……」

律「おかしいぞ……」

律「こっちは澪の家への道とは違う道だ」

唯「どこに行くのかな?」

律「う~ん……」

律「とりあえず後をついて行ってみよう」


――歯医者の前

澪「ついた……」

澪「……」

澪「やっぱり帰ろうかな……」

澪「……」

澪「でも……」

  ガチャ

子「うわああああん!」

親「りょうちゃん!もう終わったのよ!」

親「あなたは立派に耐え抜いたのよ!」

子「すんげえ痛かったよおおおおママあああああ!」ビエエエン

澪「……」

澪「かーえっろと」スタスタ

――――

唯「あれ?澪ちゃんが立ってる所って……」

紬「歯医者のようね」

律「……」

唯「どうしたのかな?」

律「……」

紬「りっちゃん?」

律「そういうことだったのか……」

唯「え?」

律「すべてがつながった……」

紬「どういうこと?」

律「分かったんだよ……澪の様子が変だった訳が」

唯「ええ!?本当!?」

紬「教えて!」

律「ふふっ、それは明日話すとしよう」

律「澪がいるところでな……」

律「ふふふふふ……」

唯「りっちゃん……」

律「ムギ」

紬「なあに?」

律「歯医者の前に立ってる澪を写真に撮ってくれ」

紬「写真?」

律「ああ、携帯のカメラでいい」

紬「わかったわ」

紬「……」カシャッ

律「よし、完璧だ」

律「今日はもう帰ろう」

唯「え、もういいの?」

律「ああ、もう十分だ」

律「すべては明日に……」


――部室

梓「……」

梓「誰も来ない……」

梓「……」

梓「夕日綺麗だなあ」

梓「あ、カラスが鳴いてる」

梓「……」

梓「帰ろう……」


――夜

澪「結局そのまま帰ってきちゃった……」

澪「……」

澪「でも昼間ほどは痛くないかも……」

澪「……」

澪「ふああ……」

澪「もう今日は寝ちゃおう……」

澪「おやすみ……」

澪「ZZZ」


――翌日 学校

唯「ねえりっちゃん教えてよー」

律「澪が来たら全て話すからまってろ」

紬「いやそんなことは…でも…」

紬「まさかあのとき……!?」

律「ふふ…推理ショーのはじまりだ……」

澪「はあ……」

澪「おはよう……」

唯「おはよー」

紬「おはよう♪」

律「……」

律「おい、澪」

澪「ん?なんだ?」

律「まあ、そこに座れ」

澪「え?」

律「いいからいいから」グイグイ

澪「え、ちょっ……」ストン

律「よし、でははじめよう」

澪(な、なにがはじまるんだ)

唯「……」ドキドキ

紬「……」ワクワク

律「あー、えー」

律「率直に言うと昨日、一日澪の行動を観察させてもらった」

澪「!?」

澪「な、なんでそんなことを!?」

律「おとといから澪の様子がなんか変だったからだ」

澪「!?」

澪(気付かれてた!?)

律「順を追って話そう」

律「まず第一にいつもより元気がなかった」

澪「……」

律「唯の証言によると顔が引きつってるようにも見えたらしい」

律「そう、まるで何かに耐えてるかのように……」

唯「小顔トレーニングじゃないの?」

律「だまっとけ」

律「そしておとといは、お昼ご飯もケーキも食べなかった」

唯「私が食べたけどね!」

律「大人しく聴いてろ」

律「最初はこれらのことに関連性ないと思われた」

律「そう……あの時までは……」

律「ムギ、あの写真を見せてくれ」

紬「あ、はい」ピコピコ

紬「これよ」スッ

律「澪、これを見てくれ」

澪「これは……」

澪「!!!???」

澪「こ、これは……!」

律「昨日学校から後をつけさせてもらった」

律「そして見た」

律「歯医者の前で佇むお前を」

律「その時わかったんだ……」

澪(え、ちょっ……)

澪(これってまさか……)

律「澪、お前は虫歯だったのだ!」ズバーン

唯紬「な、なんだってー!?」

澪(ばれたあああああ!)

律「澪のことだからどうせ歯医者が怖いとかそういうことだろ!」

澪(終わった……何もかも……)

澪(さよなら、私の青春……)

律(ふっ、きまったぜ)

唯「でも歯医者は私も怖いな~」

澪「え?」

紬「私も苦手だわ~」

澪「え?」

澪(あれ?バカにされないぞ?)

紬「でもなんで澪ちゃん私達に黙ってたの?」

澪「あ、あの……」

唯「相談してくれればよかったのにー」

澪(……)

澪(セーフか?セーフなのか?)

澪「はは……」

澪(よかったああああ……)

律「そこでだ!」


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最終更新:2010年12月04日 01:38