梓「憂はあの戦いを予測して行動したのか……」
憂「うん?」
憂「あー、えっとね、お姉ちゃんの友達がちょうどそのコンビニのバイトしててね、それでくじ始める時間とか教えてもらえたんだよー」
憂「そのくじがあることを教えてくれたのもその人なの」
純「なるほど。やっぱり店員に知り合いがいると強いなぁ」
梓(卑怯だ……私の苦労をいったいなんだと……)
純「ちなみにそのお店にまだくじあるかなぁ」
憂「あるんじゃない? 今日の朝覗いたらいっぱいあったよ」
梓「キター!!」ガタッ
憂・純「ひっ!?」
梓「今日のお昼休みにそこ行こう!! ねっ!」
純「いや、こっからだと結構遠いでしょ。行きと帰りの時間合わせたら昼休み足りないよ」
梓「走ればいいよ!」
純「無茶言うなよ!」
憂「そんなに引きたいの? くじ」
梓「うん」
憂「なんだったら、一つあげようか? ストラップ」
純「いいの!?」
憂「うん、いいよー。澪さんのとムギさんのとどれがいい?」
純「澪さん!」
憂「はい、どうぞ。梓ちゃんは?」
梓「ふっ、私は自分で獲得するよ。これはね、自分で引くことに意味があるんだ!」
憂「あ、そう……」
純(無駄に熱いな)
・・・
梓「はぁ、はぁ……つ、疲れた」
梓「よくこの距離を走ってこれたよ。これも若さの賜物だねっ」
梓「それよりさっさと目的の品を手に入れて学校に帰らないと……」
ピロリ、ピロリ
店員「らっしゃーせー」
梓「……」
店員「?」
梓「……一応聞いておきますけど、けいおん!の一番くじは……」
店員「あれですねぇ。さっき全部買い占められた方がいて……」
梓「……グレてやろうか」
梓「42番ください」
店員「未成年の方には売れませんねー」
……
梓「た、ただいま」
憂「おかえり……って、すごい汗だよ!? 大丈夫?」
純「よく時間内に戻ってこれたな……」
純「で、例の物は?」
梓「……察してよね」
純「ああ、うん……」
憂「朝はあんなにあったのに、すごい人気なんだねー」
純「アレな人たちも食いついてるからね。すごいよ」
梓「もう嫌……」
憂「やっぱりこれあげ――」
梓「No Thank You」
放課後
タタタ…
律「ん? お、梓」ガシッ
梓「うあっ!? は、離してください!」
律「今日は部活来いよ」
梓「私にはやることが!」
律「いいから、いいから。はい、連行ー」ズルズル
梓「うわああああんっ」ズリズリ…
唯「お菓子も美味しいし、お茶も美味しいし、もう幸せ日和だよ~」
澪「はは! いつも言ってるだろ。それ」
唯「本当のことだもの、仕方がないよ」
紬「そう言ってもらえると、持ってきた甲斐があるわぁ」
律「さて……前座はこれくらいにしておこうぜ」
唯「お、いよいよですな!」
梓「何がです?」
律「はい、みんな戦利品出してー」
梓(戦利品?)
唯・澪・律・紬「はい!」ドドーン
梓「!!」
梓「そ、それは……」
唯「けいおん!一番くじだよ。あずにゃんご存じ?」
梓「えっと――」
律「すっげえー!!」
唯「どしたの!?」
澪「ムギがA賞持ってるんだよ! これが魔除け人形……」
紬「うふふ」
梓(あの人は箱買いしたから持ってて当然でしょ……)
律「私、グラス全部集めた」
澪「グラスしか当たんなかったんだろー?」
律「ちゃんときゅんキャラ当てたもん!」
唯「私も頑張って全部当てたよ~」
律・澪「すっげー!」
梓「……」
紬「そういえば梓ちゃんはどうだったの?」
律「へ? 梓?」
紬「うん。昨日、夜偶然会ったの」
澪「へー、梓もかぁ」
唯「どうなの!? あずにゃん!」ワクワク
梓「うっ……」
梓「そ……そ……」
梓「そんなくじに興味あるわけないじゃないですかぁ! いやだなぁー!」
紬「え、でも昨日は」
梓「欲しいふりしてただけですよー! あれは純に付き合ってただけなんで!」
紬「そう?」
律「後々欲しくなってももう手に入らないぞー」
梓「ははははは、いりません! いりません! ぜーんぜんっ興味ありませんもん!」
唯「えー、こんなにかわいいのなぁ。ねぇ?」
澪「うんうん」
梓「そんなかさばる物、部屋に置いてたら狭くなっちゃいますよ~」
律「これぐらい大したことないだろ。あ、そういやうちの聡もくじ引いたんだぜー」
梓「あのっ、私! これから用があるので帰りますね」
紬「え、もう帰っちゃうの?」
梓「はい! それではお先に失礼します。お疲れさまでした!」ガチャン
タタタ…
律「それでそれで、聡がさぁー」
澪「えー、本当かぁ」
唯「あずにゃん……?」
梓「……」
梓「……ぐすんっ」
梓「なんでかなぁ……こんなに頑張ってるのに、どうしてかなぁ……」
梓「あーあ、ツイてないなぁ……」ポロポロ
純「おーい! 梓ー!」
梓「ん……?」
純「はぁ、はぁ」
梓「どうしたの?」
純「く、くじ……」
梓「え?」
純「くじ引けるお店、まだあるって……!」
梓「!!」
梓「本当!?」ガシッ
純「う、うん! 先輩からの情報! さっき見たらまだたくさんあるって」
梓「どこのお店!?」
純「ふっふっふ、聞いて驚くなよ」
梓「ふざけないでっ」
純「しょ、商店街裏のホビーショップですっ」
梓「そこは盲点だった……!」
純「私もこれからそこ行くから、梓!」
梓「よしきたっ、すぐに向かおう!」
・・・
梓「ここか……」
純「どう? ありそう?」
梓「そんなの見なきゃわかんない。行こう」
純「お、おう……」
ガチャリ
店員「いらっしゃい」
梓「!」
梓「あった……あった!」
純「え、マジ!?」
梓「あったぁー!! わーい!」ピョンピョン
純「あ、でもAとかBとかの上位の賞はなくなってる」
梓「引けることに意義があるんだよ!」
純「そ、そうかぁ?」
店員「くじ、引くの?」
梓・純「はい!」
店員「どっちがさきかな?」
梓「純。これを見つけたのは純のお陰……純からどうぞ!」
純「え! いいの!?」
梓「うん!」
純「梓ぁ……。うん、よし! おじさん! 五回引きます!」
店員「はいはい。三千円ね」
純「はい。よぉーし……」
梓「下から! 下から取った方がいいよ!」
店員「お姉ちゃんはしゃぎすぎやぞ(苦笑)」
梓「え、えへへっ……」
純「うむむむ……」
店員「Eが一つにGが一つ、Hが三つね」
純「やったぁー! きゅんキャラあたったよ! 梓!」
梓「よかったね、純!」
純「さぁ、次は梓の番だ!」
梓「よぉーっし!」
店員「はいはい」
梓「私も五回で!」
店員「あれ」
梓「んん?」
店員「ごめんねぇ、今ので最後だったみたい」
梓「……」
梓「は?」
店員「い・ま・の・で・最後。終わりね」
純「あ、梓……」
梓「 」
純「梓、しっかりして……」
梓「ん」
純「梓ぁ……」
梓「ん」
純「わ、私があてたやつ少し分けてあげるよ! だから、ね?」
梓「No Thank You」
純「でも……」
純「ごめんね、最初に梓が引いてればこんなことには」
梓「いいって、いいって。仕方がないって」
梓「私、もう少しその辺のお店で探してみるよ。あははは」
ヨロヨロヨロ…
純「あ、梓……」
梓「はぁ……」トボトボ…
梓「もうどこにもあるわけないか……そりゃそうだよね、ははは」
梓「残念だったなぁ……」
梓「……」
ピタ
梓(そういえば)
梓「自転車、昨日の交番に預かってもらったまんまだったっけ。取りに行かなきゃ」
トボトボ…
梓「すみませーん……」
警官「はい?」
梓「あの、自転車を」
警官「自転車? ……ああ! 昨日のくじの子!」
梓「言わないでください……」
警官「どう? 見つかったのナントカくじは?」
梓「どこにもなかったんです……」
警官「暗いなぁ、よっぽど欲しかったのか」
梓「まぁ、わりと……ん?」
梓「!!」
梓「あ、あれは!?」
警官「ん?」
警官「おお、あれのこと? 同僚が朝、あれ大量に持ってきて出勤してきたの(笑)」
警官「いい歳こいてあんなので喜んでるなんてなぁ、ははは」
梓「あ、あ、ああ……」
警官「おーい、もしもーし?」
梓「くじ……けいおん……」
警官「もしかして君が探してたのってあれのこと?」
梓「……はい」
警官「あー、本当だ。けいおん!って書いてる」
梓「……はぁ」
警官「……そう、だなぁ」
警官「ちょっとここで待っててよ。いい物あげるから」
梓「?」
梓(いい物ってなんだろ……お菓子? いや、まさかね)
警官「君、ちょっとこっち来て」
梓「え? 何ですか……」
警官「そんなおっかなびっくりになるなよ(笑) 別に何もしやしない」
警官「同僚に今ちょっと聞いてみたらさ。被ったやつなら持っていってもいいって言ってるんだわ」
梓「な、何が?」
警官「だから、あれ。ほら、けいおん? くじ」
梓「えぇ!? う、うそっ!?」
警官「警察、嘘ツカナイ」
梓「あ、あわわわ……」
警官「あんな深夜にうろついてまで欲しがってたんだし、いいんじゃない? 一つや二つ持ってっても」
梓「で、でも」
警官「はっきりしないなぁ。いいもんはいいの。持っていきなさい。その代わり、深夜徘徊はしないように。お兄さんとの約束ね」
梓「は、はい……本当に、ほんっっとうにいいんですか?」
警官「おう」
梓「ああああ、ありがとうございますっ! 本当にありがとうございます! あの、お金……」
警官「いらん、いらん(苦笑) あ、チャリンコは外に置いてあるから」
梓「はっ、はい!! ありがとうございましたぁっ!! わぁ~いっ!」タタタ…
警官(元気なこった)
警官「さて……もしもし? くじのやつ何円で売ったんだっけ? え、五千円? 高ぇなぁ、もっとまけてくれよ(笑) 今月厳しいだぜ?」
自宅
梓「ふふふ……♪」
梓(くじは結局引けなかったけど、タダでもらっちゃった)
梓「C、D、Fx3、Gx1、Hx2……こんなにいいのかなぁ」
梓「でもまぁ」
梓「嬉しいなぁ、嬉しいなぁ♪」ゴロンゴロン
梓「まぁ、贅沢言えばやっぱり自分でくじは引きたかったけど……」
ピンポーン
梓「ん?」
梓「はーい、どちら様ですかー?」
ガチャリ
唯「おっすおっす! あずにゃんおっす!」
梓「唯先輩?」
梓「どうしたんですか? 急に……」
唯「えっとね」
唯「さっきみんなでくじの話してるときあずにゃんの様子がおかしかったから」
梓「様子を見にきたと?」
唯「その通り!」
唯「でもあずにゃん、なんか嬉しそうだね」
梓「え? あ、えへへ……」
唯「そんなあずにゃんをもっと喜ばせようかと思いまして」ガサゴソ
梓「?」
唯「はい、この中から一枚引いてね」
梓「え?」
梓「これは……」
梓「……何ですか?」
唯「けいおん!一番くじ! 平沢オリジナル!」
唯「ハズレなし! どれを引いても大当たり~! あ、でも一回だけだよぉ」
梓「唯先輩……まさか、私がくじを引けなかったことを……」
唯「憂から聞いちゃって、えへへ。さぁ、引いた、引いた!」
梓「は、はい……えっと、これを」
唯「んん~、どれどれー?」
唯「あちゃー、あずにゃん。一番下のH賞だったよー。おっしいなぁ」
梓「ふふっ、何がおしいんですか」クスッ
梓「それで? H賞は何がもらえるんです?」
唯「えへへ……」
ムギュウ…
梓「え!?」
唯「H賞は、
平沢唯からのあつーい抱擁でしたぁ」スリスリ
梓「ちょ、ちょっと!」
唯「よしよし」スリスリ
梓「……///」
梓(あたたかい……)
パッ
唯「おーわり! それじゃあね、あずにゃん! そろそろ帰らなきゃ晩ご飯に遅れちゃうんだよー」
梓「え、あ、はい。それじゃあ……」
唯「また明日ね! ばいばーい!」ガチャリ
梓「……」
梓「えへへっ」ニコニコ
次の日
純「梓、昨日は……」
梓「なんのこと?」
純「いや、一番くじ……」
梓「ちゃんと引けたよ。私」
純「本当に!? よ、よかったぁ……」
純「で、何賞引いたの? てか何回引いた?」
梓「たったの一回」
純「一回だけ!?」
梓「うん。それに一番下のH賞」
純「そっかぁ、きゅんキャラ当たらなくて残念だったねー」
梓「まぁ……色んな意味できゅんってさせられちゃったけどね」クスッ
純「?」
おわり!
最終更新:2011年07月04日 20:37