さて、お風呂場に来て私がすべきことはただ一つだ。
私は浴槽のお湯を手ですくい、それを迷うことなく飲み干した。
何と、澄んだ味であろうか。これなら何リットルでも飲めてしまいそうだ。
だが今ここでこれを飲みすぎてしまう訳にもいかない。
私は予め用意していたペットボトルに聖水を汲み入れた。
当然、あとでこれを使ってお茶を入れたりするためにだ。
私はお風呂から上がると上機嫌になっていた。それも当然であろう。
聖骸布に聖水、更にお風呂上りに律が使ったタオルの傍に落ちていた縮れ毛といった数々の聖遺物を入手できたのだから。
え?その毛はどうしたかって?勿論気が済むまで舐めて目一杯堪能しました。
律の部屋に行った時など様々な時にもう入手済みだったから、既に相当数があるし。
澪「律ー、私もお風呂上がったよ」
律「おーう、・・・澪が元気出たみたいで良かったよ」
澪「・・・え?」
律「お前、洗濯する前に泣いてたろ?微かにだけど、泣き声が聞こえた」
澪「あ・・・、それは・・・」
律は立ち上がると、私の目の前まで歩いてきた。
律「なぁ澪」
澪「な、何?」
律「澪が話したくないなら聞かないけどさ、本当に困ったら私に話せよ?」ギュッ
律が私をそっと抱きしめた。
律「中学入って、こうやって泊まったりとかは減ったけど。それでも澪は、私の大事な澪だからな」
澪「律・・・」ギュッ
私も、律を抱きしめ返した。
私の目からはまたもや涙が流れていた。
私はあんなことをしていたのに、
こんなにも優しくしてくれる律の匂いどうしようすっごい良い匂いだし律の体マシュマロみたいにふわふわだしまたもや二人だけのドリームタイム入りました律可愛い律可愛い律可愛い律ハァハァハァハァハァハァハァハァこのまま押し倒して滅茶苦茶にしたい。
律「全く、澪は泣き虫だなー」
危ないところだった。
律の声で、私は現実に引き戻された。
澪「そんなこと、無いもん・・・」ギュウ
より強く抱きついて、律の胸の感触を体全体で味わいつつさり気なく律のお尻に手を当てる。
律「澪は甘えんぼだなー・・・」
澪「律にだけだよ、こんなの・・・」サワサワ
本心から、私は言った。
律、大好きだよ。
本当に、心から愛してる。
女の子同士でこんな気持ち、許されないんだろうけどね。
それでも、それでも私は律を心から、誰よりも愛してるんだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
澪「・・・っていうのが、私が『ふわふわ時間』と『ときめきシュガー』の歌詞が思い浮かんだきっかけかな」
紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁ」ボタボタボタボタ
梓「何て甘々な・・・、だから澪先輩の歌詞はあんなに甘々なんですね」ザー
唯「澪ちゃんは、昔からずっとりっちゃんのことが大好きなんだね!」
澪「うん・・・小さい頃から、ずっと律に助けられてるしな」
紬「りっちゃん、優しいもんね」ボタボタボタ
澪「あぁ、私はさ―律が居ないと駄目なんだ」
梓「・・・いいですね、そこまで想える相手が居るなんて」ザー
澪「はは・・・、まぁ律が私のことどう思ってるかなんてわからないけどな」
そんなこと、聞ける筈も無い。
唯「大丈夫だよ、澪ちゃん!」
澪「唯・・・?」
唯「りっちゃんだって、澪ちゃんが大切だからずっと一緒に居たに決まってるよ!」
澪「・・・そう、かな」
唯「そうに決まってるよ!澪ちゃんのことが大切じゃなきゃ、そんなに優しくなんてできないよ!」
紬「うん、私も・・・そう思うわ。初めて見た時から何てお似合いの二人なんだろうって思ってたもの」ボタボタ
澪「ムギ・・・」
梓「そうですよ、自信持って下さい!律先輩と澪先輩程見てて砂吐きたくなる人達は居ませんよ!」ザー
澪「梓・・・」
それは、お似合いだってことでいいのか?
唯「ほら!皆そう思ってるんだよ!だから自信持っ・・・てええええぇぇぇぇぇぇっ!?」
澪紬梓「!?」ボタボタ ザー
澪「な、何だ唯!?どうした!?」
唯「あわわわわわわわ・・・!」
私の後ろの方を見て青ざめて・・・
律「うーっす」
澪「・・・え?」
り、つ・・・?
律「皆さん、何やら私抜きで楽しそうなお話をしてましたこと♪」
え?律に、聞かれてた・・・?
う、そ・・・。
私は血の気が引いていくのを感じていた。
顔も青ざめていたのだろう、ムギと梓の私を見る表情がとても心配そうだった。
梓「あ、あはは・・・別に、律先輩を仲間外れにしようとかじゃ、ないですよ・・・?」ザ…
紬「そ、それより、りっちゃん?いつから、聞いてたの・・・?」ボタ…
ムギが、核心に触れる。私はというと、全身の震えを止められずにいた。
律「んー?知りたいか、澪?」
律が、私の名前を呼ぶ。
いつもだったら何気なくも嬉しい出来事の一つだが、
今の私にはそれが怖くて仕方なかった。
律「澪が、中学の頃に私を泊めたって言ったあたりから」
―終わった。私が、律の優しさを裏切っていたのがばれた。
最低だ、と。そんなことわかっていながらも重ねてきた愚行が。
自分の余りの情けなさに、重ねてきた罪の重さに、自然と涙が流れてきた。
澪「ご、ごめんなさい・・・。ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
私は涙を流しながら、半狂乱気味で謝罪の言葉を叫び続けた。
澪「わた、私・・・!もうこんなことしないから!絶対、しないから!だから、だから・・・!」
私のことを、嫌わないでくれ・・・!
私、律に嫌われたら生きていけない・・・!
その言葉が、出かかった瞬間。
律は満面の笑顔で、私の頭を撫で始めた。
律「まーた澪はすぐ泣くー、ほんっとに泣き虫だよな」
あまりの意外な展開に、呆気にとられる。
それは私以外の皆も同じようで、唯やムギ、梓も呆然としていた。
澪「お、怒って・・・ないの?」
律「うん、全然」
思わず私の口から出た疑問に、律はさも当然のように答えた。
律「だって澪さ、私のパンツ同じやつも何枚も持ってたりとかで自分の下着より多いだろ?」
私は無言で頷く。
律「そんなのバレない訳無いじゃん、箪笥の一段を丸々占めてる訳だしな」
律「で、私が怒らない理由な。今言ったので半分言っちゃったようなもんだけど」
ほれ、と律は自分のスカートを捲り上げる。
澪「ななな、何やってるんだよ・・・!人が居るところでこんな・・・!」
と言いながらも、私は反射的に息がかかるんじゃないかという距離まで顔を近づけて見入ってしまっていた。
澪「あ、れ・・・?これ、って・・・」
見覚えのある、縞々のパンツ。
律「そう、澪のパンツだ」
私は驚いて、律の顔を見上げる。
律「他にもあるぞー。お前、私が入ったお風呂のお湯飲んだり使用済みナプキン持って帰って舐めてたよな」
律「そして何より、私が提出しようとした尿検査の尿を自分のと摩り替えて飲んだよな」
澪「あ、あぁ・・・私が今まで口にしたものの中で1、2を争う飲み物だったよ・・・」
間違いなく覚えてる。
『これが律のカラメルソース!うーん、テイスティ・・・』
とか言いながら飲んだ記憶がある。
律「流石にそれはやめろよな、もし病気でその発見が遅れたらどうしてくれる。・・・で、聞くけどそのもう一つって何だ?」
澪「え?律の家に行った時に律が出してくれた・・・律特製のレモンティーだけ、ど・・・」
ひょっとして・・・・!
あの適度な甘さでありながら爽やかな酸味と絶妙な苦味も感じられ、喉越しも抜群な味わい深い液体は・・・!
律「そう、私のおしっこだ」
澪「律・・・!」
またもや涙が流れてきた。今度は嬉し涙だ。
黙って事の顛末を見守っていた、唯、ムギ、梓も思わず笑顔になるのが見えた。
律「お互い様ってことだよ。まぁ私はパンツは舐めたりしないで、身につけて楽しむ派だけどな」
律が笑った。私の大好きな、律の笑顔。
この世で一番愛しい、最高の笑顔―。
澪「ねぇ、律?本当に私なんかで良かったの?」
私の隣を歩く、幼馴染に尋ねる。
律「馬鹿なこと聞くなよ、『澪でも良かった』じゃなくて『澪じゃなきゃ駄目』なんだよ」
澪「うん・・・、ありがとう」
律「ほら、皆来たぞ」
顔を上げると、そこには私の大切な仲間達が集まっていた。
唯「わぁ!澪ちゃん、とっても綺麗だよ!」
澪「あ、ありがとう唯・・・///」
紬「りっちゃんも、とっても似合ってるわ」ボタボタボタ
律「はは、何か照れ臭いけどな」
梓「お二人共、本当にお似合いです」ザー
さわ子「私より、私より先に・・・Fuck・・・!」ブツブツ
梓「あと先生、おめでたい席なんですから空気を読んで下さい」ザー
あの時私と律は全てを曝け出しあってお互いを知り、そしてより絆を深めることができた。
そのおかげで私達は指輪交換は勿論、
下着交換 ―前日にお互いが身に着けた使用済み下着を交換し合って身に着ける。
身に着けた日数が長かったり身に着けた日によく汗を流していたりするとより良いとされる―
もした上で遂にこの日を迎えることとなった。
純「本当におめでとうございます!澪先輩ってかっこいいと思ってましたけど、今日は本当に可愛らしいです!」
澪「そ、そうかな・・・/// 鈴木さん、来てくれてありがとうね」
憂「お二人とも、おめでとうございます!」
律「ありがとう、憂ちゃん。次は憂ちゃん達の番かな?」
憂「ななな、何言ってるんですかもう・・・!///」
和「まぁ、そう遠くないうちにね。それより、主役がいつまでも話し込んでたら駄目じゃないの?」
憂「の、和ちゃん・・・!?///」
律「おう、・・・そっちも頑張れよ」
和「ええ、ありがとう。そして、結婚おめでとう―」
晴れて私達は、結ばれた。
―fin―
最終更新:2010年12月08日 03:06