~資料室~

澪「…」カキカキカキカキカキ

梓「…」ジー

梓「あの、それは何を書いてるんですか?」

澪「これか?自分で言うのは恥ずかしいんだけど」

澪「ふぁ、ファンレターのだな…返事を書いてるんだ///」

梓「え?澪先輩は返事を書いてたんですか?」

梓「何時もあんなに沢山貰ってるのに…」

澪「ああ、流石に全部は無理だけど1回は必ず書いてるぞ」

澪「昨日それを律にからかわれてだな…」

梓「…」

梓(私も…書いてみたいんだけどな…)

澪「梓、どうした?」

梓「いえ、あの…凄いなって」

澪「まあ1年の学園祭直後に比べたら数も減ったから…大した事じゃないよ」

梓「前からずっと聞いてみたいって思ってたんですけど」

澪「何だ?」

梓「ファンレターって、どういう事が書いてあるんですか?」

梓「例えばその…澪先輩の事が…す…好きです…とか…」

澪「それは無いよ」

梓「え!?そうなんですか?」

澪「ああ、最初の頃は衣装が可愛かったとか歌と演奏が良かったとか…」

澪「いや、思い出したくない事を思い出してしまった///」

梓「それはもう忘れましょうよ」

梓(あの映像は絶対に忘れられないけど///)

梓「最近はどんな事が書いてあるんですか?」

澪「最近か…最近だと次のライブを期待してくれてるのが多いかな」

澪「友達になって欲しいとかそういうのもあるけど」

澪「梓が思ってる様な内容のは1度も無かったぞ」

梓(そうだったんだ…私、ちょっと勘違いしてた)

梓(1年生の間でも澪先輩の人気って凄いから…)

梓(あんまり仲良くすると、嫉妬されるんじゃないかって)

澪「それにな、梓の事も書いてあったりするぞ?」

梓「え?私ですか?」

澪「ああ、みんなの事も結構書いてあるんだ」

澪「軽音部はみんな仲が良くて羨ましいとか…」

澪「そういう内容だと、私も嬉しくなるな」

梓「そうですね、私もそう思われてるのは嬉しいです」

澪「律とは良く喧嘩してたりするんだけど…」

澪「そういうのも見透かされてるんだろうな」フフフ

梓「…」

澪「そうそう、たまにだけど唯の事が一杯書いてある事があるんだよ」

梓「澪先輩へのファンレターなのにですか?」

澪「一応私の事も褒めてくれてたりするんだけど、殆ど唯の事だな」

澪「私がそれを読んでも仕方が無いから別の封筒に入れて」

澪「唯の所に入れ直してるんだけど、唯は気付いてるかどうか…」

梓「誰の仕業なのかは簡単に想像出来るんですけど…」

梓「どうして直接入れないんでしょうかね?」

澪「流石に直接は入れにくいんだろうな…幾ら仲が良いって言っても」

澪「私の所なら…自分で言うのも変だけどみんなやってるからな」

梓「でも形だけとは言え、唯先輩は澪先輩から貰ってるって事ですよね?」

澪「そうなるな」

梓(憂…何て余計な事を…)

梓「あの、私の事も書いてあるって言ってましたよね?」

梓「どんな事が書いてあるんでしょう?」

澪「梓はな、もっと仲良くしてあげて欲しいって」

梓「…え?」

澪「1年生、特に梓と同じクラスの子だと殆どそれが書いてあるな」

梓(嘘…私、応援されてたんだ…)

澪「ちなみに、唯の事を一杯書いてるさっきの子も同じだな」

梓(ごめん憂、さっきのは訂正するよ…)

澪「何でだろうな?私達、そんなに仲が悪く見えるのか?」

澪「私は梓の事…」

梓「」ドキッ

澪「嫌いじゃないのにな」

梓「…」

澪「どうした?」

梓「い、いえ…」

澪「梓は私の事、どう思ってるんだ?」

梓「え?あの…その…嫌いじゃないですよ?」

澪「そうか…良かったよ」

梓「良くないです…」

澪「ん?何か言ったか?」

梓「い、いえ!何にも!」

澪「それより、梓がやってくれてた分は終わったのか?」

梓「あ、もう終わって此処に…痛っ!」

澪「紙で切っちゃったか…痛いんだよな、それ」

梓「あの…」

澪「絆創膏ならあるぞ?」

梓「いえ、そうでは無くてですね…」

梓「血が出てるんですけど、見てて大丈夫なんですか?」

澪「…」

梓「…」

澪「梓!指を貸せ!」

梓「は、はい!」

パクッ

梓「え!?」

澪「…」チューチュー

梓「あ…」




澪「…止まったみたいだな」

澪「後は絆創膏を巻いてと…よしっ」

梓「…」

澪「どうした?手当て終わったぞ?」

梓「えっと、その…」

梓「か、可愛い絆創膏ですね?」

澪「そうか?じゃあもう1枚渡しておくから」

澪「お風呂に入ったら貼り替えておけよ?」

梓「…はい」

梓「あ、あの…ありがとうございました!」

澪「良いって、こんな事位で大げさだな」

梓(大げさなんかじゃ…ないもん…)

澪「じゃあ後はこれを和に渡して終わりだ」

澪「終わらなかったら明日も続きをやろうと思ってたんだけど、良かったよ」

梓「え?明日は日曜日ですけど…」

澪「月曜日からはちゃんと部活に出たいかならな」

澪「学園祭も終わって新歓ライブがまだまだ先だって言っても」

澪「サボってばかりはいられないだろ?」

梓(そうだよ…今気が付いたよ…)

梓(もう少しゆっくりやれば良かったんだ…)

澪「私は部屋を片付けてから部室に行くから」

澪「梓はまとめた資料を和の所へ持って行ってくれないか?」

梓「分かりました…」



~生徒会室~

コンコン…ガチャッ

梓「失礼します…」

和「あら、もう終わったのかしら?」

梓「はい、澪先輩がこれを渡して来る様にって…」

和「ありがとう、凄く助かったわ」

和「ざっとだけど、確認させて貰うわね」

梓(確認する必要なんて無いよ…)

梓(澪先輩がいい加減にやる訳無いし…私は一生懸命やったもん…)

和「…あら?」

梓(え?)

和「枚数が足りないわよ?」

梓「そ、そんなはず無いです!」

梓「澪先輩はちゃんと数えながらやってました!」

和「でも、足りないものは足りない」

和「手伝って貰ってるのにこんな事を言うのも何だけど…」

和「澪にはもう少し注意してやって欲しかったわね」

梓「そんな…そんな言い方酷いですよ!」

梓「私はともかく澪先輩の事を悪く言うなんて…」

和「…」

和「そうね、冷静に考えてみれば本当に酷い話よね」

梓「え?」

和「ごめんないさい、別に演技なんてしなくても良かったのに…」

和「昨日は上手く出来たと思うんだけど、こういうのって慣れてなくて」

梓「あの…話が良く分からないんですけど?」

和「簡単な事よ、私が今言った事を信じなさい」

梓「でも、私達はちゃんとやったのに…」

和「やってない、だから足りない分はやり直しよ?」

梓「やり直し…」

梓「えっ!やり直しですか!?」

和「どうしてそんなに嬉しそうな顔をするの?」

和「私は凄く理不尽な事を言ってるのに」フフフ

梓「それは…分かってて言ってますよね?」

和「さぁ、私には何の事かさっぱり」

梓「やっぱり…和先輩は酷い人です」

和「そうね、もし澪に何か聞かれたらそう言っておきなさい」

和「自分のミスを人のせいにする酷い奴だって」

梓「分かりました、そう言っておきます」

和「本当にそう言っても良いのよ?」

梓「それも…分かってます」

和「足りない事になっている資料は印刷して後で届けるわ」

和「澪の事だから多分引き受けてくれるとは思うんだけど」

和「その後どうなるかまでは、私には分からない」

和「だから…頑張ってね」

和「もちろん、資料のまとめを頑張っての意味だからね?」

梓「…」

梓「今、足りない事になってるって言いませんでした?」

和「言ってないわよ」

梓「昨日は上手く出来たって言ってましたよね?」

和「言ってないわね」

梓「…」

梓「あの…私、頑張ります!本当にありがとうございました!」

和(お礼を言うなら私じゃないんだけど…言わないでって事になってるから…)

和「どうしてお礼を言われるのか分からないんだけど…ふふっ、どういたしまして」


~部室前~

梓「あれ?澪先輩どうしたんですか?」

澪「な、中のソファーに何か黒いのが居るんだ…」

梓「黒いの?」

ガチャッ

澪「梓!こ、怖くないのか?」

梓「大丈夫ですよ」

テクテクテクテク…

梓「何だろ?これ…カーテンかな?」

澪「ご、ゴキブリとかじゃないよな?」

梓「こんなに巨大なゴキブリなんて居ませんって」

梓「唯先輩と憂がカーテンに包まってるだけですよ」

澪「な、何だ…人だったのか…」

梓「どうして憂が此処に居るんでしょう?」

澪「…どうしてだろうな?」

梓「でも…不思議と納得出来ちゃいますよね」

澪「唯が居れば隣には憂ちゃんが居る…逆もそうだな」

梓「隣に居る人が自然と思い浮かぶなんて羨ましいな…」

澪「どっちに妬いてるんだ?」

梓「どっちにも妬いてません!」

澪「梓、あんまり大声出すと起きちゃうだろ?」

梓「あ、そ、そうですね…」

澪「このまま寝かせておいてあげよう」

梓「でもこの状態じゃ、部活は出来ないですよね…」

澪「まあ律とムギもまだ来てないみたいだからな」

澪「私達はこっちに座って待っていようか?」

梓「はい」


澪「何時もより椅子が近くないか?」

梓「気のせいですよ」



~体育館裏~

律(腹が減ったのはもう良いとしても…)

律「なあムギ、寒くないか?」

紬「え?そうね…」

紬「少し寒いけど…私は体温が高いから大丈夫」

紬「それよりもりっちゃんの方が寒そうよ?」

律「いや、あたしは別に良いんだ…」


紬「じゃあ…」ピトッ

律「…」

律「くっついても同じだろ」

紬「じゃあ…」ムギュ

律「いや、それでもあんまり変わらないぞ?」

紬「でも、良く映画でやってるわよ?」

紬「雪山で遭難した時とかに、こうやって温め合うの」

律「それはあれだろ…その、は、裸になってとか…///」

紬「私達もやってみる?」

律「何!?」

紬「うふふっ、冗談よ」

律「…そういう冗談は止めような?」

紬「でも、少しは暖かくなったでしょ?」

律「…」

律「まあ…そうだな」

律「…」

紬「…」

律「なあ、ムギ」

紬「何?りっちゃん」

律「その…何だ、もうそろそろ離れないか?」

紬「え?どうして?」

律「この状況をだな、万が一他の奴が見たらどう思う?」

紬「仲が良くて羨ましい?」

律「…」

紬「え?違うの?私達仲が悪いの?」ショボーン

律「いや、そういう意味じゃ無くてだな…」

律「こんな人目に付かない所で、何をしてるんだって思わないか?」

紬「そうね、梓ちゃんが見たら妬いちゃうかしら…」

律「…は?梓?」

紬「ごめんなさい、唯ちゃんよね」

律「…澪じゃないからな?」

紬「それ、本当?」

律「…」

律「…」

律「…本当だよ」

紬「あら?どうしてそんなに考えるのかしら?」

紬「でも、りっちゃんがそう言うのなら、そういう事にしておきましょ」ウフフ

律「…」

律(違うよムギ…あたしは全く別の事を考えてたんだ)

律(澪が見たら少しは妬くと思う…それは間違い無いんだよ)

律(でも、逆の立場だったら…此処に居るのがムギと澪だったらどうなんだ?)

律(あたしも多分嫉妬すると思うんだけど…)

律(でも、その場合はどっちに妬いてるんだろうってな…)


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最終更新:2010年12月09日 00:01