~学校・資料室~

澪「しかし改めて考えてみると、この3日間」

澪「私の知らない所でとんでもない事が起きてたんだな…」

梓「澪先輩が生徒会の手伝いをしてなくてあの場に居てくれたら」

梓「こんな事にならなかったかもしれませんね」

澪「梓はその方が良かったのか?」

梓「唯先輩にも憂にも悪いですけど…」

梓「もちろん、それは嫌ですよ」

澪「どうしてだ?」

梓「だって、もし何か違う事が起きてたら…」

梓「私は今、此処で澪先輩と一緒に居なかったかもしれない」

梓「そんなの絶対に嫌です」

澪「そうか、梓はそういう風に考えるのか…」

梓「澪先輩は違うんですか?」

梓「だったら、私と一緒には居たく無いって事ですよね…」

澪「違うだろ?何でそうなるんだよ」

梓「だって…」

澪「私はな…例え最後に笑っていられたとしても」

澪「誰かが途中で悲しんだりするのは嫌だ」

澪「私が生徒会の手伝いをしてなかったら…」

澪「まず、ムギの事を覗きに行くのを止めてただろうな」

澪「そうなると、唯と憂ちゃんの行き違いも無かったかもしれない」

澪「そういう可能性があるなら、それでも良かったと思う」

梓「その可能性だと、私は今此処に居ないって事になりますよね…」

澪「そうなるな」

澪「でも、梓と律が唯に何も言わなかったのはどうしてだ?」

梓「それは…結果が分かってるから、敢えて言うまでも無いかなって」

澪「そうだろうな、私も多分何も言わなかったと思う」

澪「それは、私達もそうなんじゃないのか?」

梓「え?それはつまり…」

澪「もう1つの可能性があったとしても…」

澪「いや、他に幾つもの可能性があったとしても…」

澪「それが必然の事だったら、結局最後は同じになると思う」

澪「今此処に梓が居なくても…何時かきっと、隣に座ってる」

澪「私はそう思うけどな」



~平沢家・唯の部屋~

律「それでか…唯が此処に隠れてるのは」

唯「私は一応、あずにゃんとお出かけしてる事になってるからね」

律「もう良いんじゃないのか?そんな嘘、今更関係ないだろ?」

唯「う~ん、そうかな…」

唯「でも、憂がすぐに帰って来ちゃ駄目だよって書いてたし…」

律「まあ、唯の好きにすれば良いさ」

律「でもそうか…澪は今、学校に居るって事なんだろうな」

唯「え?やっぱり澪ちゃんなのかな?」

律「間違い無いだろ、他には考えられない」

唯「澪ちゃんが何処に居るのかは分かるんだね」

律「まあな」

唯「りっちゃんはそれで良いの?」

律「ああ、よくよく考えてみれば…」

律「あたしも…そうなる様に手助けした様なもんだからな」

律「邪魔をしようと思えば幾らでも出来たけど、そんな気は全く起きなかった」

律「こうなる事は分かってた、決まってたんじゃないかって思うよ」



~学校・資料室~

澪「私と梓がこうなる事は最初から決まっていた…」

澪「そう…運命の赤い糸で結ばれていた、そういう事だな」

梓「あの、非常に嬉しいんですけど…言ってて恥ずかしくないですか?///」

澪「もちろん恥ずかしい台詞だって事は分かってるぞ?」

澪「でもな、好きな人の為なら恥ずかしいと思える様な事を言ってみたい」

澪「恥ずかしいと思える様な事をしてみたい」

澪「そういう事って無いか?」

梓「…あるかもしれませんね」

梓「あの、実は昨日怪我をした指なんですけど」

梓「まだ絆創膏を貼り替えてないので…」

澪「もしかして、また舐めて欲しいとか言わないよな?」

梓「…」

梓「言っちゃいます…」

梓「でもこれはとても恥ずかしい事なので…目を瞑ってて貰えませんか?」



~平沢家・唯の部屋~

律「お?何か下で物音がしなかったか?」

唯「憂が帰って来たのかな?」

~玄関~

憂「ただいま~」

憂「…」

憂「そっか…お姉ちゃんは出かけたんだよね」

憂「梓ちゃんは、ちゃんと迎えに来てくれたのか…な?」

憂「…」

憂「…」

憂「…何でだろ?」



~リビング~

憂「お弁当は…良かった、持って行ってくれたんだ」

憂「でも、どうして?」

憂「…そうだ、梓ちゃんに」


憂「あ、もしもし、梓ちゃん?」

憂「…」

憂「あれ?ちょっと今機嫌が悪かったりする?ごめんね?」

憂「でもお願い、1つだけ聞きたい事があるんだ」

憂「梓ちゃん、今何処に居るの?」





~学校・資料室~

梓「…」

澪「誰から…って、まあ話の内容で分かったけど、憂ちゃんか?」

梓「ええ、そうです」

梓「唯先輩と出かけてるって嘘付いてたの、あっさりバレちゃいましたね」

澪「どうしてだろうな…梓が此処に居るって言っただけだろ?」

梓「…」

梓「そんな事はどうでも良いんですよ…」

梓「折角良い雰囲気だったのに…台無しじゃないですか」

澪「機嫌直せ?」

梓「そんなの、急には無理ですよ…」

澪「そうか…私はさっきの続き、したいんだけどな」

澪「梓は私だけに恥ずかしい事を言わせておいて、何もしてくれないんだ…酷いな」

梓「もぅ…分かりましたよ!」

梓「じゃあ…続きをお願いします」

澪「ああ、目を瞑ってれば良いんだろ?」

梓「はい、そのまま動かないで下さいね…」

チュッ

澪「何だ?今のは」

梓「指ですよ?」

澪「絆創膏、剥がして無い様に見えるんだが?」

梓「今さっと貼り替えたんですよ」

澪「顔が真っ赤になってるのはどうしてだ?」

梓「寒いからですよ、きっと」



~平沢家・唯の部屋~

律「しかし寒いな…エアコン入れて良いか?」

唯「駄目だよ、部屋に居るのが憂にバレちゃうよ」

律「じゃあ、どうすれば良いんだよ」

律「この部屋で暖かくなれる方法…」

律「お、そうだ!ベッドに入ってて良いか?」

唯「うん、良いけど…」

唯「で、でも…駄目だよりっちゃん、私には憂という人が…///」

律「いや、そういうお約束は良いから」

律「とにかく良いんだよな?じゃあ失礼して…」

唯「でも、それは良いアイデアかもしれないね」

律「何だよ、唯も一緒に入るのか?」

唯「だって、私も寒いんだもん」

律「…襲うなよ?」

唯「りっちゃんこそ」



~学校・資料室~

澪「そうか、寒いのか…」

澪「だったら、私が暖めてやるよ」ギュッ

澪「どうだ?」

梓「…」

梓「あったかいです…」

澪「これから何処に出かける?」

梓「私、動物園に行きたいです!」

澪「ああ、良いな…そうしようか」

梓「はい!」

梓「お弁当もちゃんと作ってきたので、後で食べて下さいね?」

澪「梓の手作りか…楽しみだな」

梓「でも…」

梓「あの、もう少しだけ…このままが良いと思います」

澪「そうだな…私もそう思う」



~平沢家・唯の部屋~

ピンポーン

律「誰か来たぞ?」

唯「え?誰かな…」

~玄関~

ガチャッ

憂「紬さん、わざわざ来て貰ってありがとうございます」

紬「ううん、良いのよ」

紬「最初は何処か外でって思ったんだけど…」

紬「憂ちゃんが一番落ち着ける場所が良いのかなって思ったから」

憂「えっと…じゃあ私の部屋で良いですか?」

紬「ええ、お邪魔するわね」

憂「ところで…紬さんには誰なのか分かりますか?」


紬「ええ、分かるわよ」



~唯の部屋~

律「…ムギじゃないか?」

唯「ムギちゃんの声だね」

律「出かけると思ったら、家で会う約束になってたのかよ」

唯「そうみたいだね…でも、どうしよう」

唯「部屋から出られなくなっちゃったよ」

律「いや、むしろあたしにとっては好都合だ」

唯「そう言えば、りっちゃんはどうしてムギちゃんに会いに来たんだっけ?」

律「…」

律「秘密だ」

唯「え~!そんなのずるいよ?私も全部話したのに!」

律「ば、馬鹿!大声出したらバレるだろ!」



~憂の部屋~

憂「…」

紬「…」

紬「そうそう、サンドイッチを作ってきたの」

紬「良かったら食べてね?」

憂(あ、自分で食べるお昼の事忘れてた…)

憂「ありがとうございます、頂きますね」

紬「ええ、どうぞ」


紬「どうかしら?憂ちゃんには敵わないけど、結構自信あるのよ?」

憂「そんな…これ、凄く美味しいですよ」

紬「ありがとう、憂ちゃんにそう言って貰えると…2番目に嬉しいわ」

憂「2番目…ですか?」

紬「ごめんなさいね、2番目なの」

憂「あの…まずは私のお話、聞いて貰えますか?」

紬「ええ、良いわよ」

紬「でも、良かったら私のお話も聞いて頂戴?」

憂「紬さんのですか?」

紬「私もね、誰かに相談したいって思える様な事が出来ちゃったの」

憂「でも、私で良いんですか?」

紬「実はね…私が1番相談したい人、1番信頼している人は他に居るの」

紬「でも、その人の事を好きになっちゃったから…困ったわね」ウフフ

紬「ごめんなさい、憂ちゃんの事を悪く言うわけじゃないのよ?」

憂「それって…私と全く同じですね」

憂「私も1番相談したい人を好きになっちゃったから…」

紬「私達、似た者同士なのかしら?」

憂「そうみたいですね」クスクス

憂「でも紬さんのお話には興味があります、先に聞かせて下さい」

紬「そう?じゃあお言葉に甘えて…」



~唯の部屋~

律「耳を当てても…」

律「何か話してるって事は分かるが、内容は全く分からんな」

律「本当にこの壁の向こう側が憂ちゃんの部屋なのか?」

唯「うん、間にクローゼットが挟まってるけどね」

律「それでか…」

唯「廊下に出てみる?」

律「それはちょっと危険過ぎるな」

唯「じゃあ天井裏から…」

律「そんな手があるのか!」

唯「無いけどね」テヘッ

律「だからそういうお約束はもう良いって言ってるだろ…」

律「窓からってのも無理そうだからな…」

律「唯、冗談抜きで何か良い方法は無いか?」

唯「…」

律「唯?おい、どうした?」

唯「…zzz」

律「…」

律「徹底的にお約束な奴だな…」

律「あたしはどうすりゃ良いんだよ…」



~憂の部屋~

紬「そう、昨日はあの後で…大変な事になってたのね」

紬「そういう可能性を考えられなかったのは、全部私の責任」

紬「本当にごめんなさい、憂ちゃん」

紬「私の事はどうでも良いから」

紬「まずは唯ちゃんの誤解を解くにはどうしたら良いのか考えましょ?」

憂「…」クスクス

紬「え?どうして笑うの?」

憂「ごめんなさい、ちょっと失礼でしたよね」

憂「だって紬さんも凄く大変だったのに…」

憂「まず最初に私の心配をしてくれるなんて」

憂「紬さん…本当に優しいです」

憂「相談して良かったって、改めて思っちゃいます」

憂「私の事はもう大丈夫なんです」

憂「さっき少しだけですけど、梓ちゃんから聞いちゃったんです」

憂「お姉ちゃんはもう誤解はしてないって」

憂「仲直りしたいって思ってる、そう言ってくれたんです」

紬「そう…良かった…本当に良かったわ…」

紬「でも結局、私には何も出来なかったって事よね…」

憂「そんな事無いです、全部紬さんのおかげですよ」

憂「紬さんが居なかったら、私は誰にも相談出来なかった」

憂「何も始まらなかったんですから、紬さんには感謝してます」

憂「今は私の事よりも、紬さんの事を考えましょうよ」

紬「ありがとう、憂ちゃん…」

紬「でも、私の事は昨日始まった事だから…まだ何も分からないと思うんだけど…」

憂「そんな事は無いですよ、結果はもう分かってるんじゃないかなって思います」

紬「え?どうして?」

憂「だって…」


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最終更新:2010年12月09日 00:09