紬「でも、恋人同士ならこれ位は普通の事じゃないのかしら?」

律「はぁ?誰と誰が恋人同士なんだよ?」


律「…」

律「すまん、そこまで言える自信は本当に無いんだ」

紬「じゃあ何時かそう言って貰える様に、待ってるわね」

律「ムギは…不安になったりしないのか?」

紬「不安?何の事?」

律「あたしはまだ、澪の事が好きなのかもしれないんだぞ?」

律「昨日今日で気持ちが変わってしまったなんて、信じられるのか?」

紬「信じるわ」

律「いや、そんな即答出来る事じゃないだろ…」

律「それとも、やっぱりあたしの考えてる事が分かるって言うのか?」

紬「ううん、私に向けられた気持ちは分からない事もあるわ」

紬「りっちゃんには嫌われちゃったって思った位だもの」

紬「でも、今此処にりっちゃんが居てくれるのは…」

紬「私の事を第一に考えてくれたからでしょ?」

紬「今の1番は私だって事、それだけで十分信じられるわよ」

紬「言葉に出して貰ったのは私の自己満足の為」

紬「ごめんなさいね、恥ずかしい思いをさせちゃって」

紬「その気持ちが変わらない様に…」

紬「雰囲気に流されただけって事にならない様に…」

紬「昨日りっちゃんは頑張れって言ってくれたから…」

紬「私はもっともっとりっちゃんに好きになって貰える様に頑張るだけよ?」

律「何て言うかその…ムギは健気だな」

紬「そうかしら?りっちゃんがそう受け取ってくれる様に」

紬「全部計算して言ってるだけかもしれないわよ?」ウフフ

律「本当にそう思ってるなら言わないだろ?そんな事」

律「ムギの気持ちは良く分かったよ」

律「そこまで言われてるのに何も言ってあげられないなんて…格好悪いよな」

律「あたしの気持ち、本当はもう分かってるんだよ」

律「昨日ムギが頑張るって言った時、頑張れって言ったけど…」

律「そうなんだよな、もうその時には決まってたんだと思う」

律「好きになりたいなんて、そんな恥ずかしい事…」

律「何とも思ってない相手には言えない、それがあたしの本音だったんだ」

律「なあムギ…ムギの事、もっと好きになりたいんだ」

紬「嬉しいわ…りっちゃんにはもっと…好きになって欲しい…」

律「だからその、ちょっと頼みがあるんだが…」

紬「どうすれば良いのかしら?」



澪「…」

梓「声、かけないんですか?」

澪「いや、止めておくよ」

梓「そうですよね、今声をかけちゃうと」

梓「澪先輩もちょっと気まずいですよね…」

澪「いや、そういう事じゃないんだ」

澪「律とは付き合いが長いから、私には分かる」

澪「声をかけてもかけなくても結果は同じだよ」

澪「律が見ているのは、ムギだけになりそうな感じだ」

澪「私の事も、もう分かってると思う」

梓「え?じゃあ、やっぱり無視するのは良くないんじゃ…」

澪「どうしてだ?」

澪「梓は2人の時間を邪魔したいのか?」

梓「え?」

澪「邪魔されたいのか?」

梓「…されたくないです」

澪「私もだよ」



律「…」

紬「どうしたの?りっちゃん」

律「身長の無い自分が、憎いぞ…」

紬「…」

紬「あ、ちょっとつまづいちゃった」ムギュ

律「何で立ってるだけなのにつまづくんだよ?」

紬「どうしてかしら…」

紬「りっちゃんの魅力に参っちゃったから?」

律「…」

紬「あの…本当よ?」

律「まあ…」

律「からかって言ってるだけじゃないって事位…あたしにも分かってるよ」



梓「あっ!」

澪「…」

梓「凄いですね…こんな人通りのある所で…」

澪「ああ…」

梓「澪先輩…やっぱり澪先輩は…」

澪「違うぞ?」

澪「今考えてたのはな、私達もどうかなって」

梓「え!?む、無理ですよ…こんな所でなんて…」

梓「それに、澪先輩の方が恥ずかしいんじゃないですか?」

澪「言っただろ、好きな人の為なら恥ずかしいと思える様な事をしたいって」

梓「でも、これは流石に…恥ずかし過ぎますよ」

澪「恥ずかしいって思うのは、普通じゃないって意識するからだろ?」

澪「だったら、それが普通になれる様にすれば良いだけじゃないのか?」

梓「澪先輩、ちょっと変わりましたね」

澪「…どう変わった?」

梓「そんなに恥ずかしい事が言えるなんて、今までの澪先輩では考えられません」

梓「でも…良かったです」

梓「これでライブの時とかにも緊張しなくなるんじゃないですか?」

澪「別に恥ずかしいのが平気になった訳じゃないぞ?」

澪「梓の為ならって思ったら…そういう事が言えるんだよ」

澪「なあ、梓…私も昨日から自分の事がおかしいって分かってるんだ」

梓「え?どういう事ですか?」

澪「梓は私の事、どう思ってる?」

梓「あの…す、好きですけど…///」

澪「私も梓の事は好きだよ」

澪「まだそういう事、何も言って無かったよな」

梓「そう言えば、そうでしたね…」

澪「ごめんな、私の方から言わなかったから梓も言えなかったと思う」

澪「梓は今、ドキドキしてたりするか?」

梓「はい、凄くドキドキしてますよ…」

澪「私は…別に何時もと変わらない」

澪「でも、梓の事を何とも思ってない訳じゃないぞ?」

澪「昨日部室で唯と憂ちゃんを見て…」

澪「お互い隣に居るのが自然だなって思ったよな」

澪「それと同じじゃないかなって」

澪「私の隣に梓が居るのは自然だって、何時の間にかそう思ってたんだよ」

澪「好きだって気が付く暇も無い位に…好きだって言う暇も無い位に…」

澪「梓の事が好きになってたんだよ、好きでいる事が自然になってたんだよ」

澪「だから…私は梓が隣に居てもドキドキしたりはしない」

澪「梓がいけないんだぞ?私にそんな風に思わせるなんて…」

梓「あの…大変嬉しいのですが…」

梓「聞いている私の方が、滅茶苦茶恥ずかしいんですけど///」

澪「梓の為だって思えば、どんなに恥ずかしい事でも言える」

澪「どんなに恥ずかしい事だって出来ると思うぞ?」

澪「ライブだって梓が隣に、一緒に居てくれれば大丈夫だ」

澪「梓は私と一緒に演奏出来る事、喜んでくれるよな?」

梓「はい、もちろんですよ!」

澪「梓が喜んでくれるなら…何でも出来るよ」

澪「ライブだけじゃない、他のどんな事でも梓が一緒だったら…」

澪「だからな、梓…ずっと傍に居て欲しい」

梓「はい!私、ずっと傍に居たいです!」

澪「こんな事を言っても、私は全然恥ずかしくないからな」ハハハ

グゥー

梓「…」プッ

澪「笑うなよ///」

梓「どんな事でも恥ずかしくないんじゃ無かったんですか?」クスクス

澪「いや、こういうのはちょっと違うだろ…」

梓「でも…私もお腹減っちゃいました」

澪「ああ、早くそれを届けて、何処か別の場所で梓の弁当を食べよう」

梓「あの…私の家はどうですか?今日は、誰も居ないんです」

澪「誰も居ない…そのまま泊まれって事か?」

梓「違います!そういう意味じゃないですって!」

澪「ふふっ、冗談だよ」

梓「…」

澪「冗談じゃ無い方が良かったか?」

梓「澪先輩、いじわるです」

澪「梓が可愛いから、いじめたくなるんだよ」

梓「もう、どうしてそんなに恥ずかしい事が何度も言えるんですか…」

澪「梓の事が好きだからに決まってるだろ?これも言っちゃ駄目なのか?」

梓「それは…何度でも言って下さい///」

澪「梓…大好きだよ」

梓「澪先輩…大好きです」



~平沢家・リビング~

唯「無事に戻って来て良かったよ~」

唯「あずにゃん、届けてくれてありがと~」スリスリ

憂「お姉ちゃん、それお弁当じゃなくて梓ちゃんにやってあげなよ」

唯「…あずにゃんにやっても良いの?」ムフフ

憂「…」

憂「やっぱり駄目」

唯「じゃあ、憂だったら?」

憂「え?そんなの、良いに決まってるじゃない…」

唯「う~い~、今日もお弁当ありがとう~」スリスリ

憂「…」

憂「酷いよお姉ちゃん、お弁当じゃなくて私にやってよ…」

唯「冗談だよ~」

唯「憂、今日もお弁当ありがとうね」スリスリ

憂「うん…」

憂「でも2日連続で晩御飯がお弁当、それもお昼の残りって…」

唯「ごめんね、私が変に嘘を付いて誤魔化すからこんな事に…」

憂「ううん、違うの」

憂「そういうのもちょっと面白いかなって」

憂「今日は本当に色々な事があって…うん、面白かったね」

唯「でも私は途中で寝ちゃってたから」

唯「りっちゃんの事はどうなったのか分からないんだけど…」

憂「後で、紬さんと律さんに聞いてみて」

憂「紬さんは笑いながら、律さんはちょっと照れながら教えてくれると思うよ」

唯「うん、明日聞いてみるねっ」

唯「でも、どうして憂は私とりっちゃんが家に居るって分かったの?」

憂「私に分かったのは、お姉ちゃんともう1人誰か居るって事だけだよ」

憂「律さんが居るって教えてくれたのは紬さん」

唯「ムギちゃんが?何?ムギちゃんって超能力者なの?」

憂「違うよ、お姉ちゃん」

憂「だって2人共…」

憂「玄関に靴、脱ぎっぱなしだったよ?」

唯「…」

唯「そんな簡単なオチだったんですか…」トホホ

憂「まあまあ、結果的には気が付いて良かったんだと思うよ」

憂「お茶も淹れたから、そろそろ晩御飯食べよ?」

唯「…」モグモグモグ…

唯「うん、今日も凄く美味しいよ!」

憂「そうだね、今日のお弁当は美味しいね…」

唯「違うよ憂、今日もだよ!」

憂「私、食べてないから分からないんだけど…」

唯「あ…ごめんね、私が全部食べちゃったんだよね」エヘヘ

憂「うん…凄く嬉しかった」

唯「憂は不味いって言ってけど違うからね?本当に美味しかったからね?」

憂「分かってる、お姉ちゃんは嘘なんて言ってない…」

憂「でもね、お姉ちゃんがそう言ってくれるのは嬉しいんだけど」

憂「お姉ちゃんにはね、私が美味しいって思うものを食べさせてあげたいの」

憂「今日は何処まで出かけて何時食べるのか分からなかったから」

憂「時間が経っても大丈夫な様にちょっとだけ工夫してあるんだよ?」

唯「へえ~、そうなんだ…私には全然分からないな…」

唯「憂が作ってくれたって思うだけで、全部美味しくなっちゃうから!」

憂「もう、お姉ちゃんたら…そういう事を言われちゃうとね」

憂「本当はお料理をする気が無くなっちゃうんだよ?」

唯「え!そうなの!?」

唯「ど、どうしよう…憂のご飯が食べれなくちゃうのは困るよ~」

憂「じゃあね、昨日のお弁当は抜きにして」

憂「私が今までに作ったお料理で、1番不味かったものって何?」

唯「え~とね…な、無いって言っちゃ駄目?」

憂「うん、駄目」

唯「こ、困ったよ…」

唯「う~ん…」

唯「あ、確か4月だったかな?」

唯「星とハート形のクッキーを焼いて貰った事があるよね?」

唯「見た目は凄く可愛いなって思ったんだけど…」

唯「味はちょっとだけ…ほんのちょっとだけだよ?」

唯「憂が何時も焼いてくれるクッキーより美味しくなかったかなって」

唯「ご、ごめんね?折角憂が作ってくれたのにね?」

唯「でも、今はそれ位しか思い付かないよ…」

憂「…」

憂「もう、どうしてお姉ちゃんは私が喜ぶ事しか言ってくれないの…」

唯「え?何が?」

憂「ううん、何でも無いよ」

憂(あれは新歓ライブでお姉ちゃんの演奏を見て感動した…)

憂(クラスのお友達から貰ったものなんだよね)

憂(恥ずかしくて直接渡せないって言ってたから)

憂(私が焼いたって事にして包装し直して渡したっけ…)

憂(私も1つ食べたけど…凄く美味しかった)

憂(私の焼いたクッキーなんて比べ物にならない位に…)

憂(何処か有名なお店のだって言ってたから、仕方無いって思ったんだけど…)

憂「クッキー…また焼いてあげたいな…」

唯「ほんとに?やった~!」

憂「後ね、今まではたまにしか作ってあげられなかったけど」

憂「明日からは毎日、お弁当作ってあげたくなっちゃった」

憂「駄目かな?」

唯「…」ギュー

憂「…」プッ

憂「何?その面白い顔」

唯「い、痛ひ…」

憂「もう、ほっぺが真っ赤だよ?」

唯「だって、夢なんじゃないかって…」

憂「夢じゃないよ」

憂「こんなに嬉しい事が一杯あったのに…夢だったら悲しいよ」

唯「そうかな?」

唯「憂…私はね、夢でも良いって思ってるよ」

憂「え?どうして?」

唯「だって、夢の中でも憂と一緒に居られるなんて嬉しいもん」

唯「それに夢から覚めたって、私と憂は何時も一緒だよ?」

唯「そんなの…当たり前じゃない」

憂「お姉ちゃん…」

唯「憂、私達…何時までも一緒だからね?」

憂「うん!」


おしまい






最終更新:2010年12月09日 00:10