前庭
律「ついに私たちも卒業かぁー…」
澪「でもなんだか実感湧かないな…離ればなれになるワケでもないし」
紬「みんなで同じ大学に合格できてなによりねっ」
律「あれっ…そういや唯はどうしたんだ?さっきまで一緒にいたよな」
澪「あぁ、唯ならクラスのみんなに一緒に写真撮ろうって頼まれて引っ張りだこになってるよ」
「唯ちゃん、一緒に写真うつろーよー!」
「あ、ずるい!つぎ私もお願い~っ!」
唯「……っ」ワタワタ
律「唯もいつしかすっかり人気者だよなー、嬉しいやら寂しいやら」
澪「はじめて律が声をかけたときはあんなに内気だったのにな…」
律「それもこれもやっぱり部長だった私のおかげじゃんっ?」ドヤッ
澪「調子に乗るなっ!……と言いたいところだけど、確かに唯自身がここまで頑張ってこれたのは律がいたからだと思うよ」
紬「きっと唯ちゃんの中で、りっちゃんは大切なキッカケをくれた存在なんじゃないかしら」
律「そ、そんなに褒められると照れちゃうぜ……///」
和「律ももちろんそうだけど、私は軽音部の全員が唯にとって大切な存在だと思うわ」
律「和!」
和「まだちゃんと挨拶してなかったわよね、みんな卒業おめでとう」
紬「和ちゃんもおめでと~♪」
澪「第一志望校に受かったんだってな、本当におめでとう!」
和「ありがとう、みんなとは違う大学になっちゃったけど…また唯の家とかで会えたらいいわね」
紬「あっ、おかえり唯ちゃん」
律「記念撮影はもういいのか?」
唯「……」コクコク
和「唯も卒業おめでとう」
唯「!」
澪「さっき和と合流してさ、少し話してたんだ」
唯「~~!」ダキッ
和「ちょっ…ふふっ、すぐに抱きつくクセは相変わらずなのね」
唯「♪」エヘヘー
和「…唯はこの3年間で本当によく頑張ったと思うわ」ナデナデ
唯「……//」
和「だからこれからも軽音部のみんなと一緒に頑張ってね、応援してるわ」
唯「……」コクリ
さわ子「みんな揃って何してるの?」
律「あ、さわちゃん」
紬「いつも通りの雑談です♪」
さわ子「なんだぁ…それなら早く私も誘ってよっ」
澪「先生はクラスのほうとかで忙しいかと思って…」
さわ子「なに言ってるの、今日は一日中いい顔してなきゃならなかったからもうヘトヘトなのよ」
唯「……」オツカレ!
さわ子「ありがとう…」
さわ子「あなたたちも卒業しちゃうのね…もう軽音部でお茶ができないと思うと心底寂しいわ…」
律「重要なのはそこかいっ」
さわ子「そりゃそうよ、軽音部は私にとって心のオアシスだもの」
唯「……」
『でも最後の年の担任がさわちゃんでよかったよ』
さわ子「よく言うわ、唯ちゃんとりっちゃんはギリギリまで進路希望出さなくて担任としてはヒヤヒヤだったんだから…」
律「そういえばそうだっけ…」
唯「……」テヘヘ・・
さわ子「ま、結局受かったんだからいいんだけどね。ちゃんと大学でも仲良くやっていくのよ?」
『「「「もちろん(です)っ!!」」」』
憂「みなさんご卒業おめでとうございますっ!」
純「おめでとうございますっ」
澪「憂ちゃんに鈴木さんかぁ」
紬「二人ともありがとう」ニコッ
律「ありがとなっ」
憂「お姉ちゃんもおめでとー!」
唯「♪」エヘン!
純「私、澪先輩のこと尊敬してるんです!同じベースだし演奏上手だし美人だし……」
澪「そ、そうかな……//」
純「はいっ!あ、それと…よかったら名前で呼んでください!」
澪「名前で?うん、べつにいいけど…」
律「じゃあ私も純って呼んでいい?」
純「えっと…律先輩はどっちでもいいです…」
律「おい純コノヤロウ」
純「あはは、冗談ですって」
憂「(ほぼ初対面なのになんでこんなに仲良しなんだろう…)」
紬「そういえば梓ちゃんが来ないわね…」
澪「二人とも知らないのか?」
憂「あ、えっと…」
純「トイレにでも寄ってるんじゃないですかね?」
律「まぁそう慌てなくたって待ってりゃ直に来るだろ」
唯「……」
『りっちゃんの言う通りだね』
タッタッタッ・・・
律「ほら、来たみたいだぞ」
紬「梓ちゃん!こっちこっち」
梓「はぁっ…はぁ…お待たせしました…」
澪「遅かったじゃないか梓っ」
梓「す、すみません……」
唯「……」ヨッス
梓「ご卒業おめでとうございます、先輩」
梓「えと…いままで口うるさいことばっかり言ってすみませんでした」
梓「でも私、この部活に入って本当によかったって思ってます」
唯「……」
梓「軽音部のことは私に任せてください!さわ子先生も残ってくれるし、先輩たちが卒業しても廃部にしたりしませんから」
梓「だから…大学に行ってもバンド頑張ってくださいね」
律「ははっ、そんなにテンプレートみたいなこと言われてもなぁ」
梓「なっ…!これでも一生懸命考えたんですよっ!」
紬「だから来るのが遅かったのね」フフッ
澪「けど一生懸命考えてくれたことは嬉しいよ」
梓「む……」
律「本当は先輩たちが卒業するなんて寂しい!って言いたいんじゃないのか?」
梓「それは……」
唯「……」
『本当の気持ちを聞かせてよ、あずにゃん』
梓「……」
梓「そっ……そんなの寂しくないわけないじゃないですかっ…!」
梓「いつも一緒に毎日を過ごして…たくさん思い出もできて…ずっとこんな日々が続くと思ってた……」
梓「でも先輩たちはこれからも同じ大学かもしれないけど、私はもう一人になっちゃうんですよ……?」
梓「寂しいに決まってるじゃないですか……」
梓「だから……だからっ……」
梓「卒業…しないでよぉ……っ」ポロ
唯「……」
唯「……」ポン
梓「唯先輩っ……?」
『あずにゃん、河原で私と話したこと…覚えてる?』
梓「……」
『あずにゃんと私がボーカルで、路上ライブするんだよね』
『そんな夢がいつか夢じゃなくなる日まで…私はずっと放課後ティータイムのままで待ってるよ、きっとみんなもそうしてくれる』
『あずにゃんを一人になんかさせないよ!』
梓「先輩………」
梓「ゆいせんぱぁぁぁぁいっ……!!」ダッ
唯「……」ギュ
梓「っ……えぐっ………」
唯「……」ヨシヨシ
律「ずいぶんとハードルを上げるなぁ…唯は」
澪「きっといまの唯なら、どんなハードルだって飛び越えてみせるさ」
紬「私たちのほうこそ頑張らなきゃね」
律「…うん」
梓「すみません……急に抱きついたりしてっ……」
唯「……」ニコッ
澪「フフッ…いつもと発言が逆だな」
律「ほらほら、そんなに泣いてたら可愛い顔が台無しだぞ?」
紬「はい、ハンカチ」
梓「うぅっ……」グスッ
澪「律、そろそろ時間も時間だしお開きにしないか?」
律「そうだな……ちょっと名残惜しいけど、卒業生は卒業生らしくおいとましないとな」
唯「……」・・コク
紬「梓ちゃんも落ち着いた?」
梓「はい…もう大丈夫です」
律「…よし、んじゃあ帰ろうか」
澪「またライブのときには顔を出すからさ、梓もしっかり頑張るんだぞ」
紬「お茶が飲みたくなったらいつでも呼んでね♪」
唯「……」
『来年はキャンパスで待ってるからね、あずにゃん』
梓「…はいっ、じゃあ少しの間さようならです」
「またなーっ!」
「また今度なっ」
「またね、梓ちゃん」
「……」バイバイ
梓「……」(手を振り続ける)
・ ・ ・ ・ ・ ・
梓「先輩たち…行っちゃった……」
憂「でもちゃんとお別れ言えてよかったね、梓ちゃん」
梓「…うんっ」
純「素直じゃないのも大変だね?」
梓「からかうなぁっ!先輩たちの前では泣かないようにしようって思ってたけど……やっぱり我慢できなかった」
純「自分に正直になれてえらかったよ、梓は」
梓「てへへ…ありがと」
純「でも明日からは梓が軽音部の部長なんだから、もっとしゃきっとしなきゃダメだよ!」
梓「う、うん!そうだよね!」
純「今日みたいにメソメソしてたんじゃ私が部長の座をいただいちゃうぞ?」
梓「もう泣いたりなんかしないもん――って、えっ…?」
憂「じゃ…じゃあ私も部長を狙っちゃおうかなぁー…」
梓「二人とも……」
梓「軽音部に入ってくれるの…?」
純「梓一人じゃいろいろと大変でしょ?それに軽音部の先輩とも仲良くなりたいし」
憂「私はお姉ちゃんとか梓ちゃんの演奏を聴いて感動したから、自分でもやってみたいなぁって」
梓「憂も純も…ありがとうっ……」ジワ
純「今日の梓は涙もろいなぁ」
憂「これから一緒に頑張ろうねっ、梓ちゃん!」
梓「あの…ところで部長は私でいいんだよね?」
純「いいや、部長は私がやるよ!」
憂「ううんっ、私がやる!」
梓「…ええい!部長はこの私だーっ!!」
純&憂「どうぞどうぞー♪」
梓「よし!そうと決まれば早速明日から練習だねっ!」
純「え、お茶じゃないの?」
憂「あはははっ」
さわ子「(フフッ…来年もにぎやかになりそうね……)」
終わってみればあっという間だった3年間…
私のいつも隣にあったのは軽音部でした。
私……変わったよね?
高校に入ってから…?
…ううん、それは違う。
軽音部に入ってから…私は変わったんだ。
中学までの私は…いつも言葉の壁を言い訳にしてた。
目の前の壁に恐れをなして、背中を向けることしかできなかった。
――そんな私を暖かく出迎えてくれたのが軽音部でした。
出会いはあまりにも偶然だったけど、いま思えば運命だったのかもしれない……なんてね。
私が言葉を話せないとわかっても、みんなは私から離れてはいかなった。それどころか近付いてきてくれた。
会話なくして心が通じることを教えてくれたみんな…私はみんなと仲良くなりたいと思った。もっと一緒にいたいと思った。
それは、はじめて私が壁に向かって歩き出した瞬間でした。
軽音部のみんなには感謝してもしきれないよ…
私を軽音部に誘ってくれたりっちゃん、
いつもりっちゃんのおかげで笑っていられたよ、はじめてアドレスを交換したときの笑顔は一生忘れられないだろうな。
面倒見のいい澪ちゃんはいつも私のことを気にしてくれたよね、
星空の脱走劇は私たちだけの思い出。ちゃんと約束通り武道館に連れてってよねっ?
優しくてティータイムの癒し系アイドル、ムギちゃん。
また私の家に遊びにきてね、今度はゲームで負けないように特訓しておくから!
そして…大切な後輩あずにゃん、
意外と寂しがり屋さんなこと、私は知ってるよ。
あずにゃんと私の夢……きっと…いや、絶対に叶えてみせるからね。
それに、軽音部を支えてくれたさわちゃんに和ちゃん、
これから入部してくれる純ちゃん、
たった一人の大切な妹、憂―――
みんなみんな、大好きだよ。
まだ今は文字でしか伝えられないけど……
いつか「ありがとう」を言えるその日まで
私の放課後は、もうしばらく続きそうです。
―――3年後
とあるさわ子の休日
チュンチュン チチチ・・・
さわ子「ふあぁ……もう朝かぁ…」
さわ子「んーっ……」ノビー
さわ子「朝ごはんの準備しなくっちゃ」
ポチ
『……えー続いてはCD情報です。
先日、初の武道館ライブの公演が決定し話題沸騰中の女子大生バンド、「放課後ティータイム」』
『そんな彼女たちの贈るニューシングルが本日リリースされます』
さわ子「へぇー…あの子たち頑張ってるのね」
『今回のシングル、武道館ライブで発表予定だった曲の新バージョンを先行公開するという形で、ファンにとっても見逃せない一枚と――…』
さわ子「なによそれ…ちょっと気になるじゃない」
さわ子「せっかく休みなんだし買いに行こうかしら」
CDショップ
「ありがとうございましたー」
さわ子「フフッ、新バージョンってそういう意味だったのね…いい買い物をしたわ♪」
「…あっ、さわちゃん先生!」
さわ子「あら…?純ちゃんじゃない」
純「お久しぶりです!もしかして先生もシングル買いにきたんですか…?」
さわ子「うん、そうだけど」
純「はぁ…やっぱり先生の仕業かぁ……」
さわ子「?」
純「私も今日発売のシングル買いにきたんですけど、さっきの一枚でちょうど最後だって…」
純「ドコ探しても売り切れでようやく見つけたと思ったのに……」
さわ子「そんなに人気だとは思わなかったわ…ねだってもあげないわよ?」
純「うぅ……せめてジャケットだけでも見せてください…」
さわ子「いいわよ、ほら――」
『U&I Vo.中野梓&平沢唯』
おしまい
これで本編は終わりです。
支援・保守してくれた方ありがとうございました
後編はいろいろと詰め込もうとした結果テンポが悪かったりして究極のオナニーSSだった事は反省しています
意見批判要望等あったら聞かせてくれると嬉しいです、また番外編でお邪魔するかもしれません。では
最終更新:2010年12月09日 01:43