――放課後 部室

律「ちょ、澪! 早く! ターゲット撃てって!」

澪「む、無理だって! SAMが多すぎてっ、って撃たれたぁああ! ブレイクゥゥ!」

唯「S-32がうざったいよ!」

梓「先輩! 落ち着いてください! スピリタスから離れすぎてます!」


ガチャ


紬「ごめんなさい。遅くなって……あら?」


ボォン!

澪「あ」

律「み、澪ー!」

唯「ありゃー。ゲームオーバーだね」

梓「これで5回目ですよ……せっかく追い詰めてたのに、最後のミサイル攻撃でいつも……」

澪「ごめん……」

紬「みんな、何をやってるの?」

唯「あ、ムギちゃん」

梓「エースコンバットっていうゲームですよ」

紬「皆が持っているのはゲーム機なの?」

律「そだぞ。PSPっていうゲーム機だ」

紬「へー。これがそうなのね」

澪「ムギは持ってないのか?」

紬「私、テレビゲームってやったことなくって……何度か見たことはあるんだけど」

唯「わー、やっぱりお嬢様だね!」

紬「そんなことないわ。ただ常識に疎いだけよ」

律「だったらムギもやってみるか? これ」

紬「えーと、これはどういうゲームなの?」

澪「んー、簡単に言うと、飛行機に乗って敵を倒すゲームかな」

律「飛行機じゃなくて戦闘機って言えよー」

唯「ずぼおー! どかーん! って敵をミサイルで撃つんだよ!」

梓「フライトシューティングゲームですね。戦闘機を操縦するゲームです」

紬「そうなんだー。あ、私、紅茶淹れるわね」

律「あ、興味ないのね」ガクリ

コポコポ

律「あー、さっきのミッションどうすっかな」

澪「あれをクリアしないとラストまで行けないのに……」

梓「最後は段々敵の機体も強くなってきますもんね。最近やり始めた澪先輩じゃ、ソロクリアは辛いかも」

唯「ふふふー、だから熟練パイロットである私達がフォローするのだよ!」

律「しゃーない、ちょっと休憩したらもう一度いくか」

梓「え、けど練習は……さっきは『これで最後』って」

澪「ごめん、梓。私、どうしても今日中にエンディングまで行きたいんだ」

律「というわけだ。次で最後な」

梓「……仕方ないですね」

カチャリ

紬「お茶が入ったわー」

律「ふぅ、落ち着く」

澪「ムギの紅茶は心が安らかになるなー」

紬「ふふふ、ありがとう」

唯「うーん、やっぱりオリジナル機体は高いよー」ピコピコ

梓「いらない機体を売って資金を作るしかないですよ。ほら、F-117とか使わないでしょう?」

唯「えー、この子はかわいいから売りたくない!」

梓「か、かわいい?」

律「ほう、ナイトホークがかわいいとな」

澪「相変わらず唯のセンスは独特だな」

唯「ええー、かわいいよぉ。この尖ってる感じがすごいかわいいもん」

梓「けど、さっき使っていた機体はA-10でしたよね」

唯「A-10もかわいいよね!」

梓「う、うーん」

律「わからん、私には理解できん」

唯「かわいいよー。足が遅いのに頑張って飛んでる感じが!」

澪「戦闘機がかわいいか……けど、確かにF-2なんかはちょっといいかも」

梓「F-2はちっこいのに性能いいですからね。気持ちは分かります」

律「ふーん……そういや、みんなの好きな戦闘機ってなんだ?」

唯「私はF-117とA-10! なるべくずっと使いたいんだけど、さすがに難易度ACEの制空戦はF-14辺りを使わなきゃなんだよねえ」


紬(話がよく分からない……)


澪「私も好きなのを使うタイプかな」

律「澪はどの機体が好きなんだ?」

澪「F/A-18。ちょっと小ぶりな翼が控えめなのに、マルチロールで色々な武装があって使いやすいし」

律「ふーん。ホーネットね。まー、悪くないな。梓は?」

梓「F-15が至高です」

律「ほう? さっきはF-22使ってたじゃないか」

梓「F-22も悪くありません。メビウスの愛機ですからね」

梓「しかし、F-15の大型戦闘機として洗練されたフォルムにかなう戦闘機はありません」

律 ピクリ

澪「あ、地雷踏んだ」

律「それは聞き捨てならんな」

梓「何がですか?」

律「洗練されたフォルムっていう下りだ。フランカーのあの流線型フォルムを忘れてないか?」

梓「ぷっw」

律「ぬっ!」

梓「フランカーって、微妙にコックピット部分が下を向いてるのがみっともないんですよねえ」

律「あれがフランカーらしいんじゃないか!」

梓「ぷっw」

律「な、中野ぉ!」


ぎゃあぎゃあ

紬「ふ、2人は何を喧嘩しているの? 止めなくてもいいの?」

澪「放っておけばいいさ。自分の好きなものが1番だっていう喧嘩を止めたって、労力の無駄だし」

唯「あっ!」

澪「どうかしたか、唯」

唯「もう1つ好きな機体があったよ!」

澪「どれだ? ミグとか?」

唯「ナイトレーベン!」

梓「……」

律「……」

澪「ないとれーべん?」

律「ああ、澪は知らないか。エスコン3の機体だもんな」

梓「まさか、あれもかわいいって言うんですか?」

唯「かわいいよお。レーザーをぱひゅんって撃つところとか、なんだか犬が鳴いてるみたいで」

梓「……理解できない」

律「ま、好きな戦闘機なんて人それぞれってことだな」

梓「はぁ、そうですね」

澪「3かあ。いつかやってみたいなあ。3の主人公も、英雄っぽい人なのかな」

律「んー、ちょっと違うな……あれって未来の話で、毛色が違うっていうか」

梓「ちょっとSF入ってますよね。ああいう雰囲気も嫌いじゃないですけど」

律「私は合わなかったな。操作感覚も独特だったし」

澪「へー」

梓「主人公は……まあ、ここでネタバレしちゃうのは駄目でしょうけど、04以降とは少し傾向が違いますもんね」

律「エースであることには間違いないんだけどなあ。ま、X2と同じだと思ってると驚くだろうな」

唯「そういえば、今回の主人公ってあんまり強い!って感じしなかったね」

律「んー、皆で楽しむゲームって感じだからな。ストーリー的にそこに力を入れなかったんだろ」

梓「ちょっと物足りないですが」

唯「じゃあ、あずにゃんはやっぱり4みたいなのが良かったってこと?」

梓「4じゃありません。04です」

唯「? 何か違うの?」

梓「大違いです。04はこれまでのPSソフトとは一線を画した、新世代のフライトシューティングとしてですね」

律「あー、梓に4を語らせたら練習する時間なくなるから、皆さっさと楽器持とうぜー」

澪「え? 私のエンディング……仕方ないか」

唯「はーい」

梓「あ、ひどいです! 私も練習します!」

紬「……」

紬(エースコンバット、ね)



――紬の自宅

紬「斉藤」

斉藤「はっ」

紬「至急、PSPというゲーム機とエースコンバットというゲームを買ってきなさい」

斉藤「ゲーム、でしょうか。しかし紬様、テレビゲームはお父様に固く禁じられていますが……」

紬「構いません。責任は私が持ちます。行きなさい」

斉藤「かしこまりました」



よくじつ!


梓「今日こそはきちんと練習しましょうね」

律「ムギが来たらな」

唯「じゃあ、それまではPSPやる?」

律「んー、けどなあ、昨日澪と一緒に例の最終面まで行ったわけだけどさ」

澪「……うふふ、うふふふ」

唯「み、澪ちゃんが何か変だよ?」

律「あちゃー、昨日負ったトラウマが……」

梓「トラウマ?」

澪「あれは戦闘機じゃない戦闘機じゃない戦闘機じゃない」

梓「あー、なるほど。ヴィルコラクですか」

澪「あれはイカだ、イカ、イカ、イカ」

唯「あれってホント、変態さんだもんねー」

梓「あれほどの変態機動は、なかなかないですからね」

律「ミサイル撃っても落とされる、機銃は当たらないで、澪は昨日落とされまくったからな」

澪「イカ怖いイカ怖いイカ怖い」

唯「変態さんと言えば、ZEROの隠しミッションもすごかったよねー」

律「あー、あれだろ? 制限時間内にクリアしたら最後にメビウス1と戦えるってやつ」

梓 ぴくり

唯「私、あれに何度落とされたか分からないよー」

律「そうかー? 根気よく後ろ取ってたら、けっこう当たるもんだぞ?」

唯「けど、ミサイル4つを一斉に撃ってくるなんてずるい!」

律「避けられるって。メビウス1ったって、結局コンピューターなわけだしさ」

梓「訂正してください」

律「ん?」

唯「ほえ?」

梓「律先輩、訂正してください」

律「何がだ?」

梓「ZEROの隠しミッションに出てくるのはメビウス1ではありません。ただの『メビウス』です」

律「同じことだろ?」

梓「大違いです! メビウスっていうのはただのコールサインであって、04の前にも使われていたと推測できます」
  だから、メビウスと名の付くF-22が複数いてもおかしくない
  あそこで出てくるのは大陸戦争の英雄である『メビウス1』とは別人! ただの『メビウス』なのです!」

律(あー、めんどくさいことになってきたな)

唯(お菓子たべたい)


ガチャ

紬「みんなー、お待たせー」

律「お、きたか」

唯「練習しよー」

梓「メビウス1というのは1機で1個飛行隊に相当する力を持っているのですから、サイファー如きは相手になりません。
  もちろん、今回のX2の隠しミッションも同様です。あれはただのシミュレーション。メビウス1の強さはもっと計り知れないものであって」くどくど

澪「イカ怖いイカ怖いイカ怖い」がくぶる

紬「……」あぜん

紬「……えーと、まずはお茶を入れましょうか?」

律「たのんます」

唯「おやつたーいむ!」


カチャ

澪「ふぅ……落ち着いた」

梓「すみません。熱くなりすぎました……」

律「ま、いいさ。次からは4の話をしないように気をつけりゃいいわけだし」

唯「あずにゃんはメビウス1の話、禁止だね!」

梓「そんな! 私の生き甲斐が!」

紬「……」

紬「あ、あのね、みんな」

律「ん? どした、ムギ」

紬「私も、PSPっていうゲームとエースコンバット、買っちゃったの!」

澪「おー」

唯「すごい!」

梓「昨日の今日で、行動が早いですね」

律「じゃあ、今日からはムギも入れて5人でミッションか」

澪「けど、あれって4人までだよな?」

梓「交代でやっていきましょうか。1人は観戦ってことで」

唯「よーし、私やっちゃうよー。ナイトホークかもーん」

紬(みんな、喜んでくれてる!)

紬(よかった。お父様にばれないようにしないと!)

律「じゃ、まずはムギのミッション1からやっていくか」

紬「う、うん! じゃあ、今ゲーム機を出すわね」

ガサゴソ

澪「あれ、これって」

唯「ムギちゃんのPSP、私達のと形が違うね」

梓「いえ、これは……」

律「で、伝説のPSPgo!」

紬「……」

紬「え?」

梓「しかも、持ってきたソフトは……」

唯「あれれー? このソフトも私のと違うね」

澪「エースコンバットX……これって、1つ前の作品なはずだよな?」

律「あちゃー。素人さんじゃ間違っちまうよなー」

紬「……」

紬「ゲームって難しいわ」


ちゃんちゃん


(この後、PSPgoにはきちんとダウンロード版のX2がインストールされました)

おわり



最終更新:2010年12月10日 07:21