カナカナカナ

唯「私も大好きだよ、憂~」

憂「ありがとう…」

とても嬉しい言葉

でも…

私の言葉とは少し違う…


お姉ちゃんの言う『大好き』はきっと簡単に言える方の『大好き』だと思う

でも、私の『大好き』は違う


『愛してる』の方の『大好き』だから…

唯「憂~、アイス~」

憂「もう…、ご飯食べてから」

お姉ちゃんは居間でごろごろ

私は家事をこなす

こんな関係をもう何年も続けてきた

別に今の関係に不満を感じてる訳じゃない

寧ろ良すぎるほどだ

余所から見ても十分仲のいい姉妹に見えるだろう



唯「あずにゃーん」ダキッ

梓「もう、やめてください//」

お姉ちゃんはスキンシップが激しい

梓ちゃんや和さんの話を聞いていればわかる

お姉ちゃんは誰にも優しいから…

たまに嫉妬しちゃいます


私とお姉ちゃんはずっと一緒にいられると思っていた

叶うはずもない夢を見ていた

私がこの夢は叶わないことを悟ったのは、お姉ちゃんが高校に入ってからだ

お姉ちゃんは高校で軽音部に入った

始めは、私はお姉ちゃんに打ち込めることが出来たと嬉しかった

でも、次第に私との時間は減っていった

とても寂しかったが、お姉ちゃんがすごく楽しそうにしているのを見たら、そんな寂しさも消えていった


いや


消えたと思い込んでいた


軽音部の人たちはみんないい人で、お姉ちゃんもよく私に皆さんの話をしてくれた

その時のお姉ちゃんの顔がとても楽しそうだったから…

私は頑張ってこれた

これからも頑張って行ける気がしてた

でも…


唯「今日新しい部員が出来たんだ」

お姉ちゃんが高校二年生になり、私がお姉ちゃんの高校に入った頃…

唯「梓ちゃんって言うんだ」

軽音部に梓ちゃんが入部した

梓ちゃんは私の一番の友達

そして、お姉ちゃんの一番のお気に入り

唯「それでね、あずにゃんが…」

お姉ちゃんは梓ちゃんの話をたくさんしてくれた

その時の顔は私がいままで見た中で一番輝いていた…


その時のお姉ちゃんがすごく可愛くて、でも何故だか寂しくなって…

憂「お姉ちゃん?」

唯「なあに?」

憂「梓ちゃんのこと好き?」

唯「え!? そりゃあずにゃんは好きだけど、でもそれは変な意味じゃなくて…//」

憂「…そっか」


お姉ちゃんは梓ちゃんのことが好きなんだ…

でも、梓ちゃんとお姉ちゃんならお似合いかな…

梓ちゃん、可愛いし


私はずっとお姉ちゃんの優しさに甘えてきた

もちろん、それが長く続かないこともわかってた

でも、こんなに早く終わりを迎えるなんて…


私はずっとお姉ちゃんの背中を追い掛けてきた

一生懸命走って、頑張って追い付いて、そしてお姉ちゃんの背中を支えていた

でも、隣に並ぶことは出来なかった


私はお姉ちゃんの隣で走って行きたかった

でも、梓ちゃんが現れてお姉ちゃんの手を引いて行ってしまった

私より速いスピードで…

多分、私が引き止めれば優しいお姉ちゃんと梓ちゃんは立ち止まってくれるだろう

でも、それは出来ない

私のエゴで二人のペースを乱したくない


私達は恋に恋をする年頃だ

もしかしたら、二人の気持ちも一時的な気の迷いかもしれない

それでもいい

私は最愛の姉と一番の親友の恋を応援するだけだ


もし、その恋が破れてしまったら、また手を引いてくれる相手が現れるまで、私はお姉ちゃんをを支え続ける

そして、相手が現れたら私は置いていかれる

それでも、私はお姉ちゃんの背中を追い続けるだろう

私のこの気持ちも一時的な気の迷いじゃないかと考えたこともある

でも、物心ついた頃から抱いてきた気持ちが揺らぐことはなかった

いままでも、多分これからも…

私は掴むことの出来ない幻影を追い続けるのだろう



唯「憂?」

お姉ちゃん?

唯「どうして泣いてるの?」

憂「え?」

あれ?

どうして?

なんで涙なんか…



唯「憂…」ギュッ

気が付いたらお姉ちゃんに抱きしめられていた

唯「私はいつでも憂の味方だからね」

お姉ちゃんは暖かく、私の心は次第に落ち着いていった

私の中である一つの決意が生まれた

憂「お姉ちゃん…」

振り向いたらそこには、いつもの優しいお姉ちゃんの笑顔があって…

それは私の決意をより確かな物へと変えた



唯「何?」

これは最終確認

憂「お姉ちゃんは…」

そして、自分自身に与えた最後のチャンス…



憂「私のこと、好き?」

唯「憂…」

私はお姉ちゃんの手をギュッと握り締めた

唯「もちろん大好きだよ!」



唯「だって憂は私の大切な妹だもん!」


憂「……ありがとう!」

私はお姉ちゃんの妹

血の繋がった家族

唯「だから悩みがあったらなんでも言ってね」

私は女の子

お姉ちゃんも女の子

唯「憂は私のこと好き?」

すぐ『好き』と言える間柄

簡単に言える『好き』を伝えられる仲で…

憂「私は…」


憂「………私もお姉ちゃんのことが大好きだよ!」

私は『愛してる』を永遠に自分の心に封じ込めることを決めた

抱きつくことも、一緒に寝ることもできるのに…

『愛してる』だけを封じ込めた


こんな妹でごめんなさい

愛してしまってごめんなさい

だからせめて…

今だけはあなたのそばで、あなたを支えていさせて…
憂「お姉ちゃん、大好き!」


~終わり~