みんなが店を後にしようとした時、紬の目にある一つの時計が入ってきた

紬「ちょっと待って、これを買ってから行くわ」

梓「え?別にかまいませんが、それもプレゼントに?

  だいぶ古そうな型ですし、正直もっと別の物の方が・・・」

紬「いいのいいの さ、行きましょう」

その後、5人はお茶をしてからそれぞれの家へ帰って行った


その夜、琴吹家 紬の部屋の前

斎藤(珍しく紬お嬢様に呼び出されたが一体何の用だろうか?

   まさか、毎日学校に持っていくケーキをつまみ食いしたのがバレたか?

   いや、悩んでも仕方がない、か)

斎藤は意を決してドアをたたく

斎藤「斎藤です」コンコン

紬「どうぞ」

ドア「ガチャ」

斎藤「失礼します それで、大事な話というのは」

パーン!

斎藤「!」ビクッ

紬「おめでとう!斎藤!」

斎藤「お嬢様、これは一体?」

紬「覚えてないの?斎藤 今日は素敵な日だというのに」

斎藤「今日は何かの記念日でしたか? 私の誕生日でもないし・・・」

紬「ふふっ、今日であなたが私の家に来てちょうど10年目でしょう?」

斎藤「え?もうそんなに・・・ それに、お嬢様、祝ってくれるんですか?」

紬「そう言ってるじゃない いままでたくさん迷惑もかけたけど、ありがとう

  これからもよろしくね! それと、はい、プレゼント」

紬は綺麗に包装された箱を斎藤に渡した

斎藤「・・・開けても?」

紬「ええ」

ガサガサ
斎藤「!これは!」


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今から9年前、紬はいつも車で送り迎えされていたが

今日は歩いて帰りたいと言うので、斎藤が護衛についていた

小学生紬「斎藤の時計、素敵ね」

斎藤「そうですか? そうだ、今日で私が琴吹家に来てちょうど1年ですね

   お嬢様や旦那様には感謝しきれません、ということで

   記念にこの時計をプレゼントします 大事にしてくださいね」

紬「いいの?」

斎藤「ええ」

斎藤は時計を腕から外し、ゆっくりと紬の手のひらの上に置いた

紬「わーい!斎藤ありがとう!」ニコニコ

斎藤「ふふっ」ニコニコ


ブロロロロ・・・

斎藤「ん・・?」

紬と斎藤の場所に向かってトラックが突っ込んでくる

斎藤(あのトラック・・・!運転手が寝ている!)

斎藤「お嬢様、危ない!」

紬「えっ?きゃっ!」

斎藤は紬を抱きかかえるとその場を飛びのき、間一髪トラックを避けた

斎藤(ナンバーは覚えた あの運転手は放っておくとそのうち

   天然系の女子高生でも轢きそうだな あとで消しておくか)

斎藤「お嬢様、怪我はないですか?」

紬「うん、でっ、でもっ」

紬の指した先にはトラックに轢かれて壊れた時計があった

紬「さいとう、がっ、せっかく・・・うっ・・くれたの、にっ」ウルウル

斎藤「いいんですよ お嬢様に怪我がなかった、それだけで」

紬「でもっ でもっ!」

斎藤「う~ん じゃあこうしましょう

   この後何か一つ、お嬢様の願いをかなえてあげます」

紬「時計も貰ったのに悪いよ・・・」

斎藤「ですので、かわりに時計は返してもらいます」

紬「え!でも時計は壊しちゃったし・・・」

斎藤「ええ、ですのでお嬢様が大人になった時に返してください

   それまでは、しっかりと預かっておくんですよ」

紬「わかった!あずかっておく!」

斎藤「ふふふ、さてお嬢様、願い事を一つ言ってください」

紬「じゃあ私、あっちに行ってみたい!」

紬はいつもは通らない、家へ向かう道とは違う道を指した

斎藤「え?それでいいんですか?」

紬「いつも車で同じ道ばっかりで、あっちの道に行ってみたかったの

  願い事、かなえてくれるよね?斎藤」

斎藤「まいったな 決まってる道を通らなかったのがバレると大変だ

   お嬢様、この事は、絶対に誰にも言わないでくださいね」

紬「うん!さあ、行きましょう 斎藤!」


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斎藤「これはあの時計・・・お嬢様、覚えていたのですか」

紬「ええ、あの約束がとっさについた適当な約束なのはわかってる

  私に忘れられても当然、その場の私をなだめる為だけの約束

  それでも、約束は絶対でしょ?お父様もいつも言ってるものね」

斎藤「大人になってからで良いって言いましたよ」

紬「何言ってるの 私もあと3カ月もしないで18歳よ

  バイトもしてお金の大切さを知った

  大切な友達に出会って、人間関係の大切さも知った

  もう十分大人よ」

斎藤「そうですね あの頃はあんなに小さかったのに、見違えるほどだ」

紬「ふふっ 斎藤、プレゼント、受け取ってもらえるわね?」

斎藤「ええ、あの時の時計、確かに返してもらいました」

紬「よろしい!でもあと一つ、斎藤に返してない物があるの」

斎藤「?まだ何かありましたっけ」

紬「斎藤、願い事を一つだけかなえてあげる

  これがもう一つのプレゼント、受け取ってくれる?」

斎藤「受け取ります!お嬢様の気持ち、無駄にはしません」

紬「よかった じゃあ、願い事を一つ言って」

斎藤「実は私、お嬢様に許してもらいたいことがあるのです」

紬「え?それでいいの?ふふっ、何でも許しちゃうわ」

斎藤「お嬢様が学校に持っていかれるケーキなのですが

   あまりにもおいしそうなので、たまにつまみ食いをしておりました」

紬「」


斎藤「はじめはちょこっとだけだったのですが、一度食べると・・・

   ってあれ?お嬢様?」

紬「学校でたま~にケーキが減ってるから

  唯ちゃんかりっちゃんが犯人だと思ってたんだけど

  まぁ~さか斎藤だったとはねぇ」ゴゴゴ

斎藤「あれ?何でも許してくれるんじゃあ・・・」

紬「さ~い~と~う~」ゴゴゴ

斎藤「そういえば旦那様に呼ばれてるんでした!それでは!」ダッ

紬「斎藤~!」



おわり



エピローグ


翌日 放課後

紬「ちょっと先に部室に行ってるわ」

澪「ああ、私たちも終わったらすぐに行くよ」

律「なんでムギだけ掃除当番じゃないんだよ・・・」

唯「りっちゃん、ぐちぐち言ってないでさっさと掃除するよ」

律「くそー 何で唯に言われなきゃならんのだ」

澪「そういえば、昨日のプレゼントどうなったのかな?」

唯「あ、私も気になる~ 部室に着いたらムギちゃんに聞こう」

澪「そうだな」

律「ふー ようやく終わった~」

澪「じゃあ部室に行くか」

3人は部室に向かい、教室を後にした

階段に着いたところでちょうど梓と合流した

梓「あ、どうも先輩がた」

律「よー 梓、一緒に行こうぜ」

梓「はい あのー実は昨日のムギ先輩のプレゼントが気になるんですけど」

澪「ちょうど私たちも気になっていたんだ 部室に着いたらムギに聞こう」

梓「そうですね」

階段を上り、部室の前に着く

そしていつものように勢いよくドアを開けると

パーン!

唯律澪梓「「!!」」


紬「みんな!おめでとう!」

律「へ?」

澪「何が?」

梓「ですか?」

唯「?」

紬「ふふっ はい、プレゼント」

紬は4人にそれぞれ箱を配る

梓「これってもしかして・・・」

紬「まあまあ、とりあえず開けてみて」

4人は紬からもらった箱を開ける すると中には

梓「やっぱり!」

澪「昨日私たちが選んだプレゼントだ!」

律「でもなんで?」

唯「どういうこと?ムギちゃん」

紬「言ったでしょう、プレゼントはお世話になっている人の

  誕生日みたいなものだって」

唯律澪梓「「?」」

紬「今日はね、私たち放課後ティータイムの誕生日なの!」

澪「?・・・そうか!」

律「一年前のこの日に・・・」

唯「あずにゃんが・・・」

梓「私が入部したんですね」

紬「そうなの、一年前の今日、この日に私たち5人が集まった

  5人で同じ道を歩き出した、その記念日」

唯「ムギちゃん、でも悪いよ」

澪「そうだよ いつもお茶やケーキを貰ってるのに」

律「ああ、私たちだけプレゼント貰っても」

梓「そうです!ムギ先輩には何も返せてないです!」

紬「ごめんね黙ってて、でも私もみんなから目に見えないけど

  素晴らしいものをたくさんもらったの だからそのお返しって考えて」

律「ムギ・・・」

唯「そうだ!今から私の家で誕生パーティーしない?」

澪「そうだな、このままじゃちょっとすっきりしないし」

律「モヤモヤはパーティーで盛り上がって忘れようぜ」

梓「楽しそうですね!やりましょう!

  ムギ先輩、今度からは私たちにもちゃんと言ってくださいね

  今度やったら許しませんよ!」

紬「みんな・・・でもパーティーやったら今日も練習できないよ?」

梓「いいんです!誕生日なんですよ!練習よりお祝いが大事です!」

律「お、梓も言うようになったな~」

唯「じゃあ憂に連絡するね」

澪「ムギ、パーティーやろうよ!」

紬「ええ、きっととっても楽しいパーティーになるわね!」

唯「あ、もしもし憂?これから私の家でパーティーやるんだけど」

その後、けいおん部は唯の家で一日中パーティーをした

夜は深まっていく、しかし、それに伴って5人の仲も深まっていった

さわ子「あれ?私、放課後ティータイムの名付け親なんだけど・・・」

 お し ま い



最終更新:2010年12月14日 20:57