紬(あれ?なんだか今、ドキってした)
梓がくるっとこちらを向いた時、その何気ない動きに何かが引っ掛かる
紬(おかしいな さっき梓ちゃんに抱きついたから
変に意識してるのかなぁ)ドキドキ
梓「あれ?どうしたんですか?ムギ先輩?」
紬「え?いえ、何でもないわ」
紬(変な考えはよそう)
紬は邪念を払うように軽く頬を叩いた
梓「!!」
梓(か、かわいい!ムギ先輩かわいすぎ!
さっき抱きつかれた時も気持ち良かったし
私、やっぱりムギ先輩のことを・・・)ポワー
唯「あずにゃん、ボーっとしてどうしたの?」
梓「ハッ、な、なんでもないです! お茶飲みに行きましょう」
そのあと、5人はお茶をしてそれぞれ別れた
しかし、この日を境に梓と紬はお互いを意識し始めたのだった
部室 練習中
紬(ああっ!梓ちゃん・・・あの小さな体がギターを弾くたび
ツインテールがぴょこぴょこ、ゆらゆら動くのがとってもきゅーと!)
梓(ムギ先輩っ 演奏中は後ろを向けないので見えませんが
キーボードを捌く指、きっとすごい綺麗でなめらかなんだろうなぁ
キーボードから流れてくる音で容易に想像できるよぉ)
ティータイム中
紬(つぶらな瞳もかわいいわぁ ずっと見ていたい
素敵過ぎて顔もほころんじゃうわ・・・ !
あぶない、目が合っちゃった
気づかれないようにみんなにも笑顔を向けないと)ニコニコ
梓(ムギ先輩のお茶はおいしいなぁ この味はどの店でも出せないよ)
そして梓はティーカップから目を離し、紬を見る
梓(あっ!ムギ先輩が私を見て笑ってる///
・・・なんだ、私だけじゃなくてみんなを見てたのか
あんな笑顔を向けられたら私だけを見てると勘違いしちゃうよぉ)
その後、数日たってもお互いの気持ちは収まらない
むしろどんどん膨れ上がっていくのだった
梓「はぁ・・・」(好きなのに気持ちを伝えられないのって辛いよ
告白でもしたいけど、もしフられたらもうこの関係には戻れないかも
もう目を見るだけでも意識しちゃうのに・・・)
紬(梓ちゃんここのところ溜息ばっかり、それに誰かを見ては顔を赤らめる
部員の誰かにおそらく恋をしてると思うんだけど、誰かしら?
いつも仲良くやってる唯ちゃんかしら 美人で素敵な澪ちゃんかしら
面白くてムードメーカーなりっちゃんかしら 私・・・はないよね
ほかの3人に比べれば魅力なんて薄いし)
数日間、ずっとこの状態だった
しかし、ある日の練習終了後、ついにこの均衡が崩れるのだった
梓(もういいや、ダメもとで告白しちゃおう 今まですごしてきて
ムギ先輩は優しい人だと分かった もし告白が失敗でも同じ部員として
関係が崩れることはないはず!・・・たぶん・・・きっと)
梓(でも告白なんてしたことないし、誰か先輩からアドバイスでも貰おう
唯先輩は、たぶんいいアドバイスはくれないだろうから却下
律先輩は、いざというときには真面目だけど、恋愛経験なさそうだからパス
となると澪先輩かな 恋愛的な歌詞を書くし、これは期待できる!)
律「さて、んじゃそろそろ帰るか」
梓「あ、すいません 澪先輩、話があるのでちょっと残ってもらえますか?」
澪「え?ああ、大丈夫だぞ梓」
紬(!! もしかして告白!?やっぱり澪ちゃんだったのね
片思いはこれでおしまいね これからは梓ちゃんの幸せを祈りましょう)
みんなが家に帰り、部室には澪と梓だけが残った
澪「で、話ってなんだ?何でも言ってみろ」
梓「あの・・実は好きな人が出来てしまって、どう告白するかアドバイスください!」
澪「ムギか?」
梓「どうしてわかったんですか!?」
澪「やっぱりな、ときどきムギの方を見て顔を赤らめてる気がしてたんだ
それにたとえば唯だったらいつも向こうから好意を寄せられてるし
告白に悩む必要はないだろ?」
梓「流石澪先輩です では、さっそくアドバイスを!」
澪「ふふふ、ズバリ、花!だな」
梓「花!ですか」
澪「ああ、私の勘だとおそらくムギも梓のことが好きだ」
梓「え!!!本当ですか!!!」
澪「あくまでも私の勘だ、当てにはしすぎるなよ」
梓「はい!それで花というのは?」
澪「おそらくムギも梓のことが好きならば、花束でもプレゼントして
情熱的に告白すればそれでいい それでイチコロさ」
梓「ありがとうございます!澪先輩!プレゼント作戦ですか
ふふっ でも今日はもう遅いので告白は明日にします
それで、せっかくなので部室で告白したいので、律先輩と唯先輩
それとムギ先輩をなんとか理想的な感じにしてもらえますか?」
澪「理想的っていうのも難しいが・・・できる限りのことはやるよ
梓、明日、がんばれよ」
梓「はい、澪先輩、この恩はいつか必ず返します!」
澪「まずは成功してから、な」
そう言って二人は部室を後にした
深夜
紬「梓ちゃん・・・幸せにね」グスン
梓「明日、ついに告白するんだ!」ドキドキ
二人とも眠れない運命の前夜だった
翌朝
梓「いってきまーす!」
梓はいつもより早くに家を出た、もちろん花を買うためだ
通学路を少々離れたところにある花屋、梓はそこで花を買うことにした
梓「花屋さん、告白するのに一番いい花を頼みます!」
少々値は張るが、なかなかの花にご満悦のまま梓は学校に着いた
一輪の花ならともかく花束となると隠すのも難しい
そこでけいおん部の倉庫にしまい、準備は万端、後は放課後を待つだけ
授業中も休み時間も、ずっと梓はにやけていた
純「梓・・・なんか変だよ」
憂「梓ちゃん、大丈夫?」
梓「うんうん、全然!大丈夫!だから!!」ニコニコ
一方の紬も一日中おかしかった
紬「」ニコニコ
唯「ムギちゃんなんか変だよ?どうかした?」
紬「ううん 別に」ニコニコ
澪(ニコニコしながらずっとこっちを見てる・・・
おそらく昨日梓と残ったのが告白されたと勘違いしてるんだろう
それにニコニコしてるけど少しだけさびしげな顔は間違いない
100%梓のことが好きだな ここは私の立ち回りが重要だな)
放課後
澪「律、唯、ちょっと用事があるから一緒に来てくれるか?」
紬「私は?」
澪「すまんムギ、先に部室に行っててくれ
ほら、律、唯、行くぞ」
律「一体何の用だよ~ 早めに頼むぞ」テクテク
唯「なにかな?」テクテク
紬「・・・部室に行こう」
部室
紬「あ、こんにちは梓ちゃん・・・」
梓「どうもムギ先輩、こんにちは」ドキドキ
少しだけ空気が重くなる
紬も梓も話すタイミングを見計らっている
紬梓「「あのっ・・・」」
「「あっ」」
紬「梓ちゃんからどうぞ」
梓「いえ、ムギ先輩から」
紬「そう、じゃあ・・・
梓ちゃん好きな人がいるでしょ?」
梓「・・・・・・ええ」
紬「どんな人?」
梓「優しくって、綺麗で、いつもみんなのことを気にかけてくれて
そんな素敵な人だから、私、大好きになっちゃって」
紬「そうなの・・・」(やっぱり澪ちゃん・・・)
梓「なので、返事を聞かせてください!大好きです!ムギ先輩!!」
紬「えっ!」(うそっ!)
紬「ちょっとまって!昨日澪ちゃんに告白したんじゃないの?」
梓「あれはムギ先輩への告白のアドバイスを貰ってたんです
ほら、この花束だってムギ先輩のために用意したんですよ」バッ
紬「!ほんとに?本当に私でいいの!?」
梓「はい、それで、返事を聞かせてください」ドキドキ
紬「・・・」ドキドキ
紬「わたしも、梓ちゃんが、大好きです!付き合ってください!」
梓「もちろん!」ガバッ
紬「!!!」
梓が勢いよく紬に抱きついた
梓「覚えてますか?みんなでプレゼント買いに行った日のこと」
紬「ええ、覚えてるわ 私が梓ちゃんに抱きついたのよね」
梓「はい、その日から私、先輩のことを意識し始めて///」
紬「実は私もなの 私たち、案外お似合いなのかもね///」
ガタッ
紬梓「!!」
律(おい唯、音立てるなよ)
唯(ごめんねりっちゃん)
澪(あ、ばれちゃったみたい)
紬「みんな!」
梓「先輩!」
唯「あはは、おめでとうあずにゃん!ムギちゃん!」
律「なかなか情熱的な告白だったぞ、梓~」
梓「なんでこっそり見てたんですか!」
律「いや~澪がおもしろいものが見れるって言うからさ」
紬「澪ちゃん・・・」
澪「ごめんな でも上手くいったし、許してくれ」
梓「しょうがないですね 今回だけですよ」
唯「それじゃあ改めて、おめでとう二人とも!」
律「ソレデハ、チカイノキッスヲ」
澪「おいおい」
梓「・・・」ジー
紬「・・・」ジー
唯「あれ?二人とも見つめあってるけど」
律「この雰囲気はもしかして」
紬梓「っ」チュッ
澪「ああっ///」
律「まさか本当にするとは///」
唯「実際に目の当たりにするとすごいね///」
梓「ん~っ!ぷはっ はぁ ムギ先輩、とってもよかったです」
紬「私もよ、梓ちゃん ふふっ」
唯「すごいね!アツアツカップルの誕生だよ」
律「そうだ!梓、せっかく花束を持ってるんだし、ブーケトスしよう!」
澪「結婚式じゃないんだぞ」
梓「いいじゃないですか、誓いのキスも結婚式ですし」
紬「せっかくだし、窓から投げない?」
梓「そうしましょう」
澪「よし、じゃあ二人とも窓に背を向けて」
紬梓「「せーのっ」」
窓から弧を描いて飛んでいく花束
それはだれかがキャッチするのか、しないのか
二人の未来はどうなるのかはわからない
それでも、お互いを思い続け、周りで支えてくれる人がいる限り
恋人同士の幸せは約束されているのかもしれない
告白編 完
最終更新:2010年12月14日 20:59