澪「おい律、見つかるぞ!」
律「わりーわりー 財布落としちゃって」
憂「すいません、私そろそろ家に帰って夕飯の買い物に行かないと・・・」
律「そうか、ごめんな憂ちゃん 無理に誘っちゃって」
憂「いえ、いつもと違う梓ちゃんを見れて楽しかったですよ それでは」
そう言って憂は帰って行った
さわ子「じゃあ私も帰ろうかしら」
和「それじゃ私も」
唯「え?二人も帰っちゃうの?」
さわ子「ええ、最初は面白かったけど」
和「ずっと隠れてちゃ、だいぶ暇なのよ」
澪「そうか、それじゃしょうがないな」
さわ子「じゃあね、後で結果を聞かせてね」
和「私もちょっと気になるし、お願いね」
澪「ああ、じゃあな」
唯「で、純ちゃんはどうするの?」
純「私も、このままいても出番なさそうなので帰ります・・・」
唯「そっか、じゃあね純ちゃん」
律「結局残ったのは私たち3人と斎藤さんだけか」
斎藤「私は陰からお嬢様を見守ることも仕事の一つですから」
澪「じゃあ私たち4人だけで続けるか」
紬「それで、何の映画にするの?」
梓「それはもちろん今流行りのあのラブストーリーです
やっぱり恋人たちの見る映画って言ったらこれ一択です」
紬「ふふ、純愛映画ね ドキドキしちゃう」
梓「それじゃあ行きましょうか 大人2枚
え?ちがいます!私高校生ですから!」プンプン
紬「まあまあ梓ちゃん、落ち着いて」ニコニコ
唯「二人とも映画館に入ったよ」
澪「ふむ、この上映時間だとあの恋愛映画か」
律「せっかくだし私たちも見ようぜ 大人4枚」
前から5列目に紬と梓
最後列に唯、澪、律、斎藤が座る
そして数分後、映画が始まる
梓(やっぱり家で家族と見るのとは違うなぁ
隣にムギ先輩がいるだけで映画の内容と自分たちを重ねちゃうよ//)
紬(暗くてわかり辛いけど梓ちゃん赤くなってる?
もしかして私たちと重ねているのかも)フフッ
そして映画も進み、終盤でラブシーンに入る
梓(う、ドキドキしてきた 映画だからよく映ってないけどやばい
ちょっと興奮してきちゃったかも?うう・・・)
紬(そろそろね)「梓ちゃん、ちょっと一緒に来てくれない?」ヒソヒソ
梓「はい、なんですか?」(危なかった
このまま見てたら抑えきれなくなるところだった)
周りの客の迷惑にならないようこっそりと紬と梓は映画館を出た
紬「ごめんね、せっかく選んでくれた映画なのに途中で抜け出して」
梓「いえ、大丈夫です それだけの理由があったんですよね?」
紬「ええ、実は唯ちゃんと澪ちゃんとりっちゃんに尾行されてたの」
梓「本当ですか!?」
紬「ええ、映画館に来る途中でりっちゃんらしい影を見かけたの
それで、映画の上演前に後ろを見たら3人がいたのよ」
梓「そうだったんですか でも何でもう尾行されてないってわかるんですか?」
紬「それはね・・・」
映画館内
澪「ふう、終わりか あれ?ムギと梓がいないぞ!」
律「何!澪、どうして見てなかったんだよ」
澪「私は映画を見てたんだよ
そう言う律だって顔赤くしてラブシーン見つめてたくせに」
律「なっ///それは澪だって同じだろ!」
澪「ううっ/// はぁ、唯は寝てるし斎藤さんはいつの間にかいないし、帰るか」
律「そうするか、なんか疲れたし
ていうか澪、何で私がラブシーン見つめてたこと知ってるんだよ」
澪「それはっ・・・横目でちらちら律を見てたからだよ 」ボソッ
律「それなら私だって澪のことが気になって盗み見してたさ」
澪「律・・・」
律「澪・・・」
…
梓「へぇ、澪先輩と律先輩がねぇ」
紬「そうなの、だから大丈夫よ でも少し暗くなってきたわね」
梓「それでは、最後の場所に行きましょうか
商店街からは離れてしまうんですけどいいですか?」
紬「ええ、いったいどこかしら」
梓「じゃあついてきてくださいね」
歩くこと十数分、梓が連れてきた場所は少し開けた場所だった
紬「きれい・・」
少し小高くなっているその場所からは自分たちの町が見渡せる
そして、今にも町に沈もうとしている太陽とそれに照らされる町
反対側は、星も見えるほど暗くなっている
そんないつもあるような昼と夜の間の時間
だが、このときの紬には何よりも素晴らしく見えた
梓「喜んでもらえてよかったです 絶景とは言えませんけど
なかなかいい場所だと思いませんか?」
紬「ええ!とっても!」
梓「これが私からのムギ先輩へのおくりものです
今日一日のデート、とっても楽しかったですよ」
紬「私もよ さあ、夕日が沈んじゃうわ こっちに来て一緒に見ましょう」
梓「はい」
梓は紬の隣に並び、夕日を見るて振り返る
今日一日のデートのことを 紬との距離が近づいた気がした
そして夕日が完全に沈む刹那
紬「梓ちゃん、こっち向いて これが私からのプレゼントよ」
梓「え? んっ・・」チュウ
紬が梓にキスをした
周りには誰もいない、沈みかけの夕日だけが照らす中でのこと
そして夕日が完全に沈み、紬は口を離した
紬「ふふっ どうだった?」
梓「とっても素敵なプレゼントでした、ありがとうございます 先輩」
紬「気に入ってもらえてよかった
さぁ、夕日も沈んじゃったし帰りましょうか」
二人は街灯のつき初めた道を駅の方へ歩いて行った
手をつなぎながら
駅
梓「今日はありがとうございました」
紬「何言ってるの、デートにありがとうもないでしょう」
梓「そうですね えへへ でも、もうデートはおしまいなんですね」
紬「いいえ、梓ちゃん まだデートは続けられるわ
今日は私の家に泊まっていかない?」
梓「えっ!いいんですか?」
紬「もちろん!そうすれば明日までデートが続くわよ」
梓「ありがとうございます!それじゃあ家に連絡してみますね」
梓は家に電話をかける 通話後の梓の返事はOKだった
そして二人は電車に乗り、琴吹家へ
梓(うわ~ やっぱりムギ先輩って本当にお嬢様なんだな
想像していた以上の家だよ)
紬「ただいま、お父様」
梓「おじゃまします」カチコチ
紬父「おかえり、紬 それと・・・中野君だったかな?はじめまして
紬から話は聞いているよ これからも紬と仲良くしてやってくれ」
梓「は、はい!」
紬父「帰ってきていきなりで悪いが話がある、紬、ついてきてくれ
それと斎藤、中野君を客室にご案内してあげなさい」
紬「あの、梓ちゃんは私の部屋に連れて行って」
紬父「いいのか?じゃあ斎藤、頼む」
斎藤「はい、かしこまりました
それでは中野様、私についてきてください」
梓は斎藤の後についていく
やっぱり見た目通り広い家のようで紬の部屋まで1分ほどかかった
斎藤「こちらが紬お嬢様の部屋です どうぞ」
初めて見る紬の部屋は、まさに女の子の部屋という感じだった
梓の部屋は殺風景というわけではないが平均的といったところ
だがそれに比べて紬の部屋は、ぬいぐるみなどの小物も多い
そして天蓋つきのベッドまであるまさにお嬢様といった部屋だった
梓は斎藤に促されてソファーの上に座った
なにをすることもなく梓と斎藤だけの沈黙した時間が流れた
だが少しして斎藤が口を開いた
斎藤「中野様はお嬢様とだいぶ仲がよろしいようですね」
梓「え?は、はい・・・」
斎藤「失礼ながら私、今日一日、二人のことをつけさせてもらいました」
梓「! それって・・・全部みたんですか?」
斎藤「はい、お嬢様とキスをするところも」
梓「えっ!」
斎藤「ですがご安心を、私はお嬢様の幸せを願っています
二人の仲を裂こうなどとは思っていません
なので中野様、決してお嬢様を傷つけてはなりません
もしそのようなことがあれば、私も黙っていられませんから」
梓「私は絶対にムギ先輩を傷つけたりしません!」
斎藤「いいでしょう 私はその言葉を信じます
お嬢様を幸せにしてあげてください」
斎藤はにっこりとほほ笑むと部屋にかけてある時計を見た
斎藤「そろそろ時間だ お嬢様も戻ってくるし、私は退散しよう」
その時、梓の頭にある小さな疑問が浮かんだ
梓「斎藤さん、何で腕時計をしていないんですか?」
斎藤は腕時計をしていなかった 普通ならだからなんだという話だが
彼は執事、それもこの琴吹家のだ 腕時計が必須なのではと思った
斎藤「腕時計かい?変なことを聞くな それとも観察眼が鋭いのか?
前はしていたんだけど、今は知り合いに貸したままなんだ」
梓「返してもらわないんですか?でなければ新しいのを買ったりは?」
斎藤「きっと私から借りた事なんて忘れているだろうよ
それにあの時計以外つける気はないんでね
心のどこかで返してもらえる日を待っているのかもな」
斎藤は目を細めて懐かしんでいた
斎藤「おっと、こんな話をしている場合じゃなかった それじゃあ」
斎藤が部屋からいなくなり、再び沈黙が訪れた
それから数分後
紬「ごめんね梓ちゃん、遅くなっちゃって」
梓「大丈夫ですよムギ先輩」
紬「それで、今から夕食なの 一緒に食べましょう」
梓は紬について行き、夕食を取った
紬のお父さんや、使用人たちと一緒かとドキドキしたが
紬と二人きりだったので安心した
そのあとは、紬の部屋で雑談をした
昼食時にもしたのに、どんどん話すことができて止まらない
紬と話している時間が永遠に続いてほしいと願うほど幸せな時間だった
紬「あら、もうこんな時間」
楽しい時はすぐに過ぎる、時計はとっくに10時を回っていた
紬「そろそろお風呂に入りましょうか」
梓「そうですね、ムギ先輩、お先にどうぞ」
紬「お客さんなんだし、梓ちゃんが先よ」
紬梓「「・・・」」
紬「じゃあ、一緒に入りましょうか」
梓「え?」
紬「だって恋人同士ですもの、一緒にお風呂は当然でしょ?」
梓「でも恥ずかしいですし・・・・・ あーーーー!
もういいです!入ります!入りましょうムギ先輩!行きますよ!」スタスタ
紬「梓ちゃん、お風呂はそっちじゃないわよ」
ということで、紬と梓は一緒にお風呂に入ることになった
合宿で入っていたとはいえ、今度は二人きりでしかも恋人同士
お互いに意識してしまう
それと、やはり風呂も琴吹家だ 二人で入ってもまだ十分余裕のある広さだ
二人は体と頭を洗い終え、湯船につかっていた
梓「いやー いいですね広くて、疲れが吹っ飛びますよ」
梓は紬を直視できない
昼間のハプニング、そして映画館 どうしても紬のことを意識してしまう
紬「梓ちゃんどうしたの?なんか変よ?」
梓「変ですか?のぼせちゃったのかな?そろそろ上がりますよ」ザバァ
紬「えっ?ちょっと待って」ザバァ
梓がさっさと風呂を出ようとするので、紬もあわてて立ち上がった
梓「っ!」ツルッ
急いで歩いたため、梓は風呂のタイルで滑ってしまった
紬「梓ちゃん!」ガシッ
間一髪、かたい床に頭がぶつかる前に紬が受け止めることができた
紬「なんとかなったみたいね」
梓「ありがとうございます でも・・当たってます・・・」
とっさに紬が抱きかかえたため、胸が思いっきり梓に当たっていた
紬「いいわよそれくらい 梓ちゃんが無事だったんですもの」
梓「ム、ムギ先輩!」ガバッ
紬「きゃぁ!」
梓が紬を押し倒す
梓「もう我慢できません!ムギ先輩は可愛すぎます!
この胸だって素敵で、うらやましすぎます!」ペロペロ
紬「んっ!あぁっ・・・・あ、あず・・・あんっ」ビクッ
お風呂でほてった体は、多少敏感になっていた
梓「夕暮れのキスだって情熱的で!もうっ!んんっ~」チュゥゥ
紬「ん~~~!んっむ~!」チュゥゥ
あのときとは違う、野性的で力強いキス
倍以上の時間がたってから唇が離れた
紬「ぷはっ!あ、梓ちゃん!はぁ、はぁ、ここじゃ危ないし
はぁ、ベッドで続けましょう!」
梓「いいんですか?てっきり拒否されるかと思ったんですが」
紬「私だって、その・・・してみたいし・・・・・
恋人同士ですること///」
梓「ムギ先輩!」ガバッ
紬「だからベッドで!」
そして夜も深夜を回ったころ、二人はベッドで抱き合っていた
紬「ふふ、梓ちゃん可愛かったわよ」
梓「まさかムギ先輩があんなテクニシャンだったとは・・・///」
あれから、二人は裸の付き合いをした
そのことで梓の当初懸念していた紬との距離は一気に縮まった
紬「梓ちゃん、これからもずっと一緒にいてくれる?」
梓「もちろんです!大学に行っても、そのあとも、ずっとです!
ずっと!ずっと!!ずっと!!!」
紬「ありがと」
二人を眠気が襲う頃、どちらともなくつぶやいた
紬「梓ちゃん」 梓「ムギ先輩」
だいすき
完
最終更新:2010年12月15日 01:00