ーーーーー
おんがくしつ!
ガチャ
梓「あー、あったあった」
ヒュッ
梓「ひっ!」ゾクッ
杏樹「こんばんは。中野さん」
梓「ま、真紅さん!さっき帰ったんじゃ…」
杏樹「あなたが戻ってくるのを待っていたわ」
梓「それってどういう…」
杏樹「あなた、先輩たちがいなくなって淋しいのね」
梓「えっ?」
杏樹「大丈夫。私がそんな淋しさ、忘れさせてあげるから」
ギュッ
梓「ちょ、ちょっと、真紅さん///」
カプッ
杏樹「んんっ」チューッ
梓「あっ…ふぁ…はぁ…///」
ーーーーーー
憂「(えへへ、先に行ったと見せかけて部室から出てくる梓ちゃんをびっくりさせちゃおっ!)」
梓『ちょ、ちょっと、真紅さん///』
憂「(ん?他に誰かいるのかな)」ソーッ
憂「(杏樹ちゃん!?と梓ちゃんが抱き合って)」
憂「(首元に…キス…///)」
杏樹「かはっ…ふぅ…」
梓「あっ…はぁ…ふにゃ…///」ペタンッ
タッタッタッ
憂「(ど、どうしよう。とんでもないとこ見ちゃった///)」
ーーーーー
よくじつ!
憂「(昨日のことが気になってあんまり眠れなかった…)」ファ
憂「(結局1人で逃げるように帰っちゃったし…)」
憂「(なんだか梓ちゃん達と顔を合わせにくいなぁ)」ハァ
梓「あっ、うーい、おはよう!」
憂「えっ、お、おはよう梓ちゃん」アタフタ
梓「?どうかしたの?」
憂「え?べっ、別に」
梓「ふ~ん。変なうい~♪」
憂「あははは。梓ちゃん、今日はなんだかご機嫌だね」
梓「へ?そうかなぁ。でもなんだか気分がスッキリしてるんだぁ」
憂「そ、そうなんだ」ドキドキ
ーーーーー
きょうしつ!
純「あ、二人ともおはよう」
憂「おはよう純ちゃん」
梓「おはよう純」
純「今日は真紅さん休みなんだってー。やっぱり体調悪かったのかな…」
梓「そうなんだ。心配だね」
憂「う、うん…」
ーーーーー
ほうかご!
梓「ごめん、今日部活休みにしてもいいかなぁ?」
純「梓からそんなこと言うなんて珍しいじゃん。ははぁーん、さては男だなぁ?」ニヤニヤ
憂「!?(ま、まさか杏樹ちゃんと…///)」
梓「何言ってんの。ちょっと他のバンドでも見てみようかなぁと思って」
憂「え…」
梓「まぁ、ずっと放課後ティータイムでしか活動しないのも、もったいないかなーなんて思って」
純「おおっ、放課後ティータイムラヴな梓とは思えないセリフ」
梓「まぁそういうわけだから、今日は各自で自主練ね。さぼっちゃダメだよ」
梓「じゃあ私急ぐから、またね」
梓「~♪」
タッタッタッ
純「あーあ、行っちゃった。じゃあ私はジャズ研に行くけど、憂はどうする?」
憂「…」
純「憂?」
憂「へ?えっと…なんだっけ?」
純「憂は放課後どうするの?」
憂「私は…帰ろうかな…」
純「…そう。なんならジャズ研見に来る?」
憂「いいよ、邪魔しちゃ悪いし。それに夕飯の買出しもしときたいから」
純「そっか…。じゃあまた明日ね」
憂「うん、ありがとう純ちゃん。また明日」
ーーーーー
おんがくしつ!
憂「(結局、部室に来ちゃった…)」
憂「(…梓ちゃん、どうしてあんなこと)」
憂「(もうお姉ちゃん達のこと、どうでもよくなっちゃったのかな…)」ジワッ
ヒュン
憂「!?」ゾクッ
杏樹「こんにちは」
憂「え?あ、杏樹ちゃん!なんで…」
杏樹「今日はあなたに会いに来たのよ」クスッ
憂「それって…」
杏樹「あなたも淋しいのね?」
杏樹「私にはわかる。あなたの近くにいると血が疼くから」
憂「な、何言って…」
杏樹「私が忘れさせてあげる。あの子みたいに」
憂「あの子って…梓ちゃんのこと!?」
杏樹「ほら、あなたも…」
ギュッ
憂「いやっ!」
杏樹「っ!?」
シュタッ
杏樹「(ダメ…この子にはこれ以上近づけないわ!)」
杏樹「…どうして?あなただって淋しいのは辛いはず」
杏樹「その淋しさから解放してあげるのよ?」
憂「確かに…お姉ちゃんがいなくなってとっても淋しい…」
憂「でもね、それはうちのお父さんやお母さん、それに梓ちゃんたちもね、淋しいって」
憂「一緒に淋しいねって言ってくれる人がいるから」
憂「私はそれを受け入れることができるし、おんなじ気持ちを共有できるの」
憂「だからみんなにはとても感謝してるし、それに私は淋しいって気持ちもすごく大切にしたいの!」
杏樹「…」
杏樹「…私にもお姉ちゃんがいるの」
憂「えっ?」
杏樹「ほんとドジでグズでマヌケで、手のかかるお姉ちゃんだったわ」ハァ
憂「…」
杏樹「でも…とてもあったかかった」
憂「杏樹ちゃんも、お姉さんが大好きなんだね」
杏樹「…今はとても遠い所で幸せに暮らしてて」
杏樹「そしてもう決して会うことはないわ」
憂「っ!?」
杏樹「お姉ちゃんとはもう住んでる世界が違うの。それに会わない方がお姉ちゃんのためだから」
憂「そうだんたんだ…ごめんね」
杏樹「あ、別にお姉ちゃんは死んじゃった訳じゃないからね」
杏樹「だけど…私もお姉ちゃんがいなくなって淋しい…」グッ
杏樹「でもありがとう。私もあなたの様にもっと強くなるわ」
杏樹「それと憂」
憂「えっ?」
杏樹「あなた、餃子食べた?」
憂「えっと…今朝は時間が無かったからお弁当に冷凍食品のを…」
杏樹「ニンニクくさい」
憂「えっ、うそ!?におってる!?」ハーッ
杏樹「あぁ、ごめんなさい。私人間より鼻が利くから」
憂「(…人間よりもってどういうことだろ?)」
憂「お昼休みにハミガキもしたんだけ…ほんとにごめんね」
杏樹「いいのよ」
杏樹「それに…そのお陰で友達を噛まないで済んだんし」ボソッ
憂「え?なに?」
杏樹「なんでもないわ」
憂「でも杏樹ちゃん、はじめて『うい』って呼んでくれたね」
杏樹「…そうだったかしら」
憂「えへへ~。ありがとう、杏樹ちゃん」ニコニコ
憂「これからもよろしくね!」
杏樹「ええ、そうね」スッ
ナデナデ
憂「あっ杏樹ちゃ…」
バタッ
杏樹「(これでもう私のことを思い出すことはないわ)」
杏樹「(中野さんには悪いことしてしまったのかも…。できれば謝っておきたかった)」
杏樹「あなた達とはもう少し友達でいてもよかったかも…」
杏樹「さようなら…そしてありがとう、憂」
ーーーーー
憂「…う~ん」
憂「あれっ?私寝ちゃってた?」ゴシゴシ
憂「ってもうこんな時間!?早く帰らなくちゃ!」
タッタッタッ
バタン
ーーーーー
真紅家!
ガチャ
杏樹「ただいま…」
煉「おう。…どうかしたか、杏樹?」
杏樹「学校…今日でやめてきたわ」
杏樹「後始末はもう全部しておいたから」
煉「そうか…」
杏樹「…」
杏樹「煉兄さん」
煉「ん、なんだ?」
杏樹「兄さんは、お姉ちゃんがいなくなって…淋しい?」
煉「…」
煉「あぁ、そうだな」
杏樹「そう…私も」
煉「…そうか」
ーーーーー
よくじつ!
憂「(う~ん、なんだか頭がぼーっとするなぁ)」
梓「おはよう憂」
憂「あっ、おはよう梓ちゃん…」
憂「昨日はどうだった?」
梓「え?あぁ、メンバー募集してるバンドを色々見て回ったんだけどさぁ」
梓「どのバンドもすごくかっこよくて、活動も本格的だったよ!」
憂「うん…」
梓「でも、やっぱり放課後ティータイムが一番かなって思って、そのまま帰ってきちゃった」
憂「!?」
憂「あ、梓ちゃん!」ダキッ
梓「わっ!ど、どうしたの憂!?」
憂「ううん、なんでもないよ~」ギュー
梓「もう、変なうい」
ーーーーー
おんがくしつ!
純「やっぱり梓に浮気はできなかったんだね」ニヤニヤ
梓「べ、別にそんなんじゃないし!」
憂「ふふふ。じゃあ私、お茶入れてくるね」
カチャ
憂「あれ?ティーカップが4つ洗ってある…」
憂「(なんでだろう。そういえば…他に誰かが居たような…)」
純「ういー、まだぁー?」ヒョコ
憂「あ、ごめん。もうちょっと待ってね」
梓「もう、純!いつも憂にばっかりお茶いれてもらってるくせに」
純「梓だってそうじゃん」
梓「うっ…だって私うまく入れられないし…」
憂「いいよ二人とも。私が好きでやってるんだし」
梓「ごめんね憂。私も手伝うから」
純「はいはい!私も手伝う!」
憂「ありがとう。そういえばこのカップなんだけど…」
純「?それがどうかしたの?」
梓「いつものティーカップだよね?」
憂「…」
憂「ううん!何でもない」ニコッ
純「そう?ならいいけど…」
憂「えへへ~」ニコニコ
梓「もう、しゃべってばかりいたらまた練習時間なくなっちゃうよ」
純「うちの部長はスパルタですなぁ」ハァ
梓「これが普通なの!ほら、はやく」
純・憂「ほ~い!」
梓「返事は『ハイ』!」
ーーーーー
かえりみち!!
梓「…結局ほとんど練習できなかった…」
純「まぁまぁ、いつものことじゃん」
梓「まったく…。明日からはもっとみっちり練習するんだからね!」
憂「明日はがんばろうね。それじゃあまたね」
梓「うん。それじゃあね」
純「おつかれ~」
ーーーーー
憂「(うぅ、今日も冷えるなぁ)」ハーッ
憂「(夕飯は買い置きのパスタがあったし、簡単にペペロンチーノでも)」
憂「(…ううん、やっぱりカルボナーラにしよっと♪)」
コツッコツッコツッ
憂「ん?」
憂「(今の人…もう日没なのに黒い服に黒い傘ってー)」
バッ
憂「…れ?…いない…」
憂「…ま いっか」クスッ
コウモリ「」パサ
おしまい
最終更新:2010年12月18日 02:51