律「…よし、じゃあ今日はここまでにするか」
梓「そうですね。もう日も暮れてきましたし」
唯「うわぁ~外寒そう~」
澪「早く帰らないともっと寒くなりそうだな…」
紬「うん、そうだね」
律「じゃあ今日はこれで終わり!皆さんお疲れ様でしたっ!」
「お疲れ様でした~」
澪「みんな、忘れ物はないか?窓は閉めた?」
唯「うんっ。ばっちりだよ~」
紬「鍵もちゃんと掛けたし、問題ないと思うよ」
律「じゃあ扉閉めるぞ~」
―――――――――
律「うわっ…さむっ!」
梓「そりゃそうですよ…もう12月ですから」
澪「うぅ…冬は嫌いだ。」
紬「どうして?」
澪「寒いから」
紬「うふふっ」
澪「はははっ」
唯「はぁ~っ」
唯「ほらほら見てりっちゃん!息が白いよ!」
律「うわっ本当だ!よーし私も!」
律「はあああああああああああああああああああああっ」
律「ぐぇっ!げほっ!げほっ!ぶほおっ!!!」
梓「ちょっと何やってるんですかもう…子供じゃないんですから」
澪「まったく…」
律「ヒュー…ヒュー……はぁ死ぬかと思った」
紬「そんな事で死んじゃダメよりっちゃん」
律「私だって吐息で死にたくないよ!」
唯「あははっ!りっちゃんおもしろ~い」
律「この野郎唯!人の不幸で笑う奴はこうしてやる~っ!」
唯「きゃ~!」
梓「ちょっと先輩!こんな道の真ん中ではしゃがないで下さいよ!」
澪「…はぁ、まぁ人の気配もないみたいだし、好きにさせてやれ」
梓「はぁ…」
紬「うふふっ。二人とも可愛いね」
梓「…あの、澪先輩」
澪「ん?どうした梓」
梓「いつも思うんですけど…何で澪先輩はこんなに落ち着いてるのに、律先輩はあんなにおっちょこちょいなのですか?」
澪「おいおい、おっちょこちょいは言いすぎだろw」
梓「す、すみません…」
梓「でも…どう見ても相反してる二人が何でずっと友達だったのか疑問だったので…」
澪「んーそうだな…」
紬「あらあら、梓ちゃん二人の事が気になっちゃうの?」
梓「そ、そういう訳では…!」
澪「ほらムギ、そうからかってやるなよ」
紬「うふふっ、ごめんね梓ちゃん。」
梓「も、もう…」
梓「…で、どうしてですか?」
澪「…まぁ、確かにアイツは私とは正反対の性格してるな」
澪「でも、だからって馬が合わないって事じゃないと思うんだ」
梓「そうなのですか?」
澪「うん」
澪「ほら、お互いが足りない所を片方が補うってのはよくある話じゃない?」
梓「はい」
澪「私と律の場合は、むしろ極端に凸凹しちゃってるからだろうか」
澪「なんとなく付き合ってたら、もう離れれなくなっちゃったんだよね」
梓「は…はぁ」
澪「うーん…やっぱり言葉で表すのは難しいなぁ」
澪「つまり、お互いが対極であるから、お互いの良し悪しがはっきりと解ってしまう」
澪「だから裏表の無い関係ができてしまった…必然的にね」
梓「必然的…ですか?」
澪「うん。必然的に」
澪「嫌いは好きの裏返し」
澪「分かり合える所は結合して、対する所は反発する」
澪「まるで磁石みたいだよ。私と律は…」
澪「や、やだっ。私なんて事言っちゃってるんだろう…うぅ、恥ずかしい…」
紬「くすっ…でも、それって凄く素敵なことなんだよね」
梓「ムギ先輩?」
紬「ねぇ梓ちゃん。『人』ってどんな字を書くか分かる?」
梓「人…ですか?はい」
紬「じゃあ問題です」
紬「『人』と『入』。この二つに関連している事は?」
梓「えっ?ええっと…」
梓「…すみません、分かりません」
紬「うふふっ。いいのよ♪」
紬「左に傾けば『入』、右に傾けば『人』」
紬「一見意味が違う二つの漢字でも、実はある共通点があるの」
梓「それは一体何ですか?」
紬「それはね…」
紬「二つとも、同じ線の長さでは書かない事なの」
梓「…???」
紬「どちらかが傾けば、片方がそれを押さえる役割を果たしてくれる」
紬「でも、もし両方とも同じ長さだったらどうなっちゃうと思う?」
梓「えっと…それが『人』なのか『入』なのか見分けがつかなくなる…でしょうか?」
紬「うんっ。正解♪」
梓「…あの、ムギ先輩」
梓「その話がさっきの澪先輩と律先輩の話に何の関係が?」
紬「さっき、澪ちゃんは磁石みたいな関係って言ってたでしょ?」
梓「はい」
紬「それはね、自分とは全くかけ離れてる感性の持ち主に魅力を感じているからなの」
梓「魅力…ですか」
紬「うん」
紬「自分では考えもしなかった発想が次々と出てくると、この人は凄いなぁ~って関心しちゃうでしょ?」
紬「そんな他人の魅力を感じ取ったから、澪ちゃんとりっちゃんはお互いに惹かれあったのだと思うの」
梓「…それも、必然的にですか?」
紬「うん、そうだね」
梓「うーん…分かった様な分からない様な…」
紬「じゃあ、もし自分と同じ性格と考えの人が自分と同じ場所にいたら…」
紬「梓ちゃん、どう思うかしら?」
梓「私と同じ考え、性格…」
梓「…共感はできそうですけど、ずっと一緒にいたらつまらないかもしれませんね」
澪「確かにな…お互いに分かち合えるのはいいけど、そこから何も発展しなさそう…」
紬「うん、そうだね」
紬「やっぱり一緒にいるなら同じ考えの人より、もっと斬新な事ができる人の方がいいと思うわ」
紬「そっちの方がお互いをよく分かり合えるかもしれないし…何より刺激があって面白いとおもうの♪」
梓「…私は、そうは思いません」
澪「梓?」
梓「いくら自分と違うタイプの人間の方が面白いからって、それがお互いを理解した事にはならないと思います」
梓「もっとも、そんなに凸凹してるならその分喧嘩も多いはずです」
梓「その度に一人ぼっちになって…つらい思いをして…」
梓「私、そんなの我慢できません」
紬「梓ちゃん…」
梓「でも、その人がそれでいいって思ってるなら、それでいいんですよね」
梓「きっと、自分が必要としているものを持っている人に巡り合える事ができる」
梓「これが一番大事なのでしょうから…」
澪「ほらほら、何一人でいじけてるんだよ」
梓「…すみません、つい…」
澪「もう夜になっちゃったし、早く帰ろう。ここままじゃ風邪引いちゃうぞ?」
梓「…はい、そうですね」ニコッ
紬「……」
澪「ん?どうしたムギ?」
紬「えっ?ううん!何でもないの!」
紬「あっ、ほら!あっちでりっちゃんと唯ちゃんが何か言ってるみたいだよ?」
唯「おーいみんなぁ~!」
律「こっち来てみろよ!すっごく綺麗だぞーっ!」
澪「何だよ。またしょうもない事だったら怒るぞ?」
律「いいからいいから!早く来いってば!」
澪「あっこら!袖を引っ張るな!」
唯「あずにゃんもムギちゃんも早く~!」
紬「…行きましょう?梓ちゃん」
梓「そうですね」
紬「…きっと、梓ちゃんにも自分を支えてくれる人が現れる筈よ」
紬「だって梓ちゃん、可愛いんだもの」
梓「…もう、ムギ先輩ったら」
唯「あずにゃ~ん!」
梓「ちょっと待ってください!今行きますから~っ!」
―――――――――――――――――
澪「わぁ…」
梓「凄い…」
紬「とっても綺麗…」
唯「でしょ?私もびっくりしたんだ~」
律「へへーん、私が見つけたんだぞ~」
唯「空って、こんなに綺麗になるんだね~」
澪「あぁ、怖いくらい綺麗な星空だ…」
梓「きっと、曇一つ無い空だからこんなに綺麗に見えるんですよ」
唯「そうだね~」
紬「うふふっ」
律「ん?どうしたムギ?」
紬「私、こうやってみんなと一緒に寝転がって空を見上げながら青春を満喫するのが夢だったの~」
唯「そっか。これって青春なんだね~」
律「て事はあれか。この後する事と言えば…」
唯「『みんな!あの太陽に向かって走るんだーっ!』じゃないかな!?」
律「それだっ!」
澪「いや太陽無いしそっち河だし」
律「細かい事は気にするなよ!さぁ行くぞ澪!」
澪「へ?ちょ!?ま、待て律!馬鹿な真似はやめ」
唯「りっちゃん澪ちゃん!レッツゴーッ!」ドーンッ!!
律「いやっっっほおおおおおおおおおおおおおおおおおいっ」ザブーンッ
澪「嫌ああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」ザブーンッ
梓「澪せんぱああああああああああああああああああああああああいいっ!!!!」
紬「あははは~っ!」
「…もう、友達辞めようかと本気で思いました」
秋山 澪
唯「青春って素晴らしいね!」
梓「……」
最終更新:2010年12月19日 01:46