――とてとてとてとて
唯「いやあ憂と帰り一緒になるなんて久しぶりだなあ」
憂「うん。お姉ちゃん帰りちょっと遅いね。もう先に帰ってるかと思ったのに」
唯「途中でりっちゃん達とアイス食べてたんだ」
憂「またアイス。あんまり食べ過ぎちゃダメだよ」
唯「わかってるってー」エヘヘ
憂「お姉ちゃん」
唯「なにかな」
憂「にもつ重たくない?」
唯「ぜーんぜん」
憂「手、ふるえてるよ?」
唯「へいきへいき」ニコニコ
憂「じゃあ、一緒に持ってあげる」ギュッ
唯「おおー。かるくなったあー」
憂「一緒に持てば重さも半分こ」ニコニコ
憂「……ふふふ」
唯「なにわらってるのぉ?」
憂「うれしくて」ニコニコ
唯「ふーん」
憂「ねえ、お姉ちゃん」
唯「なあに」
憂「なんでもない」
ちょっぴり痛む足が顔を引きつらせました。
お姉ちゃんは少し眉をハの字にして言います。
唯「今日の憂は変だねぇ」
憂「そうかも」
――――――――――
――リビング
唯「ちょーっとしみるかも」ソーッ
憂「う、うん」
唯「えいっ」チョン
憂「んっ」
じんじんと痛む傷口。
痕になるとイヤなので早く治って欲しいなと思います。
唯「あとは包帯まいてー。くるくるっとね」クルクル
憂「うん。これで痛くもないよ。ありがとうお姉ちゃん!」
唯「いえいえ、これくらい。憂のためだもん」
憂「ふふふ……。さあお夕飯作っちゃうね。おなかすいたもんね」スッ
唯「まちんさい!」ビッ!
憂「どうしたの?」
唯「ういはここで座っててね。ご飯は私が作るから!」
憂「お、お姉ちゃんが?」
唯「そう。ケガしたういは大人しくしてるのがいいの」
唯「今日は私が腕によりをかけて作るから!」
憂「だ、だいじょうぶかな?」
唯「だいじょうぶ!!まかせて!!!」
憂「……うん。お姉ちゃんがんばって!」
普段滅多に家事をしないお姉ちゃんのことを考えると気がかりでしかたありません。
そわそわと落ち着きがなく、もどかしい思いです。
でも、やる時はやるお姉ちゃんです。
出来上がったお料理は見た目は少し変かもしれないですけど
お味のほうはバッチリでした。
憂「お姉ちゃんおいしいね」
唯「でしょー?ういにおいしいの食べさせたかったんだから」
おいしいご飯を一緒に笑い合って食べて
お姉ちゃんと一緒に楽しいときを過ごします。
お姉ちゃんの笑顔を見れば痛いひざのことなんか忘れちゃうもんね。
後片付けもキレイにお姉ちゃんがしてくれました。
今日だけ、普段の行いがひっくり返ってます。
お姉ちゃんみたいにごろごろしようかなぁ。
こたつの前で丸まってるとお姉ちゃんが戻ってきました。
唯「ほらーうい、アイスだよ。そんなとこでごろごろしてないで食べよう!」
憂「うん。ありがとうお姉ちゃん」
唯「やっぱアイスおいしいねー」ペロペロ
憂「冬のアイスも一段とひんやりしてておいしい」ニッコリ
そのままこたつに当たりながら一緒にお話時間の始まりです。
いつもみたいにお姉ちゃんは学校での楽しかったことを話します。
授業中こんなことがあった、休み時間にこんなことした
帰りに食べたアイスはおいしかったよ――等等。
二人で笑い合ってると楽しいものです。
そして楽しい時間はあっという間に過ぎていくものです。
憂「あぁ!もうこんな時間。早くお風呂入って寝ないと……」
唯「うぉお。どうりで眠いわけだ」
憂「お風呂用意してくるね」
唯「私がしてくる!!」
唯「ういはまっててー」ダダッ
憂「お姉ちゃん……頼もしい!」
――――――――――
唯「できた!」
憂「はやいね」
唯「よしっ。早く入ろうよ」
憂「うん……一緒に?」
唯「もちろん!そのほうが早く寝れるし。ういケガしてるし」
憂「ケガくらい平気だよぉ」
唯「ダメダメ。さあここで話していないで早くお風呂場へゴー!」グイグイ
憂「わかったよぉ。おさないで~」
――ジャージャー
唯「うい、しみない?」
憂「うん。タオルまいてあるし」
唯「よーし。背中とか流してあげよう」
憂「ありがとうお姉ちゃん」
唯「えへへ」
お姉ちゃんにキレイにしてもらって身もこころもキレイキレイです。
浴槽の中で仲良くよりそってあったまります。
本当はここでまた色々とお話をしたいけどもう寝ないといけません。
遅い時間とぽかぽかな身体と適度な疲労が眠気へと誘ってきます。
さあ、名残惜しいけど浴槽からでましょう。
でて、身体拭いて、パジャマに着替えて眠りましょう。
唯「ふぃ~さっぱり」フキフキ
憂「体あったかいうちに寝たいね」
唯「そうだね。でも、ベッドの中は冷たそうだよ」
憂「冬だもん。しょうがないよ」
お姉ちゃんは口を尖らせ
ぶーぶーと文句をいいたげな顔をしました。
かわいいけど、困っちゃうな。
あ、そうだ!
憂「お姉ちゃん」
唯「なぁに?」
憂「一緒に寝ようよ」
唯「あー!今それ言おうと思ったのに」プンプン
憂「ふふ。私のさきー」エヘヘ
唯「よーっし。早く髪かわかして、ベッドへゴーだ!」
ルンルン気分でお部屋へ行くお姉ちゃん。
なんだかこっちまで楽しくなってきそうです。
お姉ちゃんのお部屋を開けると薄暗くて冷たくて
なんだか寂しい気分が襲ってきそうでした。
唯「ういー。ほらほら早く寒いからベッドへもぐりこもう」
憂「うん……」
小さな窓から月明かりがさしこむベッドへ
もぞもぞともぐりこみます。
憂「あいたっ」
唯「どうしたのっ?」
憂「ううん。ちょっとひざすっちゃった」
唯「だいじょうぶかな?見せて」
憂「へいきだよ」
唯「だいじょうぶ?」
憂「うん。すぐ治るよ明日には治っちゃう」
そう治っちゃいます。
ちょっとくらいの傷なんかへっちゃら。
唯「そっかー。じゃあ寝ちゃおう寝ちゃおう」
憂「おー寝ちゃおう~」
しーんと静まり返った部屋では孤独感が浮き彫りにされそうです。
特に今日みたいに楽しいことがあった後だとなおさらです。
憂「……」
憂「お姉ちゃん」
唯「なぁに」
憂「……なんでもない」
唯「そっかぁ」
憂「…………」
憂「お姉ちゃん」
唯「なぁに?」
憂「手、にぎっていい?」
唯「いいよー」
ぎゅっとぎりしめました。
ちょっとだけ、温かさを失ってるけど
にぎっていればあったかくなるよね?
ぎゅーぎゅーっと力強くにぎります。
唯「あー」
憂「どうしたの?」
唯「まぶしいと思ったらタペストリー引いてなかった」
唯「ひこおーっと」スッ
憂「いいよ」
唯「ん?」
憂「このままで」
唯「そう?」
憂「だって、空、キレイだもん」
唯「キレイキレイ……」ジー
唯「うん、キレイだね」
憂「ね?」ニコ
唯「うん」ニコ
小さな窓からさしこむ月明かりが
お姉ちゃんの笑顔を照らしています。
そしてその笑顔で照らされる私でした。
――お姉ちゃん。
呼んでみただけでもうれしくなっちゃうから。
その笑顔を見れるだけでうれしくなっちゃうから。
今日も明日も明後日もお姉ちゃんを呼びます。
憂「お姉ちゃん」
唯「なぁに」
憂「もっとそっち寄っていい?」
唯「いいよ~」
憂「よいしょっと」
唯「ふふふ」ニコ
憂「えへへ」ニコ
今日の夜空はとてもキレイ。
月明かりがキラキラと輝いています。
そんな月明かりが笑い合う私たちをやさしく照らしてくれました。
あったかくなるように、やさしくやさしく――。
おしまい
最終更新:2010年12月21日 23:47