遊義皇第12話 - (2009/05/26 (火) 00:52:10) の1つ前との変更点
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&html(<Table Border Bordercolor="#1e332c" Cellspacing="10" cellpadding="5"><Td BgColor="#b2a5cc">正念党、本格始動!<BR>レアハンター組織、制々正念党の七人衆(七票多人式決定衆会の略)は数ヶ月前に4名の欠員が出ていたが、<BR>グールズの人員を吸収し、アドバンテージ保持の『追走者』、超重量級ロック使い『不動不死』、ピアスの男『四界の王』を補充するも、<BR>やはり『超融合』に続いて抜けた主要メンバーが多く、絶頂時に比べて新規加入メンバーは多いが総合戦力は80%といった所、<BR>その為、『超融合』の再加党の為にかなりの手段を用いている。<BR>以上、情報サイト『マウスコミューン』より抜粋。</Td></Table>)
(作者視点)
「ふぅん、その場凌ぎの防御に〔アルティメット・インセクト〕ね、ま、悪くは無いんじゃない?」
「プレイングに不自然さが目立つが今のコンボは悪くない、効果での対抗もし難いしな。」
「クロックさんのデッキは高いステータスを持つカードに対しての防御カードが多くないですし…これは難しいですね。」
やはりデュエリストだけあって例外無く本気でテレビに喰らい付き、観戦している幹部衆のホーティック第とウォンビック、副官のトガ、
この興奮がデュエルディスク『明』の最大の利点と言えるかもしれない。
「失礼、無線が入りました。」
音もバイブレーションの気配も無く耳(が有ると思しきピアス)に無線機(が有ると思われる手の平)を押し当てるエビエス。
「こちらエービーエス(ボソボソボソボソ)わかりました、感謝します(ヒソヒソヒソ)当然です、そのまま続行してください、
えー、お三方、私の友人が猩々鬼を発見しました、幹部衆からの出撃をお願いします。」
それを訊き、揃って眉を潜める3人。
「二封気はオセロとかいう村に居ると飛行機の中で聞いたが?」
「既に脱出していたようです、現在は電車で移動中です。」
エビエスは特別な情報筋にコネクションを持っているらしく、
その早耳は万が一、敵となった時を考えれば警戒の対象として多くの正念党員に感じられているほどである。
「と言う訳でウォンビックさんとトガさん、二封気氏の撃破・連れ戻しに向かってくれますか?」
「なんであたしやブラックマイン様が、あんた達のXXXXXな仲間を連れ戻しに向かわなきゃならないのよ?」
トガの聞くに堪えない放言に、ゆっくりと立ち上がるホーティック。
「俺の事ならいくら侮辱しても良い、聞き流せる、
だが、私は仲間を侮辱する行為だけは聞きゥッべ!」
トガのハイキックは、ゆっくりと立ち上がり、振り向いたホーティックの顔面に何の抵抗もなく突き刺さった。
「弱っ。」
※幹部衆殴り合いランキング、1位・シャモン、2位・エビエス、3位・ウォンビック、4位・神次郎、5位・クロック、6位・ホーティック
※幹部衆基礎体力ランキング、1位・ウォンビック、2位・神次郎、3位・エビエス、4位・クロック、5位・シャモン、6位・ホーティック
※幹部衆頭脳指数ランキング、1位・ホーティック、2位・エビエス、3位・クロック、4位・シャモン、5位・ウォンビック、6位・神次郎
「おティーのデリバリサービ…って、ホーティック第3幹部のHPがレッドカラァアアア!
H3のみんなぁー! へるーぷ!」
タイミングを見計らったように入ってくる不自然すぎる筋肉マッチョ。
「…これが貴方達の二封気さんを連れ戻しに行く理由です、
第3幹部は部下達に人気が有りますからね、問答無用に蹴り倒したとなると冗談無しに殺されますよ。」
トガはウォンビックに助けを求めるような視線を送るが『悪いのはお前だ』とばかりに無視するウォンビック。
……まあ口頭で喧嘩を売ったのもトガで、先に蹴ったのもトガだしなぁ……。
「さあ!早く二封気の連れ戻しに向かいますよ、ブラックマイン様!」
「……俺は日本語が喋れんからな、途中の通訳を頼むぞ。」
「ま…任せて下さい、ブラックマイン様! あたし、頑張ります!」
さっきまでビビっていた子供がもう笑ってる。
「それじゃあ僕たちの相手も頑張ってもらおうか!」
「死んでもらうからネ。」
「ホーティックちゃんを苛めるなら…お嬢ちゃん、死んでもらうよ?」
「拙僧の刃で冥土極楽に招待してくれるはァッ!」
「…。」
「わぁたぁしぃも、こぉろすぅ。」
「ワタシタチ、3H部隊のネームに掛けてキルユー!」
完全に蛇足だが説明させて貰うと3H部隊とは、元は神次郎配下のグールズ第3編隊の略だったが、
隊長の次郎が性格上、隊長同士の隊員ドラフトに参加せずにハズレの色物ばかり集まった為、変態・貧弱・暇人と言う当て字をされた部隊。
(正念党に鞍替えした時に副隊長の爬露巳式を初めとする全員の希望でホーティック第3幹部の下に移動。)
「……こいつらが落ち着いた頃にちゃんと謝りに来るんだぞ、トガ。」
言いながらトガを小脇に抱え、壁をぶち破って出て行くウォンビック……お前もあとで謝れよ? 壁の修理する人に。
(クロック視点)
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第5ターン、クロックのドローフェイズ直前。
刃咲 ライフ7900 手札1 場・アルティメット・インセクトLV7 伏せ1・発動中・黒きハイエルフの森
クロック ライフ8000 手札5 場・異次元の生還者 伏せ1 発動中・マクロコスモス
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&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>アルティメット・インセクト LV7</Td><Td>風属性</Td><Td>昆虫族</Td><Td>レベル7</Td><Td>ATK2600</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">「アルティメット・インセクト LV5」の効果で特殊召喚した場合、<BR>このカードが自分フィールド上に存在する限り、全ての相手モンスターの攻撃力・守備力は700ポイントダウンする。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>黒きハイエルフの森</Td><Td>フィールド魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上に存在する昆虫族モンスターの攻撃力・守備力が300ポイントアップする。<BR>昆虫族モンスターが破壊された時、そのカードのコントローラーのライフを1000ポイント回復する。(オリカ)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>異次元の生還者</Td><Td>闇属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードがゲームから除外された場合、<BR>このカードはエンドフェイズ時にフィールド上に特殊召喚される。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>マクロコスモス</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の手札またはデッキから「原始太陽ヘリオス」1体を特殊召喚する事ができる。<BR>また、このカードがフィールド上に存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へは行かずゲームから除外される。 </Td></Table>)
「刃咲くん! ずるいよ、刃咲くんだけでデュエルするなんて!」
「デュエル中には別の話題はしないのがマナーよ、福助。」
蕎祐は「てめぇが二封気とデュエルしたいって言ったからデュエルしてるんだろうが!」とでも言いたそうだが、耐えている。
ここで言えば俺との賭けの条件を満たせなくなる、つまり言ったら二封気の情報は手に入らない…頑張ってるな、蕎祐。
「……勝ったあとに説明するから、ちょっと待ってろよ、
さあ、クロック、これでやっとサマ抜きの正面対決だ、カードを引け!」
普通のイカサマ師は複数の技を状況に合わせて使いこなし、成果を挙げるものだが、
俺に限っては手札入れ替えを最高の域まで極める為に他の技は知識だけでほとんど練習していない。(つまり使われた時に看破はできるが使えはしない)
よって、俺は天性の引き運のみの不安極まりない勝負を強いられている……これはこれで面白いが。
「あぁー、こういう勝負も暫らくぶりだな(手札6)、俺は〔紅蓮魔獣 ダ・イーザ〕を召喚する。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>紅蓮魔獣 ダ・イーザ</Td><Td>炎属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK?</Td><Td>DEF?</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されている自分のカードの数×400ポイントになる。 </Td></Table>)
紅蓮魔獣 ダ・イーザ攻撃力?→攻撃力3200 守備力?→3200
「俺も負けられないんでな、全力で行くぜ! 守備表示の〔生還者〕を攻撃表示に変更し、
バトルフェイズ突入! 〔ダ・イーザ〕で〔究極虫〕への攻撃、スペースサンダー!」
「させるかぁッ!〔和睦の使者〕ァ!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>和睦の使者</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">発動ターンだけ相手モンスターからの全て戦闘ダメージを0にする。 </Td></Table>)
2つの巨体が激突する数秒前に、使者による停戦条約が可決し、撃ちかけていたエネルギー砲を収めるグレンダイザー。
「あぁー、リバースカードを1枚伏せて終了だ。(手札4・伏せ2・発動中1)」
「俺のドローフェイズ(手札2)! 〔アルティメット・インセクト〕で〔異次元の生還者〕を攻撃だ! 究極害病砲LV7!」
〔アルティメット・インセクト LV7〕(攻撃力3000)VS(攻撃力1800)〔異次元の生還者〕→生還者除外、クロックLP8000→LP6800。
さっきのターンで攻撃表示に変更したのが響いたか…だが次のターンに〔生還者〕は戻り、基本戦力としてのダメージは無いので問題はない。
「…しばらくぶりに見るね、アレ。」
「うん、いつもなら効果条件を満たす頃には決着付いちゃうもんね。」
……え?
「この瞬間、〔アルティメット・インセクト LV7〕を生贄に捧げ、来い!〔アルティメット・インセクトLV9〕!」
えええええ!?
アルティメット・インセクト LV7・黒きハイエルフの森→除外。
融合デッキ→アルティメット・インセクト LV9、特殊召喚。
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>アルティメット・インセクト LV9</Td><Td>風属性</Td><Td>昆虫族</Td><Td>レベル9</Td><Td>ATK3400</Td><Td>DEF2100</Td></Tr><Td ColSpan="6">「アルティメット・インセクト LV7」+「表側表示で自分フィールドに存在している魔法カード」<BR>アルティメット・インセクト LV7が戦闘でモンスターを破壊した時、上記の融合素材をゲームから除外する事でのみ特殊召喚できる。<BR>(融合の魔法カードは必要とせず、アルティメット・インセクトLV7が召喚・反転召喚・特殊召喚されたターンや他の方法では召喚できない。)<BR>またこのカードは魔法カードの効果を受けず、相手フィールド上の全てのモンスターの攻撃力は半分として計算される。(オリカ)</Td></Table>)
「〔アルティメット・インセクト LV7〕はフィールド残留・戦闘で敵撃破という2種類の経験地を稼ぎ、
魔法カードを1枚捕食する事で魔力を補充する事で更なる巨大化・猛毒・新たなる能力を身に付ける!
さらに〔LV9〕は他のレベルモンスターが有するレベルアップへのタイムラグも無く、
条件を満たした瞬間に召喚され、即座に攻撃が可能! 究極害病砲LV9!」
〔アルティメット・インセクト LV9〕(攻撃力3400)VS(攻撃力1800)〔紅蓮魔獣 ダ・イーザ〕→ダ・イーザ、破壊・ゲームから除外、クロックLP6200→LP4600
俺の〔ダ・イーザ〕はエネルギー砲の力押しのみで〔アルティメット・インセクト〕の力押しのみで粉砕された。
「バカな…〔黒きハイエルフの森〕を失った〔究極昆虫〕では〔ダ・イーザ〕を倒せないハズだ…。」
いや違う、今のソリッドビジョンはインセクトが強くなったというより、ダイザーが弱くなった、と言う表現だった。
「究極昆虫族は生まれた直後(LV1)は強力な魔法耐性の皮膚を持つが、成長によって魔法体性の装甲から脱皮して魔法耐性を失い、
幼虫(LV3)→半成体(LV5)→成虫(LV7)への攻撃力アップが行なわれるが……この変態には続きが存在する。」
「つまり、魔法を食って魔法体性皮膚が再生して、毒鱗粉も強化されて〔ダ・イーザ〕の攻撃力は半減してた、ってことか。」
「ま、これ以上はレベルアップしねーから安心しとけ、手札を両方セットしてエンド!(手札0・伏せ2)」
「この瞬間、〔生還者〕が守備表示でフィールドに戻る…、
俺のターンで(手札5)……モンスターを裏守備で召喚、ターンエンド。(手札4)」
俺が伏せ出したのは〔異次元の偵察機〕、このカードと〔生還者〕でディステニードローまで耐えるか、とりあえず。
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>異次元の偵察機</Td><Td>闇属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK800</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードがゲームから除外された場合、<br>そのターンのエンドフェイズ時にこのカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。</Td></Table>)
「ドロー(手札1)……いよっしゃ! 〔ランスタッグ〕を攻撃表示!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ランスタッグ</Td><Td>風属性</Td><Td>昆虫族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK1550</Td><Td>DEF820</Td></Tr><Td ColSpan="6">守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合、フィールド上のモンスターを全て攻撃表示に変更する。(オリカ)</Td></Table>)
「伏せ状態の〔働き蜂への報酬〕を発動し、〔ランスタッグ〕で〔生還者〕へ…攻撃!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>働き蜂の報酬</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上のモンスターが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える度に、自分はカードを1枚ドローする。(オリカ)</Td></Table>)
一見するとカブトムシに見える、一本角のクワガタがフィールドを疾走し、俺の生還者を貫き、そのまま俺の腕を深々と刺した。
〔ランスタッグ〕(攻撃力1550)VS(守備力200)〔異次元の生還者〕→生還者除外、クロックLP4600→クロックLP3250
刃咲手札0→手札1(働き蜂への報酬の効果)
「貫通持ち!?」
「更に! こいつは相手にダメージを与えた時に他のモンスターの防御体制もぶっ壊す! ランスタッグハンマー!」
ランスタッグは角に刺したままの生還者を地面に叩きつけ、その衝撃によって裏守備表示の偵察機はメンコのように空中に弾き飛ばされた。
「行け! 〔アルティメット・インセクト〕ォ!」
空中でバタバタする〔偵察機〕は、何の抵抗もできずにアルティメットインセクトに抱き砕かれた!
〔アルティメット・インセクト LV9〕(攻撃力3400)VS(攻撃力400)〔異次元の偵察機〕→偵察機除外、クロックLP3250→クロックLP250
刃咲手札1→手札2
「将棋で言うところ……王手、ってやつだね。」
「確かにね、次のクロックのターンで〔ランスタッグ〕を除去できなければ貫通効果で押し切り、
でもクロックのモンスターは〔アルティメット・インセクト〕の効果で攻撃力現象、倒せたとしても返しのターンの〔インセクト〕の攻撃で終わるわね。」
冷静なツッコミをありがとう、現実逃避しきれなかったよ。
「あぁー……マズイ、この状況で生き残れるカードは残りデッキが22枚の内たった4枚…来るわけねぇ…。」
「それぐらいの確立ならエンドしてやるから引いてみせろよ。(手札2・伏せ1・発動中1)」
異次元から戻る〔生還者〕と〔偵察機〕に余裕が戻ったのか、あざけりには及ばないが見下した視線で微笑む蕎祐……うあ、ムカつく!
「そんな確立のカードを余裕で引けるならイカサマなんてしねぇよ!………だが引くぞ、絶対引くぞ、うりゃ!(手札5)」
「挙動が一々ダメ大人のクロックさん、4枚の内の1枚かドロー強化系は引けましたかー?」
刃咲の馬鹿に仕切った一言を聞きながら、俺は凍り付いていた。
「あぁー、忘れてた…逆転して勝てるカードが有ったんじゃねぇか。」
「…んだと?」
「俺は〔生還者〕と〔偵察機〕を生贄に捧げ、手札から〔最古装甲 GOバリアー〕を通常召喚する!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>最古装甲 GOバリアー(さいこあーまーごおばりあー)</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK?</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードの攻撃力は(自分の除外されたカード枚数-自分の墓地枚数)×2000の数値となる。<BR>またこのカードが表側表示でフィールドに存在する限り、このカードはレベル5以上のモンスターにしか攻撃できず、<BR>コントロールを変更する効果を無効にする。(オリカ)</Td></Table>)
「…なんだ?外見は 〔ダ・イーザ〕や〔ガーゼット〕に似てるみたいだけどよ…?」
「あぁー、良い視点だ、こいつもその2体と同じ様に特殊な攻撃力判定を持っててな、
今みたいに俺の墓地が無く、かつ除外されてるカードが多い今みたいなタイミング限定での活躍だが……その2体を超えるぞ。」
最古装甲 GOバリアー 攻撃力?→攻撃力20000→攻撃力10000(アルティメット・インセクト LV9の効果で半減。)
「〔アルティメット・インセクト〕の毒鱗粉で攻撃力を下げてもまだこれだけのパワーが!?」
「基本的にデュエルモンスターズは制約が重ければ重いほど強力な効果も許される………、
デッキ全てを費やすのは勿論、出せても攻撃対象が著しく制限され、上級を送り付ける戦術も最後の一文のせいでできねぇ、
元来ファンデッカー専用カードだが…今なら使えるぜ、最古ナックルで〔アルティメットインセクト〕へ攻撃。」
歴史や赴きは全く感じさせずに特攻する最古装甲、そのパワーの前では究極の名を持とうとも、たんなる羽虫だ。
〔最古装甲 GOバリアー〕(攻撃力10000)VS(攻撃力3400)〔アルティメット・インセクト LV9〕、アルティメット・インセクト破壊、刃咲LP7900→LP1300
「算数もできないのかよ? その攻撃力じゃ俺のライフを0にする事はできねぇ!」
「あぁー、戦闘だけがこのカードゲームじゃねぇだろ? トラップカード発動、〔D.D.ダイナマイト〕!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>D.D.ダイナマイト</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手の除外されたカードの数×300ポイントダメージを相手に与える。</Td></Table>)
「なんだと……!?」
「あぁー、蕎祐、お前は覚えてないだろうが、お前の除外されたカードは全部で10枚、よって3000ポイントのダメージを受けてもらうぜ?」
除外ゾーンという身近な地点から広がった爆発によって、蕎祐のLPは完全に吹き飛ばされた。
刃咲LP1300→LP0
12話のサブタイトルの答え、「安直だが正解」
「す…すげぇ、ライフポイントを一気に削りきった…!?」
「あれは一度手合わせしてもらいたいねぇ、朝ご飯食べた後で。」
ギャラリーのぼやきを完全に無視し、俺は俯いた蕎祐に足早に近付き、語りかける。
「賭けは俺の勝ちだ、約束は守れよ?」
「……ああ、約束は守る、ところでクロック、カセットテープを買う気は無いか?」
「あぁー?」
そのまま蕎祐はポケットから延長コードで何本か中継したイヤホンを『耳に付けろ』というジェスチャーを含めて俺に渡す。
耳に入れた瞬間に流れ出す、聞き覚えの有る2つの声。
『あぁー、それでも俺は自分の頭を殴ってでも喋らなかったんだぞ、言えねぇよ。』
『…それなら賭けデュエルしようぜ、俺が勝ったらあんたが知ってる限りの二封気の情報を教える、
あんたが勝ったら俺は福助に『クロック・ジュフが二封気の情報を知っている』って事を言わない。』
『あぁー? 別に言われたところで俺は困らんぞ?』
「……どういうことだ?」
「俺は約束どおり例の情報を公言はしない、だけど『偶然』録音したカセットを友達に聞かせない約束はしてないよな?」
……んだああああああああ!
「お前、デュエルをしておいて、こんな詐欺紛いのことを……デュエリストの誇りは無いのか!?」
「テキストやルールの穴を突き、屁理屈を云うのがデュエリストだろうが!
お前みたいなのが悪徳業者のカモリストに乗るんだ、大人なら契約内容はちゃんと確認しろ、
……俺もいくらなんでもこんな屁理屈で全部教えろとは言わない、情報のヒントだけでカセットを売ってやる。」
ギャラリーを衆めたのもこの為か? こういう不当な状況でも「力尽くでカセットを奪い取る」手段を使えなくさせる為に?
「また論点のボカシだな、負けておいて一本100円しないカセット1本で懐柔しようとしてる、お前みたいに悪知恵の働く奴が………。」
「皆さーん、実はですねー、このクロック・ジュフ23歳、カッコ独身はー!」
ああああああ! 反論や思考の暇すら与える気がねえええええ! クーリングオフみたいに猶予期間をおおおお!
「分かった! 分かった! セカンドハンターだ! あいつに関する情報はレアハンターかこれしかない!」
「……セカンドハンター?」
始めて見た蕎祐の子供らしい間の抜けた表情、これが維持してたらなぁ…。
「星5以上のプロライセンスを持つ奴がやる職業の1つでな、星5以上に為るとKCのデータバンクに所持レアと名前が登録される、
それを有る程度の上位レアハンターはハッキングして見たりしてるんだが…それを逆に利用して相手のカードを巻き上げる商売だ!」
基本的にレアハンターもアンティを賭けるし、上位レアハンターに為ると偽造カードではなく本物を投入してる場合も多いので、返り討ちにして奪い取ったカードを売って生計を立てている連中だ。
「…だからハンターを狩る第二のハンター……セカンドハンター、ってわけか。」
「あいつはレアハンターにも知り合いが多いから、レアハンターと戦って情報を聞き出せばあいつの情報を入手できる可能性は高い!」
「凄い! そんな仕事が有るんですね!」
その声にビクつく俺、大声は出したが俺も刃咲も『二封気』とか喋ってないよな? 大丈夫だよな? セーフだよな?
「決めた! 僕はセカンドハンターに為る!」
「……もう1つくらいオマケしろ、あれくらいなら教えられなくともこうなってた確率は高い。」
「あぁー、大阪だ、大阪の松猪 四郎ってのに会いに行け、そうすればセカンドハンターに為りやすくなる。」
「…連絡先もオマケしろ。」
「助姫さんが知ってる筈だ、渡せ。」
蕎祐が今までの流れからは考えられないほど簡単に渡したテープを私、俺はそれを蕎祐の目の前で二つにへし折った。
「何の話? 今の?」
「言えない話だからな、気にしないでくれ。」
「さあ! 次は俺だ! 若造にはまだ負けん!」
「いいえ! 僕です!」
……朝飯も食わずに異常に元気な面々、オイオイ……。
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&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
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&html(<Table Border Bordercolor="#1e332c" Cellspacing="10" cellpadding="5"><Td BgColor="#b2a5cc">大阪府、デュエル課を新設。<BR>現在交通事故よりも多いレアハンター被害に対して、従来の警察システムでは暴行傷害などが無ければ介入できなかったが、<BR>本日より新設された希少物強行賭博対策課(通称デュエル課)によって対策が可能となった。<BR>システムはデュエル課職員がレアハンターとデュエルを行ない、強要されたデュエルによって奪われたカードを取り戻す、といった物。<BR>注意すべき点はデュエルを強要されたのではなく、断る事ができたと判断される状況でのアンティは対象外となる。<BR>新部署の構成員は部長含め4人だが、部長はあの松猪四郎氏、ご存知の通り彼は星6ライセンスを取得しており、実力は保障付き。<BR>以上、大波社発行、「デュエリストニュース」の2面記事より抜粋。</Td></Table>)
頭部に鈍い痛みに額を押さえつつ、クロックは目を覚ました。
「よぉ、クロック、丸一日気絶してたぞ。」
「あぁー、今何時だ?」
ベッドから少し離れた位置に座った刃咲の言葉に、クロックはそこが刃咲医院であることを知った。
「3時半……昨日、なにが有ったんだ?」
言葉を選び、探りを入れるべく言葉を選びながら刃咲はクロックを見据える。
一緒に居たはずの行方不明になった二封気、突如現れた変人デュエリスト軍団。
その時に気絶していたクロックは、必ず何か関わりがあるはずなのだ。
「あぁー、これな、自分でやったんだ。
二封気が村を離れるまで何も喋らない為に、な。」
「…あ?」
クロックのいつも通りの饒舌に、ウソを吐かれると警戒していた刃咲は逆にたぞろぐ羽目になった。
「…で? その二封気はどこに行ったんだ?」
「あぁー、それが言えないから寝てたんだよ。」
刃咲は二封気や福助のような頑固者を論破するのは得意だが、軟派なクロックとの舌戦は苦手なようだ。
普段ならばこれで終わってもいいのだが、今日の刃咲には頑張る理由があった。
「福助のバカが二封気と戦いたいって煩いんでな、喋ってもらうぜ。」
「あぁー……友情、ってヤツでな。
お前が福助のために二封気の居場所を聞き出そうとしてるのと同じで、俺も二封気のために喋るわけにはいかねぇ。」
その言葉に、8歳の少年は初めて自分の行動理念が“友情”という名前が付いていることを知った。
「…それなら賭けデュエルしようぜ、俺が勝ったらあんたが知ってる限りの二封気の情報を教える、
あんたが勝ったら俺は福助に『クロック・ジュフが二封気の情報を知っている』って事を言わない。」
「あぁー、なんだそりゃ? 交換条件にもなってねーよ。」
「いいや、困る筈だ。
福助が知れば、お前が指の点検に来る毎に問い詰めるに決まってる。
俺が負ければ、『このダメ大人は何も知らない』って説得してやる、どうだ?」
むしろ、帰りの電車とかまで付いて来そうなスッポン少年を、クロックは容易にイメージできてしまった。
何にしてもここから帰るためには一日一本の電車を使わなくてはならず、年に一度はここで点検をしなければならないのだ。
「あぁー……。」
煮え切らない様子のクロックに、逆に刃咲は焦っていた。
こんな形振り構わないような提案が、彼にとっては最後のカードなのだ。
「あんたは自分のイカサマに絶対の自信が有るんだろ?
それで俺みたいなガキからの挑戦を逃げるってのも……慎重すぎるんじゃねぇか?」
挑発的な口調と表情だが、その裏にある焦燥を見逃すクロックでもない。
しかしながら、それほどまでに友を思う敵を無下にできるほど冷徹になれるクロックでもないのだ。
「……あぁー、そりゃそうだ、これで逃げたら男じゃねぇ、受けてやるぜ、そのデュエル。」
「ッは、これでお前が自傷してまで守ろうとした秘密は解かれちまう、ってことだな。」
その返答に刃咲は自信に溢れた表情をしているが、その裏の安堵を見てクロックはむしろ微笑ましかった。
「あぁー……俺は優しいから受けてはやるが……。
負けてやるつもりはねぇぜ。」
クロックは、刃咲を友のために戦う戦士だと認めたからこそデュエルを受けた。
だがそれはつまり、これから起こるデュエルにおいてクロックが全身全霊を尽すという意味でも有った。
クロックが目を覚ましたのと同時刻。
アメリカで決闘していたシャモンたちは、次の任務のために日本に帰ってきていた。
シャモンの寝息と神次郎の歯軋りが鳴る中、デュエルを繰り広げる二人の男がいた。
「はい、エクゾディア完成です。」
日付が変わってからだけで23回目のエクゾードフレイムに、ウォンビックもリアクションを取れないでいた。
「……世界は広いな、勝てる気がしない。」
「そうでもありませんよ、今回はエクゾディア完成が3ターン目ですからね。」
正念党が第三幹部、ホーティックの連続ドローによる1ターンキル。
5時間前の初デュエルでは先攻1ターン目のウォンビックのターン中に勝利を確定させた。
その後、数十回のデュエルの中で、コンボをロックして引き伸ばす事はできたが3ターン後に撃破された。
「で、どうなさいますか? モーガン第3幹部。
ブラックマイン氏の幹部入りを承認しますか?」
飛行機内でも一睡もせず、30時間以上不眠の男、第七の幹部エビエス。
仮に疲れているとしてもピアスで顔や全身を覆っていてわからないが、少なくとも声色に疲れは見えない。
「歓迎しますよ。
ブラックマインくんの実力も本物ですしね。」
「これで現五幹部中、賛成は第1、第3、第5幹部。
反対は第7幹部のみで、未投票の第4幹部がどちらであろうとブラックマイン氏の幹部入りは決定です。
空いている幹部番号は、2か6なのでどちらにするか決めておいてください。」
唯一反対していた第7幹部たるエビエスは、淡々と状況を整理する
「礼を言う、ホーティック。
幹部入りの承認もだが……お前のデュエルで更に成長できた気がする。
……エビエス、お前も一戦しないか?」
「ルール改正してからなら、構いません。」
「? ルール改正?」
「チューナーとシンクロモンスターの発売に伴い、メインデッキやエクストラデッキに枚数制限がされますからね。
ブラックマイン氏のデッキは、大幅に枚数を減らさなければならないはず……それからなら、お受けしますよ。」
ウォンビックのプレイスタイル上、デッキ枚数が減れば大幅に戦力がダウンする。
つまり、エビエスは『お前が弱くなってからならデュエルしてやる』と言っているのだ。
「エビエス、お前は俺のことを嫌いなようだが…俺はお前のそういうところが好きだぞ。」
「……それはどうも。」
そんな2人を見てホーティックは去った正念党員たちを思い出し、また楽しくなりそうだ、という予感を持った。
「第4幹部というヤツだけは会っていないが……ホーティックやシャモンより強いのか?」
いかにも戦うのが楽しみという調子のウォンビックに、ホーティックの予感は実感に変わっていた。
「シャモン様は星20級、モーガン第3幹部は星9級。
比べて、ジュフ第4幹部は星7級、私や神第5幹部と大差はありません。」
星は5以上でプロデュエリスト扱いだが、プロとしては最下層の星5の正規ライセンスですら479人。
登録するだけでも難易度が高く、取得すればそれだけでレアハンターの標的になる。
故に力が保障される反面、ライセンスを取得してから再起不能にされることも珍しくない。
「ジュフ?
……クロック・ジュフの事か? あいつも居るのか? この組織は?」
「面識があるんですか? 彼と?」
「アメリカのアンダーグラウンドデュエルでは有名人だったからな。
だが、ある時に指を切り落とされ、以降は変身できない仮面ライダーの様に姿を消した男だ。」
「へえ……世界は狭いですね。」
その時、ホーティックのデュエルディスクから電話の呼び出し音のような甲高い音が鳴った。
デュエルディスクの音響装置にしてはずいぶんお粗末なアラームのようだ。
「本当に世界は狭い、クロックさんがデュエルを開始しました。」
言いながらホーティックは自身のデュエルディスクからコードを引っ張り出し、ジャックをテレビに繋げた。
デュエルに集中していたウォンビックは気が付かなかったが、よく見ればホーティックのデュエルディスクには金属製の箱のような物が換装されている。
「? どういう事だ?」
「これは私のデュエルディスク『明(アキラ)』の特性です。
一度でも対戦したディスクがデュエルを開始した場合、その内容を知る事が出来ます。
……録画も出来ます。」
ホーティックはディスクの余剰パーツに何かのディスクを入れた。
どうやら、あれはDVDレコーダーになっているらしい。
コードを繋げたテレビには、インターネットのデュエル場の様にカードデータやライフ、手札枚数などが表示された。
「ということは……俺のディスクも登録されたわけか。」
「ええ、見られたくないデュエルなら別のディスクでお願いします。」
「問題ない、電池代は不条理な税金のように高いからな。
元々、レアハンターとしてデュエルする時以外は使わない。」
あえてホーティックは言わなかったが、このデュエルディスクはかつての友、二封気の作った物。
本来はデュエル中にホーティックが内容をメモって時間が掛かっていたので、それを解消すべく作ったツールだった。
それをホーティック自身が自主改造し、自分のデュエルだけでなく、対戦した他のディスクにコンピューターウイルスのように影を残す。
「さて、どうやらジュフ第4幹部と対戦しているのは昆虫族使い……。
考え込む時間がかなり長いようですし、慎重なプレイヤーのようですね。」
慎重な昆虫族使い、そしてクロックが今居るのはオセロ村……。
この事実から、クロックの対戦相手を推測できたのはホーティックだけだった。
そして、当のオセロ村。
刃咲医院の門前、オセロ村には街灯もないので、太陽が昇るのを待ち、ニワトリも鳴く4時半。
「それじゃあ、やるぜ?」
「あぁー、もちろん。」
『デュエル!』
先攻は刃咲。
互いに友のため、敵を見据える。
「ドロー(手札6枚)
モンスターを1枚とリバースをセットして終了!(手札4・伏せ1)」
「あぁー、ドロォ(手札6)。
……蕎祐、お前は俺と自分との力を何対何と見てる?」
「……7対3であんたの優勢ってところだろうが、勝てない数字じゃねぇ、気合で勝たせてもらうぜ!」
唐突な問いに関わらず、刃咲はさほど悩まなかった。
ずっと考えていたことなのだ。 自分がクロックと互角というには及ばないデュエリストであることは。
「あぁー、概ね正しいが、実際に戦えば……」
手札から、自分の黒いデュエルディスクにカードを配置する。
「テクニック以外の差で、俺が勝つことになる。
手札から〔閃光の追放者〕を召喚して、攻撃!」
もみじ色の翼を持った上半身のみのロボットが、刃咲のモンスターを殴り殺した。
〔閃光の追放者〕(攻撃力1600)VS(守備力1300)〔共鳴虫〕→共鳴虫、破壊→ゲームから除外。
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>閃光の追放者</Td><Td>光属性</Td><Td>天使族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK00</Td><Td>DEF00</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードがフィールド上に存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へ送られず、ゲームから除外される。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>共鳴虫</Td><Td>地属性</Td><Td>昆虫族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK1200</Td><Td>DEF1300</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、<br>デッキから攻撃力1500以下の昆虫族モンスター1体をフィールド上に特殊召喚することができる。</Td></Table>)
「あぁー、テクニック以外の差1つ目、デッキタイプによる優劣。」
自分の有利を語っているはずなのに、クロックの表情は暗い。
「お前の使っている昆虫族デッキは自然での生命循環を形容して“墓地”に関連したカードが多い。
〔ドラゴンフライ〕、〔共鳴虫〕、〔魔導雑貨商人〕、〔デビル・ドーザー〕、〔黒きハイエルフの森〕とかな。
そいつらは俺の主力、〔閃光の追放者〕なら問題なく無力化できる。」
刃咲が反論するより早く、クロックは言葉を続けた。
「あぁー、今の〔共鳴虫〕の発動が成功していれば、モンスター除去効果を持つ〔スカラベ〕辺りを呼び出して俺のアタッカーを除去できた。
……ここからは勘だが、発動後の〔スカラベ〕を生贄に上級召喚も狙ってたんじゃないか?」
図星。
「……さぁな。」
「あぁー、顔に出さないように我慢してるのはわかっけど、露骨過ぎ。
……リバースカードを1枚伏せ、ターン・エンド。(手札4・伏せ1)」
実力だけでなく、デッキタイプでも不利。
デュエルモンスターズにおいて、デッキタイプによる有利・不利は出易く、それはデュエリストに圧し掛かる。
だがしかし、そのプレッシャーに負け、闘志が折れた時がデュエリストの最後なのだ。
「っは、そんな福助の身長より小さい理由なんざ、目にも入らねぇ!」
プレッシャーごときに闘志を折られるほど、刃咲の闘志は柔ではない。
「俺のドローフェイズ!(手札5)!
〔黒きハイエルフの森〕を発動し、〔ドラゴンフライ〕を召喚するぜ!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>黒きハイエルフの森</Td><Td>フィールド魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上に存在する昆虫族モンスターの攻撃力・守備力が300ポイントアップする。<BR>昆虫族モンスターが破壊された時、そのカードのコントローラーのライフを1000ポイント回復する。(オリカ)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ドラゴンフライ</Td><Td>風属性</Td><Td>昆虫族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF900</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、<BR>デッキから攻撃力1500以下の風属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。</Td></Table>)
ドラゴンフライ:攻撃力1400・守備力900→攻撃力1700・守備力1200
本来の戦闘力で勝る〔追放者〕とはいえ、森の中では僅かに及ばない。
「これで〔閃光の追放者〕の攻撃力を超えた、攻撃!」
その時、クロックの伏せカードが開いた。
「あぁー、〔追放者〕は倒されるが……〔マクロコスモス〕を発動しとくぜ。」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>マクロコスモス</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の手札またはデッキから「原始太陽ヘリオス」1体を特殊召喚する事ができる。<BR>また、このカードがフィールド上に存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へは行かずゲームから除外される。 </Td></Table>)
〔ドラゴンフライ〕(攻撃力1700)VS(攻撃力1600)〔閃光の追放者〕→閃光の追放者、破壊、ゲームから除外。クロックLP8000→LP7900
「〔マクロコスモス〕の効果によって、破壊された〔閃光の追放者〕は墓地に行かず除外される。」
「知るかぁっ! カードを1枚伏せてエンド!(手札2・伏せ2)
ダメ大人ァ、お前はカードを除外しなきゃ戦えないんだろうが、俺は墓地に頼らなくても戦えるんだよ! 」
「あぁー、それでも相性が悪いのは事実だろうが。
ドロォ(手札5)、スタンバイフェイズの内にこのターンのドローカード、〔サイクロン〕で伏せカードを破壊する。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>サイクロン</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。 </Td></Table>)
「どっちをだ?」
刃咲は自分のデュエルディスクに差し込まれた2枚のカードを指差した。
「あぁー?
……ミスった、伏せカード1枚じゃねぇのかよ………左だ。」
「お前から見て左、か?」
「あぁー、蕎祐から見て左、だ。」
その宣言にニタりと一笑したのは、刃咲の方だ。
「いよっしゃぁ!
伏せ罠発動、〔強欲な瓶〕っ!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>強欲な瓶</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のデッキからカードを1枚ドローする。</Td></Table>)
サイクロン:除外
刃咲:手札2→手札3
「これでワンアドバンテージ、ってところだな。」
「……しゃあねぇなぁー、本気出すぜ?
〔強欲な壺〕で2枚ドロー、オマケに〔天使の施し〕発動だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>天使の施し</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚捨てる。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>強欲な壺</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">カードを2枚ドローする。</Td></Table>)
天使の施し:除外
強欲な壺:除外
偉大魔獣 ガーゼット:手札→ゲームから除外(天使の施しの効果)
鎖付きドリル:手札→ゲームから除外(天使の施しの効果)
クロック:手札5
「……〔サイクロン〕がこのターンのドロー、っつったよな…?
なら〔強欲な壺〕は前のターンから有ったってことだよな? 何で使わなかった?」
「あぁー、テクニック以外の差その2。
お前はタイイチで俺のイカサマを見抜けない。
ソリッドビジョンが出現すると、0.2秒ビジョンに注意が行くクセが有るだろ?
……俺が〔サイクロン〕打った時、俺への警戒が散漫に為ったぞ。」
寝耳に水だった。
刃咲は常に警戒をしていたというのに。
「今のはイカサマの自白、と取って良いのか?」
「バカ言うなよ、ただ俺はお前の注意が甘かったのを指摘しただけだ。
ちなみに俺が忠告した時、ちょっと驚いただろ? 注意が揺らいだぞ。
……“幸運”にも、さっきの〔天使の施し〕で2枚の〔カオス・グリード〕を引いてた。
2枚とも発動し、4枚ドローする。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>カオス・グリード</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のカードが4枚以上ゲームから除外されており、自分の墓地にカードが存在しない場合に発動する事ができる。<BR>自分のデッキからカードを2枚ドローする。 </Td></Table>)
クロック:手札7
当然、偶然を装っての手札補充であるが、イカサマの証拠を押さえられなければ弱者の言い訳にすぎない。
「……何が起きても目は逸らさねーからな。」
「そりゃ頼もしいな。
〔異次元の生還者〕を召喚し、〔ドラゴンフライ〕へ攻撃だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>異次元の生還者</Td><Td>闇属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードがゲームから除外された場合、<BR>このカードはエンドフェイズ時にフィールド上に特殊召喚される。 </Td></Table>)
〔異次元の生還者〕(攻撃力1800)VS(1700)〔ドラゴンフライ〕→異次元の生還者、破壊、ゲームから除外。刃咲LP8000→LP7900
戦闘で破壊されたが、〔ドラゴンフライ〕の効果は〔マクロコスモス〕によって封じられる。
逆に、クロックが出した〔異次元の生還者〕は、〔マクロコスモス〕によって破壊してもエンドフェイズに復活する不死身のモンスターに変質している。
「……ッ!」
「あぁー、今は眼を逸らさなかったな、無駄な足掻きだが悪くない。
俺はカードを1枚セットしてターン終了だ。(手札5・伏せ1・発動中1)」
刃咲はクロックを凝視したまま、カードをドローし……そこで凍りついた。
「あぁー…どうした、手札も見ずにプレイする気か?」
今のドローカードを見るためには、当然そちらに目を向けることになる。
片目でもクロックから離せば、クロックは手札を入れ替えるだろう。
――刃咲には迫力が足りないのだ、目を離している間にクロックに手札入れ替えを躊躇させるほどの気迫が。
「ちぃ……。」
延々とドローカードを見ずにデュエルすることは不可能。
かといって目を離すこともできず、刃咲はクロックから目を離さずに記憶だけで手札からカードをプレイする。
「〔カゲロウの一生〕を発動し、手札の〔アルティメット・インセクト LV5〕を特殊召喚するぜ!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>カゲロウの一生</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">手札の昆虫族モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。<BR>この効果で特殊召喚されたモンスターが相手に与える戦闘ダメージは0になり、特殊召喚されたモンスターは発動ターンのエンドフェイズに手札に戻る。(オリカ) </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>アルティメット・インセクト LV5</Td><Td>風属性</Td><Td>昆虫族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK2300</Td><Td>DEF900</Td></Tr><Td ColSpan="6">「アルティメット・インセクト LV3」の効果で特殊召喚されたこのカードがフィールド上に存在する限り、全ての相手モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。<BR>自分のターンのスタンバイフェイズ時、表側表示のこのカードを墓地に送る事で「アルティメット・インセクトLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。<BR>(召喚・特殊召喚・リバースしたターンを除く)</Td></Table>)
アルティメット・インセクト LV5:攻撃力2300・守備力900→攻撃力2600・守備力1200
「あぁー、ミスったな蕎祐。
俺の〔異次元の生還者〕は〔マクロコスモス〕が有る限り殺されても復活する。
〔カゲロウ〕の効果で戦闘ダメージも発生しない……〔アルティメット・インセクト〕は犬死だ。」
「俺がそんなミスをするわけねーだろうが! 〔アルティメット・インセクト〕ッ! 究極害病砲LV5!」
剣状の足を折り重ねてエネルギーを蓄積し、数秒間の間を空けてから開放すべく足を広げ初め……。
「広げるな! まだ溜めろ〔インセクト〕ッ!」
例えるなら下痢腹抱えてやっとのこと探し当てたトイレに既に人が入っていたような体性で固まるインセクト。
「溜めろよ、まだだぞ、待て、お預け、ストップ、タンマ、ダルマさんが転んだ、お前はやれば出来る子だぞ!」
「あぁー……溜めても数値的には変わらないんだから撃ってやれよ。
…それにこれだけデカイやつなら音も大きくなっちまうし、ご近所の迷惑を考えろ。」
「耳塞げよクロック! 究極害病砲LV5オーヴァーパワー……発射ッ!」
&html(<font color="#ff0000">ぎぃいいいいぃいいぃぃしゃああああああっっっっ!</font>)
〔アルティメット・インセクト LV5〕(攻撃力2600)VS(攻撃力1800)〔異次元の生還者〕→異次元の生還者、破壊、ゲームから除外。
毒素の紫色に輝く軌道の延長線に立っていた〔生還者〕は跡形もなく消し去ったが、当然ターン終了時に復活する。
だが、毒されたのは〔生還者〕だけではない。
溜め込んだ衝撃波のエネルギーは、デュエルディスクが再現できるギリギリの音量だった。
「あぁー……鼓膜破れるかと思った……耳がキンキンする。」
「え? 何? なんて言った? 聞こえねえぞ。」
耳を塞いだとは言っても、至近距離で聞いたせいで耳が動いていない。
そんな騒音の中、ご近所さんに聞こえていないわけが無い。
「うるさいぞ! 何時だと思ってるんだ!…オオ、デュエル中か! なら仕方ねぇか!」
「ちょっとォ! うちの子が起きちゃったじゃな……あ、デュエル中なの?」
「おぎゃぁああああ! おぎゃああ!……でぅえる…でぅえる…。」
「クロックさん起きたんですか、よかったですね……って、ずるいよ刃咲くん! 内緒でデュエルするなんて!」
「今のは刃咲の究極虫の効果音よね? 対戦相手は誰?……クロック?」
壱華や福助も含む苦情目的やらなにやらで集まってきたギャラリーの面々だ。
「あぁー、ごめんなさい、すいません、本当にごめんなさい、朝から騒いでごめんなさい。」
耳復活まで5分ほど。
それまでに考え、クロックはやっと刃咲が何がしたかったのかを見切った。
「あぁー、なるほどな。
俺の手札入れ替え封じに……あれだけの騒音を意外と性根がセコくできるな、おまえ。」
「さぁて、ダメ大人よ。
俺だけじゃなく、これからも集まってくるデュエルバカ全員の目を誤魔化して…イカサマが出来るか?
この村は、ほとんど全員がデュエリストだからな、目を離さないぜ?」
「おぉー、あの兄ちゃんイカサマ使いだってよ!」
「よし、あたしが見極めてあげるわ!」
今もなお増加する苦情を言いに来て、そのままギャラリーへと転じる村民。
全員がイカサマを見る為に眼を光らせた時、刃咲はやっとドローしたカードが確認できる。
「ナイスドローだったな、俺。
このターンのドローフェイズで引いたのは、魔法カード〔レベルアップ!〕
このカードを使って〔LV7〕に昇華し、ターンエンド。(手札1・伏せ1)」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>レベルアップ!</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。<BR>そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>アルティメット・インセクト LV7</Td><Td>風属性</Td><Td>昆虫族</Td><Td>レベル7</Td><Td>ATK2600</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">「アルティメット・インセクト LV5」の効果で特殊召喚した場合、<BR>このカードが自分フィールド上に存在する限り、全ての相手モンスターの攻撃力・守備力は700ポイントダウンする。 </Td></Table>)
「あぁー……こりゃ、俺も本気を出さなきゃならねぇかな…?」
「さっきからずっと本気だろ? 負け惜しみ言うなよ、ダメ大人。
……こっからが本当の勝負だってのは、同意するけどな。」
デュエルディスク越しに見てい正念党幹部や村民たちに見守られ、双方に牙を向け合う。
――最初は友のためのデュエルだったが、今はお互いのプライドを掛けたデュエル……いつも通りのマジデュエルだ。
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