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「くそっ...なんだってんだよ」

薄暗い教会の中、一人の少年―――泉新一が狼狽えていた。
建物入り乱れるコンクリートジャングルで目を覚ました彼は、ひとまず身を隠すために近くの廃教会に避難したものの、やはりこの理不尽な催しには混乱する他なかった。

「なんなんだよ、あの王土ってやつ!村野に田村玲子で連れてくるなんてよ!」
『落ち着けシンイチ』
「これが落ち着いていられるか!」

教会にいるのは泉新一一人である。
しかし、彼の言葉に返事をする声は確かにある。なぜか。それは

『いいから落ち着け。きみが冷静さを失えば、私の身も危ないんだぞ』
「...悪い」

文字通り、彼の右手が喋っているからだ。
泉新一。
彼の右腕は寄生生物に食われ、「ミギー」と名付けた寄生生物が住んでいる。
ミギーと新一は、文字通り共生しているのだ。

『状況を整理しよう。まず、我々はあの【5体のパラサイト】から戦いながら逃げていたところ、気が付けばあの部屋に連れてこられていた』
「あ、ああ。俺も、そこまでは覚えている」
『そして、タネはわからないが身体が動かなくなり、この殺し合いに放り込まれていた』
「わけわからないよな...」

殊更に溜め息をつく新一。
当然だ。
寄生生物との戦いだけでも混乱続きであったのに、極めつけにそれ以上のイレギュラーに巻き込まれてしまったのだから。

『わかることはまだあるぞ』
「なに?」
『あの5体の寄生生物もここにきているということだ』
「はあああぁぁぁぁ!?」
『当然だろう。私たちと戦っている最中だったんだぞ?奴が連れてこられていないと考える方が難しい』
「で、でも名簿には...って、俺たちはあいつの名前は知らなかったか」
『たぶん、きみの名前の近くにあるこの後藤という奴だろう。五頭―――後藤と言ったところか。この名簿はおそらく知り合い同士で固められているからな』
「ああもう、なんでこうも次から次へと」

思わず新一は頭を抱えてしまう。
村野里美。殺し合い。『怪物』。都城王土。田村玲子。後藤。
悩みの種が多すぎる。
おそらく、これからの人生でもここまで不幸な目に遭うことはもうないだろう。


『...それで、どうする』
「どうするって...」
『殺し合いに乗るか、乗らないかだよ』
「うっ...」

新一は思わず戸惑いの表情を浮かべる。
普段ならば、絶対に乗らないと言い張ることが出来るだろう。
だが、この殺し合いには村野里美が巻き込まれており、且つ『途中離脱』が出来るという点が僅かな躊躇いを生んでしまう。
が、しかし。

「...乗らないよ。やっぱり、他の人を殺すわけにはいかない」
『そうか』

泉新一という人間は、根本的には優しい人間である。
寄生生物が混ざったことにより合理的な思考ができるようにはなったが、それでも、追い詰められても他者を盾にする戦法は終始使うことはなかった。
故に、この場でも―――他者の命を奪い生き延びるのは、やはり躊躇われた。

『ならば、まずは脱出の協力者を探すべきだろう』
「協力者か...あの王土に掴みかかってたヒトキチって奴はどうかな?」
『あの少年か。そうだな、主催の王土という男と知り合いらしいのも気になる。当面は彼と村野里美との合流でいいな?』
「りょーかい」

とりあえずの方針を定めた彼らは、ひとまずは廃教会を後にしようと腰をあげる。

『しかし、私たちの首輪ランクとやらが【超人】なのは厄介だな』
「なんで...って、そうか。後藤と田村が怪物だとして、あいつらを倒して首輪を手に入れても、あと2点足りないのか」
『そうだ。それに、【人間】からしてみれば私たちの首輪は2点分。私たちの首輪のランクを知られれば、寝首をかかれる可能性は高いだろう』

もしも、自分の首輪の価値を知られ、周囲の人間が敵となったとしたら。
パラサイトですら抗う事の出来ない現代銃火器を向けられたら。
今まで味方だと思っていた人間に、獲物だという目を向けられたら。
その想像が、新一の心臓の動悸を活発にさせる。

(で、でも...大丈夫、だよな)

そうだ。俺は人間じゃないとしても、ただの超人だ。そんな俺よりも、殺して得する怪物は一杯いる。
狙うべき怪物は後藤達の方だ。
けど...
もし、あいつらと出会った奴らがいたとして、そいつが俺を見た時。
右腕があいつらのように変化する俺を見た時。
そいつは、俺を人間として見てくれるだろうか。
いくら人間、首輪のことを【超人】だと訴えても―――怪物としてしかみなされないのではないだろうか。
そんな一抹の不安を抱きつつ、新一は廃教会の扉を開けた。


―――パシュッ

そんな渇いた音と共に、新一の左肩に灼熱が奔る。

「―――!?」

激痛に戸惑い動きを止める。


「な、なんだ!?」
「動くなよ、ガキ」

物陰から、銃を構えた黒コート・黒い帽子の全身黒ずくめの長身の男が姿を現す。

「お前に聞きたいことがある。その眉間に風穴を空けられたくなければ、素直に答えるんだな」

ギロリ、と新一を見下すような視線に、思わず背筋に怖気が奔る。

(なんだ、コイツの凍りつくような眼は...平気で何人も殺してきたような眼だ)

この男は寄生生物ではない。ミギーがなんの反応もしなかったことからそれは確かだ。
だが、ただの人間がここまで冷たい眼になれるのか?
この男にとって、他人などただの虫けら同然なのか?

「十秒くれてやる。それまでに、お前の仲間の名前と特徴を全て吐け」
「な、仲間って...」

―――パシュッ

再び渇いた音が鳴り、新一の頬にかすり傷をつける。

「とぼけるな。女がいるんだろう?それもよほどご執心な...」
「なっ!?」
「十...九...」

なんでそれを、と問いただす前に、黒ずくめの男はカウントダウンを始める。

(こいつはなんで村野のことを聞き出そうと...いや、その答えはわかっている)

新一から彼女のことを聞き出す理由。その解は考えるまでもない。
あの男は村野里美を殺すつもりだ。
だが、話さなければ新一は殺される。
新一が生き残るためには村野のことを白状するしかないのか―――


(いや、選択肢はまだある)

新一が生き残るための道。
それは、この場であの黒ずくめの男を倒すことだ。

(パラサイトに比べれば、あんな奴大したことはない...!)

カウントダウンは既に半分を切っている。
距離はさほど遠くない。
弾丸が放たれた後に詰めるには問題はない。
最大の難関は、この暗闇の中、如何にして弾丸を避けるかだ。

「二...一...ゼロ。時間切れだ」

男は、笑みを浮かべつつ徐々に引き金に力を込めていく。

「どんな教会にも神は宿ってるもんだ。その廃れた教会にはお似合いの朱色の柘榴を捧げてやろうじゃねえか...なぁ、小僧」
「わけのわからねえこと言いやがって。お前なんかに殺られてたまるか」
「減らず口だけは立派なガキだ」

新一は、男の引き金を凝視する。
まだだ。先に動けば、確実に弾丸を受けてしまう。
限界まで堪えろ。
弾丸が発射されるその時まで―――

「ぐっ!」

突如、黒ずくめの男が苦悶の声を漏らす。
男はたまらず引き金を引き弾丸を放つが、狙いがそれ新一の足元に被弾する。

『いまだ、シンイチ!』

驚き思考が止まりかけていた新一だが、ミギーの喝に我を取り戻し、黒ずくめの男へのもとへと走る。
黒ずくめの男は発砲するが、しかし新一はそれを跳躍で回避。
次の弾丸が発射されるその前に新一のとび蹴りが男の腹部に叩きこまれる。

新一の身体能力は常人のそれを遙かに上回る。
そんな彼のとび蹴りを受ければ、たまったものではない。
男の身体はサッカーボールのように吹き飛ばされる。

「チッ」

状況の不利を悟ったのか、男は舌打ちをしつつ建物へと身を隠す。

「あのヤロ...!」
『退け、新一。奴は拳銃を持っている。この複雑な建物構造では奴が有利だ』

咄嗟に男を追おうとした新一だったが、ミギーの指示通り、この入り組んだコンクリートジャングルから逃れるため走りだす。

「ミギー、さっきあいつになにかやったのか?」
『隠し持っていたアイスピックを投げつけてやっただけだ。奴はなぜかお前の頭にばかり集中していたからな』
「頭...?なんだってそんなところを」
『さっき、柘榴がどうとか言っていただろう。おそらくあれは、きみの脳髄の比喩だったんじゃないか?』
「そういうことね...」

なぜあの場面でそんな比喩を持ち出したのか。気にはなるがひとまず置いておく。

今は、この痛む左肩に耐えながらあの男から離れるだけだ。



【F-3/一日目/深夜】


【泉新一@寄生獣】
[状態]:左肩にダメージ(中)、右頬にかすり傷
[首輪ランク]:超人
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、アイスピック@5本セット(4/5)、不明支給品0~2
基本方針:
0:とりあえずこの建物群から抜け出す。
1:村野里美を探し出す。
2:協力者の確保(人吉善吉が有力候補)
3:田村玲子と後藤、黒ずくめの男には要警戒。

※参戦時期は、後藤と初遭遇からです。


廃教会の中。
目覚めた際に盗聴器代わりに置いておいた『探偵バッジ』という小道具を回収し、左肩に刺さった鋭利なモノを引き抜き、彼―――ジンは一息をつく。

(あのガキの右腕...妙だ)

ジンがミギーへの対処が遅れたのは、決して油断などではない。
ジンは、新一が妙な素振りを見せれば即座に撃つ心構えでいた。
だが、全く身動きを取らなかった新一に反し、あの右腕は、まるで意思を持つかのように素早く動きアイスピックを投げたのだ。

(なにかを投げる時は、必ず腰や身体を使わなければ投げられねえ。だが、あの右腕は違う。振りかぶることなく、腕力だけで俺の肩にコイツを刺しやがった)

ロクに振りかぶらず、こんな粗末なものを人体に突き刺せる。
そんな腕力、人間に有り得るのだろうか―――否。おそらく、そんなことはあの赤井秀一ですら不可能だ。

(ということは、だ。あのガキはまず人間じゃねえ―――いや、あの右手になにか仕込んでいやがったのか...なんにせよ、だ)

新一の身体能力や右腕を見て人間だと判断する者はそういないだろう。
そのため、ジンは新一を【怪物】もしくは【超人】であると判断。
彼を殺せば、ジンの脱出への行程は楽になるだろう。

(それに...こいつはやりかけの仕事でもある)

探偵バッジから拾えた情報は、お世辞にも鮮明とは言い難く、ひどく断片的な物だった。
聞こえてきた『青年の声』と『女性らしき声』、そして『シンイチ』という名だ。
青年の声は、先程まで対峙していた彼のもので間違いないが、『女性らしき声』の持ち主は終ぞその姿は見当たらなかった。
この非常時に腹話術などやっていたわけでもあるまいに。おそらく、彼もなにか通信機器を持っていたのだろう。

それに、『シンイチ』という名も気になった。

(たしか、ウォッカの奴が慌ててやがったな。ナントカ新一という、俺がバラしたはずのガキがどうとか...)

殺した相手の名前などイチイチ覚えてはいられない。
死んだ人間などただの肉塊であり、覚えているだけ脳のメモリの無駄遣いだからだ。

(あのガキが俺が殺したはずの『新一』なら、あの試作品を飲んでも生きてたのは納得できる)

最早、ウォッカの言った『新一』の顔も覚えていないが、なるほど。あれほどの怪物染みた男なら、例え猛毒を飲まされても生き残れる可能性はある。

(なんにせよ...奴をこのまま野放しにするわけにはいかねえなぁ)

このまま直接追って殺すか、それとも装備を充実させてから確実に殺しにかかるか。
なんにせよ、ジンはあの青年を殺すつもりでいる。
そして―――彼がそれを達成すれば、『新一』のことなど綺麗さっぱり忘れてしまうだろう。


【F-3/一日目/廃教会/深夜】

【ジン@名探偵コナン】
[状態]:左肩にダメージ、腹部にダメージ
[首輪ランク]:人間
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、探偵バッジセット@名探偵コナン、45口径@現実 不明支給品0~1 アイスピック×1@現実
[思考・行動]
基本方針: 首輪を集めて脱出する
0:あのガキ(新一)を追うか、先にもっといい装備を集めてからにするか。



※参戦時期は満月の夜の二元ミステリーでウォッカから工藤新一の名を聞いたところからです。
※泉新一を工藤新一と勘違いしています。
※廃教会内での新一とミギーの盗聴をしましたが、電波が悪くほとんど聞けていません。また、盗聴したミギーの声を他の参加者と勘違いしています。

GAME START 泉新一
GAME START ジン

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最終更新:2016年07月17日 12:05