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パパスは立ち尽くしていた。

一体何が起きたと言うのだ。自分は誘拐されたヘンリー王子を助けるべく古代の遺跡に向かったはずだ。
そうだ!思い出したぞ!
敵の足止めを行いながら、先にヘンリー王子をお連れして脱出した息子と合流しようとしたのだ。
しかし出口で現れた一連の事件の元凶・ゲマによって息子達は人質にされていた。
そして攻撃するにも手が出せず、ゲマが呼び出したジャミとゴンズの攻撃を受け続けて……。

パパスの記憶はそこを境に途切れていた。
瀕死の傷を負わされてゲマに誘拐された自分は彼の手下『ミヤコノジョウオウド』が主催する殺し合いに巻き込まれしまった。
きっとこの首輪もその時に着けられたのだろう。

許さんぞゲマ。汚らしいヤツめ。
パパスは当然、ゲームに乗るつもりなど無かった。
ミヤコノジョウ諸共ゲマを倒して生還する。ヘンリー王子、どうか無事で居て下さい。
そして息子よ、お前だけは生きていてくれ。


◆


パパスは驚愕した。

ミヤコノジョウがパパスに流した革袋。現代で言うデイパック。
その中に入っていた羊皮紙に書かれていたのは息子の名前だった。

『リュカ』

まさか息子までもがこんなトチ狂った催しに巻き込まれているとは。
だが探す手間は省けた。すぐにでも合流しよう。

『ビアンカ』

ダンカン夫妻の養子。リュカの幼馴染み。
一体ゲマは何を考えているんだ?彼女には一切の罪が無い。完全なる第三者。巻き込まれる道理は無い。

『スライムナイト』

マーサから聞いた事のある名だ。一応は彼も合流候補に加えておこう。

『ジャミ』

コイツに至っては何故巻き込まれているんだ?
ゲマの怒りを買ってしまったのだろうか。だがヤツは倒さねばならぬ。それに上手く利用してやれば脱出の糸口を掴めそうだ。

その他の名は見覚えの無いモノばかり。
読める名前もあれば読めない名前もあった。
おそらく彼らもゲマによって集められた罪無き人々だろう。

パパスは革袋の中にあったクレイモアを掴む。
自身の剣と形状自体は然程変わらない。何ら訓練せずとも使いこなせる。
何度も試してみたが習得呪文『ベホイミ』が使えない。おそらくは首輪が何らかの妨害をしているんだろう。
首輪を外そうと何度もクレイモアを突き立てるが決して外れる事は無く、決まっていつも『警告。微弱な衝撃を感知しました』という耳障りな女の無機質な声が響くだけだった。

回復魔法が宛にならん以上は無闇に消耗は出来ない。戦うべき場は戦い、逃げべき場は逃げる。
その見極めが何よりも重要だ。それを違えれば待っているのは死。
リュカに真実を。母が生きているかもしれないという事実を伝えるまでは死んでも死にきれん。

パパスは急く急くと夜道を歩み行く。


◆

アレクサンド・アンデルセンは状況を整理していた。

男はヴァチカンが誇る最強の対化物戦のプロフェッショナル集団『バチカン法王庁特務局第13課』──通称〝イスカリオテ〟のリーダー格だった。トップクラスの実力を持つアンデルセン。
その武功からか、畏敬の念を込めて人は彼を『首斬判事』や『天使の塵(エンジェル・ダスト)』。挙句の果てには『再生者(リジェネーター)』と呼んだ。

しかし自分は死んだ。あの吸血鬼を殺せる唯一のチャンス。ヤツが零号を解放しているその隙を突いて急襲したアンデルセン。
だがヤツ──『アーカード』を前にして立ちはだかる無双の軍勢・ワラキア公国軍を前にアンデルセンは苦戦を強いられた。
多勢に無勢。単身で乗り込んだアンデルセンに続いたイスカリオテの救援によって数の差を縮めた狂信者は一気にアーカードの元に接近。
彼との壮絶な一騎討ちを繰り広げた。

しかし相手は怪物だ。最先端の生物工学と回復法術の恩恵を受けていたとしてもアンデルセンは人間の域を出ない。
だからこそ彼は《禁断の果実》に手を付けた。
〝エレナの聖釘〟──ヴァチカンが保有する稀少な聖遺物の1つにしてアンデルセンの切り札。
男はそれを心臓に突き刺す事で人間を超越し、晴れて化物としてアーカードと同じ土台に立った。

死闘。圧倒的な死闘。
アーカードを討ち取ったのはアンデルセン。だがヤツは死ぬどころか吹っ切れやがった。
長きに渡る刹那の死闘は、アンデルセンの心臓を抉られるという拍子抜けした結末で幕を下ろした。

だがどうだい。アンデルセンは生きていた。
都城王土と名乗る男から長々と説明を受け、殺し合いを強いられていた。
アンデルセンに支給された固有の品は運が良い事に自身の武器。祝福儀礼の成された銃剣(バヨネット)10本だった。

これらの事実からアンデルセンは考える。
自分が生き返らせたもうたその意味を。

その果てに狂信者は1つの結論を見出した。


◆


パパスが丸眼鏡の男──アレクサンド・アンデルセンと出会ったのは数分後の事だった。

それに奇抜な服装をしている。彼もまたゲマの手に掛かった被害者なのだろうか。

「汝は何者なるや?」

「パパスだ。そういうお前さんの名前は?」

「アンデルセン。アレクサンド・アンデルセンだ」

ファーストコンタクト。意外と淡白な自己紹介。
見るからに屈強な肉体。彼は良い戦力になる。
ならば直球勝負だ。いつだって押しが肝心。

「お前さんもゲマに誘拐されたのか?」

「一体何の話をしている?」

「まぁいい。今必要なのは人手。
アンデルセン、一緒に主催者達を倒して脱出しないか?」

会話を交わす度に徐々に湧き出す疑念。
この男からは何も感じられない。虚無。広がるのは膨大な虚無だ。ミヤコノジョウオウドからも全く同じオーラが感じられた。
アンデルセンに気付かれないように、いつでもクレイモアも手に取れるようセッティングするパパス。
そんな彼に目もくれず、アンデルセンは続けた。

「パパスよ。キサマは〝神〟を信じるか?」

突拍子も無い質問。パパスは困惑する。

「私は信じる。〝神〟は必ず存在している。
我は神罰の代行者。神に仕える為の力である」

「……何が言いたい」

「私は確かに死んだ。一度は道を違えたが、無限に連なる生命の循環に導かれた。
だが生きている。私は神に罰せられたのだ。
全く皮肉な話だ。しかし私は贖罪を済まさねばならぬ」

パパスにはアンデルセンが言っている事が理解出来なかった。
だが彼の言葉で生まれる1つの疑問。自分はジャミとゴンズの攻撃で死んだんじゃないかという疑念。
アンデルセンも自分は死んだと語った。
つまりパパス自身も死んでここに導かれた可能性がある。然すればここは地獄なのだろうか。
となればリュカは。まさか息子も殺されて……。

「贖罪とは何だ?」

パパスは問うた。

「こういう事、だよ」

アンデルセンは応えた。
空中に吹き飛ぶパパスの右腕。それは一秒にも満たぬ即斬劇だった。


◆

アンデルセンは気付く。

生きる意味。それは〝償い〟だ。
ヒトとしての生命の理を逸脱してミディアンにまで零落した自分への贖罪。
都城王土は神の使徒なのだ。神は彼を通じて愚かな自分にチャンスを与えてくれた。

「我は神の代理人。神罰の地上代行者。我が使命は、我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること」

交差する銃剣。その刀身は月夜に照らされギラギラと輝いていた。

「ううう……。
アンデルセン!謀ったな!」

腕を抑えながらクレイモアを手にするパパス。
やはりベホイミは使えない。逃げるにも逃げられない。こうなったら、なんとかここを乗り切るしか。
アンデルセンは自分を殺すつもりだ。
パパスは不馴れな左手でクレイモアを構え、アンデルセンの攻撃に備えた。

「AMEN(エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ)!」

先に動くは狂信者アレクサンド・アンデルセン。
神罰の代行者は神の意に反して反旗を翻すつもりでいる愚か者を引き裂いた。

「────ッ!」

それを受けるは歴戦の勇者パパス。
たとえ片腕を失おうが彼の強さは揺るがない。
握り締められたクレイモアはアンデルセンの身体を貫いた。


◆


「ぬわーーっっ!!」

勝負は一瞬だった。アンデルセンの銃剣はパパスの頭部を四つに分割させていた。後に残るは残響と言う名の悲鳴。
だが勝者であるアンデルセンもタダでは済まされない。パパスのクレイモアは男の右腕を貫通していた。ヤツは相当の手練だったらしい。
もし男が片腕を失う事が無かったなら自分でも負けていたかもしれない。

異変。アンデルセンは三度気付く。
傷が再生しない。まるで再生者としての能力を失ってしまったかのように。
これもまた自分に課せられた贖罪なのだ。アンデルセンは容易に割り切った。

だが険悪な表情。右腕が思い通りに動かない。
また振り出しなのか。片腕が使えぬまま私はあの吸血鬼に挑まなければならないのですか。
勝算が低くともアンデルセンは動くしかなかった。

クレイモアを抜き取り、首から下だけとなった肉塊に剣を捧げるアンデルセン。それが彼なりの敬意だった。
手早に首輪を回収したアンデルセンは足を進める。

目の前に広がるは闇。希望と絶望が渦巻く贖罪への道。
後戻り出来ぬ禁忌の道をアレクサンド・アンデルセンは行くのだった。


【D-4/一日目/深夜】

【アレクサンド・アンデルセン@HELLSING】
[状態]:冷静、右腕に裂傷(ダメージ:大)
[首輪ランク]:超人
[装備]:銃剣(祝福儀礼済み)×10@HELLSING
[道具]:基本支給品一式×2、パパスの首輪
基本方針:神の意(主催者の思惑)に反する参加者達を抹殺する。
0:神に仕える者として出来るだけ多くの参加者を殺害する。
1:アーカードに警戒。インテグラとセラスは警戒するに及ばない。
2:確保した首輪を利用して参加者を誘き出す。

※参戦時期は死亡後。
※生と死を司る主催者(都城王土)が神であると認識し、このバトルロワイアルを神々の遊戯だと判断しました(同時に心の何処かで主催者に対する嫌悪感を感じている)。
※ゲームに賛同しない参加者が存在する事を知りました。
※再生者としての能力は完全に失われています。
※パパスの一撃で右腕が使い物にならなくなりました。

GAME START パパス GAME OVER
GAME START アレクサンド・アンデルセン

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最終更新:2016年08月06日 00:10