慟哭

「どうして…どうして君がっ」
血塗れの俺を見てやっと理解したのか、奴が叫んだ。
回りには奴の仲間の死体が転がっている。
「…それが、俺の任務だからだ」
俺は奴を正面から見据えた。
こんな小さなレジスタンス組織に何ができるというのか。
国お抱えの暗殺者が紛れ込んでも気付かないような間抜けな組織に、何が。
「お前を殺して、任務完了だ」
深い海の色をした瞳が。悲しみと憎悪を湛えて、俺を見詰め返してきた。
「…君の事、大好きだったよ」
奴が口を開くのと同時に、右腕が一瞬ブレて。

血を流して地面に倒れたのは俺のほうだった。
…虫も殺せない奴だと思ってたんだが、とんだ検討違いだ。
頬に熱い雫がポタポタと落ちてくる。
バカ、自分でやったくせに泣いてんじゃねぇよ。

奴が叫んでいる名前が、俺ではなく俺が殺した誰かの名前だったのが

ひどく残念だった。


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最終更新:2012年02月09日 17:49