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夢の迷い道で - (2012/11/21 (水) 19:32:34) の1つ前との変更点

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*138話 夢の迷い道で 気付いた時、自分は一人、歩いていた。 辺りは真っ暗だ。見渡す限り一面の闇。 数m先――――いや、数cm先すらも。 自分の足元すらも完全な暗闇に包まれていて、見えない。 一筋の光さえ差さない、完全なる闇だ。それでも不思議と、自分の身体だけは見えていた。何故だろうか。頭の隅でそんな事を思う。 だが自分は、視界の利かない事など気にも止めずに、一歩ずつ、一歩ずつ、ただ前に向かって歩き続けていた。 ここは、何処なのだろう。 自分は何処に向かっているのだろう。 分からない。何も覚えていない。分かるのは、今の自分は不安を抱いているという事だけだ。 それが何に対する不安なのかまでは分からないのだが、胸中には漠然とした不安が、ただ広がっていた。 「誰もいないね」 何処か場違いな疑問を口にする。 それに答えてくれる存在など、ここには居ないのに――――。 「ギャフ」 「ギャフフーン」 いや、違う。 居る。 そうだ。自分の背中には親友達がいつも憑いてくれているのだ。 時にはやかましく、時には邪魔に思う事もあるが、大切な、本当に大切な、親友達。 どうしてそれを失念していたのか。そして――――彼等の存在を思い出した時、どうして胸中の不安が色濃くなるのだろうか。 「みんな何処に行っちゃったのかなあ。せっかく良い物作ったのに」 ゴールドから細工で作ったネックレスのチェーンが、手の中でチャリ、と音を奏でた。 ネックレスは四つ。そうだ。自分はネックレスを作ったのだった。 何の為にだったか。誰の為にだったか。それは、思い出せない。しかし、確かに誰かに渡す為に、それを作ったのだ。 「まさか僕だけ置いてけぼりにされたなんて事……ないよね?」 「フギャ!」 「ギャフギャフ!」 「待ってよ、置いてかれたのは僕のせいだって言うの!? 僕だって好きで作ってたんじゃないんだよ!」 好きで作ってたんじゃない――――そうだっただろうか。 そんな筈は無い。自分はそれを楽しんで作っていた筈だ。 彼女が喜んでくれる。そう思って作っていた筈だ。彼女の為に、自分はネックレスを作っていた。――――彼女とは、誰だったか。 「ギャーフ」 「な、何? ……そっちに行くの?」 背中の親友達が小さく吠え、自分の身体を引っ張り始めた。 その方向に――暗くて自分にはどの方向なのかも分からないが――みんなが居るのだろうか。 そのまま彼等に引き摺られるように歩いていると、やがて、暗闇の中に一人の少女の姿が浮かび上がってきた。 「プリシス!」 彼女だ。思わず顔がみっともなく綻んだ。 彼女を見るだけで、自分は嬉しくなれる。どんなに辛い事でも、我慢が出来る。どんな事でも、やれる。 だが、彼女は、悲しげな表情を浮かべていた。 まっすぐと自分を見つめて、悲痛さで頬を濡らしていた。 どうしてだろう。自分は彼女のそんな顔は見たくないのに。彼女には、いつでも笑っていてほしいのに。 彼女には、何よりも笑顔が一番似合うのだから。 「……どうして泣いてるの?」 彼女は、答えない。 自分のせいだろうか。自分が何かをしてしまったから、彼女は悲しんでいるのだろうか。 「そ、そうだ。これあげるよ! 僕が作ったんだ。君の為に作ったんだよ!」 そう言って、ネックレスを彼女に差し出した。 そうだ。彼女はネックレスを欲しがっていた筈だ。 これを見れば、きっと喜んでくれる。また笑顔を見せてくれる筈だ。 期待を込めて、自分はネックレスを差し出した。 だが、彼女は受け取らない。ただまっすぐと自分を見つめているだけだ。 「ど、どうしたの? ほら、君が欲しがってたネックレス――――」 ふと、前に出した手の中に視線が落ちる。 手の中のネックレスは、いつの間にか重い指輪――いや、サイズからすれば、それは首輪か――に変わっていた。 「あ、あれ? おかしいな……?」 こんな無骨な首輪、彼女が喜んでくれるわけがない。 センスで言えば、金髪で赤いバンダナの親友の服装と同レベルかそれ以下だ。 これではない。自分が彼女にあげたかった物は、こんな物ではないのだ。 「違うんだよ、これは――――」 自分が顔を上げた時、彼女の姿は遠ざかって行くところだった。 小さな身体をこちらに向けながら。泣き顔をこちらに見せつけながら。彼女は遠ざかり、暗闇に溶け込んでいく。 その暗闇の中に、仲間達の姿が朧気に見えた。 十人の仲間達。共に死闘を切り抜けてきた、背中の親友達と同じくらい大切な友達だ。 彼女の姿が仲間達の側に到達すると、そのまま皆の姿が消えて行く。 不快な感覚だった。これでもう皆には二度と逢えなくなるような、そんな予感がした。 嫌だ。皆は友達だ。もう逢えないなんて嫌だ。最後に見る彼女の顔があんな泣き顔なんて、絶対に嫌だ。 「ま、待ってよ! 僕も行くよ! 置いてかないでよ!」 自分は叫んだ。置いていかれないように、走り出した。 だが、どうしても追いつけない。皆の姿は、自分の想いに反して、すぐに消えて見えなくなった。 「待ってってば! プリシス! クロード! レナ! セリーヌさん!」 その呼び声に反応する者は、誰もいない。 必死で足を動かすが、そこには何もない。 どうして。 どうして皆、自分を置いて行ってしまったのか。――――こんな首輪を持っていたせいなのだろうか。 「……ねえ、何で皆消えちゃったのかな?」 背中の親友に問いかける。 返事は、来ない。 再び“予感”があった。とても嫌な“予感”が。 「……ギョロ? ウルルン?」 振り向けば、親友達の姿が見えなかった。 何処を見ても。背中をまさぐってみても。親友達の姿は無い。 「ギョロ!? ウルルン!?」 当たり前のように背中に居た筈の二人がいない。 二人もまた、皆のように消えてしまった。 「待ってよ……待ってよ……! みんな、僕を一人にしないでよ!」 胸を駆る焦燥が涙を誘った。 暗闇の中で、自分はただ一人、叫んでいた。 仲間を。親友達を求めて。一人ぼっちで叫んでいた――――。 「――――っ!」 気が付いた時、アシュトンは一人、生い茂る草の中に横たわっていた。 何か、嫌な夢を見ていた気がする。悲しくて、辛い夢だ。 いや、そんな事よりも――――身体を起こし、辺りを窺い見る。 見覚えが無い場所だった。ここは、何処なのだろうか。 思い返そうとして――――夢現の頭に最初に浮かぶのは、背中の親友達の事。 ハッとして背中を見るが、やはりギョロもウルルンもいない。 そう、二人は殺されたのだ。徐々にはっきりとしてきた頭で、アシュトンはその記憶を掘り返す。二人を殺した憎悪の対象の顔を、鮮明に思い浮かべる。 「行かなくちゃ……あいつらを、殺さなくちゃ……!」 覚醒した頭で、一つ一つ記憶を呼び起こしていく。 ギョロとウルルンの仇を撃つ。 そしてプリシスの為に、首輪を集める。 やる事は、これまでと何ら変わらない。 しかし、自分はどうして倒れていたのだろうか。 最後の記憶は、確か、アルベルという男と戦っていて――――。 「相打ちに……なった……?」 斬られた事を思い出し、傷口に手を当てる。その傷口は、殆ど塞がっていた。 誰かが助けてくれたのだ。クロードだろうか――――首を巡らすが、辺りには誰もいない。 代わりに目に止まったのは一つのデイパック。そして一組の双剣だった。 「これは……?」 【???/???】 【アシュトン・アンカース】[MP残量:???%(最大130%)] [状態:ギョロ、ウルルン消滅。全身の怪我はほぼ回復。激しい怒り、焦り(睡眠により減少したかは不明)。疲労・中] [装備:ルナタブレット@SO2、マジックミスト@SO3] [道具:ジーネの爪@スターオーシャンBS、その他不明] [行動方針:プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる] [思考1:現在位置を把握する] [思考2:クロードには自分がマーダーだとは絶対に知られたくない] [思考3:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ] [思考4:プリシスのためになると思う事を最優先で行う] [思考5:ボーマンを利用して首輪を集める] [思考6:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい] ※アシュトンの現在位置はF-02~F-04の範囲内とします。  具体的な位置と、目覚めた時間帯は後続の方に一任します。 【ジーネの爪@スターオーシャン・ブルースフィア】 アシュトン専用の双剣。 基本攻撃力は0だが、パラメータ上の攻撃力はゲーム内のアシュトンのステータスに影響する。 装備すると、攻撃力=STR値の2分の1、命中力=DEX値の4分の1、魔力=INT値の2分の1の値がそれぞれ加算される。 ☆   ★   ☆   ★   ☆   ★ 「――――あそこだ」 探知機の反応は、未だにマリア達が殆ど移動していない事をルシオに示してくれていた。 数十m先の民家で、4つの光点が固まっている。ブレアはやはり捕らえられているらしい。 ブレアは、創造主の世界の人間。参加者全員の情報を把握している女だ。 彼女がまだ生かされているという事は、自分と洵の名前と能力は漏れている。その覚悟と想定はしておかなくてはならない。 様々な意味で、勝利の鍵を握るのはやはり存在を知られていないクロードという事になるが――――そのクロードは、先程から鎮痛そうな表情を浮かべたままだ。 「……アシュトンの事が気になるのか?」 「うん……道からは大分外れたところに寝かせてるんだから、誰にも見つからないとは思うんだけどね。……念の為に道具も置いてきたんだし」 それでも、絶対安全という保証はない。 寝込みを襲われれば、いくら道具があろうとも無意味だ。 その可能性も考慮して、出来ればルシオはそれらの道具も持ってきたかったのだが、流石にその意見を押し通すだけの理屈は見つからなかった。 ため息を吐きたい衝動を堪え、ルシオはクロードの顔から目を逸らした。 「気絶してる人間を連れて来るわけにはいかない。心配なのは分かるけど、他に方法は無いんだ。しょうがないさ。ブレアを助けるんだろう?」 「……そうだね。まずはブレアさんの救出を第一に考えないと」 「相手はロキも殺した奴らだ。今はこっちに集中してくれ」 「ああ。大丈夫さ、任せてくれ!」 本当に、頼むぞ。期待してるんだからな。 そう、ルシオは内心で、作戦の肝である“駒”に皮肉混じりの激励をかけ、探知機に目を戻した。 さて――――ここからどう攻めるか。 【F-01/朝】 【ルシオ】[MP残量:20%] [状態:全身の怪我はほぼ回復。衣服が所々焼け焦げている。精神的疲労・中] [装備:アービトレイター@RS] [道具:首輪探知機@BR、コミュニケーター@SO3、その他不明] [行動方針:レナスを……蘇らせる] [思考1:マリア達を殺す] [思考2:洵と協力し、殺し合いを有利に進める] [思考3:ブレアから情報を得る] [思考4:ゲームボーイを探す] [備考1:デイパックの中にはピンボケ写真か、サイキックガン:エネルギー残量〔10〕[100/100]が入っています] 【クロード・C・ケニー】[MP残量:65%] [状態:全身に軽い痛み。怪我はほぼ回復。] [装備:エターナルスフィア、スターガード@SO2、エネミー・サーチ@VP] [道具:不明] [行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す] [思考1:ルシオと共に平瀬村でマーダーを倒し、ブレアを救出する] [思考2:そのあとで北上し、ブレアに誤解を解いてもらう] [思考3:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する] [思考4:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい] [備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません] [備考2:チェスターの事は『ゲームには乗ってないけど危険な人物』として認識しています] ※状態表に書かれている以外のもので、クロード達の持っていた道具がどの様に整理、分配されているのかは後続の方に一任します。  以下整理、分配されている可能性のある道具  ・ルシオの荷物=マジカルカメラ(マジカルフィルム×?)@SO2、10フォル@SOシリーズ、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、グーングニル3@TOP、拡声器、スタンガン、ボーリング玉@現実世界、首輪、荷物一式×4  ・クロードの荷物=セイクリッドティア@SO2、昂魔の鏡@VP、荷物一式×2(水残り僅か)、アヴクール@RS(刀身に亀裂)、アシュトン、アルベル、レオンのデイパック  ・アシュトンの荷物=無稼働銃、物質透化ユニット@SO3、首輪×4、荷物一式×2  ・アルベルの荷物=木材×2、咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP、ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界、????(3)、????(5)、鉄パイプ@SO3、荷物一式×7(一つのバックに纏めてます)  ・レオンの荷物=どーじん、小型ドライバーセット、ボールペン、裏に考察の書かれた地図、????(2)、荷物一式 ※????(1)(レナの支給品の1つ)はジーネの爪@スターオーシャン・ブルースフィアでした。 【現在位置:F-1中島家付近の民家が見える範囲】 【残り16人+α】 ---- [[第137話>Misfortunes never come single]]← [[戻る>本編SS目次]] →第139話 |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第133話>ギャンブルはいつもハデのちぐう畜]]|アシュトン|―| |[[第133話>ギャンブルはいつもハデのちぐう畜]]|クロード|―| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|ルシオ|―| ----
*138話 夢の迷い道で 気付いた時、自分は一人、歩いていた。 辺りは真っ暗だ。見渡す限り一面の闇。 数m先――――いや、数cm先すらも。 自分の足元すらも完全な暗闇に包まれていて、見えない。 一筋の光さえ差さない、完全なる闇だ。それでも不思議と、自分の身体だけは見えていた。何故だろうか。頭の隅でそんな事を思う。 だが自分は、視界の利かない事など気にも止めずに、一歩ずつ、一歩ずつ、ただ前に向かって歩き続けていた。 ここは、何処なのだろう。 自分は何処に向かっているのだろう。 分からない。何も覚えていない。分かるのは、今の自分は不安を抱いているという事だけだ。 それが何に対する不安なのかまでは分からないのだが、胸中には漠然とした不安が、ただ広がっていた。 「誰もいないね」 何処か場違いな疑問を口にする。 それに答えてくれる存在など、ここには居ないのに――――。 「ギャフ」 「ギャフフーン」 いや、違う。 居る。 そうだ。自分の背中には親友達がいつも憑いてくれているのだ。 時にはやかましく、時には邪魔に思う事もあるが、大切な、本当に大切な、親友達。 どうしてそれを失念していたのか。そして――――彼等の存在を思い出した時、どうして胸中の不安が色濃くなるのだろうか。 「みんな何処に行っちゃったのかなあ。せっかく良い物作ったのに」 ゴールドから細工で作ったネックレスのチェーンが、手の中でチャリ、と音を奏でた。 ネックレスは四つ。そうだ。自分はネックレスを作ったのだった。 何の為にだったか。誰の為にだったか。それは、思い出せない。しかし、確かに誰かに渡す為に、それを作ったのだ。 「まさか僕だけ置いてけぼりにされたなんて事……ないよね?」 「フギャ!」 「ギャフギャフ!」 「待ってよ、置いてかれたのは僕のせいだって言うの!? 僕だって好きで作ってたんじゃないんだよ!」 好きで作ってたんじゃない――――そうだっただろうか。 そんな筈は無い。自分はそれを楽しんで作っていた筈だ。 彼女が喜んでくれる。そう思って作っていた筈だ。彼女の為に、自分はネックレスを作っていた。――――彼女とは、誰だったか。 「ギャーフ」 「な、何? ……そっちに行くの?」 背中の親友達が小さく吠え、自分の身体を引っ張り始めた。 その方向に――暗くて自分にはどの方向なのかも分からないが――みんなが居るのだろうか。 そのまま彼等に引き摺られるように歩いていると、やがて、暗闇の中に一人の少女の姿が浮かび上がってきた。 「プリシス!」 彼女だ。思わず顔がみっともなく綻んだ。 彼女を見るだけで、自分は嬉しくなれる。どんなに辛い事でも、我慢が出来る。どんな事でも、やれる。 だが、彼女は、悲しげな表情を浮かべていた。 まっすぐと自分を見つめて、悲痛さで頬を濡らしていた。 どうしてだろう。自分は彼女のそんな顔は見たくないのに。彼女には、いつでも笑っていてほしいのに。 彼女には、何よりも笑顔が一番似合うのだから。 「……どうして泣いてるの?」 彼女は、答えない。 自分のせいだろうか。自分が何かをしてしまったから、彼女は悲しんでいるのだろうか。 「そ、そうだ。これあげるよ! 僕が作ったんだ。君の為に作ったんだよ!」 そう言って、ネックレスを彼女に差し出した。 そうだ。彼女はネックレスを欲しがっていた筈だ。 これを見れば、きっと喜んでくれる。また笑顔を見せてくれる筈だ。 期待を込めて、自分はネックレスを差し出した。 だが、彼女は受け取らない。ただまっすぐと自分を見つめているだけだ。 「ど、どうしたの? ほら、君が欲しがってたネックレス――――」 ふと、前に出した手の中に視線が落ちる。 手の中のネックレスは、いつの間にか重い指輪――いや、サイズからすれば、それは首輪か――に変わっていた。 「あ、あれ? おかしいな……?」 こんな無骨な首輪、彼女が喜んでくれるわけがない。 センスで言えば、金髪で赤いバンダナの親友の服装と同レベルかそれ以下だ。 これではない。自分が彼女にあげたかった物は、こんな物ではないのだ。 「違うんだよ、これは――――」 自分が顔を上げた時、彼女の姿は遠ざかって行くところだった。 小さな身体をこちらに向けながら。泣き顔をこちらに見せつけながら。彼女は遠ざかり、暗闇に溶け込んでいく。 その暗闇の中に、仲間達の姿が朧気に見えた。 十人の仲間達。共に死闘を切り抜けてきた、背中の親友達と同じくらい大切な友達だ。 彼女の姿が仲間達の側に到達すると、そのまま皆の姿が消えて行く。 不快な感覚だった。これでもう皆には二度と逢えなくなるような、そんな予感がした。 嫌だ。皆は友達だ。もう逢えないなんて嫌だ。最後に見る彼女の顔があんな泣き顔なんて、絶対に嫌だ。 「ま、待ってよ! 僕も行くよ! 置いてかないでよ!」 自分は叫んだ。置いていかれないように、走り出した。 だが、どうしても追いつけない。皆の姿は、自分の想いに反して、すぐに消えて見えなくなった。 「待ってってば! プリシス! クロード! レナ! セリーヌさん!」 その呼び声に反応する者は、誰もいない。 必死で足を動かすが、そこには何もない。 どうして。 どうして皆、自分を置いて行ってしまったのか。――――こんな首輪を持っていたせいなのだろうか。 「……ねえ、何で皆消えちゃったのかな?」 背中の親友に問いかける。 返事は、来ない。 再び“予感”があった。とても嫌な“予感”が。 「……ギョロ? ウルルン?」 振り向けば、親友達の姿が見えなかった。 何処を見ても。背中をまさぐってみても。親友達の姿は無い。 「ギョロ!? ウルルン!?」 当たり前のように背中に居た筈の二人がいない。 二人もまた、皆のように消えてしまった。 「待ってよ……待ってよ……! みんな、僕を一人にしないでよ!」 胸を駆る焦燥が涙を誘った。 暗闇の中で、自分はただ一人、叫んでいた。 仲間を。親友達を求めて。一人ぼっちで叫んでいた――――。 「――――っ!」 気が付いた時、アシュトンは一人、生い茂る草の中に横たわっていた。 何か、嫌な夢を見ていた気がする。悲しくて、辛い夢だ。 いや、そんな事よりも――――身体を起こし、辺りを窺い見る。 見覚えが無い場所だった。ここは、何処なのだろうか。 思い返そうとして――――夢現の頭に最初に浮かぶのは、背中の親友達の事。 ハッとして背中を見るが、やはりギョロもウルルンもいない。 そう、二人は殺されたのだ。徐々にはっきりとしてきた頭で、アシュトンはその記憶を掘り返す。二人を殺した憎悪の対象の顔を、鮮明に思い浮かべる。 「行かなくちゃ……あいつらを、殺さなくちゃ……!」 覚醒した頭で、一つ一つ記憶を呼び起こしていく。 ギョロとウルルンの仇を撃つ。 そしてプリシスの為に、首輪を集める。 やる事は、これまでと何ら変わらない。 しかし、自分はどうして倒れていたのだろうか。 最後の記憶は、確か、アルベルという男と戦っていて――――。 「相打ちに……なった……?」 斬られた事を思い出し、傷口に手を当てる。その傷口は、殆ど塞がっていた。 誰かが助けてくれたのだ。クロードだろうか――――首を巡らすが、辺りには誰もいない。 代わりに目に止まったのは一つのデイパック。そして一組の双剣だった。 「これは……?」 【???/???】 【アシュトン・アンカース】[MP残量:???%(最大130%)] [状態:ギョロ、ウルルン消滅。全身の怪我はほぼ回復。激しい怒り、焦り(睡眠により減少したかは不明)。疲労・中] [装備:ルナタブレット@SO2、マジックミスト@SO3] [道具:ジーネの爪@スターオーシャンBS、その他不明] [行動方針:プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる] [思考1:現在位置を把握する] [思考2:クロードには自分がマーダーだとは絶対に知られたくない] [思考3:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ] [思考4:プリシスのためになると思う事を最優先で行う] [思考5:ボーマンを利用して首輪を集める] [思考6:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい] ※アシュトンの現在位置はF-02~F-04の範囲内とします。  具体的な位置と、目覚めた時間帯は後続の方に一任します。 【ジーネの爪@スターオーシャン・ブルースフィア】 アシュトン専用の双剣。 基本攻撃力は0だが、パラメータ上の攻撃力はゲーム内のアシュトンのステータスに影響する。 装備すると、攻撃力=STR値の2分の1、命中力=DEX値の4分の1、魔力=INT値の2分の1の値がそれぞれ加算される。 ☆   ★   ☆   ★   ☆   ★ 「――――あそこだ」 探知機の反応は、未だにマリア達が殆ど移動していない事をルシオに示してくれていた。 数十m先の民家で、4つの光点が固まっている。ブレアはやはり捕らえられているらしい。 ブレアは、創造主の世界の人間。参加者全員の情報を把握している女だ。 彼女がまだ生かされているという事は、自分と洵の名前と能力は漏れている。その覚悟と想定はしておかなくてはならない。 様々な意味で、勝利の鍵を握るのはやはり存在を知られていないクロードという事になるが――――そのクロードは、先程から鎮痛そうな表情を浮かべたままだ。 「……アシュトンの事が気になるのか?」 「うん……道からは大分外れたところに寝かせてるんだから、誰にも見つからないとは思うんだけどね。……念の為に道具も置いてきたんだし」 それでも、絶対安全という保証はない。 寝込みを襲われれば、いくら道具があろうとも無意味だ。 その可能性も考慮して、出来ればルシオはそれらの道具も持ってきたかったのだが、流石にその意見を押し通すだけの理屈は見つからなかった。 ため息を吐きたい衝動を堪え、ルシオはクロードの顔から目を逸らした。 「気絶してる人間を連れて来るわけにはいかない。心配なのは分かるけど、他に方法は無いんだ。しょうがないさ。ブレアを助けるんだろう?」 「……そうだね。まずはブレアさんの救出を第一に考えないと」 「相手はロキも殺した奴らだ。今はこっちに集中してくれ」 「ああ。大丈夫さ、任せてくれ!」 本当に、頼むぞ。期待してるんだからな。 そう、ルシオは内心で、作戦の肝である“駒”に皮肉混じりの激励をかけ、探知機に目を戻した。 さて――――ここからどう攻めるか。 【F-01/朝】 【ルシオ】[MP残量:20%] [状態:全身の怪我はほぼ回復。衣服が所々焼け焦げている。精神的疲労・中] [装備:アービトレイター@RS] [道具:首輪探知機@BR、コミュニケーター@SO3、その他不明] [行動方針:レナスを……蘇らせる] [思考1:マリア達を殺す] [思考2:洵と協力し、殺し合いを有利に進める] [思考3:ブレアから情報を得る] [思考4:ゲームボーイを探す] [備考1:デイパックの中にはピンボケ写真か、サイキックガン:エネルギー残量〔10〕[100/100]が入っています] 【クロード・C・ケニー】[MP残量:65%] [状態:全身に軽い痛み。怪我はほぼ回復。] [装備:エターナルスフィア、スターガード@SO2、エネミー・サーチ@VP] [道具:不明] [行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す] [思考1:ルシオと共に平瀬村でマーダーを倒し、ブレアを救出する] [思考2:そのあとで北上し、ブレアに誤解を解いてもらう] [思考3:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する] [思考4:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい] [備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません] [備考2:チェスターの事は『ゲームには乗ってないけど危険な人物』として認識しています] ※状態表に書かれている以外のもので、クロード達の持っていた道具がどの様に整理、分配されているのかは後続の方に一任します。  以下整理、分配されている可能性のある道具  ・ルシオの荷物=マジカルカメラ(マジカルフィルム×?)@SO2、10フォル@SOシリーズ、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、グーングニル3@TOP、拡声器、スタンガン、ボーリング玉@現実世界、首輪、荷物一式×4  ・クロードの荷物=セイクリッドティア@SO2、昂魔の鏡@VP、荷物一式×2(水残り僅か)、アヴクール@RS(刀身に亀裂)、アシュトン、アルベル、レオンのデイパック  ・アシュトンの荷物=無稼働銃、物質透化ユニット@SO3、首輪×4、荷物一式×2  ・アルベルの荷物=木材×2、咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP、ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界、????(3)、????(5)、鉄パイプ@SO3、荷物一式×7(一つのバックに纏めてます)  ・レオンの荷物=どーじん、小型ドライバーセット、ボールペン、裏に考察の書かれた地図、????(2)、荷物一式 ※????(1)(レナの支給品の1つ)はジーネの爪@スターオーシャン・ブルースフィアでした。 【現在位置:F-1中島家付近の民家が見える範囲】 【残り16人+α】 ---- [[第137話>Misfortunes never come single]]← [[戻る>本編SS目次]] →第139話 |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第133話>ギャンブルはいつもハデのちぐう畜]]|アシュトン|―| |[[第133話>ギャンブルはいつもハデのちぐう畜]]|クロード|[[第139話>平瀬村大乱戦 第ニ幕くらい ~なんという冷静で的確な判断力なんだ!!~]]| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|ルシオ|[[第139話>平瀬村大乱戦 第ニ幕くらい ~なんという冷静で的確な判断力なんだ!!~]]| ----

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