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続・止まらない受難 - (2007/07/07 (土) 14:16:15) の最新版との変更点

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**第40話 続・止まらない受難 「さあ、どういう事か説明してもらおうか!」 ネルはアルベルに銃口を向け強い口調で問いただした。 別に自分がどう思われようが気にしない性格だったが 殺してもいないのに殺人の容疑をかけられていい気分はしなかった。 「おい!そこのガキ。 俺はあのまま死体を放置しとくのも哀れだったんで弔ってやろうとしただけだ。」 夢留を睨み付けながら喋った。 「ほう、あんたがそんなことをするようなやつだったとは思ってもみなかったよ。 私の知っているあんたはこの状況を幸いとして人殺しを楽しむタイプの人間のはずだよ。」 尚も銃を向けつつアルベルを睨み付ける。 「俺を見くびるなよ糞虫が!俺は無抵抗な人間を殺したり弱いものイジメをするような趣味は無いんだよ!それに。」 そう言うと左手の義手でドアを思いっきり引っ掻いて見せた。だがドアには傷一つついていない。 「見た目は愛用の義手だが鉤爪部分はナマクラもいいとこ、こんなんじゃあ人を殺したくても殺せねぇよ。」 そう言ったところでアルベルは自分の無実を証明する名案を閃いた。 「おい!そこのガキ。てめえは俺が女を殺したのを見たって言っていやがったな。 その時の死体は見たか?見てたならわかると思うがあんなに血塗れにするには相当切れる獲物が無いと無理だ。 見てのとおり今の俺はそんな獲物を持ち合わせていない。」 「確かに、あの女の人一目で死んでいるとわかるぐらい血だらけだったけど…。 あなた武器を隠し持っているんじゃないの?」 「何なら荷物の中身でも見てみるか?ろくなもんが出てこねえけどな。」 そう言うと担いでいたバックを腕に抱えた。 「わかった。荷物をそこに置いて向こうの壁まで下がりな。妙な真似したら撃ち抜くからね! 悪いけどあんたはこっちで荷物の確認をしてくれるかい?」 夢留は頷き、アルベルも渋々ネルの言われたとおり荷物を置いて下がった。 「こっちのバックには特に目立ったものは無いみたい。」 そういうと2つ目のバックを探り始めた。 「うわぁ、なにこれ?メイド服?」 夢留はバックからメイド服を広げながら取り出した。 「あんたがメイドさん好きだったとはね。しかもこれスフレのじゃないか。 ロリコンの気まであるのかい?弱い者イジメの趣味は無いかわりにいい趣味してるじゃないか。」 先程とはうってかわって軽蔑の眼差しをアルベルに向けた。 「なっ。ちっちげーよ阿呆が!それはそこのガキが俺に向かって投げつけてきた荷物に入ってたんだよ!」 「え~。私こんなの知らないしぃ。」 夢留は珍しそうにメイド服を眺めながら言った。 「そっそんなことより武器は出てきたのかよ?」 二人は夢留の方を見たが彼女は首を横に振った。 「どうやらあんたは白みたいだね。」 そう言うとネルは銃を下ろした。 オペラは終止三人のやり取りを見ていた。 あの場に乱入して三人殺すことも考えたが 男と赤毛の女の身のこなしは見ただけで只者ではないとわかるものだったのでその案は実行しなかった。 どうやらこのままバラけることもなさそうだし次のチャンスを伺うことにしよう。 そう思い出口に身を翻したその時。 「そこのあんた!私が気づいていないなんて思っているのかい?両手を挙げてゆっくりこっちに来な!」 部屋の中から女の怒鳴り声が聞こえてきた。 (気づかれた?どうする?姿を見られてはいなそうだけど…。いや、ここはうまく近づくチャンスだわ。) すばやく考えをまとめオペラは言われた通り両手を挙げながら部屋に入った。 「あんた、あんなところで何をしてたのさ?」 ネルはオペラに問いただす。オペラの側からは窓からの光で表情まではうかがい知れなかった。 「この建物を通りかかったときに声が聞こえたから気になって様子を伺ってたのよ。」 「じゃあ、何でコソコソと隠れていたのさ? どこから見てたか知らないけど私たちはゲームに乗ったりしてる様子はしてなかったはずだよ。」 「突然出てってもあなたたちを驚かすことになりそうだったからよ。」 そういうとオペラは前髪をかきあげ額にある第3の目を見せた。 「こんな容姿をしているから特に疑われやすいのよ。」 「そうだったのかい。すまなかったね、いきなり脅かすような真似をしてさ。 こんなことになってるんだ警戒するに越したことないからね。」 そう言うと銃口を下げオペラの方に歩み寄った。 オペラとネルの距離が2メートルぐらいになったその時、しばらく黙っていたアルベルが口を開いた。 「待て。その女が危険人物かどうかわかってねぇだろうが。」 アルベルはネルを制止するとオペラにたずねた。 「お前はこの殺し合いをどう思ってる?」 「やってられるわけないじゃない。突然分けわかんないところに連れてこられて最後の一人まで殺しあえ?冗談じゃないわ!」 ここに来てからの彼女の行動は今の発言とは正反対だったが本心だった。 何も好き好んでミントを殺したわけではない。ただ愛する人の為そうするしかなかったのだ。 アルベルは尚も探るように問いかける。 「ほう、じゃあまだ人を殺したりしてねえよな?」 「とっ当然じゃない。襲われたりしないかぎり好き好んで殺したりなんかしないわ。」 真実を言えば自分の立場が危うくなると思いとっさに嘘をついた。 「嘘をつくんじゃねえよ糞虫が!だったら何でてめえの荷物から血の臭いがしやがるんだ!?」 確かにミントを切り捨てた剣はバックの中にあるが、そんな臭いを嗅ぎ分けれるわけがない。 「そっそんなの言い掛かりだわ!」 「いいや、数多の戦場で人を、モンスターを切り捨ててきた俺の鼻がこの臭いを嗅ぎ違えるわけがねえ!その荷物の中身見せてもらうぜ!」 そういうと左手を伸ばしてオペラの荷物を掴もうとした。 オペラは後ろに飛びのきつつ、荷物から一振りの剣を取り出しアルベルの義手の手首から先を切り落とした。 「やっぱり嘘をついていやがったのか、このまま俺たちと同行し隙を見て皆殺しにするつもりだったんだろ? 大方あの道で死んでた女を殺ったのもてめえの仕業だな。そんな太刀筋じゃあ不意打ちじゃなきゃ殺れねえもんな?」 アルベルは切られた左手を眺めたあと構えながら挑発した。 「アルベルよしな!その剣とてつもない魔力を持ってるよ。 3対1だけどまともにやりあえばこっちもただじゃ済まない。一旦退くよ。」 「はっ!この臆病者が!こんな糞虫潰すのなんざ素手で十分だ。 この糞虫に身の程ってやつを教えてやる!やる気がないならさっさとそのガキ連れて逃げな!」 「アルベルあんたねえ。」 臆病者という言葉にカチンと来たネルは言い返そうとした。 「もしかしてあの人私たちを逃がすための時間を稼ぐつもりかも。」 夢留はつぶやいた。 「なっ、ちっちげーよ!阿呆が!!お前らのためなんかじゃねえ! 足手まといがいても邪魔なだけなんだよ!いいからさっさと逃げろよ!」 思わぬ一言を耳にして少し動揺したように声を上ずらせて返した。 (今度はツンデレかい?忙しいやつだね。) ネルは少し呆れたがこの少女を危険にさらすわけにもいかないのでアルベルの言葉に従うことにした。 「わかった。好きにしな。けど、あんたみたいな奴でもルシファーを倒す大事な戦力なんだ。 こんな所で野垂れ死ぬんじゃないよ。」 そう言い残すと夢留と共に窓から外に飛び出した。 オペラは逃げる二人には目もくれずアルベルをじっと睨み付け剣を青眼に構えた。 対するアルベルは左手足を前に出し半身になりその右手には闘気が練りこまれている。 (今の俺が出せる技で一番破壊力があるのはこれだ。乱発はできねえ、一撃で決めてやる。) アルベルは一足飛びで仕掛けれる間合いにするべく半歩踏み込んだがオペラも半歩下がった。 (太刀捌きは微妙だったが今の間合いの取り方といい、相手の動きを点で捉える目の動きといいこの女相当修羅場をくぐって来てやがる。) そう思うと少し楽しくなりニヤリと口元を歪めた。 ルシファーを倒して以来アーリグリフ国内に彼に敵う者もいなくシーハーツとの戦争も終結し闘争に飢えていた。 しばらくお互い相手の間合いのギリギリのところで様子を伺っていた。 アルベルは相手の剣を受ける術を持たないので隙を探していた。 対するオペラは剣術のイロハも知らない素人、下手な小細工はできるはずも無い。 ただ手製のランチャーを振り回していたスイングスピードには自信があった。 相手が仕掛けてきた一瞬の隙に一太刀浴びせるつもりだ。 (この緊張感は心地良いがいい加減飽きたな。仕方ねえ仕掛けるか。) 両足に力を込め一気に間合いをつめオペラの剣がギリギリ届かない位置に着地した。 オペラはその着地の隙を逃さず一歩踏み込みつつ剣を振り上げ一気に振り下ろした。 その剣閃はアルベルの脳天をしっかりと捕らえていた。 「チィ。」だがアルベルもその動きを見切り体を右にそらした。 予想以上に剣速が早く左肩から先は切られてしまったが懐に入ることができた 右手に渾身の力を込めオペラの左わき腹に拳を叩き込み同時に練り上げていた闘気を解き放った。 「吼竜破!」アルベルが叫ぶと放たれた闘気は竜の形を成しオペラに襲い掛かった。 「かはっ」オペラはそのまま反対側の壁に叩きつけられくぐもった声を上げた。 オペラは剣を杖代わりにして立ち上がろうとしたが、掌打を叩き込まれた左わき腹に激痛が走りそれはかなわなかった。 アルベルは確かな手応えを感じオペラに歩み寄る。 「その様子じゃあもう戦えないだろ、抵抗できない奴に止めを刺すのは主義に反するがてめえみたいな危険人物を生かしておくわけにもいかねぇ。 せめて一思いに殺してやる。」 そう言うと再度右手に闘気を込めだした。 オペラは立てひざを突いたまま左手でジャケットのポケットを探った。 不審な動きをしたオペラを見て「動くんじゃねえ!」と叫びとどめの一撃をいれるべく飛び掛ったが遅かった。 オペラは一枚の札を取り出すとそれを掲げた。 オペラの体はまばゆい光に包まれその光がおさまる頃には姿は消えていた。 オペラは気がつくと氷川村すぐ近くの道端にいた。 彼女の窮地を救ったアイテム神速の護符はその手から消えている。 オペラの荷物に入っていた支給品のひとつだった。 (いざという時に使うつもりだったけどこんなにも早い段階で使うことになるなんて。 とにかく傷の手当をしないと、このままじゃあまともにやりあっても返り討ちが関の山だわ。) フラリと立ち上がるとまたもやわき腹に激痛が走り意識が飛びかけた。 剣を地面に突き刺し自身を支え呼吸を整えた。 「まだよ、まだ死ねないの。エルのためにももっと、もっと殺さないと…。」 うわごとの様に呟くと沖木島診療所の方へ歩き始めた。 【I-07北部/昼】 【オペラ・べクトラ】[MP残量:100%] [状態:右肋骨骨折:右わき腹打撲] [装備:咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP] [道具:???←本人確認済 +荷物一式*2] [行動方針:参加者を殺し、エルネストを生き残らせる] [思考1:怪我の治療をすべく診療所へ行く] [思考2:誰かと遭遇しても不意打ちが確実に決まる状況で無いならスルー] 「ふう。」 何とかオペラを退けたアルベルは一息ついた。 のどが渇いたので水を取り出そうとしたが、辺りには荷物が1セットしかなかった。 (あのガキちゃっかり自分の荷物持って行きやがって。) 床に転がっている義手が目に入った。 拾い上げ接続しようとしたがものの見事に切断されていて出来なかった。 (まぁ、投げつけりゃ隙を作れるかもしれない、修理できる奴がいるかも知れねぇし持って行くか) バックのところまで歩み寄り拾った義手を入れようとしたときバックが妙に膨らんでいるのに気づいた。 少しいやな予感がしたので中身を確認するとそこには 〔こういうの好きなら私いらないからあげるね☆〕と書かれたメモとともにメイド服が出てきた。 「だからこんなもん好きじゃねぇー!!」 メモとメイド服を切り裂こうとしたが、生憎片方しか腕が無くそれはかなわなかった。 メモを丸めて捨てると仕方がないので、かさばらない様にメイド服を綺麗にたたんでバックにいれた。 服をたたんでいる時ふと(俺なにやってんだろorz)と悲しくなった。 【I-07/昼】 【アルベル・ノックス】[MP残量:70%] [状態:左腕(義手部分)切断] [装備:なし] [道具:メイド服(スフレ4Pver)+切断された義手(腕部+手首)+荷物一式] [行動方針:ルシファーを倒す、基本的に単独行動するつもり] [思考1:武器の調達] [思考2:左腕の代用品の調達または修理] [思考3:しばらく氷川村での散策を続ける。] 「ここまで来れば大丈夫そうだね。」 ネルはそういうと足を止めた。かなりの距離を走ったがほとんど息を切らせてなかった。 「はぁ、はぁ、ちょっ、ちょっと速すぎですよ~。」 方や夢留はネルに追いついていくのがやっとだった。 立ち止まったネルにようやく追いつくと、膝に手をつき肩で息をした。 普段は訓練された者達と走ることがほとんどなので、夢留が一般人ということをネルはうっかり忘れていた。 「大丈夫かい?あそこの木陰で少し休憩しようか。」 二人は木陰に座わり互いの自己紹介を交わした後夢留はたずねた。 「ネルさんはこれからどうするつもりですか?」 「そうだね、私の知り合いにこいつをどうにか出来そうな奴がいるから探すつもりさ。」 ネルは首につけられた爆弾を指しながら言った。 「じゃあ、私もついて行っていいですか?私の知り合いも何人かこの島に来てるみたいなんですけど宛てもないし…。」 「私はかまわないけど、多分最後にはこの会の主催者との戦いになる。そうなれば最悪の場合返り討ちにあうかもしれないよ。」 「大丈夫ですよ。私こう見えても魔法が使えますから。きっと役に立って見せますよ。」 「そうかい。じゃあ改めてよろしく頼むよ夢留。」 「はい!」 そういうと二人はかたく握手を交わした。 【H-06/昼】 【ネル・ゼルファー】[MP残量:100%] [状態:正常] [装備:セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔100/100〕@SO2] [道具:????・????←本人確認済 +荷物一式] [行動方針:仲間を探す(フェイトら文明人、ブレアを優先)] [思考1:氷川村は危険かもしれないので平瀬村にて仲間の捜索] 【H-06/昼】 【夢留】[MP残量:100%] [状態:疲労] [装備:なし] [道具:荷物一式] [行動方針:ネルについていく] [思考1:ネルについていく] [思考2:アルベルって人大丈夫かな?] 【残り55人】 ---- [[第39話>ホテルの跡の眠り姫、王子はきっとやってくる]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第41話>静かな湖畔の森の陰から]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第20話>止まらない受難]]|オペラ|[[第54話>白き煙の果てに]]| |[[第20話>止まらない受難]]|アルベル|[[第66話>LIVE A LIVE]]| |[[第20話>止まらない受難]]|ネル|[[第71話>絶望の笛(前編)]]| |[[第20話>止まらない受難]]|夢瑠|[[第71話>絶望の笛(前編)]]|
**第40話 続・止まらない受難 「さあ、どういう事か説明してもらおうか!」 ネルはアルベルに銃口を向け強い口調で問いただした。 アルベル自信は別に自分がどう思われようが気にしない性格だったが、殺してもいないのに殺人の容疑をかけられていい気分などしない。 「おい!そこのガキ! 俺はあのまま死体を放置しとくのも哀れだったんで弔ってやろうとしただけだ」 夢留を睨み付け言い放った。 「ほう、あんたがそんなことをするようなやつだったとは思ってもみなかったよ。 私の知っているあんたはこの状況を幸いとして人殺しを楽しむタイプの人間のはずだよ」 尚も銃を向けつつアルベルを睨み付けているネルが割り込んできた。 「俺を見くびるなよ糞虫が!俺は無抵抗な人間を殺したり、弱いものイジメをするような趣味は無いんだよ!それに」 そう言うと左手のガントレットの鉤爪でドアを思いっきり引っ掻いて見せた。 だが、そのドアには傷一つつく事はなかった。 「見た目は愛用の手甲だが鉤爪部分はナマクラもいいとこ、こんなんじゃあ人を殺したくても殺せねぇよ」 そう言ったところでアルベルは自分の無実を証明する名案を閃いた。 「おい!そこのガキ。てめえは俺が女を殺したのを見たって言っていやがったな。 その時の死体は見たか?見てたならわかると思うがあんなに血塗れにするには相当斬れる獲物が無いと無理だ。見てのとおり今の俺はそんな獲物を持ち合わせていない」 「確かに、あの女の人一目で死んでいるとわかるぐらい血だらけだったけど…。あなた武器を隠し持っているんじゃないの?」 「何なら荷物の中身でも見てみるか?ろくなもんが出てこねえけどな」 そう言うと担いでいたバックを腕に抱えた。 「わかった。荷物をそこに置いて向こうの壁まで下がりな。妙な真似したら撃ち抜くからね!悪いけどあんたはこっちで荷物の確認をしてくれるかい?」 夢留は頷き、アルベルも渋々ネルの言われたとおり荷物を置いて壁まで下がった。 「こっちのバックには特に目立ったものは無いみたい」 そういうと2つ目のバックを探り始めた。 「うわぁ、なにこれ?メイド服?」 夢留はバックからメイド服を広げながら取り出した。 「あんたがメイド好きだったとはね。しかもこれスフレのじゃないか。ロリコンの気まであるのかい?弱い者イジメの趣味は無いかわりにいい趣味してるじゃないか」 先程とはうってかわって軽蔑の眼差しをアルベルに向けた。 「なっ、ちっちげーよ阿呆が!それはそこのガキが俺に向かって投げつけてきた荷物に入ってたんだよ!」 「え~。私こんなの知らないしぃ~」 夢留は珍しそうにメイド服を眺めながら言った。 「そっそんなことより武器は出てきたのかよ?」 二人は夢留の方を見たが彼女は首を横に振った。 「どうやらあんたは白みたいだね。」 そう言うとネルは銃を下ろした。 オペラは終止三人のやり取りを見ていた。 あの場に乱入して三人殺すことも考えたが、男と赤毛の女の身のこなしは見ただけで只者ではないとわかるものだったのでその案は実行しなかった。 どうやらこのままバラけることもなさそうだし次のチャンスを伺うことにしよう。 そう思い出口に身を翻したその時。 「そこのあんた!私が気づいていないなんて思っているのかい?両手を挙げてゆっくりこっちに来な!」 部屋の中から女の怒鳴り声が聞こえてきた。 (気づかれた?どうする?姿を見られてはいなそうだけど…。いや、ここはうまく近づくチャンスだわ。) すばやく考えをまとめオペラは言われた通り両手を挙げながら部屋に入った。 「あんた、あんなところで何をしてたのさ?」 ネルはオペラに問いただす。 オペラの側からは窓からの光で表情まではうかがい知れなかった。 「この建物を通りかかったときに声が聞こえたから気になって様子を伺ってたのよ」 「じゃあ、何でコソコソと隠れていたのさ?どこから見てたか知らないけど私たちはゲームに乗ったりしてる様子はしてなかったはずだよ」 「突然出てってもあなたたちを驚かすことになりそうだったからよ」 そういうとオペラは前髪をかきあげ額にある第3の目を見せた。 「こんな容姿をしているから特に疑われやすいのよ」 ネルは彼女の言い分に納得すると表情を和らげた。 「そうだったのかい。すまなかったね、いきなり脅かすような真似をしてさ。 こんなことになってるんだ警戒するに越したことないからね」 そう言うと銃口を下げオペラの方に歩み寄った。 オペラとネルの距離が2メートルぐらいになったその時、しばらく黙っていたアルベルが口を開いた。 「待て。その女が危険人物かどうかわかってねぇだろうが」 アルベルはネルを制止するとオペラにたずねた。 「お前はこの殺し合いをどう思ってる?」 「やってられるわけないじゃない。突然分けわかんないところに連れてこられて最後の一人まで殺しあえ?冗談じゃないわ!」 ここに来てからの彼女の行動は今の発言とは正反対だったが本心だった。 何も好き好んでミントを殺したわけではない。ただ愛する人の為そうするしかなかったのだ。 アルベルは尚も探るように問いかける。 「ほう、じゃあまだ人を殺したりしてねぇよな?」 「とっ当然じゃない。襲われたりしないかぎり好き好んで殺したりなんかしないわ。」 真実を言えば自分の立場が危うくなると思いとっさに嘘をついた。 「嘘をつくんじゃねえよ糞虫が!だったら何でてめえの荷物から血の臭いがしやがるんだ!?」 確かにミントを切り捨てた剣はバックの中にあるが、そんな臭いを嗅ぎ分けれるわけがない。 「そっそんなの言い掛かりだわ!」 「いいや、数多の戦場で人を、モンスターを切り捨ててきた俺の鼻がこの臭いを嗅ぎ違えるわけがねえ!その荷物の中身見せてもらうぜ!」 そう言うとアルベルは左手を伸ばしてオペラの荷物を掴もうとした。 その左手は荷物を掴むことは無かった。代わりに彼の左腕に焼けるような痛みが走った。 オペラが飛び退きざまに彼の腕を隠し持っていた剣で切りつけたのだ。 オペラの気配の変化を素早く嗅ぎ取ったアルベルは一瞬早く手を引いていたので手首を切断される事はなかった。 「やっぱり嘘をついていやがったのか、このまま俺たちと同行し隙を見て皆殺しにするつもりだったんだろ? 大方あの道で死んでた女を殺ったのもてめえの仕業だな。そんな太刀筋じゃあ不意打ちじゃなきゃ殺れねえもんな?」 アルベルは切られた左手の傷を舐めながら鋭い殺気を込めた眼光をオペラに向けた。 「アルベルよしな!その剣とてつもない魔力を持ってるよ。 3対1だけどまともにやりあえばこっちもただじゃ済まない。一旦退くよ!」 「はっ!この臆病者が!こんな糞虫潰すのなんざ素手で十分だ。 この糞虫に身の程ってやつを教えてやる!やる気がないならさっさとそのガキ連れて逃げな!」 「アルベルあんたねえ。」 臆病者という言葉にカチンと来たネルは言い返そうとした。 「もしかしてあの人私たちを逃がすための時間を稼ぐつもりかも。」 そんな二人の様子を眺めていた夢留がボソッとつぶやいた。 「なっ、ちっちげーよ!阿呆が!!お前らのためなんかじゃねえ! 足手まといがいても邪魔なだけなんだよ!いいからさっさと逃げろよ!」 思わぬ一言を耳にしてアルベルは少し動揺したように声を上ずらせて返した。 (今度はツンデレかい?忙しいやつだね) ネルは少し呆れたがこの少女を危険にさらすわけにもいかないのでアルベルの言葉に従うことにした。 「わかった。好きにしな。けど、あんたみたいな奴でもルシファーを倒す大事な戦力なんだ。 こんな所で野垂れ死ぬんじゃないよ」 そう言い残すと夢留と共に窓から外に飛び出した。 オペラは逃げる二人には目もくれずアルベルをじっと睨み付け剣を青眼に構えた。 対するアルベルは左手足を前に出し半身になりその右手に闘気を込めてオペラを睨みつけている。 (今の俺が出せる技で一番破壊力があるのはこれだ。乱発はできねえ、一撃で決めてやる) アルベルは一足飛びで仕掛けられる間合いにするべく半歩踏み込んだがオペラも半歩下がった。 (太刀捌きは微妙だったが今の間合いの取り方といい、相手の動きを点で捉える目の動きといいこの女相当修羅場をくぐって来てやがるな) そう思うと少し楽しくなりニヤリと口元を歪めた。 ルシファーを倒して以来アーリグリフ国内に彼に敵う者もいなくシーハーツとの戦争も終結し闘争に飢えていた。久しぶりのこの空気はやはり彼にとっては心地の良い物らしい。 しばらくお互い相手の間合いのギリギリのところで様子を伺っていた。 アルベルは相手の剣を受ける術を持たないので隙を探していた。 対するオペラは剣術のイロハも知らない素人、下手な小細工はできるはずも無い。 ただ手製のランチャーを振り回していたスイングスピードには自信があった。 相手が仕掛けてきた一瞬の隙に一太刀浴びせるつもりだ。 (この緊張感は心地良いがいい加減飽きたな。仕方ねえ仕掛けるか) 両足に力を込め床を蹴る。一気に間合いをつめオペラの剣がギリギリ届かない位置に着地した。 オペラはその着地の隙を逃さず一歩踏み込みつつ剣を振り上げ一気に振り下ろした。 その剣閃はアルベルの脳天をしっかりと捕らえていた。 「チィ」だがアルベルもその動きを見切り体を右にそらした。 危うく左肩から先が無くなる所ではあったがなんとかこの一撃を回避できた。 相手は隙だらけ、振り下ろした剣で二の太刀を打ち込んでくる気配も無い。 右手に渾身の力を込めオペラの左わき腹に拳を叩き込み同時に練り上げていた闘気を解き放った。 「吼竜破!」 アルベルが叫びと共に放たれた闘気は竜の形を成しオペラに襲い掛かった。 「かはっ」 オペラはそのまま反対側の壁に叩きつけられくぐもった声を上げた。 オペラは剣を杖代わりにして立ち上がろうとしたが、掌打を叩き込まれた左わき腹に激痛が走りそれはかなわなかった。 アルベルは確かな手応えを感じオペラに歩み寄る。 「その様子じゃあもう戦えないだろ、抵抗できない奴に止めを刺すのは主義に反するがてめえみたいな危険人物を生かしておくわけにもいかねぇ。 せめて一思いに殺してやる」 そう言うと再度右手に闘気を込めだした。 オペラは立てひざを突いたまま左手でジャケットのポケットを探った。 不審な動きをしたオペラを見てアルベルは「動くんじゃねえ!」と叫び、とどめの一撃をいれるべく飛び掛ったが遅かった。 オペラは一冊の書物を取り出すとそれを掲げた。 オペラの体はまばゆい光に包まれその光がおさまる頃には姿は消えていた。 オペラは気がつくと氷川村すぐ近くの道端にいた。 彼女の窮地を救ったアイテム神速の書はその手から消えている。 オペラの荷物に入っていた支給品のひとつだった。 (いざという時に使うつもりだったけどこんなにも早い段階で使うことになるなんて。 とにかく傷の手当をしないと、このままじゃあまともにやりあっても返り討ちが関の山だわ) フラリと立ち上がるとまたもやわき腹に激痛が走り意識が飛びかけた。 剣を地面に突き刺し自身を支え呼吸を整えた。 「まだよ、まだ死ねないの。エルのためにもっと、もっと殺さないと…」 うわごとの様に呟くと沖木島診療所の方へ歩き始めた。 【I-07北部/昼】 【オペラ・べクトラ】[MP残量:100%] [状態:右肋骨骨折:右わき腹打撲] [装備:咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP] [道具:???←本人確認済 +荷物一式*2] [行動方針:参加者を殺し、エルネストを生き残らせる] [思考1:怪我の治療をすべく診療所へ行く] [思考2:誰かと遭遇しても不意打ちが確実に決まる状況で無いならスルー] 「ふう」 何とかオペラを退けたアルベルは一息ついた。 のどが渇いたので水を取り出そうとしたが、辺りには荷物が1セットしかなかった。 (あのガキちゃっかり自分の荷物持って行きやがって。) 水を取り出そうとバックに歩み寄るとバックが妙に膨らんでいるのに気づいた。 少し嫌な予感がしたので中身を確認するとそこには 〔こういうの好きなら私いらないからあげるね☆〕と書かれたメモとともにメイド服が出てきた。 「だからこんなもん好きじゃねぇー!!」 メモとメイド服を切り裂こうとしたが、生憎左手首の切り傷が痛んでそれは適わなかった。 メモを丸めて捨てると仕方がないので、かさばらない様にメイド服を綺麗にたたんでバックにいれた。 服をたたんでいる時ふと(俺なにやってんだろorz)と悲しくなった。 【I-07/昼】 【アルベル・ノックス】[MP残量:70%] [状態:左手首に深い切り傷(応急処置済みだが戦闘には支障があり)] [装備:なし] [道具:メイド服(スフレ4Pver)+荷物一式] [行動方針:ルシファーを倒す、基本的に単独行動するつもり] [思考1:武器の調達] [思考2:しばらく氷川村での散策を続ける] 「ここまで来れば大丈夫そうだね」 ネルはそういうと足を止めた。かなりの距離を走ったがほとんど息を切らせてなかった。 「はぁ、はぁ、ちょっ、ちょっと速すぎですよ~」 方や夢留はネルに追いついていくのがやっとだった。 立ち止まったネルにようやく追いつくと、膝に手をつき肩で息をした。 普段は訓練された者達と走ることがほとんどなので、夢留が一般人ということをネルはうっかり忘れていた。 「大丈夫かい?あそこの木陰で少し休憩しようか」 二人は木陰に座わり互いの自己紹介を交わした後夢留はたずねた。 「ネルさんはこれからどうするつもりですか?」 「そうだね、私の知り合いにこいつをどうにか出来そうな奴がいるから探すつもりさ」 ネルは首につけられた爆弾を指しながら言った。 「じゃあ、私もついて行っていいですか?私の知り合いも何人かこの島に来てるみたいなんですけど宛てもないし…」 「私はかまわないけど、多分最後にはこの会の主催者との戦いになる。そうなれば最悪の場合返り討ちにあうかもしれないよ?」 「大丈夫ですよ。私こう見えても魔法が使えますから。きっと役に立って見せますよ」 「そうかい。じゃあ改めてよろしく頼むよ夢留」 「はい!」 そういうと二人はかたく握手を交わした。 【H-06/昼】 【ネル・ゼルファー】[MP残量:100%] [状態:正常] [装備:セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔100/100〕@SO2] [道具:????・????←本人確認済 +荷物一式] [行動方針:仲間を探す(フェイトら文明人、ブレアを優先)] [思考1:氷川村は危険かもしれないので平瀬村にて仲間の捜索] 【H-06/昼】 【夢留】[MP残量:100%] [状態:疲労] [装備:なし] [道具:荷物一式] [行動方針:ネルについていく] [思考1:ネルについていく] [思考2:アルベルって人大丈夫かな?] 【残り55人】 ---- [[第39話>ホテルの跡の眠り姫、王子はきっとやってくる]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第41話>静かな湖畔の森の陰から]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第20話>止まらない受難]]|オペラ|[[第54話>白き煙の果てに]]| |[[第20話>止まらない受難]]|アルベル|[[第66話>LIVE A LIVE]]| |[[第20話>止まらない受難]]|ネル|[[第71話>絶望の笛(前編)]]| |[[第20話>止まらない受難]]|夢瑠|[[第71話>絶望の笛(前編)]]|

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