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**第14話 ルシファーが贈る刺客

絶壁。見下ろせば、そのまま海の藻屑と消えそうなほど高い崖。
そこの空間が裂け、裂け目から女性が現れた。

女はすぐに裂けた空間を閉じ、地面に置かれているデイパックの中身を確認した。
女には分かっていた。パックの中身が決して自分の不利になるような物が入っていないことを。

案の定、パックの中身には、殺傷性は皆無だが相手を確実に麻痺させることができるフェイズガン『パラライズボルト』、
服用すると不死者になる『グールパウダー』とキュウリなどの野菜を切っても刃に付かない包丁『万能包丁』が支給されていた。
女はパラライズボルトを手に取る。参加者たちを痺れさせてから、いろいろな方法で苦痛を与えられると思うと胸が弾んだ。
次にグールパウダーを手に取る。これもまたブレアを喜ばせた。
これを相手に飲ませれば、強制的に相手を不死者にさせると思うと嬉しくなった。
特にこれは対主催者を掲げる善人ぶった奴に飲ませよう。
最後に万能包丁。……これは拷問に使おう。

女は至急品を確認し終えると、自分の生みの親ともいえる人物に感謝する。

(さすがルシファー様。いや、この場合兄さんと言った方が正しいかしら?)

女はフフと笑い、心の中で訂正する。
それもそのはず、彼女は主催者ルシファーの妹であるブレアの姿をしているからである。
しかし、姿形は似ていれど、人格はオリジナルと違い、全くの別人格である。

IMITATIVE(模倣の)ブレアは自分の使命を確認する。それはこの殺し合いに参加している者を殺戮すること。
ただ単に殺すのではなく、できるだけ肉体的に精神的に苦痛を与え、絶望させるようにする。
それが自分の使命であり、ルシファー様が課した命令である。

不意にブレアは首に手を当て、首輪に触る。そこには絶対に取れそうもない首輪がある。
ルシファー様は律儀である。確かに、首輪が着いていなければ、他の参加者に怪しまれるだろう。
しかし、私にまで制限をかけることはないだろう。何となくだが、自分の力が思うように働かない。
ブレアは思う。

(もしかして、ルシファー様は私が裏切ると思っているのかしら?)

ブレアはふうとため息をつく。
私が裏切る?そんなことはありえない。私はルシファー様に作られた存在。
ルシファー様を裏切れば、己の存在を否定することになる。
だから私は絶対に裏切らない。


―――――そう、絶対に


ブレアは己の決意を胸に歩き出した。その顔に邪悪で残酷な笑みを浮かべ。
人が集まりそうな所へと―――――



【D-8/朝】
【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔100/100〕@SO3]
[道具:グールパウダー@VP2・万能包丁@SO2・荷物一式]
[行動方針:参加者にできる限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい]
[思考1:人が集まりそうな所へ行く]
[思考2:善人ぶった奴にグールパウダーを飲ませる]
[現在位置:最北東]

※グールパウダーはVP2製で異形の者にならないタイプです。
※参加者名簿には、ブレアと記入されています。
※ブレアはルシファーと連絡は取れません。

【残り57人】

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