少女が目を覚まし、体を起こす。
その目にはどこか希望の様な物が見えたが、周りを軽く見てあっさり掻き消えた。
この殺し合いを悪い夢とでも思っていたのか、それとも私がいなくなるとでも考えていたのか。
どちらにしても呑気な話だ、と健彦は思う。
自分は何もしないのに周りは変わって欲しい、などと都合のいい望みを臆面もなく持つのだから。
まあ、大の大人が本気で思うなら苛立ちの1つでも覚えるかもしれないが、目の前の相手は年端もいかない少女だ。別に気にはならない。
それよりもこっちだ、と健彦は隣に居る友秋を見る。
天草友秋はこの少女にどう接するのか、そして少女は友秋を見て何を思うのか。
健彦には想像もできない。
「大丈夫かいお嬢ちゃん」
先に話しかけたのは友秋だ。いかにも友好的だというような笑顔を見せ、少女を安心させようとしている。
そして友秋は手を差し出し、少女はおずおずとその手を取った。
どうやら私の心配は懸念だったらしい。
私と目を合わせようとはしないが、これなら大丈夫そうだ。
あの少女には少し悪い気がしなくもないが、私の命の為にしばらくは一緒にいさせてもらおう。
と思ったら少女がいきなり立ち上がり、どこかへ向かって歩く。
「どこに行くんだい?」
「……おトイレ」
友秋が聞くと少女はあっさり答えた。まあ殺し合いが始まってからそういう事は1回もしてないから無理もない。
というか私も1回もしていなかった、少女のトイレが終わったら私も行っておこう。
そう思って健彦は待っていた。
しかし10分ほど待っていても少女が出てこない。
試しにノックをしてみても反応が無い。
「天草さん」
「何だ?」
「あの子供がトイレから10分以上出てきません。それだけじゃなくノックをしても反応がありません」
「何かあった、か?」
「分かりません。なので天草さんに確かめてほしいのですが」
「ああ、分かった」
友秋は健彦の頼みに応じて、トイレを開ける。
一応、入るよと宣言したうえで。
しかし、少女どころか誰1人としてトイレの中に姿は無かった。
トイレにある窓を見ると、開いていてその幅は子供なら十分に出られるくらいだった。
「に、逃げたのか……」
少女が逃げるというのは健彦にとって思考の埒外だった。
あの現実の重さに耐えられなさそうな少女が、自らの意思で動くとは想定外である。
だが悔やんでいてもしょうがない、健彦に与えられた選択肢は2つ。
1つ、このまま見過ごす。
あの少女は私を怖がったのだからそれに配慮して会わないようにする、という選択肢だ。
だがこの場合、あの少女が他の殺し合いに乗らない参加者と出会った場合私の悪評が流されるかもしれない。
2つ、追いかける。
いくら自分を恐れて逃げた相手とはいえ、少女をこの状況で放りだすなどあってはならない、と考えて追いかける選択肢。
だが問題は、仮に外に出て追いかけたとしても追いつけるかが分からない。
それだけでなく、その光景を何も知らない人間が見た場合、大の大人2人が少女を真夜中に血眼になって探すと言う危ない絵面が誕生するということだ。
正直私なら弁護したくない。
しかし友秋は、一瞬だけ躊躇ったものの扉に手を掛けた。
「天草さん、何を!?」
「馬鹿野郎、真偽がどうあれこの状況で悪評ばらまかれちゃまずいのが分からないのか!?
それに、今の時間で他の参加者と接触する可能性なんてかなり低いだろ! 十分連れ戻せるはずだ!」
それだけ言って友秋は走っていく。
「クソッ!」
ここで自分だけ留まってしまえば、己の風評が悪くなるどころの騒ぎじゃない。
この殺し合いをどう動くにしても他者と関わるのは必須なのだから、最初の段階でつまづくのはまずい。
これが2人ならまだどうにかなったかもしれないが、1人に全部おっ被せられるのは最悪だ。
だから探すしかない。
「……殺すか?」
少女の殺害も選択肢に入れた上で。
◆
少女、伊丹沢妙は逃げる。
弁護士の側後健彦は妙を現実の重さに耐えられない少女と推察していたが、それは間違いではない。
彼女は実の父親にどれだけ勝手な理由で殴られ、蹴られようともいずれ無くなると信じて耐える以外の選択肢を持たない少女だ。
それは間違いではない。
だが彼女は苦痛から逃げ、恐怖から逃避する少女であっても、それは耐えるか意識を手放す以外の選択肢を持たないわけではない。
むしろ自ら遠ざかろうとするのは妥当な選択肢だろう。
血の繋がった実の父親ではなく、ただの他人相手から、それも恐ろしい存在から逃げるのは不自然ではない。
だから走る。己がどこに向かっているのかすら分からないまま。
殺人鬼、
笹原卓から逃げる為
増田ユーリは走る。
実際は1ミリも追うそぶりを見せていなかったのだが、ユーリにそんな事を知るすべはない。
ともかく走った。普段なら絶対に走りきれないような距離すら走り切った。
これがうわさに聞く火事場の馬鹿力なの、なんて考えながら走った。
「ハァ……、ハァ……」
だが限界は訪れる。今まで走り続けていたユーリは疲労で足を止め、その場に座り込み息を切らす。
場所はH-8、集落の外側にある道のど真ん中である。
「ヤバい、こんな道の真ん中はヤバい……」
ユーリとしてはそんな目立つ真似をしたくない、のでなるべく素早く移動。
1軒の家の壁を背にし、ユーリは息を整える。
そして落ち着いてきた所で、そういえば支給品を調べていなかった事に気付く。
最初は隠れていれば大丈夫だろうと考えて、目立っても困るからあえて調べなかったがこの状況じゃそうはいかない。
だからデイバックを開けようとした所で
少女がこっちに向かって走ってきた。
明らかにユーリより年下、下手すれば一桁の年齢かもしれない少女。
妙にフラフラとした走りで真っ直ぐ進めておらず、近くまで来た時にユーリは少女の体が痣だらけなのを見た。
「え?」
思わず驚きが口から零れる。
それが聞こえたのか少女がユーリの元へフラフラと、まるで誘蛾灯に吸い寄せられる虫の様に向かっていく。
ユーリは考える。
え、これは何? この子は他の参加者に襲われて、命からがら逃げてきたとか、そう言う感じなの?
じゃあここ全然安全じゃないじゃん! 何でユーリ逃げてばっかりなの!?
疲れ切った体に鞭を打ち、ユーリは逃げる事を選ぶ。
だがここで選ばなければならないことがある。
それは、ユーリに近づく少女だ。
連れて行くのか、放っておくのか。
心情的には連れて行きたい。自分はそこまで善良じゃないと思っているユーリでも、流石にこんな子供を見捨てたいとは思わない。
だが異能がはびこるこの状況で、見た目や年齢は人を判断する材料になるのか。
ひょっとしてだまし討ちする為にあんな姿を見せているのかもしれない。
それどころかひょっとしたらあの少女自体が幻覚かもしれない。
苦悩しながらユーリは少女をもう1度見る。
そしてユーリは思った。
――あの目は、ユーリと同じだ。
あの怯えた目は、殺されそうになった一時的な恐怖じゃない。
もっと常日頃から、何かに苛まれている目だ。ユーリと同じく。
なら助ける? 自分にそんな力があるかすら分からないのに。
だけど、でも……。
「こっち来て!」
「……?」
ユーリは少女の手を取った。
少女は意味が分からないような顔をしているが、ユーリはそんな事知らないとばかりに走り、家と家の間に隠れる。
すると少ししてから、2人の男がやって来た。
「見つけましたか!?」
「いや、駄目だ! どこにいる!?」
声を荒げながら何かを探す2人。ユーリには今一緒にいる少女を探している物だと判断した。
こんな小さな子に痣が出来るほど殴る相手からは逃げるに限る。
「大丈夫だから、ユーリと一緒に逃げよう」
「……おかあ、さん?」
「ユーリ17だから、お姉ちゃんとかの方が嬉しいかな……」
少女の言葉にちょっと凹みつつ、ユーリは見つからないように気を遣いながら逃げる。
なぜ
増田ユーリは少女と共に逃げる事を選んだのか。
大木潮以外の他人を信じられないと思っていたユーリは、なぜロクに話してもない相手と共に逃げたのか。
それはユーリが少女の中に過去、そして今の自分を見たからだ。
ユーリは自分の居場所を作れない人間だ。
嘘ばかり話すという完全な自業自得であるものの、彼女は学校も職場も失っている。
そのせいで両親すら彼女を見放しかけている。はっきり言って家族仲は悪い。
唯一やさしくしてくれるのが大木潮。彼の為のコスプレだけがユーリの心の支えだ。
この子もひょっとしたら似た者同士かもしれない。
この子も居場所を持たないのかもしれない。
いわば同情である。
実際はユーリと少女の境遇はかなり違うのだが、それをユーリが知る術は今は無い。
とはいえその同情は悪い物ではない。
ユーリからは見えないが、少女の表情は間違いなく安らいでいるのだから。
◆
石黒千晶、
早川千夏、
分目青司の3人は特に障害も無く港に到着した。
時間にして10分未満、300mも歩いていないのだから当たり前と言えば当たり前だが。
「それじゃ早速」
そう言って千夏は異能で船を出す。
それは本当に小舟と言うしかない物で、後ろにエンジンを積んだだけの簡素な物だった。
「ありがとうございます、それでは早速出発しましょう」
「はい」
千晶が出発しようとし、千夏は素直に頷いて舟に乗る。千晶もそれに続くがなぜか青司は乗る素振りを見せない。
「青司さん、どうかしたんですか?」
「ん、ああ。いやこの辺りに他の参加者がいるんじゃないかって思って見回していたんだ。
もうあの資源プラントに行った参加者から何か聞けるかもしれないし、殺し合いに乗っている参加者に海に出た後に狙撃でもされたら大変だからね」
「な、成程……」
青司の言葉に感心する千夏。それを黙って見ている千晶。
青司はある程度周辺を探りに船から離れる。その後ろを千晶はついて行く。
「え、千晶さんも行くんですか?」
「1人よりも2人でしょう」
そんな事も分からないのか、と千晶は言外に千夏に示す。
この時の千晶は少し苛立っていた。
分目青司という存在に。
消防士らしく実戦経験豊富で理にかなった考え方をする彼が、なぜか千晶は気に入らなかった。
私の
蘭堂虎竜太への説教を意味がないと一蹴されたからか、それとも他の何かかは自分でも分からない。
だがそんな個人的な感情論で数というアドバンテージを逃がすわけにはいかない。
なのでここは素直に青司に追随しよう。
「では」
「あ、ウチも行きます!」
千夏も千晶を追いかけて歩く。
そして少し探索しているとあっさりと他の参加者は見つかった。
1人は水色のワンピースを来た10歳位の少女、もう1人は舞台の上に立てそうなほど派手な服装をした千晶と同じくらいの少女だ。
少女は女の子に抱き着いたまま顔を埋め、もう1人は千晶たちを警戒している。
なので警戒を解いてもらおうと自己紹介を始める。
その後に持っていた銃を地面に置き、少女2人に向かって蹴り飛ばす。
それを見て話しに応じる気になったのか、1人が名乗った。
ユーリは自己紹介を返す。
だがもう1人の少女はそのまま動かない。
「大丈夫だから、多分大丈夫だから。ね?
ユーリに自分の名前を言ってみて」
何とか自己紹介させようとするユーリ。
だがその言葉はたどたどしく、とても子供の相手に慣れているようには見えない。
「……伊丹沢、妙」
それでも何とか自己紹介をする妙。
これで千晶は2人に心を許してもらえたと考え、さっき蹴り飛ばした銃を回収する為近づこうとする。
「近寄らないで!」
しかしユーリに拒絶された。
何のつもりだ、と千晶が思うより先にユーリが告げる。
「ごめん、今ちょっと初対面の人間が信用できないから……。
銃は返さないわけにはいかないけど、こっちに来ないで。というか銃持ってる限りこっち向かないで」
そう言って千晶が蹴り飛ばした銃を拾い上げる。
それを聞いた千晶は、あまりにも身勝手な言い分だと怒りそうになるが
「うん分かった。じゃあウチらが先に進むから」
千夏が千晶の手を引いて、先に歩き出した。
その直後千晶の銃は帰ってきたが、千晶は不満だ。
何があったにせよ、一方的に要求を突き付けられていい気がする人間はいない。
とはいえそうしてしまうほどの事があった、と考えれば向けるべき感情は怒りじゃない事くらいは分かる。
だから千晶は堪え、黙って歩く。
千晶は後ろを見てないが、千夏の様子を見る限りついてきているのは確かなようだ。
◆
友秋にとって、この状況は最悪に近かった。
逃げ出した少女を探す2人。子供だからそんなに遠くにはいってないだろう、という考えだったがそれは当たっていた。
事実、集落のそばにある港に少女は居たのだから。
別の高校生くらいの女の参加者に抱き着いた状態で。
しかも他の参加者3人と一緒に。
女子高生2人に、大人の男が1人が何を聞いたのかこっちを睨んでいる。
軍服を着た高校生くらいの女と、消防士の服を着た男と、制服をピッチリ着た女子高生に睨まれるのはある種滑稽だった。
まるでコスプレパーティーだ、こっちがスーツなのがちょっと申し訳ない。
「どうにも誤解があるようですね」
友秋が脳内でジョークを飛ばしているとも知らず、健彦は誤解を解こうと話し出す。
弁護士を名乗っていたが、そのお手前をみせてもらおうか。どっちみち俺じゃ無理だろうし。
「まずは自己紹介から。
私の名前は側後康彦、弁護士です。こちらは
天草友秋さんです。
それで、まあ……。貴方方はその少女を我々がいたぶったとでも思っているのでしょうが――」
「違うとでもいうのですか?」
健彦の言葉に制服の少女が噛みつく。
だがその程度は予測済みだ。
「ええ、違います。
痣を見れば見てもらえば分かるでしょうが、彼女は日常的に暴行を受けています。
それこそ、殺し合いが始まる遥か前から」
「……分目さん、確かめられますか?」
「分かった、やってみよう」
分目と呼ばれた消防士の男が、少女の元へ行き痣を確かめようとする。
消防士に分かるのか疑問だったが、怪我を確かめる事もあるかもしれない。
「側後さんの言う通りではある。日常的に暴力を受けていたのは間違いない。
だがここ数時間の間に暴力を受けた跡もある、あなた達を信用することは出来ない」
「……そうですか」
あてが外れた、と言わんばかりの顔を見せる健彦。
「ではこれでどうでしょう」
そう言うと健彦はデイバッグを5人の方へ投げ飛ばし、頭の上に後ろ手を組む。
「天草さんも」
「あ、ああ……」
それに続いて友秋も持っていた刀をデイパックにしまい、同じように投げて後ろ手を組む。
「これで少なくとも我々に攻撃の意思がないと理解して頂けるでしょうか」
「まだだ、まだあなた達は異能を見せていない」
健彦の言葉に分目が応じる。成程、この殺し合いならではの不穏分子か、と友秋は納得する。
「俺の異能はさっきまで持っていた妖刀だ」
友秋は言う。友秋にとっては真実なので、嘘をついている澱みのような物は一切見えない。
「私の異能は、これなのですが……」
健彦はそう言うと、音楽プレイヤーを出現させる。
友秋は異能とはこんな物理法則を無視したものもあるのか、と驚く。
「これ、どう使えばいいのでしょうか? 誰か知りませんか?」
どこか切実な健彦の言葉に、誰も何も言えない。
この場にいる全員が、健彦の出したそれがただの音楽プレイヤーにしか見えないのだ。
「まあ、こういう具合でして……。信頼も信用も必要ありませんが、とりあえずあなた達を害する意思はありません」
「……分かりました」
不承不承とばかりに分目が頷く。
他に言い様は無いだろうな、と友秋は思った。
情報が何一つ出そろっていない段階で、これを精査する手段は何一つない。
そんな段階ではうかつな真似は出来ないだろう、と友秋は納得する。
しかし次の瞬間、友秋にとって予想だにしない事が起こる。
「ならばこうさせてもらいます」
分目がそう言った瞬間、姿が人間から一瞬にして怪獣としか言えない姿に変身した。
余りの事に思わず放心しかかる友秋。
「詳しくは言いませんが、この状態なら銃に撃たれてもあまりダメージは受けません。
うかつな事をすれば、どうなるか分かっていますね」
その脅しに何も言わない健彦と友秋。そんな事をするつもりはないが、相手が警戒するのも必然だからだ。
「……分かっています。その上で1つ、情報交換をしませんか。
信頼できる人を紹介しろなどとは言いません、ですが危険人物の情報位ならよろしいのでは?」
「それ位なら構いませんが、情報はそちらからお願いしますよ」
「ーーすみませんが、私達は」
「郷音ツボミだ」
情報交換を申し込みながら言いよどむ健彦を遮り、友秋は強い口調で言い切った。
俺が郷音ツボミを恨んでいる事に気付いていたのか、と思わなくもないがとりあえず友秋は話す。
「郷音ツボミはこの状況なら間違いなく殺し合いに乗る。
あいつは己をトップアイドルという立場に置くためなら人を死に追いやり、平然と股を開く女だからな」
友秋の言葉に怪訝な顔を見せる分目達3人。
健彦ですら若干胡散臭そうな目で友秋を見る。
だが意外なところから助け舟が出てきた。
「あ、天草さんも郷音ツボミに酷い目に遭わされたの!?
ユーリは
増田ユーリって言うんだけど、ユーリも酷い目に遭わされたの!
一時期郷音ツボミと同じグループに居たんだけど、ユーリのアイドルとしての才能に嫉妬して結託してユーリをイジメで追い出したの!
それにライバルを自殺に追い込んだなんて話、しょっちゅう聞いたしアイツなら人殺しなんて平気だよ間違いなく!!」
ユーリの堰を切ってあふれ出た言葉に少し圧倒される友秋。
だが守っている相手からの言葉は、分目達を少しだけ友秋の言葉を信じる方に傾いたようだ。
「……分かりました、警戒はしましょう。ですが実際に殺しの場面を目撃するまでこちらからはどうこうしませんので」
「郷音ちゃんが、ねえ……」
軍服の少女が信じられない、とばかりに呟く。
確かに姿だけを見れば、美しく整っている。
しかし、一皮むけば、その中はさながらヘドロの如き汚泥だ。
その中身が世間に溢れれば、魔女狩りの如くバッシングという炎に焼かれるのだろうか。
友秋にとってはどうでもいい。あいつはこの殺し合いで誰にも看取られる事なく死ぬんだ、俺の手で。
「それで、そちらから危険人物の情報はありませんか?」
「ええと――」
健彦の最速に分目が柔らかくする異能の少女について話す。
友秋も話を聞き、警戒心を高めた。
「あ、ユーリも」
続いてユーリも殺人鬼、
笹原卓の情報を開示する。
突然すぎる凶行を見せる卓の振る舞いを聞いて、多少後ろ暗い付き合いのあった友秋すら動揺が隠せない。
「では、情報交換はこれで終わりという事で構わないですね」
「はい、構いません」
分目の言葉に健彦は同意する。
友秋たちが投げたデイパックを返してもらい、友秋達は港から去り元居た家まで戻る。
「これからどうする?」
友秋は思わず健彦に尋ねてしまった
本質的に別の道を歩む人間に問いかけるほど、友秋は焦っていた。
郷音ツボミと天草時春の情報を集める筈が、郷音ツボミの悪評を振りまくだけで終わってしまった。
殺すな、とも言えず引き下がってしまった。
あの場にいた人間の反応から、どうやら会ってはいないらしい。驚きは無いから最初の場で見ていたようではるが。
天草時春に関しては何も出来なかった。
殺し合いにはまず乗らないだろうし、悪評をばら撒いても信用されるかが郷音ツボミ以上に怪しい。
「どうもこうもありません。とりあえず現状維持以外ないでしょう。
向こうは恐らく我々を信用できないが殺し合いには乗っていない参加者、くらいに認識しているはずです。
ならもしその情報を聞いている参加者が来たら、信用させるのは我々の技量の問題になる。
増田ユーリの反応から、あなたは多少好意的に扱われるかもしれませんがね」
「……そうだな」
「とにかく今は情報を集めつつ危険人物を警戒するくらいしか出来る事がありません。
あなたがどうしたいかにもよりますが、今はここを離れない方が得策かと」
「だろうな」
友秋にだってそれ位は分かっている。
郷音ツボミと天草時春は恐らくこの辺りにはいない。
さっきまで話していた奴らがどの方角から来たのか分からないが、少なくともこの集落の周辺にはいないと考えていい。
となるとあいつらは人の集まる方に向かうはずだ。
殺し合い乗るのなら、殺す為に参加者が集まる方へ。
殺し合いに抗うのなら、仲間を集うために参加者が集まる方へ。
分かっている、分かっているんだ。
「クソッ!」
分かっていても、何も出来ない己が友秋は歯がゆかった。
◆
健彦と友秋を見送った青司は、姿を元に戻して皆の方へ向き直る。
大半が驚きとともに青司を見るが、異能だという事が分かっているからか特に騒ぎ立てる事は無い。
否、伊丹沢妙は多少恐怖の目で青司を見ている。
「もう少し色々聞き出したかったのですが」
「いや、あれくらいでいいはずだ。あまり情報を開示したくない」
千晶の言葉を切り捨てる青司。
弁護士を名乗るだけあって、あの警戒状態からあっさり簡単な情報交換にまで場を持って行った。
自分の異能を見せてしまったのはいいが、それ以上は札を見せたくなかった。
「それで、
増田ユーリだったかな。
君に聞きたいんだけど、僕らと一緒に来る気はあるかな?」
「え?」
青司の問いにユーリは呆けた表情を見せる。
だがこれは正義の消防士としての必然だ。殺し合いに乗っていない、殺人鬼から逃げるしかできない少女を保護するのは青司にとっての当然。
しかしユーリは首を横に振った。
「ごめんなさい。今ちょっと知っている人しか信じたくないんで……」
「そうか、じゃあ仕方ないね」
ユーリの拒絶を青司はあっさり受け入れる。
保護しようとしたけど当人が拒絶した、となればそれは青司の責任ではない。故に死のうと生きようと知ったことではない。
だがもう1つやる事はある。
「それじゃ、伊丹沢妙ちゃんはどうする?」
「……ユーリお姉ちゃんと一緒にいる」
同じように妙に質問し、同じように拒絶された。
ならもう用は無いとばかりに青司は歩き始め、千晶と千夏もそれに続く。
とはいえこれだけだと外聞が悪いかもしれない、と思った青司は1つ付け加えた。
「診療所に殺し合いに乗っていない参加者が居るから、もし会うのなら会いに行くと良いよ」
それだけ言って青司は歩く。
目指すのは資源開拓プラント、そこに何があるかは誰も知らない。
【一日目・3時00分/I-8・集落】
【側後健彦@謝債発行機/HUNTERxHUNTER】
[状態]:精神疲労(小)、焦り
[装備]:謝債発行機@HUNTERxHUNTER
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)、『
オマケ』のイヤホン
[思考・行動]
基本方針: 生き残る。一先ず自身の能力の”本質”が分かるまでは様子見。
1:しばらく集落に留まる
2:
天草友秋をうまく利用する。
3:郷音ツボミなど危険人物を警戒
4:悪評はばらまかれない、と思うが……
5:この音楽プレイヤー(謝債発行機)については一旦保留。
[備考]
※伊丹沢妙の能力を見ました(能力レンタルの第一条件を達成)
※
分目青司の能力を見ました(能力レンタルの第一条件を達成)
※
天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※
鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※
笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【
天草友秋@ドラゴンオルフェノク/仮面ライダー555】
[状態]:狂乱(自覚なし)
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考・行動]
基本方針:参加者をうまく利用して勝ち残る、そのためには何が犠牲になろうと構わない
1:郷音ツボミと天草時春の情報が集まるまで、集落に滞在する
2:娘を死に追いやった郷音ツボミは俺が必ずこの手で殺す。他のアイドル共も参加していれば殺す
3:天草時春には俺と同じ屈辱を味わって貰う、他の天草一族も参加していれば同様
4:
笹原卓には少し引いている
[備考]
※自身のオルフェノク化には気づいてません
※支給品の刀を妖刀と信じています
※側後健彦の異能を目撃しました
※
分目青司の異能を目撃しました
※
鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※
笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【一日目・3時00分/H-9・港】
【伊丹沢妙@略奪/Charlotte】
[状態]:体中に殴られた傷と痣、精神疲労(大、少しずつ落ち着いている)
[装備]:なし
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考・行動]
基本方針:ユーリお姉ちゃんと一緒にいたい
1:ユーリお姉ちゃんについて行く.
2:お母、さん……
3:側後への恐怖
[備考]
※どの方向に向かうは後の書き手にお任せします
※自身の能力を、まだ使いこなせていません
※
天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※
分目青司の異能を目撃しました
※
鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※
笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【
増田ユーリ@鏡の妖精トポ/魔法のスターマジカルエミ】
[状態]:恐怖、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1~3)
[思考・行動]
基本方針:潮さんを探す
1:今は、潮さんと妙ちゃん以外の人と一緒に居たくない
2:診療所に行くか行かないか――
2:天草さんはそんなに悪い人じゃない、のかな?
3:
笹原卓はやばい
[備考]
※どの方向に向かうは後の書き手にお任せします
※
天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※
分目青司の異能を目撃しました
※
鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
【
早川千夏@工兵/放課後アサルト×ガールズ】
[状態]:健康、工兵変身状態、
[装備]:工兵服(シールドフル状態)
[道具]:{支給品一式×2(-懐中電灯)、M67手榴弾×15、『戦場での立ち回り本セット(本4冊)』、不明支給品1(確認済み)、デイパック×1、机と椅子×30}分のリソース
[思考・行動]
基本方針:千晶と行動し、生き残る。
1:千晶さんに付いていけばなんとかなる、よね……?
2:分目さんはまともそう
3:舞に合ったら一発シメてやる。
4:郷音ちゃんがねえ……
[備考]
※
石黒千晶と情報交換しました。
※自分の能力と
石黒千晶の(大まかな)能力を把握しました。
※
萩原舞が参加していることは薄々予想しています。
※机と椅子は木と鉄パイプで出来た普遍的なものです。原作バトルロワイヤルの生徒数分の用意がありました。
※
鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※
天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※
分目青司の異能を目撃しました
※
笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【
石黒千晶@『直観』/HEROS】
[状態]:健康、苛立ち
[装備]:グロック18自動拳銃(フルオートモード)、懐中電灯
[道具]:本一冊(『歴史から学ぶ戦争学~この先生きのこるには~』)
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:資源開拓プラントへ向かう。
2:協力者を増やす。
3:郷音ツボミを警戒……?
[備考]
※
早川千夏と情報交換しました。
※自分の(大まかな)能力と
早川千夏の能力を把握しました。
※
蘭堂虎竜太の異能を目撃しました
※
鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※
天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※
分目青司の異能を目撃しました
※
笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【
分目青司@キリエル人の力@ウルトラマンティガ】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3、包帯、薬
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを「俺が」打破して名声を得る、もしくは願いを叶える力を奪う
1:一先ず、石黒と早川に同行する
2:他の参加者を保護する
3:殺し合いに乗っている者は可能なら殺す
4:特に火傷の女(
鈴宮ミカ)は特に注意する
5:石黒はいつでも始末するつもりでいる
6:郷音ツボミを一応警戒
[備考]
※自分の異能がキリエル人の力であると知りました
ウルトラマンティガ放送時の記憶が曖昧なので今のところ使うことができると思っている能力はキリエロイドへの変身と獄炎弾のみです
※
鈴宮ミカの能力を生物を柔らかくする能力だと知りました(指紋による結界はまだ見ていません)
※
早川千夏の異能を把握しました
※診療所で手に入れた包帯、薬の量や種類は次の書き手氏にお任せします
※
天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※
笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
最終更新:2019年03月16日 12:27